
精子は何歳から老化する?【男性の年齢と精子の劣化との関係性】
妊活と聞くと「女性が中心に取り組むもの」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし現実には、不妊の原因の約半分は男性側にあります。その大きな要因のひとつが「精子の老化」です。
精子は毎日つくられるため「年齢の影響は受けないのでは?」と思われがちですが、これは誤解です。精子の量や動きといった“見える部分”だけでなく、DNAの傷や酸化ストレスといった“目に見えない部分”にも加齢の影響は現れます。特に30代後半からは妊娠率や流産率にまで関わってくることが、研究によって明らかになっています。
男性の加齢と精子の質の変化
30歳から始まる緩やかな変化
多くの研究で、精液量や精子数、運動率は30歳前後から少しずつ低下すると報告されています。まだ若いから大丈夫、と思っていても少しずつ機能は落ちていくのです。
35歳を境に顕著に現れる影響
35歳を超えると、その影響はさらに顕著になります。妊娠までの期間が長引いたり、流産率が上がったりする傾向が見られます。これは精子の外見的な数値だけでなく、遺伝子レベルでの劣化が関係していると考えられています。
世界的な精子減少のトレンド
世界的にも精子の数や濃度は年々減少傾向にあり、ある報告では過去40年間で精子濃度が半分以下になったともいわれています。日本でも例外ではなく、ライフスタイルや環境要因と合わせて「精子の質の低下」が社会的な問題となりつつあります。
「見えない質」への注目
精液検査で確認できるのは、精子数や運動率など基本的な指標です。しかし近年、妊娠に直結するのはむしろ“見えない質”だと分かってきました。
- DNA損傷:精子の遺伝情報に傷があると、受精しても着床に至らない、あるいは流産につながるリスクが高まります。
- 酸化ストレス:喫煙や過度なストレス、不規則な生活によって活性酸素が増え、精子を傷つける原因となります。
- 細胞分裂を活性化させる力:卵子と受精した後に正常に分裂・発育させる力も、加齢によって弱まると報告されています。
つまり、見た目の数値が良好でも、精子の機能が落ちている可能性があるのです。
妊娠率や流産率との関係
女性の年齢と同じように、男性の年齢も妊娠率に影響を与えます。35歳を超えると妊娠成立までの期間が長引く傾向があり、さらに40歳を超えると流産率の上昇も報告されています。
これは「卵子の老化」と同じくらい重要な要因ですが、まだ社会的にはあまり認知されていません。夫婦で妊活に取り組む際には、男性の加齢リスクも理解しておくことが大切です。
精子の質を守る7つの生活習慣
精子の老化を完全に止めることはできませんが、生活習慣を改善することで質を守ることは可能です。代表的な対策として以下の7つが挙げられます。
- 禁煙:喫煙はDNA損傷の大きな原因です。
- 適度な射精:禁欲しすぎると古い精子がたまり、質が下がります。
- 通気性の良い下着:精巣は熱に弱いため、ブリーフよりトランクスが望ましいです。
- 過度な温めを避ける:サウナや長風呂は精子に悪影響を与えることがあります。
- 膝上でのPC使用を控える:熱が精巣に伝わりやすく、ダメージにつながります。
- 自転車の乗りすぎに注意:会陰部への圧迫が血流を妨げる可能性があります。
- 薬剤の影響を確認:一部の育毛剤など、ホルモンに影響を与える薬に注意が必要です。
鍼灸によるサポート
生活改善と併せて、鍼灸も有効なサポートとなります。
- 血流促進:精巣や骨盤内の血流を改善し、精子形成環境を整える。
- ホルモンバランスの調整:自律神経の働きを整えることで、男性ホルモンの分泌をサポート。
- ストレス緩和:精神的ストレスを軽減し、酸化ストレスによるダメージを抑える。
これらの作用により、精子のDNA損傷を減らし、妊娠につながる質の高い精子を育てることが期待できます。
まとめ
男性の加齢は精子の数や動きだけでなく、DNA損傷や酸化ストレスといった“見えない質”にも影響を与えます。30代から始まる緩やかな変化に早めに気づき、生活習慣の改善や鍼灸などのケアを取り入れることで、妊娠の可能性を高めることができます。
妊活は夫婦で協力して進めるもの。女性だけでなく、男性も「自分の体を整える」意識を持つことが、未来の命につながる大切な一歩です。
📚参考文献
- Levine H, et al. “Temporal trends in sperm count: a systematic review and meta-regression analysis.” Human Reproduction Update. 2017;23(6):646-659.
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- Sharma R, Biedenharn KR, Fedor JM, Agarwal A. “Lifestyle factors and reproductive health: taking control of your fertility.” Reproductive Biology and Endocrinology. 2013;11:66.
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