
精液検査だけではわからない「男性不妊」の真実と知っておきたい検査内容
「不妊は、私(女性側)に問題があるから…」当院にお越しいただく多くの患者様が、そう思われていることに私たちは日々直面します。しかし、近年、メディアでも「男性不妊」が大きく取り上げられるようになり、その認知度は高まってきました。
それでも、残念ながら「精液所見で問題なければ大丈夫」と安心されている方が大半です。実は、精子の「量」や「動き」だけではわからない、精子の「質」にこそ、不妊の隠れた原因が潜んでいることがあります。
今回は、精液検査だけでは見逃されがちな男性不妊の真実と、知っておくべき検査の内容、そして鍼灸がどのようにサポートできるかについて詳しく解説します。
精液検査だけでは「見えない問題」:精子の質の重要性
従来の精液検査は、精子の「数(濃度)」、「運動率」、「形態」といった基本的な項目を評価します。これらの項目に問題がなければ、「男性側は大丈夫」と判断されがちでした。
しかし、近年では、精子のDNAの損傷度合いや、精子を取り巻く環境の酸化ストレスといった「精子の質」に着目した検査が注目されています。
精液検査ではわからない「精子の質」を測る検査
- DNA断片化指数(DFI)検査: 精子の核内DNAがどれくらい損傷しているかを測定。受精能力の低下や流産リスクの要因となる可能性。
- 酸化還元電位(ORP)検査: 精液中の「酸化ストレス」を測定し、精子へのダメージの程度を評価。
これらの検査は、なかなか妊娠に至らない場合や流産を繰り返すケースで、有力な手がかりとなります。なお大阪では導入施設が少ないですが、近隣府県にあるクリニックの利用も検討をおすすめします。
「妻だけが病院に通っている」ケースの落とし穴
当院には、奥様だけが病院に通い鍼灸にも来られているにも関わらず妊娠に至らないご夫婦が多くいらっしゃいます。詳しく伺うと、ご主人に原因があるケースが非常に多いです。これは、精液所見だけでは判断できない「精子の質」やその他見逃されがちな原因が背景にあるためです。
ですが、中には「病院に行くのは抵抗がある」「自分は問題ないはず」と受診を拒むご主人もいらっしゃいます。大切なのは夫婦で協力し、正しい知識を持って向き合うことです。
男性不妊の「検査内容」を詳しく知る
男性不妊を調べるには、基本的な精液検査だけでなく、以下のような検査が重要です。
1. 精液検査(基本検査)
- 濃度、運動率、量、pH、奇形率、白血球数などを評価。
- 乏精子症: 1mlあたり1,600万個未満。
- 精子無力症: 総運動率42%未満または前進運動率30%未満。
- 奇形精子症: 正常形態率が4%未満。
2. 尿検査
前立腺や尿路感染症などが精子に影響する可能性のある異常を調べます。
3. ホルモン検査(血液検査)
テストステロン、LH、FSHの数値でホルモンバランスを評価し、精子形成への影響をチェックします。
4. 超音波(エコー)検査
- 精索静脈瘤: 精巣静脈の逆流による温度上昇や精子形成障害。男性不妊の約40%に関連。
- 閉塞性/非閉塞性無精子症: 精管詰まりや精子作られ方の問題など。
- 膿精液症: 精液中の白血球過多による炎症。
クリニックへの抵抗がある場合の「第一歩」
- フーナーテスト: 婦人科でタイミング後の精子の生存状況を調べる検査。
- 自宅採精: 家で採精して奥様がクリニックに持参するので、心理的負担が少ない。
鍼灸治療は「男性不妊」にも有効な症状が多くあります
不妊治療には、医療に加えて生活習慣の見直しと心身のバランスが重要です。鍼灸はその両面からサポートできます。
- 精子の質向上: 精巣への血流改善により、精子形成に必要な環境を整えます。
- 酸化ストレスの軽減: 自律神経の調整でストレス緩和、DNAダメージの軽減をサポート。
- ホルモンバランスの調整: 自律神経・内分泌系に働きかけ、精子形成に関与。
- 精巣の温度管理: 精索静脈瘤などの温度上昇対策として、代謝や循環を促進。
- リラックス効果: ストレス軽減と質の高い睡眠を促進し、全身コンディションを改善。
当院では、ご夫婦での通院がとても多く、協力して妊活に取り組むことが妊娠への近道だと実感しています。
「精液検査では問題ないけれど不安」「夫の協力が得られない」「鍼灸で何ができるか知りたい」――どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
📚参考文献
- orld Health Organization. (2021). WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen (6th ed.). Geneva: WHO.
- 日本泌尿器科学会. (2024). 男性不妊症診療ガイドライン2024年版
- 岡田弘. (2019). 加齢と精子力. 臨床泌尿器科, 73(13), 1007-1010.
- NHK クローズアップ現代. (2018年2月6日放送). 男にもタイムリミットが!?~精子“老化”の新事実~
男性不妊の検査や治療について、ご不明点・ご不安があればいつでもご相談ください。私たちはご夫婦の妊活を全力でサポートいたします。