妊活と鉄分 鉄分不足が引き起こす症状と鉄分を多く含む食材
目次
妊活と鉄分:貯蔵鉄の役割と不足による影響
妊活中の女性にとって、鉄分の重要性を改めて理解することは非常に重要です。鉄分は、エネルギーを作るために必要な酸素を全身に運ぶ役割を持つヘモグロビンの材料となるだけでなく、卵子の健康にも関与しています。ここでは、体内の鉄分の働きやその不足が妊娠にどのような影響を与えるかについて詳しく見ていきましょう。
鉄分の働きとフェリチンの役割
体内にある鉄分の約60〜70%は、ヘモグロビンとして血液に含まれており、酸素を全身に供給する大切な役割を果たしています。残りの20〜30%は「フェリチン」という形で肝臓や脾臓、骨髄に貯蔵されています。この貯蔵鉄は、体が酸素不足や出血などで鉄が不足したときに補うためのストックです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人女性(18〜49歳)に推奨される鉄の摂取量は、月経の有無により異なり、月経のある女性は10.5mg/日とされています。これは、毎月の月経により鉄が失われやすいことを反映した基準です。この摂取量を意識することで、鉄分不足を防ぎやすくなります。
隠れ貧血と妊娠の関連性
鉄分が不足すると、体はまずヘモグロビンの鉄を維持するために、貯蔵鉄であるフェリチンを優先的に消費します。しかし、フェリチンが減少し続けると、ヘモグロビン値は正常でも「隠れ貧血」という状態に陥ります。これは血液検査で発見されにくい貧血の一種で、症状としては疲労感、集中力の低下、肌のくすみなどが現れることがあります。
妊活中に鉄分が不足することは、卵子の質の低下を招く可能性があります。フェリチンが低い状態では、卵子の老化を防ぐための抗酸化酵素の働きが弱まり、妊娠しにくくなるリスクがあります。妊娠力を維持するためには、鉄分を十分に補い、血中フェリチン値を50ng/ml以上に保つことが推奨されます。
ヘム鉄と非ヘム鉄の違い
鉄分は、食事から摂取する際にヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分けられます。
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ヘム鉄は動物性食品に含まれ、体に吸収されやすい鉄です。牛肉やレバー、カツオやサバなどの魚に多く含まれており、特に妊活中の女性には積極的に取り入れたい栄養素です。吸収率は約15〜25%と高く、効率的に鉄分を補給することができます。
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非ヘム鉄は植物性食品に含まれ、吸収率が低い(約2〜5%)鉄です。ほうれん草や納豆、海藻類に多く含まれますが、ビタミンCを一緒に摂ることで吸収率を上げることが可能です。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、鉄分摂取に関する食事のバランスを取ることが重要であるとされています。鉄分を効率よく吸収するためには、ヘム鉄を優先しながらも、非ヘム鉄もビタミンCを含む食材と組み合わせてバランス良く摂取することが推奨されています。
鉄分が豊富な食材
鉄分を効率よく補うために、以下の食材を意識して取り入れましょう。
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ヘム鉄が豊富な食材
- レバー(鶏・豚・牛)
- 赤身の肉(牛・豚)
- カタクチイワシ
- カツオ、サバ
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非ヘム鉄が豊富な食材
- ほうれん草、小松菜
- 納豆、ひよこ豆
- ひじき、海苔
妊活と鉄分摂取のポイント
妊活中の方は、鉄分不足によるリスクを避けるために、定期的にフェリチン値を確認し、鉄分を意識して摂取することが重要です。鉄分不足は、貧血の他にも、妊娠しにくい体質や不定愁訴(疲れやすさ、体調不良)などの原因にもなります。食事での鉄分補給に加え、必要に応じてサプリメントの活用も検討すると良いでしょう。
結論
鉄分は、妊娠力を維持するために不可欠な栄養素です。特に月経のある女性や妊活中の方は、体内の鉄分が不足しないよう、日々の食事で意識的に鉄分を摂取し、フェリチン値の管理を行うことが大切です。バランスの良い食事と、鉄分補給を習慣化することで、健やかな妊娠力をサポートしましょう。
参考
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」