
内膜が薄くなる理由は?5mmでも移植・妊娠できる?
「移植日、内膜が薄くなったと言われた」
「排卵後に内膜が薄くなったけれど、大丈夫?」
「子宮内膜が5mmしかないと言われて、移植しても意味があるのか不安」
胚移植を控えている時期に、このように言われると、とても心配になりますよね。
ただ、移植前や排卵後に子宮内膜が少し薄く見えることには、必ずしも悪い意味だけがあるわけではありません。黄体ホルモンの影響で内膜が引き締まって見える生理的な変化のこともあれば、もともと内膜が育ちにくい背景が関係していることもあります。
この記事では、移植日に内膜が薄くなった理由、排卵後に内膜が薄くなるのは異常なのか、子宮内膜が5mmでも移植・妊娠の可能性はあるのかについて、できるだけわかりやすく整理して解説します。
- 移植日や排卵後に内膜が少し薄く見えるのは、黄体ホルモンの影響による生理的変化のことがあります。
- この変化は「子宮内膜コンパクション」と呼ばれることがあります。
- ただし、内膜が薄くなった方が妊娠しやすいとまでは、現時点では断定できません。
- 子宮内膜が7mm未満の場合、妊娠率や生児獲得率が下がる傾向はありますが、5〜6mm台でも妊娠・出産に至る例は報告されています。
- 内膜の厚さだけでなく、測定したタイミング、ホルモン環境、胚の状態、子宮内の状態も大切です。
- 「5mmだから絶対に無理」と決めつけるのではなく、まずは主治医と一緒に「なぜ薄いのか」を整理することが大切です。


目次
移植日に内膜が薄くなったのはなぜ?
黄体ホルモンの影響で、内膜が引き締まって見えることがある
移植前、特に排卵後やプロゲステロン製剤を開始した後に、子宮内膜が前回の診察時より少し薄く見えることがあります。
これは近年、endometrial compaction(子宮内膜コンパクション)として報告されている現象です。
簡単にいうと、排卵前にエストロゲンの影響で厚くなった内膜が、排卵後に黄体ホルモンの影響を受けて、着床に向けた状態へ変化していく中で、超音波上の厚みが少し減って見えることがあります。
そのため、「移植日に内膜が薄くなった=必ず悪い」とは限りません。
特に、排卵後や黄体ホルモン開始後に少し薄くなった場合は、異常ではなく、生理的な変化の範囲である可能性もあります。
ただし「薄くなった方が良い」とは言い切れない
ここで大切なのは、子宮内膜コンパクションと妊娠率・出生率の関係については、まだ研究結果が一致していないという点です。
内膜が少し引き締まる変化が良好な妊娠成績と関連するとした報告もありますが、一方で、妊娠率や出生率に明らかな差はなかったとする報告もあります。
つまり、移植日に内膜が薄くなったから「大丈夫」とも、「もう可能性が低い」とも、それだけでは判断できません。
内膜の厚さは大切な情報のひとつですが、胚の状態、ホルモン値、移植周期の方法、これまでの経過などを含めて総合的に判断する必要があります。
排卵後に内膜が薄くなるのは異常?
排卵後は「厚くする時期」から「着床に向けて整える時期」へ変わる
排卵前の子宮内膜は、エストロゲンの作用によって増殖し、厚みを増していきます。
一方、排卵後はプロゲステロンの作用が強くなり、内膜は「さらに厚くなる段階」から「受精卵を受け入れる準備を整える段階」へ変わります。
この変化の中で、超音波検査上、内膜が少し薄く見えることがあります。
そのため、排卵後に内膜が薄くなったからといって、すぐに異常と決めつける必要はありません。
ただし、排卵前の時点から内膜がかなり薄い場合や、毎周期のように内膜が育ちにくい場合は、別の背景がないか確認しておくことが大切です。
子宮内膜5mmと言われたら、移植や妊娠は難しい?
一般的には7mm未満で不利になりやすい
体外受精や凍結胚移植では、子宮内膜が薄いほど妊娠率や生児獲得率が下がる傾向があるとされています。
特に、7mm未満の内膜は「薄い内膜」として扱われることが多く、妊娠にとって不利な条件のひとつと考えられています。
そのため、子宮内膜が5mm前後と言われた場合、不安になるのは自然なことです。
5mm台でも妊娠・出産の可能性がゼロになるわけではない
一方で、子宮内膜が5〜6mm台でも妊娠・出産に至った例は報告されています。
つまり、5mmだから絶対に妊娠できない、移植しても意味がない、というわけではありません。
もちろん、内膜が十分に厚い場合と比べると不利になる可能性はあります。しかし、妊娠の可否は内膜の厚さだけで決まるものではありません。
胚のグレードや染色体の状態、ホルモン環境、移植のタイミング、子宮内の炎症や癒着の有無など、さまざまな要素が関係します。
そのため、主治医が移植を実施すると判断した場合は、内膜の厚さだけでなく、全体の条件を踏まえて判断していることが多いです。
子宮内膜が薄くなる・育ちにくい原因
「内膜が薄い」といっても、原因はひとつではありません。考えられる背景には、次のようなものがあります。
1. 排卵後や黄体ホルモン開始後の生理的変化
排卵後やプロゲステロン開始後は、内膜が着床に向けて変化する時期です。
この時期に内膜が少し薄く見える場合、子宮内膜コンパクションのような生理的変化が関係していることがあります。
2. ホルモン環境の影響
子宮内膜は、主にエストロゲンによって厚みを増し、プロゲステロンによって着床に適した状態へ成熟していきます。
エストロゲンの作用が十分でない場合や、ホルモン補充の反応が弱い場合、内膜が十分に厚くならないことがあります。
3. 子宮内の炎症や癒着
慢性子宮内膜炎、子宮内癒着、過去の掻爬術や子宮内手術の影響などにより、内膜が育ちにくくなることがあります。
特に、流産手術や子宮内処置の既往がある場合、必要に応じて子宮鏡検査などで子宮内の状態を確認することがあります。
4. 子宮周囲の血流低下
子宮や内膜への血流が十分でないことが、内膜の発育に関係する可能性も指摘されています。
ただし、血流だけで内膜の厚さや妊娠率が決まるわけではありません。冷えやストレス、睡眠不足などを整えることは体調管理として大切ですが、それだけで内膜が必ず厚くなるとは言い切れません。
5. 移植周期の方法が合っていない
ホルモン補充周期、自然周期、排卵誘発を併用する周期など、内膜の準備方法はいくつかあります。
ある周期では内膜が育ちにくくても、別の準備方法で反応が変わることがあります。繰り返し内膜が薄い場合は、移植周期の方法を見直すことが検討されることもあります。
薄い内膜と言われたときに確認したいこと
いつ測った厚さなのか
内膜の厚さは、測定した時期によって意味が変わります。
排卵前に薄いのか、排卵後に薄くなったのか、黄体ホルモンを開始した後に薄く見えたのかで、解釈は異なります。
「何mmだったか」だけでなく、「いつの時点で何mmだったか」を確認することが大切です。
今回だけ薄いのか、毎周期薄いのか
今回だけ内膜が薄く見えた場合は、測定誤差や一時的な変化、生理的なコンパクションの可能性もあります。
一方で、毎周期のように内膜が薄い場合は、ホルモン環境、子宮内の炎症や癒着、移植周期の方法などを見直す必要があるかもしれません。
移植を実施する判断なのか、中止する判断なのか
内膜が薄い場合でも、すぐに移植中止になるとは限りません。
主治医が移植を進める場合は、胚の状態、ホルモン環境、移植日までの経過を含めて総合的に判断していることが多いです。
逆に、何度も内膜が薄く移植に進めない場合は、薬の使い方、周期の選び方、子宮内評価などを相談してみるとよいでしょう。
子宮内膜が薄いときにできる対策はある?
まずは主治医と原因を整理することが最優先
薄い内膜への対応としては、エストロゲン投与の方法や期間の調整、移植周期の変更、子宮内の検査、慢性子宮内膜炎の確認などが検討されることがあります。
ただし、「これをすれば必ず内膜が厚くなる」という方法が確立しているわけではありません。
インターネット上にはさまざまな情報がありますが、自己判断で薬やサプリメントを増やしたり、治療方針を変えたりするのは避けましょう。
まずは主治医と一緒に、今回の内膜の薄さが一時的な変化なのか、毎周期続く問題なのか、子宮内の状態に原因がありそうなのかを整理することが大切です。
生活面では「血流・睡眠・冷え・ストレス」を整える
自分でできることとしては、体を冷やしすぎない、睡眠を整える、無理なダイエットを避ける、強いストレスを抱え込みすぎないことが基本になります。
これらを行えば必ず内膜が厚くなるというわけではありませんが、移植に向けて体調を整えるという意味では大切です。
特に移植前は、結果への不安から睡眠が浅くなったり、体に力が入りやすくなったりする時期です。できるだけ「完璧にしなければ」と考えすぎず、無理なく続けられるケアを選びましょう。
鍼灸は補助的なケアとして考える
鍼灸については、血流や自律神経、ストレス面への作用を期待して取り入れる方もいます。
ただし、鍼灸によって内膜が必ず厚くなる、妊娠率が必ず上がると断定することはできません。
一方で、移植に向けた時期は心身の緊張が強くなりやすいため、体調管理やリラックスの一環として、補助的に取り入れる考え方はあります。
不妊治療と並行して鍼灸を受ける場合は、治療スケジュールや体調に合わせて、無理のない範囲で行うことが大切です。
まとめ
「移植日に内膜が薄くなった」「排卵後に内膜が薄くなった」と言われても、すぐに悲観しすぎる必要はありません。
黄体ホルモンの影響による子宮内膜コンパクションのように、生理的な変化であることもあります。
一方で、子宮内膜が5mm前後の場合、一般的には妊娠にとって不利な条件になりやすいと考えられます。7mm未満では妊娠率や生児獲得率が下がる傾向も報告されています。
ただし、薄いからといって妊娠の可能性がゼロになるわけではありません。
大切なのは、「今回の薄さは生理的変化なのか」「もともと内膜が育ちにくい背景があるのか」を主治医と一緒に整理することです。
内膜の厚さだけでなく、測定したタイミング、ホルモン環境、胚の状態、子宮内の状態も含めて考えることが、納得のいく移植につながります。
Q1. 移植日に内膜が薄くなったと言われたら、移植は中止になりますか?
必ずしも中止になるわけではありません。
子宮内膜の厚さだけでなく、胚の状態、ホルモン環境、これまでの経過を含めて総合的に判断されます。
排卵後や黄体ホルモン開始後であれば、生理的な変化として内膜が少し薄く見えることもあります。まずは主治医に、移植を進める理由や中止を検討する基準を確認してみましょう。
Q2. 子宮内膜が5mmだと、妊娠はかなり難しいですか?
一般的には、子宮内膜が薄いほど妊娠率や生児獲得率は下がる傾向があります。
ただし、5mm台でも妊娠・出産に至る例は報告されており、絶対に無理というわけではありません。
厚さだけで結果が決まるわけではないため、不安になりすぎず、胚の状態やホルモン環境、子宮内の状態も含めて考えることが大切です。
Q3. 排卵後に内膜が薄くなるのは異常ですか?
排卵後は、黄体ホルモンの影響で内膜が着床に向けて変化する時期です。
そのため、少し薄く見えること自体が、すぐに異常とは限りません。
ただし、排卵前から内膜がかなり薄い場合や、毎周期同じように指摘される場合は、背景に別の原因がないか確認したほうが安心です。
Q4. 内膜が薄い原因にはどのようなものがありますか?
原因としては、ホルモン環境の問題、子宮内の炎症や癒着、過去の手術の影響、血流低下、移植周期の方法が合っていないことなどが考えられます。
また、移植前後の時期であれば、黄体ホルモンによる生理的変化で一時的に薄く見えていることもあります。
原因はひとつとは限らないため、測定した時期や過去の経過も含めて確認することが大切です。
Q5. 内膜が薄いと言われたとき、自分でできることはありますか?
まず大切なのは、自己判断だけで対策を進めず、主治医と原因を整理することです。
そのうえで、冷え、睡眠不足、強いストレス、無理なダイエットなど、体調に影響しやすい要素を見直すことは、無理のない範囲で役立つことがあります。
鍼灸を取り入れる場合も、妊娠率を断定的に高めるものとしてではなく、体調管理を支える補助的なケアとして考えるのが自然です。
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📚参考文献
- Al-Lamee H, et al. Endometrial compaction to predict pregnancy outcomes in women undergoing assisted reproductive technology treatment: a systematic review and meta-analysis. Human Reproduction Open. 2024.
子宮内膜コンパクションと妊娠成績の関係を検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。内膜が薄く見える変化が臨床妊娠率や継続妊娠率と関連する可能性は示されていますが、生児出生率との明確な関連までは確認されていません。 - Al-Lamee H, et al. Endometrial compaction to predict pregnancy outcomes in women undergoing assisted reproductive technology treatment. PubMed. 2024.
上記論文のPubMedページです。子宮内膜コンパクションについて、臨床妊娠率・継続妊娠率・生児出生率との関連を確認する際に参考になります。 - Mumusoglu S, et al. Preparation of the Endometrium for Frozen Embryo Transfer: A Systematic Review. Frontiers in Endocrinology. 2021.
凍結胚移植における内膜準備法についてまとめたレビューです。自然周期、ホルモン補充周期、黄体ホルモン開始のタイミングなど、移植前の内膜環境を考えるうえで参考になります。 - Mumusoglu S, et al. Preparation of the Endometrium for Frozen Embryo Transfer. PubMed. 2021.
上記レビューのPubMedページです。凍結胚移植に向けた内膜準備法や、移植周期ごとの違いを確認する際に参考になります。 - Dokras A. Endometrial lining in assisted reproductive technology: How thin is too thin? Fertility and Sterility. 2022.
生殖補助医療において「子宮内膜はどの程度薄いと不利になるのか」を解説した論文です。内膜が6〜7mm未満の場合、妊娠成績が低下しやすい可能性がある点を考えるうえで参考になります。 - Canadian Fertility and Andrology Society. Management of thin endometrium in assisted reproduction. 2019.
生殖補助医療における薄い子宮内膜への対応をまとめた臨床ガイドラインです。内膜が薄い場合の妊娠率・出生率への影響や、治療方針を検討する際の考え方が整理されています。 - Mahajan N, Sharma S. The endometrium in assisted reproductive technology. 2016.
生殖補助医療における子宮内膜の役割について解説したレビューです。薄い内膜が問題となる頻度や、内膜の受容性、ホルモン環境との関係を理解するうえで参考になります。 - Smith CA, et al. Effect of Acupuncture vs Sham Acupuncture on Live Births Among Women Undergoing IVF: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018.
IVFを受ける女性を対象に、鍼治療とシャム鍼を比較したランダム化比較試験です。生児出生率に有意差は示されておらず、鍼灸を妊娠率向上と断定せず、補助的なケアとして説明する際の参考になります。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
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