
胚移植後に膣剤が出てきたけど大丈夫?ルティナス・ウトロゲスタン使用時の考え方
胚移植後、ルティナスやウトロゲスタンを使っていて、トイレに行ったときに白いかたまりや薬のようなものが出てきて、「ちゃんと吸収されている?」「もう1回入れた方がいい?」と不安になる方は少なくありません。
結論からいうと、膣剤を使用したあとに白い粉やペースト状のもの、カプセルの殻などが出てくることはあります。出てきたものがあるからといって、薬がまったく吸収されなかったとは限りません。
ただし、薬がほぼ原形のまま出てきた場合や、入れた直後に丸ごと出てきた場合は対応が異なることがあります。
特に胚移植周期では、プロゲステロンを決められたスケジュールで使用することが大切です。自己判断で追加したり中止したりせず、迷った場合は治療中のクリニックへ確認しましょう。
- ルティナス・ウトロゲスタンは、胚移植前後の黄体補充に用いられるプロゲステロン製剤です。
- 使用後に白い粉・ペースト状のもの・カプセルの殻などが出てくることがあります。
- 残りかすが出たからといって、薬がすべて外へ出たとは限りません。
- ウトロゲスタンは、メーカー公式FAQで「殻のみなら入れ直し不要」「中身入りのカプセルが丸ごと出た場合は挿入し直す」と案内されています。
- ルティナスがほぼ原形のまま出た場合は、自己判断で追加せずクリニックへ確認しましょう。
- 「挿入後30分なら大丈夫」など、すべての膣剤に共通する一律の時間基準はありません。
- 入れ忘れた場合も、2回分をまとめて使用しないことが基本です。
胚移植後に使うルティナス・ウトロゲスタンとは?
ルティナス腟錠とウトロゲスタン腟用カプセルは、どちらもプロゲステロン(黄体ホルモン)を補うための薬です。
体外受精・胚移植では、子宮内膜を着床しやすい状態に整え、妊娠初期のホルモン環境を支える目的でプロゲステロンが使用されます。[1][2]
ESHRE(欧州生殖医学会)の2025年ガイドラインでも、IVF・ICSI後の黄体補充としてプロゲステロンが推奨されています。[4]
ルティナス腟錠
ルティナス腟錠100mgは、白色の錠剤を専用のアプリケータを使って腟内へ挿入する薬です。
国内の添付文書では、プロゲステロンとして1回100mgを1日2回または3回使用することとされていますが、実際の回数や使用期間は治療内容によって異なるため、処方した医師の指示に従います。[1]
ウトロゲスタン腟用カプセル
ウトロゲスタン腟用カプセル200mgは、プロゲステロンを含んだ軟カプセルを腟内へ挿入する薬です。
国内の患者向医薬品ガイドでは、1回1カプセルを1日3回使用することとされています。[2]
また、ウトロゲスタンは腟内で自然に溶け出すため、薬によって下着が汚れる場合があることも公式資料に記載されています。[2]
膣剤を入れたあと白いかたまりが出てきたけど大丈夫?
胚移植後に多いのが、
- 白い粉が出てきた
- 白いペースト状のものが出てきた
- 溶けた薬のようなものが下着についた
- カプセルの皮のようなものが出てきた
というケースです。
膣剤は腟内で溶け、プロゲステロンが腟粘膜から吸収されます。一方で、薬の基剤やカプセルの殻など、すべてが吸収されるわけではありません。
そのため、あとから白いものが出てきたとしても、「薬が全部出てしまった」「プロゲステロンがまったく吸収されていない」と判断することはできません。
ウトロゲスタンの殻が出てきた場合は?
ウトロゲスタンについては、製造販売元の富士製薬工業による公式FAQで対応が示されています。[3]
カプセルの殻だけが出てきた場合
殻だけが出てきた場合は、挿入し直す必要はないとされています。
カプセル内部の薬剤がすでに溶け出したあとに、外側の殻が腟内に残り、あとから出てくることがあるためです。
中身が入ったカプセルが丸ごと出てきた場合
一方、公式FAQでは、中身の入ったカプセルが丸ごと出てきた場合は、挿入し直す必要があると案内されています。[3]
ただし、「丸ごとかどうか判断できない」「かなり時間が経っている」「追加してよいか迷う」という場合は、ご自身で判断せず、通院中のクリニックへ確認してください。
ルティナスが白いかたまりで出てきた場合は?
ルティナスはウトロゲスタンとは異なり、白色の腟錠です。
使用後に白い粉やペースト状のものが出てくることがありますが、これだけで「1錠分すべてが出てしまった」とは判断できません。
ルティナスの患者向医薬品ガイドでは、専用アプリケータを用いて腟の奥へ挿入するよう説明されており、腟奥部へ挿入することで薬が漏れ出すことを防ぐ目的があるとされています。[1]
一方で、ほとんど溶けていない錠剤がそのまま出てきた場合は、十分に投与できていない可能性も考える必要があります。
この場合は、自己判断でもう1錠追加するのではなく、通院中のクリニックへ連絡して対応を確認しましょう。
「入れて30分経ったら大丈夫」は本当?
インターネットで調べると、
- 30分経てば大丈夫
- 1時間経てば吸収されている
- 2時間経てば入れ直さなくてよい
など、さまざまな情報が出てきます。
しかし、ルティナス・ウトロゲスタンの公式の患者向医薬品ガイドには、「挿入して○分経てば、出てきても必ず大丈夫」という両製剤共通の時間基準は示されていません。
実際には、
- 使用している薬の種類
- 出てきたものの状態
- 挿入してからの時間
- 移植周期の方法
- クリニックの治療方針
によって対応が変わる可能性があります。
「何分経ったから大丈夫」と時間だけで判断するより、薬が原形のままなのか、溶けた残りかすなのかを確認し、判断に迷う場合はクリニックへ問い合わせるのが安全です。
膣剤が出てきたら、もう1錠追加してもいい?
不安になると、「足りなかったら困るから、念のためもう1錠入れておこう」と考えるかもしれません。
しかし、自己判断で追加投与することはおすすめできません。
すでに必要な量が吸収されていた場合、予定された投与量を超えてしまう可能性があるからです。
ルティナス・ウトロゲスタンともに、患者向医薬品ガイドでは、使用を忘れた場合でも2回分を一度に使用しないよう記載されています。[1][2]
薬がほぼ原形のまま出てきた場合など、追加投与が必要かどうか迷ったときは主治医や薬剤師へ確認しましょう。
膣剤を入れ忘れた場合はどうしたらいい?
ルティナスとウトロゲスタンの患者向医薬品ガイドでは、使用を忘れた場合について、
- 気づいた時点で1回分を使用する
- 次の使用時間が近い場合は、忘れた分を飛ばす
- 2回分を一度に使用しない
という基本的な対応が示されています。[1][2]
ただし、胚移植周期ではプロゲステロンを開始する日時や投与間隔が治療計画に関係する場合があります。
特に移植前の初回投与を忘れた場合や、大きく時間がずれた場合は、一般的な飲み忘れ対応だけで判断せず、治療中のクリニックへ連絡してください。
膣剤を入れたあと、横になっていないとダメ?
「入れたあと30分くらい横にならないと、薬が流れ出てしまうのでは?」と心配になる方もいます。
ルティナスの公式使用説明では、立位・座位・仰向けのいずれの姿勢でも挿入できるとされています。[1]
ウトロゲスタンについても、座位・立位・仰向けなど、ご自身が挿入しやすい姿勢で腟内の奥へ入れるよう説明されています。[2]
公式資料では、使用後に必ず長時間横にならなければならないとはされていません。
ただし、クリニックから「挿入後は○分程度休んでください」など個別の指示を受けている場合は、そちらを優先してください。
トイレに行ったら膣剤が出てきたけど大丈夫?
膣剤を入れたあとにトイレへ行くと、「おしっこと一緒に薬が流れ出るのでは?」と不安になる方もいます。
尿が出る尿道と、膣剤を挿入する腟は別の場所です。そのため、排尿そのものによって膣剤が尿と一緒に洗い流されるわけではありません。
ただし、トイレで力んだときや立ち上がったときに、腟内に残っていた薬の基剤やカプセルの殻が出てくることはあります。
出てきたものが溶けた残りかすであれば、それだけで薬が効いていないとは判断できません。
膣剤が出てくると胚も一緒に出てしまう?
「膣剤が出てきたとき、移植した胚まで一緒に出てしまったのでは?」と心配される方もいます。
しかし、膣剤を入れる場所は腟内で、胚が移植される場所はその奥にある子宮腔内です。
腟と子宮の間には子宮頸部があるため、膣剤の残りかすが外へ出てきたからといって、移植した胚まで一緒に出てきたと考える必要はありません。
膣剤が出てきたことと、胚が子宮から「落ちる」ことは分けて考えましょう。
膣剤を使っていると、おりものが増えることもある?
膣剤の使用中は、薬剤そのものの残りに加えて、腟分泌物が増えたように感じることがあります。
ウトロゲスタンの添付文書では「腟分泌物」、ルティナスでは外陰腟の症状や陰部のかゆみなどが副作用として記載されています。[1][2]
薬の影響だけなのか、感染症など別の原因があるのかをご自身で判断するのは難しいため、
- 強いかゆみがある
- 強い痛みや灼熱感がある
- 悪臭のあるおりものが出る
- 発熱がある
- 出血量が多い
- 強い腹痛がある
といった症状がある場合は、治療中のクリニックへ相談してください。
胚移植後は膣剤を自己判断で中止しないことが大切
膣剤は毎日何度も使用することがあり、「出てくるし、本当に意味があるのかな」と感じることもあるかもしれません。
しかし、プロゲステロンはIVF・ICSI後の黄体補充に用いられる重要なホルモンです。[4]
特にホルモン補充周期の凍結胚移植では、処方されたプロゲステロンを決められたスケジュールで使用することが重要です。
白い残りかすが出たことだけを理由に、回数を減らしたり、使用を中止したりしないようにしましょう。
胚移植後は、「膣剤が出てきた」「少し出血した」「症状が何もない」など、普段なら気にならない小さな変化まで不安になりやすい時期です。
膣剤の残りが出てきても、すぐに「薬が効いていない」「今回の移植はだめかもしれない」と考える必要はありません。
一方で、黄体補充は治療スケジュールに関わる大切な薬ですので、薬が丸ごと出た、入れ忘れた、使用時間が大きくずれたなどの場合は、まず治療中のクリニックへ確認してください。
判定日までは結果を自分でコントロールすることはできません。処方された薬を守りながら、できるだけ普段に近い生活を送ることを意識してみてください。
当院でよく受けるご相談
Q. ルティナスを入れた数時間後に白いかたまりが出ました。もう1錠必要ですか?
A. 白い粉やペースト状になっている場合、それだけで1錠分すべてが出たとは判断できません。自己判断で追加せず、ほぼ原形の錠剤が出た場合や判断できない場合は、通院中のクリニックへ確認してください。
Q. ウトロゲスタンの皮だけ出てきました。大丈夫ですか?
A. 富士製薬工業の公式FAQでは、カプセルの殻だけが出てきた場合は挿入し直す必要はないとされています。中身入りのカプセルが丸ごと出た場合は対応が異なります。
Q. 膣剤を入れて30分後に出てきました。吸収されていますか?
A. 「30分経てば必ず大丈夫」という全製剤共通の基準はありません。出てきたものが残りかすなのか、薬が原形のままなのかによっても異なります。判断が難しい場合はクリニックへ確認してください。
Q. 膣剤を入れ忘れました。2錠入れてもいいですか?
A. ルティナス・ウトロゲスタンの患者向医薬品ガイドでは、2回分を一度に使用しないよう案内されています。次回の時間が近いかどうかなどで対応が変わるため、処方時の指示も確認してください。
Q. 膣剤が出たら、移植した胚も出てしまいますか?
A. 膣剤は腟内、移植した胚は子宮腔内にあります。膣剤の残りが外へ出たからといって、胚まで一緒に出てきたと考える必要はありません。
まとめ|「出てきたものの状態」を確認し、自己判断で追加しない
胚移植後にルティナスやウトロゲスタンを使用していると、白い粉、ペースト状のかたまり、カプセルの殻などが出てくることがあります。
こうした残りかすが出てきても、薬の有効成分がまったく吸収されていないとは限りません。
特にウトロゲスタンでは、公式FAQでカプセルの殻だけなら入れ直し不要、中身が入ったカプセルが丸ごと出た場合は挿入し直すとされています。
一方で、ルティナスがほぼ原形のまま出た場合や、「薬が入っていたか分からない」「追加すべきか判断できない」という場合は、自己判断で追加せず、治療中のクリニックへ確認しましょう。
また、膣剤が出てきたことと、移植した胚が子宮から出てしまうことは別の話です。
判定日までは小さなことでも不安になりやすい時期ですが、処方された薬を指示通りに続けながら、分からないことは主治医へ確認することが大切です。
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参考文献
- [1] PMDA|ルティナス腟錠100mg 医薬品情報
生殖補助医療における黄体補充に用いられるプロゲステロン腟錠。用法・用量、使用方法、薬物動態などを参照。 - [2] PMDA|ウトロゲスタン腟用カプセル200mg 医薬品情報
ウトロゲスタンの用法・用量、使用方法、副作用、患者向医薬品ガイドなどを参照。 - [3] 富士製薬工業|ウトロゲスタン腟用カプセル よくあるご質問
カプセルの殻のみが出た場合と、中身入りのカプセルが丸ごと出た場合の対応について参照。 - [4] ESHRE guideline: ovarian stimulation for IVF/ICSI: an update in 2025
IVF・ICSI後の黄体補充としてプロゲステロンを推奨しているESHREのガイドライン。 - [5] What to expect from a ‘standard vaginal progesterone regimen’ in hormone replacement therapy frozen embryo transfer (HRT-FET) – a PRISMA review and meta-analysis
ホルモン補充周期の凍結胚移植における経腟プロゲステロン投与と血中プロゲステロン濃度について検討したレビュー・メタ解析。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
胚移植後の不安を抱えている方へ
胚移植後は、膣剤のことだけでなく、「これで大丈夫かな」「判定日までどう過ごせばいいのかな」と、ささいなことまで気になってしまう時期です。
処方されているお薬について不安がある場合は、まずは通院中のクリニックへ確認することが大切です。そのうえで、次の採卵や移植に向けて体調を整えたい、妊活中の身体づくりについて相談したいという方は、鍼灸を選択肢のひとつとして取り入れることもできます。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療のスケジュールや現在の治療状況を伺いながら、採卵前・胚移植前後など、その時期に合わせた鍼灸施術を行っています。
「今の治療と鍼灸をどう組み合わせたらいい?」「次の移植までにできることを相談したい」という方も、どうぞお気軽にご相談ください🍀







