続発性不妊の原因と鍼灸でできること
続発性不妊と鍼灸
続発性不妊(2人目不妊)とは、過去に妊娠経験のあっても、その後妊娠しにくくなる状態を言います。この定義には、流産も過去の妊娠に含まれます。一人目のお子さんを自然妊娠で授かった場合でも、二人目不妊となることがあります。
続発性不妊になる原因
1. 加齢による影響
1人目の出産から時間が経過することで、卵子の老化が進み、妊娠しにくくなることがあります。特に35歳を過ぎると卵子の質が低下し、排卵や受精、着床がうまくいかないケースが増えます。
2. 男性側の原因
男性の加齢や生活習慣の変化により、精子の質が低下することもあります。また、1人目の出産後に仕事のストレスや体調変化で精子の運動率が落ちるケースも少なくありません。
3. 出産時の影響
帝王切開や分娩時のトラブルにより、子宮や卵管にダメージが生じることがあります。例えば以下のような場合があります。
- 帝王切開後の子宮瘢痕(はんこん) → 着床不全や流産のリスクが上がる
- 子宮内膜炎 → 子宮内環境が悪化し、着床しづらくなる
- 卵管閉塞 → 分娩時の感染症などにより卵管が詰まり、精子と卵子が出会えなくなる
4. ホルモンバランスの変化
妊娠・出産を経験すると、体のホルモンバランスが変化し、排卵障害や高プロラクチン血症(母乳分泌ホルモンの過剰分泌)などが起こることがあります。特に授乳中はプロラクチンが高くなり、排卵が抑制されやすくなります。
5. 生活習慣の変化
1人目の育児や仕事によるストレス・睡眠不足・過労が続くと、ホルモンバランスが乱れたり、妊娠しにくい体質になることがあります。また、体重増加・肥満・過度なダイエットなども排卵に影響を与える可能性があります。
6. 免疫系の変化
妊娠や出産を経験すると、体の免疫機能が変化し、自己抗体が精子や受精卵を攻撃するケースも報告されています(例:抗精子抗体、抗核抗体など)。
7. 不妊治療を受けなかったために気づいていなかった原因
1人目は「自然に妊娠できた」と思っていたが、実は元々軽度の不妊要因(軽度の卵管狭窄、ホルモンバランスの乱れなど)があり、1人目の妊娠後にその要因が悪化して顕在化することもあります。
「1人目は自然に妊娠できたから2人目もすぐできるはず」と考えがちですが、時間の経過とともに不妊のリスクが上がるため、早めに検査・治療を検討することが重要です。
鍼灸では以下のようなアプローチで改善をサポートできます
- 血流改善による卵巣・子宮の活性化
鍼灸によって骨盤内の血流を促し、卵巣の機能を高めることで質の良い卵子の排卵をサポートします。また、子宮の血流を改善することで、子宮内膜の厚みや質を向上させ、着床しやすい環境を作ります。 - ホルモンバランスの調整
鍼灸施術は自律神経を整え、ホルモン分泌を正常化させる効果があります。特に、排卵障害や高プロラクチン血症などのホルモンバランスの乱れに対して、視床下部-下垂体-卵巣系の働きを整えることが期待できます。 - ストレスの軽減と自律神経の安定
1人目の育児や仕事のストレス、睡眠不足はホルモンバランスを乱し、妊娠しにくい状態を作ります。鍼灸のリラックス効果により、交感神経の過剰な興奮を抑え、副交感神経を優位にすることで、妊娠しやすい体質へ導きます。 - 卵管や子宮環境の改善
帝王切開後の子宮瘢痕(ニッチ)や、子宮内膜炎、卵管のつまりなどによる不妊に対して、鍼灸は血流促進・炎症の軽減・組織の修復を促す働きがあります。これにより、子宮内環境の改善や卵管の通りを良くすることが期待できます。 - 男性不妊のサポート
男性側の精子の質の低下にも、精巣の血流促進・自律神経調整・ストレス軽減のアプローチが有効です。鍼灸を受けることで、精子の運動率向上・酸化ストレスの軽減・テストステロン分泌の安定が期待できます。
東洋医学からみた続発性不妊の原因
- 腎虚証(じんきょ) → 加齢や疲労で「腎」が弱り、妊娠しづらくなる
- 血瘀証(けつお) → 帝王切開や出産の影響で血流が滞り、子宮の働きが低下
- 気血両虚証(きけつふそく) → 産後の疲労・育児ストレス・睡眠不足で「気」と「血」が足りなくなる
- 肝気鬱結(かんきうっけつ) → ストレスで「肝」の働きが低下し、ホルモンバランスが乱れる
鍼灸でできるサポート
- 腎を補い、妊娠しやすい体へ
- 瘀血を改善し、子宮の血流を促進
- 気血を巡らせて、排卵や着床をサポート
- ストレスを和らげ、自律神経を整える
「1人目は自然に妊娠できたから大丈夫」と思っても、体は変化していきます。東洋医学の視点で体のバランスを整え、妊娠しやすい状態に戻していきましょう。
鍼灸は続発性不妊の原因に多角的にアプローチし、自然な妊娠力を高めるサポートが可能です。1人目を妊娠したときと同じ方法で妊活してもうまくいかない場合、体の変化に合わせたケアが必要になります。鍼灸を取り入れることで、心身ともに妊娠しやすい状態を整えることが期待できます。
「2人目がなかなかできない…」と感じたら、お気軽にご相談ください!
参考文献
- 武田茉莉亜, 武内享介, 白國あかり, 浅見里紗, 吉田愛, 杉本誠. 続発性不妊症 – 分娩様式と次子妊娠にむけての取り組み –. 産科と婦人科. 2023;90(10):1159-1163.
- 三宅達也. 続発性不妊症 – 分娩様式と次子妊娠にむけての取り組み –. 産婦人科の進歩. 2020;72(4):440.