「ストレスを減らそう」がストレスに?妊活と皮肉過程理論
「ストレスを減らそう」がストレスに?妊活と皮肉過程理論
妊活中、「ストレスは妊娠に良くないから、できるだけリラックスしよう」と考えることはありませんか?しかし、実はこの「ストレスをなくそう!」という意識そのものが、かえってストレスを増やしてしまうことがあります。これは心理学の「皮肉過程理論(アイロニック・プロセス理論)」によって説明できます。
皮肉過程理論とは?
皮肉過程理論とは、「○○しないようにしよう」と思えば思うほど、そのことが頭から離れなくなる心理現象です。例えば、「ストレスを感じないようにしよう」と意識するほど、「今ストレスを感じていないかな?」「ちゃんとリラックスできているかな?」と気にしてしまい、かえってストレスが増してしまいます。
これは、「白クマ実験」として有名な心理学の研究で実証されています。実験では、「白クマのことを考えないでください」と指示された人々が、逆に白クマのことを考えてしまうという結果が出ました。
妊活とストレスの悪循環
妊活において、ストレスは大敵とされています。しかし、ストレスをなくそうと意識しすぎると、次のような悪循環が生まれることがあります。
- 「ストレスを感じないようにしなきゃ」と思う
- 「本当にリラックスできているかな?」と気にする
- 「まだ妊娠しないのはストレスのせいかも」と焦る
- ストレスがさらに増える
このように、「ストレスを減らさなきゃ!」という意識が、逆にストレスを増やす結果を招くことがあります。
妊活中のストレスとうまく付き合う方法
では、この悪循環から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか?
①「ストレスゼロ」を目指さない
まず、「ストレスをなくさなきゃ」と思うこと自体が逆効果になるため、「多少のストレスがあっても大丈夫」と受け入れることが大切です。むしろ、適度なストレスは生活に張りを与えることもあります。
②「ストレスを感じている自分」を責めない
「リラックスしなきゃ」と焦るほど、うまくいかないものです。ストレスを感じていることに気づいたら、「そっか、今ちょっと緊張してるな」と軽く受け止めましょう。それだけでも、気持ちが少し楽になります。
③ 気をそらす習慣を持つ
皮肉過程理論によると、「考えないようにする」よりも、別のことに意識を向ける方が有効です。例えば、好きな映画を観たり、ウォーキングをしたりすることで、自然とストレスから意識をそらすことができます。
④「リラックスしなきゃ」より「楽しいことをしよう」
「リラックスしよう」と思うと、それ自体がプレッシャーになってしまいます。それよりも、「楽しいことをしよう」と考える方が、結果的にリラックスにつながります。例えば、友達とおしゃべりをする、お気に入りのカフェに行く、趣味に没頭するなど、自分が楽しいと感じることを積極的に取り入れましょう。
まとめ
妊活中、「ストレスを減らそう」と意識しすぎることで、逆にストレスが増してしまうことがあります。これは心理学の皮肉過程理論によるもので、無理にストレスをなくそうとするよりも、「ストレスがあっても大丈夫」と受け入れつつ、楽しいことに意識を向けるのが効果的です。
妊活はゴールが見えにくく、不安を感じやすいものですが、自分なりのリラックス方法を見つけて、少しでも気楽に取り組めるようにしていきましょう。
参考文献
- 田中美吏・柄木田健太. 2019. 「運動パフォーマンスへの皮肉過程理論の援用-皮肉エラーと過補償エラーの実証とメカニズム-」『スポーツ心理学研究』46 (1): 27-39.