
妊活中「ストレスを減らそう」が逆効果に?皮肉過程理論と心の整え方
「妊活中はストレスを減らした方がいい」と聞いて、かえって「リラックスしなきゃ」「イライラしてはいけない」と自分を追い込んでいませんか?
妊活や不妊治療では、通院、検査結果、採卵や移植、判定日までの待ち時間など、気持ちが揺れやすい場面が少なくありません。
しかし、ストレスを感じているから妊娠できない、と単純に考える必要はありません。ストレスと妊孕性の関係にはまだ分かっていないことも多く、「ストレスをゼロにしなければ」と頑張りすぎることが、かえって心の負担になる場合があります。
この記事では、心理学の「皮肉過程理論(アイロニック・プロセス)」をもとに、「考えないようにしよう」とするほど気になってしまう仕組みと、妊活中のストレスとうまく付き合う考え方を解説します。
- ストレスがあるからといって、必ず妊娠しにくくなるわけではありません。
- 「ストレスを感じないようにしよう」と強く意識すると、かえってそのことが気になってしまう場合があります。
- ストレスをゼロにするより、「今は不安なんだな」と気づいて受け止めることも大切です。
- 妊活以外の活動に意識を向けたり、休息や相談の時間をつくったりすることもストレスケアになります。
- 眠れない、食べられない、日常生活に支障が出るほどつらい場合は、一人で抱え込まず専門家へ相談しましょう。


妊活中のストレスは妊娠に影響する?
妊活中にストレスを感じると、「こんなにイライラしていたら妊娠できないのでは」「もっとリラックスしないと」と心配になる方がいます。
しかし、現在の医学では、日常的なストレスがそのまま不妊の原因になる、あるいはストレスを減らせば妊娠できる、と単純に結論づけることはできません。
妊娠には、年齢、排卵、卵管、子宮、卵子や精子の状態、男性因子など、さまざまな要因が関係しています。
一方で、不妊や不妊治療そのものが心理的な負担になることはよく知られており、治療を続けるうえで心のケアや生活の質を保つことも大切です。
そのため、「妊娠するためにストレスをなくさなければ」と考えるより、妊活を続ける自分自身が少し過ごしやすくなるためにストレスケアをすると考えてみるとよいでしょう。
「考えないようにするほど気になる」皮肉過程理論とは?
心理学には、意識的にある考えを抑えようとすると、かえってその考えが頭に浮かびやすくなることがある、という研究があります。
こうした現象の説明として知られているのが、皮肉過程理論(アイロニック・プロセス理論)です。
有名な「白クマ実験」
代表的なのが、心理学者Daniel M. Wegnerらによって行われた、いわゆる「白クマ実験」です。
参加者に「白クマのことを考えないようにしてください」と指示すると、白クマについての考えを完全に抑えることは難しく、その後に白クマについて考える頻度が増える「反動」が観察されました。
その後の研究やメタ解析でも、思考を無理に抑えようとすることで、条件によってはその考えが再び浮かびやすくなる「リバウンド」がみられることが報告されています。
ただし、思考を抑えようとすると必ず逆効果になるわけではありません。人や状況、対象となる考えによって結果は異なるため、皮肉過程理論だけですべてのストレス反応を説明できるわけではないことも知っておきましょう。
妊活では「ストレスを減らさなきゃ」が負担になることも
皮肉過程理論の考え方を妊活に当てはめると、次のような流れが起こることがあります。
- 「妊活中だからストレスを感じないようにしなきゃ」と考える
- 「今リラックスできているかな?」と自分の気分を確認する
- 少し不安を感じただけで「またストレスを感じている」と気になる
- 「これが妊娠に影響したらどうしよう」と不安になる
- ストレスについて考える時間がさらに増える
特に妊活では、排卵日、基礎体温、通院予定、採卵数、胚のグレード、移植、妊娠判定など、自分では完全にコントロールできないことが多くあります。
そのため、さらに「感情まで完璧にコントロールしよう」とすると、疲れてしまうことがあります。
不安になることや落ち込むことそのものを、妊活の失敗と結びつけないことが大切です。
妊活中のストレスとうまく付き合う5つの考え方
①「ストレスゼロ」を目標にしない
妊活中の不安や緊張を完全になくすことは現実的ではありません。
「ストレスを感じてはいけない」ではなく、「不安になる日があってもいい」くらいに考えてみましょう。
ストレスがあるかどうかを繰り返し確認するより、睡眠や食事、休息など、自分で調整しやすい部分に目を向ける方が取り組みやすいことがあります。
② 感情をなくすのではなく「気づく」
不安になったときに「考えてはいけない」と押さえ込む必要はありません。
「結果が気になっているんだな」「今日は少し緊張しているな」と、今の状態に気づくだけでも構いません。
無理にポジティブになることを目標にせず、自分の状態をそのまま確認することもひとつの方法です。
③ 妊活以外に意識を向ける時間をつくる
「妊活のことを考えないようにしよう」と頑張るのではなく、別の行動に自然と意識を向けてみましょう。
散歩をする、映画を見る、料理をする、本を読む、友人と話すなど、内容は特別なものでなくて構いません。
白クマ実験でも、別の具体的な対象に意識を向けた場合には、その後の反動が少なくなることが報告されています。
④「リラックスしなきゃ」ではなく、自分が心地よいことを選ぶ
ヨガ、瞑想、入浴などが「妊活には良い」と聞いても、それ自体が義務になると負担になることがあります。
大切なのは、世間で言われているストレス解消法をすべて実践することではありません。
「自分は何をしているときに少し楽か」を基準に選んでみてください。
⑤ 妊活について考えない時間があってもいい
妊活中は、毎日のように検索をしたり、SNSで妊娠報告や治療情報を見たりすることがあります。
情報収集は大切ですが、情報に触れることで気持ちが苦しくなるときは、スマートフォンやSNSから少し離れる時間をつくっても構いません。
妊活以外の生活を楽しむことは、妊活を諦めることではありません。
不妊治療中は心のケアも大切です
不妊治療では、治療そのものだけでなく、仕事との両立、治療費、パートナーとの関係、周囲からの言葉、先の見えない不安など、さまざまな負担が重なることがあります。
ESHRE(欧州ヒト生殖医学会)のガイドラインでも、不妊治療を受ける方の心理的・社会的なニーズに配慮し、必要に応じて専門的な心理支援につなぐことが推奨されています。
「ストレスを自分で何とかしなければ」と一人で抱え込む必要はありません。
つらさが続くときは専門家への相談も
妊活中に落ち込んだり、不安になったりすること自体は珍しいことではありません。
ただし、次のような状態が続いている場合は、かかりつけの医療機関や不妊カウンセラー、心理職などへ相談することも検討してください。
- 眠れない状態が続いている
- 食欲が大きく落ちている
- 仕事や家事など日常生活に支障が出ている
- 不安や落ち込みが強く、気持ちを切り替えられない
- 妊活のことを考えるだけで強いつらさを感じる
- パートナーとの関係に大きな負担を感じている
相談することも、妊活を続けていくための大切な選択肢のひとつです。
妊活中は、「食事を整えなければ」「運動しなければ」「ストレスをためてはいけない」と、頑張ることが次々に増えてしまうことがあります。
でも、妊活中に不安になったり、落ち込んだりすることは決して珍しいことではありません。「もっとリラックスしなければ」と新しい課題を増やすより、まずは今の自分の心と身体の状態に気づくことから始めてもよいと思います。
宇都宮鍼灸良導絡院では、妊活中の身体づくりとともに、睡眠や疲労、身体の緊張なども含めてお話を伺っています。心のつらさが強い場合には、医療機関や心理職など専門家へ相談することも大切です。
Q. ストレスがあると妊娠しにくくなりますか?
A. ストレスがあるだけで妊娠できなくなるとは言えません。妊娠には年齢、排卵、卵管、子宮、精子など多くの要因が関係します。ストレスを感じている自分を責める必要はありません。
Q. 妊活中はできるだけリラックスした方がいいですか?
A. リラックスできる時間を持つことはよいですが、「リラックスしなければ」と無理をする必要はありません。ご自身が心地よいと感じる過ごし方を選びましょう。
Q. 妊娠判定まで何度も検索してしまいます。やめた方がいいですか?
A. 情報を確認すること自体が悪いわけではありません。ただ、検索するほど不安が強くなる場合には、時間を決めたり、スマートフォンから離れる時間をつくったりするのもひとつの方法です。
Q. 不妊治療のことばかり考えてしまいます。どうすればいいですか?
A. 無理に考えないようにするより、妊活以外の予定や楽しみに意識を向ける方法があります。つらさが強い場合には、主治医や不妊カウンセラー、心理職などへ相談してみてください。
Q. 妊活中のストレスケアとして鍼灸を受けてもいいですか?
A. 鍼灸を、身体の緊張や睡眠、冷え、疲労などのコンディションを整える目的で利用される方はいらっしゃいます。ただし、ストレスをなくしたり妊娠を保証したりするものではなく、必要な医療や心理的サポートの代わりになるものでもありません。
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📚参考文献
- [1] Wegner DM, Schneider DJ, Carter SR 3rd, White TL. Paradoxical effects of thought suppression. 1987.
いわゆる「白クマ実験」を報告した研究で、意図的に思考を抑えようとした際の反動について検討しています。 - [2] Abramowitz JS, Tolin DF, Street GP. Paradoxical effects of thought suppression: a meta-analysis of controlled studies. 2001.
思考抑制に関する研究をまとめたメタ解析で、条件によって小~中程度のリバウンド効果がみられることを報告しています。 - [3] American Society for Reproductive Medicine. Stress and infertility. Revised 2023.
ストレスが妊孕性へどの程度影響するかは明確ではなく、ストレス軽減は妊娠そのものより生活の質を保つうえで重要であると解説しています。 - [4] European Society of Human Reproduction and Embryology. Routine psychosocial care in infertility and medically assisted reproduction. 2015.
不妊および生殖補助医療を受ける方の心理的・社会的ニーズへの支援についてまとめたESHREのガイドラインです。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊活を頑張りすぎて、心も身体も緊張していませんか?
妊活や不妊治療を続けていると、「もっと頑張らなければ」と思っているうちに、心だけでなく身体にも力が入り続けていることがあります。
ストレスを無理になくす必要はありませんが、眠りが浅い、疲れが取れない、首や肩がこる、身体が緊張しているなど、体調面が気になるときには、身体から整えていくことも選択肢のひとつです。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療の状況や月経周期、睡眠、疲労などを伺いながら、妊活中の身体づくりやコンディション調整をサポートしています。
病院での治療を続けながら身体も整えていきたい方や、「妊活のことばかり考えて疲れてしまった」と感じている方も、お身体のことからお気軽にご相談ください🍀







