月経痛
月経と月経の成り立ち
月経とは、通常1カ月間の間隔(25~38日)で起こり、限られた日数(3~7日)で自然に止まる子宮内膜からの周期的(周期ごとの変動が7日以上のものを不正周期と呼ぶ。)な出血をいいます。増殖期に肥厚した子宮内膜が排卵後の黄体から放出されるプロゲステロンの低下を契機に脱落膜化した子宮内膜が剥奪し月経となります。それは、性ステロイドホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の消退により子宮内膜が剥奪するために起こっている現象です。
《月経の成り立ち》
視床下部からゴナドトロピン放出(GnRH)がホルモンを分泌し、 その刺激により下垂体前葉からゴナドトロピン産生細胞に働き、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌される、FSHは卵巣の卵胞に作用し、LHは発育して成熟した卵胞に働いて排卵を促す。この間に、卵胞からエストラジオールが分泌され、排卵後の黄体化した卵胞からはプロゲステロンとエストラジオールが分泌される。プロゲステロンは子宮内膜に作用する。 これらのホルモンの周期的な変化により月経が作られている 女性の月経周期は 月経と排卵により四つの時期に区分される この区分は基礎体温卵巣子宮から見て表現法が異なり、月経から排卵までは低温相、卵胞期、増殖期と呼ばれ排卵を挟んで次回月経までは、高温期、黄体期、分泌期と表現される。高温期が維持されるのはプロゲステロンの作用である。
参考:日本産婦人科学会,編,産科婦人科用語集・用語解説集 2018:より改変
引用:http://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp/visitor/section/soc/infertility/index.html
引用:https://ameblo.jp/kazutom/entry-11000377238.html
月経の内容物:
月経の内容物は、血液、子宮内膜断片、粘液です。
暗赤色をしていて、流動性があり、弱アルカリ性の性質です。
内容物は、内膜結合組織中にあるプラスミン活性物質(血液凝固を抑制する酵素)によって、繊維素が溶かされて出てきます。
量が多い場合や、プラスミン活性物質の働きが鈍っているときは、
溶解が間に合わず、凝血が混じることがあります。
月経中にあらわれる症状:
月経の直前と月経中は、骨盤内にうっ血がおこり、
骨盤内臓器は充血します。
子宮体はやや肥大するため、
骨盤内神経は圧迫され、下腹部の重圧感、下腹部痛、腰痛、頻尿などの症状が出やすくなります。
その他、便秘、下痢、乳房の腫脹や疼痛、乳頭の過敏性などがみられます。
全身症状として、不快感、疲労感、頭痛、めまい、食欲減退、悪心、眠気、不眠、気分のむら、憂うつ感を感じやすくなります。
月経痛チェック:
出典:厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修
女性を悩ます月経困難症とは
月経困難症とは、月経直前や月経中に下腹部や腰痛といった疼痛を主症状とし、
その疼痛が病的状態のことを言います。
主に、下腹部痛、腰痛、腹部膨満、悪心、嘔吐、頭痛、下痢、脱力感、食欲不振、イライラなどの症状があります。
月経困難症は、
機能性月経困難症と器質性月経困難症とに分類されます。
・機能性月経困難症
骨盤内に器質的な原因がないのに月経困難症をきたすものです。
原因として、様々な説(心因説、内分泌説、子宮筋過強収縮説、頸管因子説、神経説、子宮後頸後屈説、子宮発育不全説)などがありますが、
最も有力とされているのはプロスタグランジン説です。
プロスタグランジンとは、
侵害受容器の感受性を高めて発痛増強作用を示す物質です。
人体の様々な組織や器官に存在し、子宮内膜にも存在しています。
いくつかの種類があり、その中でも「PGF2a」「PGE2」「PGE1」は、
子宮収縮を引き起こす作用をもっています。
このプロスタグランジンの分泌が過剰になると、
子宮が強く収縮し、子宮内圧が亢進するため、子宮筋が虚血性変化をおこし、
下腹部痛などの疼痛を引き起こすとされています。
このプロスタグランジンは、分泌期から月経期に産生されることが多いです。
・器質的月経困難症
続発性月経困難症とも呼ばれ、
骨盤内に器質的な原因がある場合のことをさします。
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮頸管狭窄、骨盤内の炎症や癒着、子宮奇形、子宮位置異常などがあります。
これらが認められた場合は、原疾患の治療が行われます。
東洋医学からみた月経痛
月経痛のことを、東洋医学では「痛経」といいます。
月経に伴う下腹部や腰の痛みのことをさします。
痛経の原因は「不通則痛(ふつうそくつう)」=「通ぜざれば則ち痛む」といい、
月経血が滞ることなく円滑に流出していれば痛経は発生しないとされています。
痛経には様々な要因がありますが、
寒湿によるもの、肝鬱によるもの、肝腎虚損によるものが多くみられます。
寒湿による痛経
月経期に体を冷やすことによって発症します。
寒いところに長時間いたり、水泳をして体を冷やしたり、湿気の多いところに住んでいるなどの環境にも影響を受けます。
さらに生ものや冷たい飲食の摂取も原因になります
(主な症状:下腹部の冷痛、圧迫すると痛みが悪化する、温めると軽減する、経血量が少ない、経血色は暗紫色、血塊が混在など)
肝鬱による痛経
情緒の変動により肝気がうっ血して気滞を生じてしまうと、経血が停滞して痛みを発症してしまいます。
(主な症状:下腹部の張りと痛み、月経がスムーズにこない、経血量は少ない、血塊が混在する、胸脇部や乳房の張痛み、など)
肝腎虚損による痛経
先天的に虚弱体質な方は生殖器系への滋養が悪くなり痛経が発症します。
(主な症状:下腹部がしくしくと痛む、圧迫すると痛みが軽減する、経血色は淡色、腰背部のだるさ痛み、めまい、耳鳴り、顔面蒼白など)
「瘀血(おけつ)」
東洋医学では、瘀血(おけつ)という言葉がよく使われます。
お腹の深部にある硬結のことを指し、「血」の滞りのことです。
特に女性におおく、月経に深く関係します。
「血」の滞りは、塊となって流れを悪くし、身体の機能を停滞、悪化させます。
瘀血(おけつ)の原因は、ストレスや冷え、運動不足、睡眠不足などと言われています。
瘀血(おけつ)のある状態は女性において、子宮や卵巣の機能を阻害し、不妊になりやすくしてしまいます。
この瘀血のある状態は、体内が酸性になることが関係しているとされています。
甘いもの(白砂糖)を多く含む食品を摂取すると酸性にかたむきやすくなります。
また、解熱鎮痛剤などの継続的な服用も瘀血に関係すると言われています。
「子宮や卵巣に病気はないし、鎮痛剤をのんで痛みがおさまるので問題ない」という考え方は危険です。
痛みを抑えるだけでは根本的な解決にならないのです。
月経を整えるために
月経トラブルは、ただ単に生理の問題であるのではなく、全身の問題の投影である場合がよくあります。
月経の状態を整えるために、全身の状態を整えることが必要です。
そのためには、体質を見極めることが一番大事です。
同じ症状の改善を狙っても人によって必要な治療方法が違います。
腎気を補い生命力をあげること
瘀血を落とし、血の巡りを整えること、
肝鬱を晴らしストレス状態を解消すること
気虚を救いエネルギー不足を回復させること、
脾気を補い胃腸の力をあげること、
などたくさんのアプローチ法があります。
※【免責事項】すべての方にあてはまるものではありません。効果の実感には個人差があります。