
胚盤胞を2個戻すとは?1個移植との違い・双子のリスク・2個移植が検討されるケース
体外受精の移植を控えていると、「胚盤胞を2個戻した方が妊娠しやすいの?」「2個戻したら双子になる?」「何回か陰性なら2個移植できる?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
1回の胚移植で2個の胚盤胞を子宮内に移植する方法は、一般に「2個戻し」「2胚移植」などと呼ばれます。
ただし、2個戻せば必ず妊娠できるわけではなく、2個とも着床した場合には双胎妊娠となる可能性があります。そのため、日本では多胎妊娠を防ぐ目的から、胚移植は原則として1個とされています。[1]
この記事では、胚盤胞を2個戻すとはどういうことなのか、1個移植との違い、双子になる可能性やリスク、2個移植が検討されるケースについてわかりやすく解説します。
- 胚盤胞2個戻しとは、1回の胚移植で2個の胚盤胞を子宮内へ移植する方法です。
- 日本では、多胎妊娠を防ぐため胚移植は原則1個とされています。
- 35歳以上の場合や、2回以上続けて妊娠が成立しなかった場合などでは、2胚移植が検討されることがあります。
- 2個とも着床すると双胎妊娠になる可能性があり、早産などのリスクが単胎妊娠より高くなります。
- 「2個戻せば妊娠率が2倍になる」という意味ではなく、年齢や胚の状態、これまでの移植歴を含めて判断することが大切です。
胚盤胞を2個戻すとは?
体外受精や顕微授精では、受精した胚を培養し、子宮内へ戻す「胚移植」を行います。
受精後5~6日ほど培養し、胚盤胞まで成長した胚を移植する場合は胚盤胞移植と呼ばれます。
通常、1回の移植で1個の胚盤胞を戻す方法を「単一胚移植(SET)」、2個の胚を戻す方法を「2胚移植(DET)」と呼びます。
「胚盤胞2個戻し」「2個移植」「2胚移植」など、クリニックや患者さんによって呼び方が異なることがありますが、基本的には同じ移植周期に2個の胚を子宮内へ移植することを意味します。
1個移植と2個移植の違い
1個移植
1個移植では、選択した胚を1個だけ子宮内へ移植します。
残っている良好な胚があれば凍結保存し、今回妊娠に至らなかった場合には次の周期以降に移植することができます。
大きなメリットは、2個移植と比べて多胎妊娠の可能性を大幅に減らせることです。
2個移植
2個移植では、同じ移植周期に2個の胚を子宮内へ移植します。
2個のうち1個だけが着床することもあれば、2個とも着床すること、どちらも着床しないこともあります。
2個とも着床した場合には、一般的には二卵性双胎となる可能性があります。
そのため、2個移植を考える際には、妊娠する可能性だけでなく、双胎妊娠になった場合のリスクについても理解したうえで判断する必要があります。
日本では胚移植は「原則1個」
日本産科婦人科学会は、生殖補助医療における多胎妊娠を防ぐため、移植する胚は原則として1個とする見解を示しています。[1]
これは「2個移植が禁止されている」という意味ではありません。
一定の条件では2胚移植が許容されていますが、まずは母体と赤ちゃんの安全を考え、単胎妊娠を目指すことが基本的な考え方になっています。
胚盤胞2個移植が検討されるケース
日本産科婦人科学会の見解では、次のような場合などに2胚移植が許容されています。[1]
35歳以上の場合
35歳以上では、年齢やこれまでの治療歴、胚の状態などを考慮したうえで、2胚移植が選択肢になる場合があります。
ただし、「35歳になったら必ず2個戻す」という意味ではありません。
良好な胚がある場合や、妊娠の見込みが比較的高い場合などには、年齢が35歳以上であっても1個移植が選択されることがあります。
2回以上続けて妊娠が成立しなかった場合
年齢にかかわらず、2回以上続けて胚移植を行っても妊娠が成立しなかった場合などには、2胚移植が検討されることがあります。[1]
ただし、移植がうまくいかなかった原因は、胚の状態だけでなく、年齢や子宮内の状態などさまざまです。
「2回陰性だったから次は必ず2個戻す」ということではなく、これまでの治療経過を確認しながら担当医と相談して決めることになります。
PGT-A・PGT-SRを行った胚の場合は?
着床前遺伝学的検査(PGT-A・PGT-SR)の結果、移植に適すると判定された胚を移植する場合は、単一胚移植が原則とされています。[1]
海外のガイドラインでも、染色体数が正常と判定された胚(euploid embryo)の移植では、年齢にかかわらず1個移植を推奨する考え方が示されています。[3]
胚盤胞を2個戻すと妊娠率は上がる?
「どうせなら2個戻した方が妊娠しやすいのでは?」と考える方もいると思います。
1回の移植だけを比較すると、2個移植の方が妊娠・出生に至る可能性が高くなることがあります。
しかし、重要なのは1回の移植だけではなく、凍結胚を使った次の移植まで含めて考えることです。
過去の無作為化比較試験をまとめたシステマティックレビューでは、1個ずつ複数回移植する方法と、1回で2個移植する方法を比較すると、累積出生率には大きな差がない可能性がある一方、1個ずつ移植する方が多胎妊娠を減らせることが示されています。[4]
そのため、単純に「2個戻せば妊娠率が2倍になる」わけではありません。
年齢や移植できる胚の数、胚のグレード、これまでの移植歴などによって適した方法は異なります。
胚盤胞を2個戻すと双子になる?
2個の胚盤胞を移植したからといって、必ず双子になるわけではありません。
2個移植した場合には、主に次のような結果が考えられます。
- どちらも着床しない
- 1個だけ着床する
- 2個とも着床する
2個の胚がそれぞれ着床した場合には、二卵性双胎になる可能性があります。
また、非常にまれではありますが、1個の受精卵が途中で2つに分かれることがあるため、1個移植でも一卵性双胎になる可能性はあります。
双子妊娠にはどのようなリスクがある?
双子の妊娠・出産そのものを過度に怖がる必要はありませんが、医学的には単胎妊娠と比較して注意が必要な妊娠とされています。
多胎妊娠では、次のようなリスクが高くなることが知られています。[2][5]
- 早産
- 低出生体重
- 妊娠高血圧症候群・妊娠高血圧腎症
- 妊娠糖尿病
- 胎児発育の差や発育不全
- 産後出血など母体への負担
特に重要なのが早産のリスクです。
双胎妊娠は単胎妊娠と比べて早産になりやすく、赤ちゃんが早く生まれるほど、呼吸や哺乳などのために新生児医療が必要になる可能性も高くなります。
このような背景から、現在の生殖医療では「妊娠すること」だけではなく、母体と赤ちゃんができるだけ安全に妊娠・出産を迎えることを考えて移植する胚の数を決めることが重視されています。
「双子が欲しいから2個戻したい」は可能?
「できれば一度の妊娠で双子を授かりたい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、胚を2個移植する目的は、双子を希望するためというよりも、年齢や過去の移植歴などを踏まえて医療上必要性がある場合に検討されるものと考えた方がよいでしょう。
双胎妊娠には単胎妊娠より高いリスクがあるため、希望だけで2個移植を選択できるかどうかはクリニックによっても異なります。
「なぜ今回は1個なのか」「自分の場合、2個移植は検討できるのか」と疑問がある場合は、担当医に理由を確認してみることをおすすめします。
2個戻しを提案されたときに確認しておきたいこと
クリニックから2胚移植を提案された場合には、次のような点を確認しておくと判断しやすくなります。
- なぜ自分には2胚移植が検討されているのか
- 1個移植を続けた場合との違い
- 自分の年齢や胚の状態での妊娠の見込み
- 2個とも着床した場合の多胎妊娠のリスク
- 残っている凍結胚の数
- PGT-A・PGT-SRを行っているか
「2個戻した方がいい」「1個の方がいい」と一律に決められるものではありません。
これまでの治療歴やご自身の体の状態について説明を受け、納得したうえで移植方法を選ぶことが大切です。
実際に胚盤胞2個戻しで妊娠・出産された症例
当院には、体外受精の採卵や胚移植と並行して、体調管理を目的に通院されている方もいらっしゃいます。
29歳で原因不明の不妊と流産を経験し、複数回の胚移植を経て、凍結胚盤胞2個戻しで双子を妊娠・出産された患者様の症例もご紹介しています。
29歳 原因不明の不妊 流産を乗り越え胚盤胞2個戻しで妊娠・出産
※症例は一個人の治療経過であり、同じ治療・施術によって同様の結果が得られることを示すものではありません。
胚移植を控えている方へ
移植を控えていると、「この胚で大丈夫かな」「次も陰性だったらどうしよう」「1個と2個、どちらがいいのだろう」とさまざまな不安が出てくることがあります。
胚の数を決めるのは不妊治療を行う医療機関であり、鍼灸で2個移植の適応を判断したり、着床を保証したりすることはできません。
一方で、妊活や不妊治療中には、肩こり、冷え、睡眠不足、疲労、ストレスなど、治療とは別の体調面が気になることもあります。
そうしたときは、クリニックでの治療を基本としながら、ご自身が少しでも落ち着いて採卵や移植に向き合えるよう、生活や体調を整えていくことも大切です。
胚盤胞を2個戻すと妊娠率は2倍になりますか?
2倍になるわけではありません。1回あたりの移植では2個移植の方が妊娠・出生につながる可能性が高くなる場合がありますが、双胎妊娠の可能性も高くなります。凍結胚を1個ずつ続けて移植した場合まで含めた累積の成績も考えて判断することが大切です。
2個戻したら必ず双子になりますか?
必ず双子になるわけではありません。2個とも着床する場合、1個だけ着床する場合、どちらも着床しない場合があります。
30代前半でも2個戻しはできますか?
年齢だけで決まるわけではありません。日本産科婦人科学会では原則1個移植ですが、2回以上続けて妊娠が成立しなかった場合などでは、35歳未満でも2胚移植が検討されることがあります。[1]
35歳を過ぎたら2個戻した方がよいですか?
35歳以上で2胚移植が許容される場合がありますが、「35歳以上なら2個の方がよい」という意味ではありません。胚の状態やこれまでの移植歴などによって1個移植が適していることもあります。
PGT-Aで正常胚なら2個戻すことはありますか?
日本産科婦人科学会では、PGT-A・PGT-SRの結果で移植適合と判定された胚を移植する場合には、単一胚移植を原則としています。[1] 詳しくは検査を受けた不妊治療専門クリニックで確認してください。
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📚参考文献
- [1] 日本産科婦人科学会. 生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解. 2023年6月改定.
胚移植は原則として単一胚移植とし、35歳以上または2回以上続けて妊娠不成立となった場合などに2胚移植を許容する考え方を示しています。 - [2] European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE). Guideline on the number of embryos to transfer during IVF/ICSI.
体外受精・顕微授精において移植する胚数を決める際の考え方と、多胎妊娠を避ける重要性についてまとめたガイドラインです。 - [3] Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Guidance on the limits to the number of embryos to transfer: a committee opinion. Fertility and Sterility. 2021;116:651-654.
年齢や予後、胚の状態に応じた移植胚数について推奨を示しており、euploid胚では年齢にかかわらず1個移植を推奨しています。 - [4] Kamath MS, et al. Number of embryos for transfer following in vitro fertilisation or intra-cytoplasmic sperm injection. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020.
1個ずつ繰り返し移植する方法と2個移植を比較し、累積出生率と多胎妊娠率について検討したシステマティックレビューです。 - [5] American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG). Multifetal Gestations: Twin, Triplet, and Higher-Order Multifetal Pregnancies.
双胎を含む多胎妊娠における早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などのリスクについてまとめています。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
採卵・胚移植に向けて体調を整えたい方へ
胚移植の回数が増えてくると、「次こそは」と期待する一方で、結果への不安や仕事との両立、睡眠不足、疲れなどを感じることもあると思います。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療専門クリニックでの治療を基本としながら、採卵・胚移植のスケジュールやその時々の体調を伺い、妊活中の身体づくりをサポートしています。
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