
東洋医学と西洋医学でみる「房事過多」が妊娠に与える影響
目次
房事過多が与える影響を東洋医学と西洋医学から徹底解説
◆ 房事過多とは
東洋医学における「房事(ぼうじ)」とは、性交渉を意味します。「房事過多」とは、性行為の頻度や量が、心身の許容量を超えている状態を指し、体内の「精(せい)」「血(けつ)」を過剰に消耗して、健康を害する原因になると考えられています。
特に妊活中の男女にとって、「性交渉は多いほど妊娠しやすい」と思われがちですが、東洋医学・西洋医学の両面から見ると、過剰な性交渉は妊娠の妨げになるリスクもあるのです。
女性の房事過多
● 血の消耗による不調
東洋医学では女性は「血を本とする」とされ、房事過多によって「血」が不足すると以下のような不調が現れます。
- 月経不順、経血量の減少または過多
- 顔色不良、めまい、ふらつき
- 倦怠感、冷え、不眠
- 子宮内膜の発育不良、不妊傾向
とくに月経中や直後、産後など「血虚」の状態での性交渉は、身体をさらに損耗させます。
● 腎精の消耗
「腎精(じんせい)」は生命力や生殖力の源とされ、腎精の消耗により以下のような変化が起こるとされます。
- 排卵障害
- 卵巣機能の低下
- 性欲減退、早発閉経の傾向
- 腰痛、耳鳴り、脱毛、骨粗しょう症傾向
● 肝の疏泄機能への影響
肝は血の貯蔵・気の流れの調節を担っており、房事過多はその機能を阻害します。
- 月経前症候群(PMS)の悪化
- 怒りっぽさ、情緒不安定
- 月経痛、胸の張り、頭痛
◆ 女性の房事過多を防ぐ生活の工夫
- 月経中、産後、過労時の性交渉は控える
- タイミング法を義務にしない
- パートナーと自然なコミュニケーションを保つ
- 妊娠のため“だけ”の行為にならないようにする
◆ 夜22時〜深夜2時は「血」が肝に戻る時間とされるため重要
この時間帯は「肝血」が戻り再生される時間とされ、この時間帯に就寝していることで、肝の働き・生理周期の安定・精神の安定が保たれると考えられています。
◆ 腎や肝を補い、気血の巡りを整える施術が有効とされる
鍼灸や漢方によって、房事過多によって損なわれた腎精や肝血を補うことが可能です。
- 漢方薬例:婦宝当帰膠、杞菊地黄丸、六味地黄丸など
- 鍼灸:肝腎を補い、気血の巡りを整えるツボを使用し、子宮環境・全身疲労の回復を図る
◆ 関連する経穴(ツボ)
ツボ | 主な作用 |
---|---|
関元(かんげん) | 腎を補い、精を蓄え、生殖力を高める |
三陰交(さんいんこう) | 肝・脾・腎の交会穴。婦人科疾患に広く有効 |
血海(けっかい) | 血を整え、瘀血・月経異常に対応 |
腎兪(じんゆ) | 腎機能の強化、性機能の回復、冷え対策に有効 |
【男性の房事過多】東洋医学的見解
● 基本的な考え方
男性は「精を本とする」とされ、性交渉における射精により腎精が消耗されると考えられています。房事過多は、腎の精気を弱らせ、生殖力・精神機能・体力すべてに影響します。
● 影響される臓腑と症状
臓腑 | 主な症状 |
---|---|
腎 | 性欲減退、ED、精子の質の低下、腰痛、脱毛 |
心 | 動悸、不安、不眠、集中力低下 |
肝 | イライラ、目の疲れ、筋のけいれん |
脾 | 倦怠感、下痢、免疫力低下 |
● 養生・対処法
- 射精間隔を1〜3日に保つ
- 黒豆・山薬・枸杞子など腎を補う食事
- 適度な運動と深い睡眠
- 鍼灸で命門・腎兪などを補い、性機能回復を図る
共通する考え:房事は「腎精」と「血」の消耗
東洋医学では、「精血同源(せいけつどうげん)」という考えのもと、精と血は互いに関係しあっています。性交渉の過多により、男女ともに「腎精」や「血」を消耗し、生殖力・内分泌・情緒・免疫のバランスが崩れると考えられます。
西洋医学から見た「性交過多」と妊娠への影響
◉ 男性の場合:精子の質と量に影響
- 連日の射精で精子濃度・運動率が低下。
WHOのガイドラインでは禁欲期間は2〜7日が最適。 - 精液所見の不安定化により妊娠率低下の可能性。
◉ 女性の場合:性交痛や膣内環境の悪化
- 膣内pHバランスの乱れにより細菌性膣炎のリスク増。
- 義務的な性交渉によるホルモンバランスへの悪影響。
妊活中の「ちょうどいい」性生活とは?
状況 | 推奨される性生活の目安 |
---|---|
排卵期 | 1〜2日おきで十分 |
精液所見に問題がある | 2〜3日禁欲後にタイミングを合わせる |
疲労・月経中・産後 | 休むことを優先 |
ストレスがあるとき | 性交より生活リズムの安定を優先 |
まとめ
性交渉は妊活に不可欠ですが、「多いほど良い」は誤解です。東洋医学では「腎精」「血」の消耗、西洋医学では「精子の質」や「膣環境」への悪影響が指摘されています。“質とバランス”を大切に、心身の状態に合わせた妊活を心がけましょう。
参考文献・資料
- WHO (2010). WHO Laboratory Manual for the Examination and Processing of Human Semen
- 陳自明『婦人大全良方』
- 『黄帝内経・素問』
- 『医心方』丹波康頼
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