日本のカップルの10〜15組中1組が不妊であると言われています。WHO(世界保健機関)による不妊の原因の割合は以下の通りです。
- 男性のみ:24%
- 女性のみ:41%
- 男女ともに:24%
- 原因不明:11%
つまり、男性に原因がある場合(男性のみ、男女ともに)は、全体の48%にものぼります。
男性不妊の主な6つの分類
男性不妊は主に以下の6つに分類されます。
1. 造精機能障害(非閉塞性無精子症)
精子の数や運動(動き)が悪いなど、正常な精子を作る機能に障害がある状態です。精巣や内分泌系(ホルモン分泌など)の異常・障害によって引き起こされます。 男性不妊の原因のうち82.4%を占めます。
2. 精索静脈瘤
精巣がおさまる陰嚢(いんのう)の静脈が拡張した状態を言います。一般男性の15%に認められ、乏精子症・精子運動率低下の少なくとも35%が精索静脈瘤によるものです。
【精索静脈瘤のメカニズム】
陰嚢内の静脈血流が悪くなると、血液がうっ滞します。特に立っている時間が長かったり、お腹に力が入ったりする時にうっ滞がおこりやすいです。動脈・静脈の位置関係から、左側に好発します。陰嚢内の理想的な温度(35度台)より体温に近い血液(36度台)が精巣を温めることで、精子を作る機能が低下し、精子形成障害がおこります。
【未治療のデメリット】
- 自然治癒することはなく、次第に進行し、精巣のダメージが進むと手術での回復が困難になる。
- 精子DNA損傷により、顕微授精でも受精・着床・妊娠維持に不利になる可能性がある。
- 2人目不妊の原因(2人目不妊の原因の78%)となり、より高度な生殖補助医療が必要になる可能性があり、時間と費用がかかる。
- 精巣機能が低下し、男性ホルモンの分泌が低下すると、将来的に男性更年期障害をおこす。
【治療のメリット】
- 不妊原因を解消し、将来的に妊娠が期待できる。
- 女性パートナーに原因がなければ、女性側の不妊治療が不要となり、自然妊娠が期待できる。
- 高度生殖医療が必要な場合でも、ステップダウンできる可能性がある。また、妊娠率上昇と流産率低下が期待できる。
3. 精路通過障害(閉塞性無精子症)
精巣から精子の通路が閉塞している状態です。
原因:先天性精管欠損症、避妊のためのパイプカット(精管の結紮術)、幼少期の鼠径ヘルニア手術による精管閉塞、両側精巣上体炎など。
治療:先天性精管欠損や無精子症の場合は、精巣組織の一部を回収し、精子を採取する精巣内精子回収術(TESE)が適用されます。
4. 副精器機能異常(膿精液症)
精液の中に白血球が混ざる状態で、精子の運動率が低下します。精子無力症を引き起こし、体外受精でも受精しないことがあります。
原因:最も関係があるのは前立腺炎で、マイコプラズマ、結核によって引き起こされます。
5. 性機能障害
性交がスムーズにできない状態を指します。(ED:勃起不全、性交障害、射精障害など)
射精不全:女性の腟内で射精ができない状態。精神的な影響(排卵日付近の義務的な性交、精神的なマンネリ感や過去の失敗など)や加齢による性欲の減少が関与します。
6. 逆行性射精
精液が体外へ射精されず、膀胱に向かって逆流してしまう状態です。
原因:前立腺の治療経験のある方に多く、前立腺の切除術、骨盤腔内手術、糖尿病性神経症、脊髄損傷などがありますが、原因不明の場合も多いと言われています。
精子を守るために大事な9箇条
その1:タバコを吸わない!
喫煙による酸化ストレスで精子のDNAが損傷し、受精しにくくなったり、正常な胎児の成長につながりにくくなったりする可能性があります。また、精子の数が減少し、運動能力の高い精子の数が減る可能性もでてきます。全身の血管が収縮し、男性器への血流も阻害され、不妊原因の一つであるEDを招く可能性があります。さらに、副流煙はパートナーの妊娠・出産にも悪影響を及ぼします。
その2:お酒を飲みすぎない!
適量を心がけましょう。頻繁な深酒は精神的、身体的な健康面に悪影響することが明らかです。(例:ビール中瓶1本(500ml)、日本酒一合(180ml)など)。泥酔すると妊活に支障が出ることがあります。
その3:しっかり食事を摂る!
インスタント食品ばかりや、特定の食材だけを食べ続けるダイエット法などは栄養が偏ります。脂質を摂らないと性ホルモン(テストステロン、エストロゲン、プロゲステロン)が作られません。バランスの取れた食生活を心がけましょう。
その4:長時間自転車に乗らないようにする!
毎日のように長時間自転車に乗ると、股間の血流が悪くなり、男性器の血管を損傷するおそれがあります。前立腺に炎症がおこると、精液中に白血球が混じり、精子の運動率低下やDNAの断片化がおこることがあります。「自転車乗り」と「ED」の関係性は不妊のガイドラインにも記載があります。
その5:禁欲しないようにする!
禁欲は精子の質を低下させます。時間が経った「古い精子」の数が増え、精液全体の質が下がり、精子のDNAの損傷率が高くなることがわかっています。DNAの損傷は流産の危険性を高めます。1〜2日空ければ充分とされています。
その6:ストレスを抱え込まないようにする!
精子は酸化ストレスによるダメージを受けやすく、活性酸素でダメージを受けると運動率が悪くなります。ストレスはテストステロン(男性ホルモン)を低下させ、精子形成を抑制する可能性があります。睡眠不足もホルモンバランスを乱し、テストステロンを低下させます。規則正しい生活と、抗酸化作用のある食事を心がけましょう。
その7:育毛剤の使用を控える!
AGA治療薬の一部(「フィナステリド」など)は男性ホルモンの働きをブロックし、妊活中の方には注意が必要です。副作用として、性欲減退、射精障害、精子数の減少、ED、精巣への影響などが報告されています(1.5〜2.9%で発症)。使用中の方は医師に相談してください。
その8:精巣を温めすぎないようにする!
精子を作る機能は熱に弱く、精巣の理想的な温度は35度台とされています(平均体温より約2度低い)。トランクスなど風通しのよい下着がおすすめです。自分の太腿の上でノートパソコンを置いての作業、サウナや長風呂は精巣に過剰な熱がかかるため避けた方がいいでしょう。
その9:太りすぎない
男性の肥満は男性ホルモンを減少させ、精液所見の低下や精子のDNAを損傷するという報告があります。顕微授精において、BMIが30以上の場合、生産率が大幅に低下します。肥満の方は、栄養バランスを考えながら体重管理に気を付けましょう。
精液所見の正常下限値(WHOマニュアル第6版2021による)
項目ごとの正常下限値はこちらです。
- 精液量(ml):1.4
- 総精子数(射精量当たり、百万個):39
- 精子濃度(百万/mL):16
- 総運動率(%):42
- 前進運動率(%):30
- 生存精子率(Vitality, %):54
- 正常形態率(%):4
男性の精子数は年齢の影響を受けにくいですが、運動精子数は低下します。精子のもとから精子になるまで約70日かかります。この期間の不摂生やストレスが精子所見に悪影響を及ぼすことがあります。
上記の数値はあくまで「最下限値」であり、「平均値」ではありません。妊娠したカップルの精液所見は、最下限値の約数倍であったと言われています。
男性不妊治療と鍼灸治療の可能性
男性不妊の原因の約8割が造精機能障害で、その半数以上が原因不明で明確な治療法が確立されていません。男性の精液の状態を改善することは、女性パートナーの不妊治療の負担軽減につながります。
鍼灸治療は、男性不妊に対して、精子数の増加と精子運動率の上昇があると報告されています。
男性不妊の治療、体質改善、タイミング法、人工授精、体外受精などでお悩みの方は、専門家にご相談ください。
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