治療院ブログ

着床不全 習慣性流産 不育症の免疫療法について

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夫リンパ球移植療法について

 

患者さまから質問を受け、調べてみました。

 

過去にリンパ球移植の実践について議論されていましたが、現在はその実施が少なくなっており、関連する情報もまた少なくなっています。しかしながら、限られた情報の中でも正確性や信頼性が保証されるわけではありません。特に、2002年に米国FDAが全面的に禁止したため、すべての情報が正確であるとは限らないことをご理解ください。信頼できる情報を元に判断することは重要ですが、それでも最終的な判断はご自身でお願いします。

 

リンパ球移植に関して肯定的な文献を探る中で、「実践臨床免疫学」という中外医学者の著作を発見しました。そこには、柴原浩章先生(兵庫県医科大学産婦人科学講座主任教授)による「夫リンパ球移植療法」が掲載されています。この記事を参考に、リンパ球移植に関する内容を要約しました。

 

参考文献

柴原浩章 (2018). 「夫リンパ球移植療法」. 実践臨床免疫学. 中外医学者, 363-366.

 

 

【要約】

妊娠という現象は、母体の免疫システムの視点から見ると非常に興味深いものです。通常、体は外部からの異物や移植物を攻撃しようとしますが、妊娠中の母体は、胎児や胎盤(これはある意味で異物と見なされる)を攻撃しないように特別な免疫応答を持っています。

 

その特別な免疫応答には、T細胞と呼ばれる免疫細胞が関与しており、特に「1型ヘルパーT細胞」と「2型ヘルパーT細胞」のバランスが重要です。そして最近では、調節性T細胞という別の種類のT細胞もこのプロセスに関与していることがわかっています。

 

しかしながら、この免疫応答が正しく機能しないと、何度も流産を繰り返す「習慣流産」という状態になることがあります。そのため、過去には「夫リンパ球移植療法」という治療法が提案され、これは夫から採取したリンパ球を妻に移植することで、母体の免疫応答を調整しようというものです。

 

妊娠と母体の免疫系の関係

胎児や胎盤は母体の免疫系から通常は排除される可能性がありますが、特定の保護機構によって正常に成長します。この機構が不十分な場合、習慣的な流産のリスクが高まります。

 

夫リンパ球移植療法について

この治療は、妊娠の免疫的保護機構が失敗した際に、夫から採取されたリンパ球を母体に移植することで、母体の免疫反応を調整し、妊娠を成功させる目的で提案されています。

この治療法の効果については賛否がありましたが、いくつかの研究では、特定の条件下で有効であるとの結果が示されています。特に、免疫療法の前に「遮断抗体活性」という指標を用いて患者を選択することで、良好な治療結果を得ることができるとされています。

 

治療の適用条件

具体的には、著者らの施設で行われた治療では、免疫療法を受けた140人の患者のうち、78.6%が成功した妊娠を経験しました。一方、免疫療法を選択しなかった18人の患者の中で、成功した妊娠を経験したのは30.0%だけでした。この結果は統計的に有意であり、免疫療法が習慣流産に対して効果的である可能性を示唆しています。

1980年代初頭に初めて提案されたこの治療には、過去の研究で賛否両論の結果がありました。しかし、最近の研究や実績により、リンパ球を3回接種すると、ほとんどのケースで遮断抗体活性が認められ、特定の条件(例:3回以上の初期流産、原因不明、遮断抗体活性が陰性、夫の感染症テストが陰性)を満たす人々には効果があることが明らかになっています。特に、40歳未満の方が主な治療対象で、40歳以上の方には効果が少ないとされています。

 

筆者たちの実績と注意点

筆者たちの病院のデータによると、原発性や続発性習慣流産の患者に対して良好な治療結果が得られています。しかし、この治療は輸血療法の一種であるため、治療を行う際は患者の安全性を確保するための特定の条件や手続きが必要です。

 

全体として、夫リンパ球移植療法は習慣的流産に悩む女性の一つの治療法として有望であるものの、その適用や治療の手順には慎重な判断が必要であることを強調しています。

 

 

治療法は輸血の一種とみなされるため、その実施には十分な注意と慎重さが求められます。

 

要するに、妊娠とは母体の免疫システムと胎児の関係がキーとなる現象であり、そのバランスが崩れると流産のリスクが上がる可能性がある。そのため、特定の条件下で免疫療法は習慣流産の治療法として有効であると考えられています。

 

文献

1) Wegmann TG. Placental immunotrophism: Maternal T cells enhance placental

growth and function. Am J Reprod Immunol. 1987; 15: 67-70.

OFI

2) Raghupathy R. Th1-type immunity is incompatible with successful pregnancy.

Immunol Today. 1997; 18:478-82.

3) Shima T, Inada K, Nakashima A, et al. Paternal antigen-specific proliferating

regulatory T cells are increased in uterine-draining lymph nodes just before

implantation and in pregnant uterus just after implantation by seminal plasma-

Spriming in allogeneic mouse pregnancy. J Reprod Immunol. 2015; 108: 72-82.

4) Beer AE, Quebbeman JF, Ayers JWT, et al. Major histocompatibility complex

antigens, maternal and paternal immune responses, and chronic habitual

abortions in humans. Am J Obstet Gynecol. 1981; 141:987-99

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