
体外受精 胚移植後の過ごし方【安静?それとも普段通り?】
「胚移植後、どう過ごしたらいいの?」「何に気をつけたらいいの?」
体外受精で妊娠を望む多くの方が抱える疑問です。SNSでは様々な体験談が飛び交い、「こうしたら妊娠できた!」という情報に一喜一憂することもあるでしょう。一方で、クリニックによって「安静に」という指示もあれば、「普段通りで大丈夫」と言われることもあり、一体どうすれば良いのか迷ってしまいますよね。
実際のところ、胚移植後の過ごし方で最も大切なのは、心身にストレスをかけず、穏やかに過ごすことです。
「普段通りの生活」の本当の意味
クリニックで「普段通りの生活で大丈夫」と言われたとき、「普段通りって何?」と疑問に思う方も少なくありません。ここで言う「普段通りの生活」とは、具体的に以下の2点を指します。
- 今までしていなかった新しいことを始めない
- 自分にとって無理のない、日常的な生活リズムを保つ
例えば、急に激しい運動を始めたり、今まで摂っていなかったサプリメントや特別な食事を急に取り入れたりするのは、「いつも通り」ではありません。「着床のために何か特別なことをしなきゃ!」と焦る気持ちはよく分かりますが、それがかえってストレスとなり、逆効果になる可能性もあるのです。
着床には「ストレスをかけない生活」が不可欠
移植後は、期待と不安からどうしても神経が敏感になりがちです。
- 「お腹がチクチクする…これは着床のサイン?」
- 「少し出血があるけど、着床出血かな?」
- 「下腹部が冷えている気がする…」
こうした体の小さな変化にも過敏になり、すぐにインターネットで検索してしまう…という経験は、妊活中の方なら誰でも心当たりがあるでしょう。しかし、この「不安」こそが、体にとっては大きなストレスとなってしまいます。
❌ストレスが体に与える影響
ストレスがかかると、自律神経の中でも交感神経が優位になります。これにより、筋肉が緊張し、血流が悪くなります。血流の滞りは、着床にとって望ましくない様々な影響を引き起こします。
- 子宮や卵巣への酸素や栄養の供給が滞る
- ホルモン分泌の乱れを引き起こす
- 結果として、着床しづらくなる可能性が高まる
- 精神的な不安が増しやすくなる
また、胎児への酸素や栄養供給にも影響が出るとされており、ストレス管理は移植後だけでなく、妊娠を継続していく上でも非常に重要な要素となります。
鍼灸によるストレス軽減と妊娠率の向上
「何もしていないと不安になる」「リラックスしたいけど、どうすれば良いか分からない」
そんな時こそ、鍼灸の出番です。当院では、胚移植後の鍼灸施術において、特に以下の2点に重点を置いています。
- 着床しやすい環境をつくる
- ストレス軽減と骨盤内の血流改善
実際に、施術を受けられた方からは「安心できた」「リラックスできた」というお声を多くいただきます。判定日までの長く感じる時間を、できるだけ穏やかな気持ちで過ごしていただけるよう、心身両面からサポートしています。
複数の研究でも、鍼灸がストレス軽減に有効であるという報告が多数あります。
📝ストレス軽減効果を示す研究結果
「ART(体外受精)の成績とストレスの関連性については、負の相関がみられるという報告が多く、ストレスの強さやストレスに対する脆弱性は IVF−ET後の妊娠の不成立と関連すると報告されている。鍼灸はストレスホルモンの1つである血清コルチゾールとプロラクチンの分泌を調整し、体外受精、胚移植の結果を改善し妊娠率を増加することを示している。」
(引用:田口玲奈 女性心身医学 JJpSocPsychesomObstetGynecol Vol 20, No.3, pp.302−307,(平成2年3月))
「鍼灸治療は、体外受精を行う女性にとって、生殖予後を改善するものとして利用されており、不安を軽減する可能性を示唆する研究結果もあります。(中略)鍼灸は胚移植時の不安を軽減する可能性がある。」
(引用:Acta Obstet Gynecol Scand 2019 Apr;98(4):460-469. doi: 10.1111/aogs.13528. Epub 2019 Jan 20.)
まとめ
胚移植後は、何か特別なことを始めるよりも、「今の自分の心と体を整える」ことが最も大切です。不安な気持ちを抱えやすい時期だからこそ、心身のバランスを整え、リラックスして過ごすことが、着床への一番の近道と言えるでしょう。
当院では、皆さまの妊娠という目標に向けて、心と身体のサポートをさせていただきます。胚移植後の過ごし方について、疑問や不安があればいつでもご相談ください。