
高齢妊娠と出生前診断:知っておくべきこと、夫婦で考えるべきこと
「40代での妊娠を考えているけれど、出生前診断は受けた方がいい?」
「周りの人はどうしているんだろう…赤ちゃんに異常があったらどうしよう…」
当院にも、高齢で妊娠された方、あるいは妊娠を希望されている方から、出生前診断に関するご相談が数多く寄せられています。特に「出生前診断 高齢」というキーワードで検索されている方は、多くの不安を抱えていることと思います。
高齢妊娠において、染色体異常のリスクが増加することはよく知られており、それに伴い出生前診断への関心も高まっています。しかし、この検査を受けるかどうかは、非常にデリケートで個人的な選択です。
この記事では、最新の知見と複数の情報源に基づき、高齢妊娠における出生前診断について、その種類、リスク、そして何よりも夫婦で話し合うべき重要なポイントを詳しく解説します。
高齢妊娠と染色体異常のリスク
女性の年齢が上がるにつれて、卵子の老化が進み、それに伴い染色体異常を持つ受精卵ができる確率が高まることが医学的に確立されています。特に、ダウン症候群(21トリソミー)のリスクは、年齢とともに顕著に上昇します。
例えば、国立成育医療研究センターの資料によると、35歳でのダウン症候群の確率は約1/378、40歳では約1/106、45歳では約1/30とされています。これはあくまで確率であり、高齢出産でも健常な赤ちゃんが生まれるケースがほとんどですが、こうした確率的な情報は、多くの夫婦にとって出生前診断を検討するきっかけとなります。
出生前診断を受ける前に夫婦で話し合うべき「究極の選択」
出生前診断を受けるかどうかの検討において、最も重要であり、かつ最も難しいのが「もし赤ちゃんに異常が見つかった場合、どうするのか?」という問いです。
- 産むことを選択するのか?
- 産まないことを選択するのか?
この問いに対する答えは、ご自身の倫理観、価値観、家族構成、経済状況、そして夫婦それぞれの考え方によって大きく異なります。検査を受けてから意見が分かれ、夫婦関係に亀裂が入るケースも少なくありません。
「異常があっても、どんな状況であれ産み育てる」という強い意思があるならば、必ずしも侵襲的な検査を受ける必要はないかもしれません。一方で、「もし異常が判明したら、中絶も選択肢として考える」というのであれば、検査の必要性が高まります。
また、高齢であることによるご自身の健康や将来を考えて、産まない選択をされる方もいらっしゃいます。若ければ受け入れられることも、年齢を重ねることで異なる選択をすることもありますが、その選択は決して悪いものではありません。
まずはご自身の考えを整理し、その上で夫婦で率直に、そして時間をかけて話し合うこと。このプロセスこそが、出生前診断を検討する上で最も大切です。 決断は急がず、納得いくまで話し合いましょう。
出生前診断の主な種類と特徴
現在、日本で行われている主な出生前診断には、いくつかの種類があります。それぞれ検査の時期、検出できる内容、精度、胎児へのリスクが異なります。
1. NIPT(新型出生前診断:無侵襲的出生前遺伝学的検査)
- 検査方法: 妊婦さんの血液を採取するだけで、胎児への直接的なリスクは全くありません。
- 検査時期: 妊娠10週頃から受けることが可能です。
- わかること: 胎児由来のDNA断片を解析することで、主に21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)といった主要な常染色体トリソミーの可能性を高い精度で調べることができます。施設によっては、性染色体異数性や微細欠失症候群なども検査対象となる場合があります。
- 特徴: スクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性の結果が出た場合は、確定診断のための羊水検査などを検討することになります。NIPTを実施する施設は、日本医学会の「NIPT等の出生前遺伝学的検査に関する専門委員会」が定めた指針に基づき、遺伝カウンセリングの実施体制を整えている医療機関に限られています。
2. 羊水検査(羊水染色体検査)
- 検査方法: 超音波(エコー)で胎児の位置を確認しながら、細い針をお腹から刺し、子宮内の羊水の一部を採取して検査します。
- 検査時期: 一般的に妊娠15週以降に行われます。
- わかること: 採取した羊水中の胎児細胞から、ほぼすべての染色体異常を確定的に診断できます。
- 特徴: 確定診断ですが、約0.1%〜0.3%程度の流産リスクが伴います。経験豊富な医師が行うことでリスクは抑えられますが、ゼロではありません。
3. 絨毛検査(絨毛染色体検査)
- 検査方法: 超音波(エコー)で胎盤の位置を確認しながら、細い針をお腹から刺し、胎盤の一部である絨毛組織を採取して検査します。
- 検査時期: 妊娠11〜14週頃と、羊水検査よりも早い時期に実施可能です。
- わかること: 羊水検査と同様に、ほぼすべての染色体異常を確定的に診断できます。
- 特徴: 確定診断ですが、羊水検査よりもやや高い約0.5%程度の流産リスクが伴うとされています。
4. 超音波(エコー)検査
- 検査方法: 妊婦健診で行われる通常の超音波検査です。
- 検査時期: 妊娠週数に応じて、様々な目的で行われます。特に、初期(妊娠11~13週頃)のNT(Nuchal Translucency:胎児の首の後ろのむくみ)測定や、中期(妊娠20週頃)の精密超音波検査(胎児スクリーニング検査)は、染色体異常の可能性や、形態的な異常(心臓、脳、臓器など)の有無を間接的に評価する手がかりとなります。
- わかること: 染色体異常を確定するものではなく、あくまでも異常の可能性を示す間接的な指標や、形態異常の発見が主な目的です。
- 特徴: 胎児へのリスクは全くありません。しかし、クリニックによって検査の実施状況や、どこまで詳しく見るかの方針が異なります。
まとめ
高齢での妊活は、多くの喜びとともに、様々な不安も伴うことでしょう。出生前診断を受けるかどうかは、ご夫婦にとって大きな決断であり、正解は一つではありません。
大切なのは、ご自身とパートナーが納得できる選択をすることです。そのためにも、検査の種類やリスク、得られる情報について正しい知識を持ち、そして夫婦でしっかりと話し合い、お互いの価値観を理解し尊重することが不可欠です。
当院では、妊活中の皆様が抱える心身のケアを多角的にサポートしています。不安や疑問に寄り添い、鍼灸を通して体質改善やリラックス効果を促すことで、安心して妊娠期間を過ごせるようお手伝いします。
出生前診断に関する不安や、妊活に関するお悩みがあれば、いつでもお気軽にご連絡・ご相談ください。
📚参考文献
- 国立成育医療研究センター 胎児診断部門. 胎児診断について.
- 日本医学会 NIPT等の出生前遺伝学的検査に関する専門委員会.
高齢妊娠における出生前診断。それは、新たな命を迎えるための大切な選択の一つです。ご夫婦でじっくり話し合い、納得のいく答えを見つけてくださいね。