
2025年02月の投稿記事
卵子の質を高めたい方へ【妊活中に摂りたい栄養素とサプリ・食事法】
卵子を育てるためのサプリメントと食事から摂取できる栄養素
卵子の質を向上させるためには、適切な栄養摂取が重要です。今回は、卵子の健康に寄与するとされるサプリメントと、それらを食事から摂取できる食材について解説します。
卵子の質を高める主要な栄養素と食材
- 1. 葉酸(ビタミンB9)
- ✔️ DNA合成や細胞再生を助けるビタミンで、妊娠前からの摂取が推奨されます。
- ✔️ 胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減し、卵子の質を高める可能性があります。
- 【食品】ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、レンズ豆
- 2. ビタミンD
- ✔️ カルシウムの吸収を促進し、卵胞の発育や着床環境を整える作用があります。
- 【食品】鮭、サバ、イワシ(青魚類)、卵黄、きのこ類
- 3. ビタミンE
- ✔️ 強力な抗酸化作用があり、卵子の老化を防ぎ、生殖機能を維持します。
- 【食品】アーモンド、ひまわりの種、ひまわり油
- 4. 亜鉛
- ✔️ DNA合成や細胞分裂をサポートし、卵子の質や着床力を高めます。
- 【食品】牡蠣、牛肉、豚レバー、鶏肉
- 5. イノシトール
- ✔️ ホルモンバランスを整え、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の改善に効果的です。
- 【食品】オレンジ、グレープフルーツ、豆類(大豆、レンズ豆)、玄米
- 6. DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)
- ✔️ 卵巣機能低下の改善が期待され、高齢の女性や卵巣機能が低下している方に有用です。
- 【食品】魚類(特に青魚)、鶏肉、牛肉、アボカド
- 7. メラトニン
- ✔️ 抗酸化作用により卵子の質向上や、体外受精の成功率を高める可能性があります。
- 【食品】赤身の魚や肉類、大豆製品、乳製品
- 8. コエンザイムQ10(CoQ10)
- ✔️ ミトコンドリアのエネルギー産生を助け、卵子の質を改善します。
- 【食品】牛肉、豚肉(特に心臓部位)、イワシ、サバ、マグロ
- 9. レスベラトロール
- ✔️ 抗酸化作用により卵子のミトコンドリアを保護します。
- 【食品】ブドウ(特に皮つき)、カカオ(ダークチョコレート)、ベリー類
- 10. カルニチン
- ✔️ 脂肪をエネルギーに変換し、卵子や精子の質向上に効果があります。
- 【食品】牛肉(特に赤身肉)、羊肉、鶏肉、魚類(タラ、サケ)
- 11. PQQ(ピロロキノリンキノン)
- ✔️ 細胞の老化を防ぎ、ミトコンドリアの活性を高めます。
- 【食品】納豆、ピーマン、ほうれん草、キウイ、パパイヤ
サプリメントの過剰摂取による肝臓・腎臓への影響
サプリメントは適量を守らないと、肝臓や腎臓に負担をかけることがあります。特に注意すべき成分は以下の通りです。
肝臓に負担をかけるサプリメント
- ビタミンA(レチノール):過剰摂取は肝障害を引き起こす可能性があります。
- 鉄分:過剰な鉄は肝臓に蓄積し、肝機能障害を招く恐れがあります。
- DHEA:ホルモン様作用により肝臓に負担がかかる場合があります。
- ハーブ系サプリメント(例:カバ、ブラックコホシュ):肝障害の報告があります。
腎臓に負担をかけるサプリメント
- ビタミンC:過剰摂取は腎結石の原因になります。
- ビタミンD:高カルシウム血症を引き起こし、腎臓に影響を与えます。
- カルシウム:過剰摂取は腎結石のリスクを高めます。
- 高用量のプロテイン:腎機能が低下している場合は特に注意が必要です。
サプリメント摂取で注意すべきポイント
- 上限量を守る:脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は体内に蓄積されやすいので、用量を守りましょう。
- 信頼できる製品を選ぶ:成分表示が明確で、安全性が確認されたものを選びましょう。
- サプリメントの併用に注意:複数の製品に同じ成分が含まれている場合があります。
- かかりつけ医や専門家に相談する:特に不妊治療中は専門家のアドバイスを受けることが重要です。
まとめ
卵子の質を高めるためには、栄養バランスを意識した食事とともに、必要な場合に限りサプリメントを補助として取り入れることが効果的です。しかし、過剰摂取は肝臓や腎臓に負担をかけ、健康リスクを招く可能性があります。安心して妊活を進めるためにも、正しい知識を持ち、自分に合った方法で健康管理を心がけましょう。
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精子の質は健康寿命のバロメーター?男性不妊と身体のサイン
精子の質と健康寿命の関係:男性も知るべき重要な事実
不妊治療は夫婦で取り組むものですが、現実には男性が非協力的なケースも少なくありません。しかし、精子の質は単に妊娠の可能性に影響するだけでなく、男性自身の健康や寿命とも密接に関わっていることが分かっています。今回は、最新の研究をもとに「精子の質と健康」の関係について詳しく解説します。
精子の質は健康のバロメーター
精子の質が良好な男性は、全体的な健康状態が良い傾向にあることが研究で明らかになっています。例えば、精子の運動率が高い男性ほど、心血管疾患やがんのリスクが低いことが報告されています
また、2009年に発表されたAmerican Journal of Epidemiologyの研究では、精子の濃度や運動率が低い男性は、寿命が短い可能性が高いことが示唆されています。この研究は、精子の質が単なる生殖能力の指標ではなく、健康全般を反映していることを示しています。
精子の質が低下する原因と健康リスク
精子の質は、加齢だけでなく 生活習慣や健康状態 によっても大きく左右されます。特に以下の要因は精子の質を低下させることが分かっています。
- 喫煙・アルコールの過剰摂取
タバコや過度な飲酒は精子のDNA損傷を引き起こし、妊娠率を低下させます
- 肥満と運動不足
肥満の男性はホルモンバランスが乱れやすく、精子の数や運動率の低下が見られることが報告されています
- ストレスとメンタルヘルス
慢性的なストレスやうつ病は、精子の質を著しく低下させることが確認されています(Pasqualotto et al., Andrology, 2013)。
- 食生活の乱れ
地中海式食事(オリーブオイル・魚・野菜中心の食事)は精子の質を向上させるとされており、ジャンクフード中心の食生活は精子の数や質の低下につながります
精子の質を向上させるためにできること
- 禁煙・節酒を心がける
タバコをやめることで、精子のDNA損傷が減少し、質の向上が期待できます。アルコールも適量を守ることが重要です。
- 適度な運動を取り入れる
週に3~5回の適度な運動は、ホルモンバランスを整え、精子の運動率を高める効果があります
- 健康的な食生活を意識する
野菜・果物・魚を中心にした食事を心がけることで、精子の酸化ストレスを軽減し、質を向上させることができます。
- 睡眠をしっかりとる
睡眠不足は男性ホルモンの分泌を妨げ、精子の質を低下させます。1日7~8時間の睡眠を確保しましょう。
- ストレス管理を行う
瞑想やヨガ、適度な運動を取り入れ、リラックスする時間を作ることが大切です。ストレスが原因で精子の運動率が低下することが確認されています。
精子の質を改善することは、自分の健康を守ることでもある
男性の中には、「不妊治療は女性の問題」と考える人もいますが、それは大きな間違いです。 精子の質を改善することは、単に妊娠率を上げるだけでなく、がんや生活習慣病のリスクを下げ、自分自身の健康と寿命を守ることにつながります。
不妊治療に協力することは、将来の家族のためだけでなく、自分の健康にも大きなメリットがあります。今日からできることを少しずつ始めて、より健康な未来を目指しましょう!
参考
American Journal of Epidemiology, July 27, 2009.
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「夜更かし」が妊娠を遠ざける?就寝時間と妊活の関係
「妊活を頑張っているのに、なかなか結果が出ない…」
そんな悩みを抱えているあなたは、日々の「就寝時間」を意識していますか?実は、最近の研究で、夜22時45分以降の就寝が不妊リスクを高める可能性があることが明らかになりました。さらに、肥満傾向があるとそのリスクがさらに増加し、朝の習慣が妊娠しやすい体づくりに繋がることも示唆されています。
この記事では、就寝時間と妊娠の密接な関係について、最新の科学的知見をもとに詳しく解説します。
夜更かしが妊娠に影響するって本当?最新研究が示すデータ
近年、睡眠と健康、特にホルモンバランスの関係が注目されています。妊娠も例外ではなく、十分な睡眠や適切な就寝時間は妊娠の可能性に深く関わります。
最新の研究では以下が報告されています。
- 22時45分以降に就寝する人は、不妊リスクが高まる傾向にある。
- 睡眠不足が続くと、排卵やホルモンバランスに悪影響。
- BMIが高い人(肥満傾向がある人)は、就寝時間の遅れによる不妊リスクがさらに増加。
- 朝食を摂ることや太陽光を浴びることが、体内リズムを整え、妊娠しやすい体づくりに役立つ。
つまり、単なる睡眠不足だけでなく、就寝時間が遅くなること自体が、妊娠しづらくなる要因となることが科学的に裏付けられてきているのです。
なぜ「遅寝」が不妊リスクを高めるのか?
就寝時間が遅くなることで、私たちの体には具体的にどのような影響があるのでしょうか?
1. メラトニンの分泌低下と卵子の老化
メラトニンは「睡眠ホルモン」としてよく知られていますが、実は強力な抗酸化作用も持っており、卵子の質を守る上で非常に重要な役割を果たしています。メラトニンは夜間に分泌が最大になりますが、就寝時間が遅くなると、その分泌量が減少してしまいます。メラトニンの不足は、卵子の酸化ストレスを増加させ、卵子の老化を早める可能性が指摘されています。
2. ホルモンバランスの乱れと排卵への影響
睡眠不足や不規則な就寝時間は、妊娠に必要なエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌リズムを乱します。これにより、正常な排卵が妨げられたり、月経不順や無排卵のリスクが高まることがあります。特に、夜更かしによる自律神経のバランスの崩れは、これらのホルモン調節に大きな影響を与えると考えられています。
3. ストレスホルモンの増加と妊娠しづらさ
夜遅くまで起きていると、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が増加します。コルチゾールが過剰に分泌されると、妊娠に必要な生殖ホルモンの分泌が抑制されることが分かっています。ストレスは妊活中の心身にとって大敵であり、質の良い睡眠習慣を確立することは、ストレス軽減にも直結します。
肥満と夜更かしの「ダブルパンチ」
今回の研究では、特にBMIが高い人(肥満傾向がある人)が、就寝時間の遅れによる影響をより強く受けることが示されました。肥満自体も妊娠に影響を与える要因であり、夜更かしがそれに拍車をかける形になります。
- インスリン抵抗性の上昇:排卵障害(多嚢胞性卵巣症候群など)を引き起こす可能性があります。
- エストロゲンの過剰分泌:脂肪細胞からもエストロゲンが分泌されるため、過剰になるとホルモンバランスが乱れ、着床環境が悪化することがあります。
- 慢性的な炎症:体内の慢性的な炎症は、子宮内膜の環境を悪化させ、着床しづらくなる原因となります。
さらに、夜遅くに食事をすると、血糖値が上昇しやすくなり、これがホルモンの分泌リズムを狂わせる一因とも考えられます。
妊娠しやすい身体を作る「朝の過ごし方」
妊娠しやすい身体を作るためには、夜の睡眠習慣だけでなく、朝の過ごし方も非常に重要です。
- 朝日を浴びる:目覚めてすぐに太陽の光を浴びることで、脳内の体内時計がリセットされます。これにより、夜にはメラトニンが適切に分泌され、質の良い睡眠に繋がります。
- 朝食をしっかり摂る:規則正しい時間に栄養バランスの取れた朝食を摂ることで、血糖値が安定し、ホルモン分泌のリズムが整いやすくなります。
- 軽い運動を取り入れる:朝のウォーキングや軽いストレッチは、血行を促進し、代謝をアップさせます。
特に朝日を浴びることは、日中のセロトニン(幸せホルモン)の分泌を促し、これが夜にはメラトニンへと変化するため、睡眠の質全体を向上させる効果が期待できます。
妊活中にできる!快眠&早寝習慣の具体的なステップ
妊娠しやすい体づくりのために、今日から「早寝習慣」を取り入れてみましょう。
- 22時30分までにベッドへ:遅くとも22時45分以降の就寝を避けることを意識しましょう。
- 寝る1時間前はスマホ・PCを控える:スマートフォンやパソコンから発せられるブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質を低下させます。
- カフェイン・アルコールは控えめに:特に夕方以降は、カフェイン(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)やアルコールの摂取を避けましょう。これらは睡眠を妨げる原因となります。
- 日中に軽い運動を取り入れる:ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、心身をリラックスさせる中程度の運動を日中に取り入れると、夜間の睡眠の質が向上します。
- 寝室の温度と湿度を調整する:快適な睡眠環境を整えることも重要です。夏は涼しく、冬は暖かく、適切な湿度を保ちましょう。
まずは、「今より寝る時間を30分早める」といった小さな目標から始めてみてください。継続することで、身体は少しずつ変化していきます。
まとめ
最新の研究は、就寝時間が遅くなるほど、特に肥満傾向のある妊活中の女性にとって、不妊のリスクが高まる可能性を示しています。
- 夜22時45分以降の就寝は不妊リスクを高める可能性がある。
- メラトニンの分泌低下やホルモンバランスの乱れ、ストレスホルモンの増加がその理由。
- 朝食をしっかり摂り、朝日を浴びる習慣が体内リズムを整え、妊娠しやすい体づくりに役立つ。
- 規則正しい「早寝快眠習慣」を取り入れることが、妊娠の可能性を高める重要な一歩となる。
夜更かしを控えて、心身ともに健康な状態を保つことが、妊娠しやすい体をつくるための大きな助けとなります。今日からぜひ、ご自身の睡眠習慣を見直してみましょう。
📚参考文献
38歳(低AMH・P4低値)保険適用での移植6回陰性後に自然妊娠
大阪府大阪市からお越しのMさん(38歳)が妊娠されました。
終わりの見えない不妊治療との闘い
Mさん(38歳、看護師)が当院に初めてお越しになったのは、2023年1月でした。2年にわたる妊活期間を経て、すでに不妊治療専門クリニックで体外受精を進めている段階でした。
初診時のMさんは、ご自身では「体調は良好」と仰っていましたが、詳しくお話を伺うと、以下のような慢性的な不調を抱えていました。
- 身体的症状: 肩・首のこり、足のむくみ、だるさ、頭痛、目の疲れ
- 睡眠: 平均6時間と短めで、夢をよく見る
- 生理: 生理痛があり鎮痛剤を服用、経血量が多い
- 生活習慣: ストレス過多、便秘、冷え性
- クリニックの診断: 黄体ホルモン(P4)低値、甲状腺機能やや低値、低AMH(転院後の検査で判明)
これまでに2回の採卵、2回の胚移植(保険適用)を経験し、1回目の移植で陽性反応が出たものの、8週で流産。次の移植は陰性という結果でした。
「このまま治療を続けても良い結果が出るのだろうか…」
Mさんは、このような不安を抱えながら、体質改善と移植に向けて身体を整えたいと、当院での鍼灸治療を始められました。
2年間の不妊期間から始まった鍼灸治療
当院では、Mさんのその日の体調を詳しく伺い、上記の慢性症状や自律神経の乱れに対する鍼灸治療を行いました。加えて、不妊治療の段階に合わせ、子宮や卵巣への血流促進を目的とした鍼灸・レーザー治療を重点的に実施しました。
2023年1月:鍼灸開始とERA検査
鍼灸を始められたこの周期は、ERA検査(子宮内膜受容能検査)を予定していました。問診で判明した様々な慢性症状に対しての施術を実施。ERA検査後には、Mさんから「内膜がいつもより2ミリ厚くなっていて、前回の鍼が効いたのかも」という嬉しいご報告がありました。
2023年2~3月:移植周期(保険適用3回目/4回目)
翌月からの移植周期では、残念ながら2回連続で陰性という結果に。特に、移植後のP4値が低く、薬で補充してもなかなか上がらないという課題が浮き彫りになりました。凍結胚は初期胚が1個残っていましたが、Mさんは再度採卵を行うことを決断されました。
2023年4~5月:転院と採卵周期
パートタイムで職場を掛け持ちしていたMさんは、遅い時間まで診療しているクリニックへの転院を決意。新しいクリニックでは、一度タイミング療法を行ってから採卵に進む方針でした。
当院では、この採卵周期も引き続き卵巣への血流促進に注力し、卵子の質向上を目指した鍼灸・レーザー治療を行いました。その結果、採卵数11個中、初期胚1個、胚盤胞3個を凍結でき、Mさんは「今まででグレードが一番良かった」と喜ばれていました。
2023年6~7月:お休み周期
採卵後のお休み周期では、これまでギザギザだった基礎体温が安定。Mさんいわく「D2でしっかり低温期だったのが、今日から高温期みたいになった」とのこと。身体のホルモンバランスが整ってきている兆候が見られました。
2023年8月:移植周期(保険適用5回目)
自然周期での移植に臨み、子宮への血流促進を図る鍼灸・レーザーを強化。卵胞の成長はゆっくりでしたが、鍼灸の効果もあり、D16に9mmだった卵胞が翌週には17mmに成長。内膜も8.5mmから12.5mmまで厚くすることができました。
しかし、凍結融解胚盤胞移植の結果は、フライング検査でうっすら陽性反応が出たものの、血液検査のhCG値は10と低く、化学流産という結果に。Mさんは悔しさに涙を流されました。
2023年9~11月:検査と2度の採卵周期
化学流産後、Mさんは不育症検査、トリオ検査、そしてPGT-A(着床前遺伝子検査)を行いました。不育症検査は問題なしでしたが、EMMA検査で善玉菌ゼロが判明し、抗生剤を開始。
PGT-Aを見据えた1度目の採卵では、見えていた17個の卵胞から採れたのは7個、凍結に至ったのはゼロという厳しい結果に。クリニックからは卵巣刺激法の変更や卵子活性法が提案されましたが、Mさんは前回より悪くなった結果に納得がいかない様子でした。
続く2度目の採卵、D2の卵胞チェックでは左右に1個ずつしか見えませんでした。この時も卵胞の成長と体質改善を目指した鍼灸を継続。D13には11個の卵胞が見え、最大22mmに成長しました。
しかし、採卵数は見えていた卵胞の約半分である6個。その内、成熟卵は3個で、凍結できた1個(5BB)の胚盤胞をPGT-Aに提出されました。Mさんは涙を流し、「採卵を続けるごとに結果が良くない方に進む」現実に、深い疲労感と絶望を感じていました。この状況を受け、Mさんは再度クリニックを転院することを決断されました。
2023年12月:転院
新しいクリニックでの治療が始まり、まずタイミング療法と基本的な検査を再度受けました。この再検査で、今まで気づいていなかった「低AMH」が判明し、サプリメント(DHEA)の服用が追加されることになります。同時期に届いたPGT-Aの結果は残念ながら正常胚ではなかったため、破棄されました。
2024年2~3月:採卵周期/移植周期(保険適用6回目)
新しいクリニックでの最初の採卵(PPOS法)での結果は、見えていた7個の卵から6個の成熟卵が採れ、初期胚1個、胚盤胞5個が凍結できるという、これまでの採卵で過去最高の結果でした。Mさんも少しホッとされた様子でした。この間も、鍼灸による卵巣への血流促進は継続されていました。
そして、保険適用最後の移植はSEET法を選択、内膜の成長も順調に進みました。融解した胚盤胞は4ABから5ABに変化。しかし、結果は残念ながら陰性でした。
この時、Mさんは「今までは採卵後の移植は、いつもP4が低く薬を追加しても改善しなかったのに、今回はP4値がしっかりあった。薬の内容もシンプルだった」と、クリニックによって治療の考え方が全く違うことを実感されていました。
2024年5月:お休み周期で妊娠
最後の保険適用移植の陰性判定を受け、次周期に移植を予定していたMさん。この間に子宮収縮検査を受けることになり、さらに大好きな沖縄旅行を計画されていました。
そして、沖縄旅行に行かれる前日、Mさんから当院に自然妊娠をされたとのご報告が入りました。
体外受精の治療ステージにいたMさんにとって、全く予想外の結果で本人も驚かれていました。本人曰く、「なんとなく取ったタイミング」での妊娠だったそうです。
妊娠後も、当院でマタニティ鍼灸を継続し、妊娠8〜10週の壁を越え、つわりや便秘などのケアを行いながら安定期へと移行。2024年10月には妊娠21週で鍼灸を卒業されました。その後、妊娠30週で逆子が判明しましたが、鍼灸による逆子治療により無事治ったとのことです。
まとめ
Mさんのケースは、長期にわたる不妊治療の難しさ、そしてそれでも自然妊娠の可能性がゼロではないことを示しています。何が決め手となったのかは一つに断定できませんが、Mさんがされてきたこと全てが、この結果に繋がったのだと思います。
- 鍼灸による体質改善の継続: 週に1回の鍼灸レーザーによる子宮卵巣の血流促進と全身の体質改善が、卵子や内膜の状態、ホルモンバランスの改善に繋がったと考えられます。
- クリニック選びの重要性: クリニックによって治療の考え方やアプローチが異なるため、Mさんのように転院が成功の鍵となることもあります。ご自身に合ったクリニックを見つけることが、妊娠・出産までの道のりを大きく変える可能性があります。
- 心の健康の影響: 長引く不妊治療による精神的なダメージは計り知れません。Mさんの場合、転院によって状況が変わり、それが精神的に良い影響を与え、妊娠しやすい状態に繋がったのかもしれません。
- 「お休み周期」の思わぬ効果: 積極的に治療をしない「お休み周期」で心身がリラックスし、自然妊娠に至るケースは他の方にも見られます。
当院では、妊娠しやすい身体づくりはもちろん、患者さんの心の健康も重視し、些細な変化も見逃さないよう、お一人おひとりに寄り添ったサポートを心がけています。
Mさん、本当におめでとうございます。出産まであとわずかとなりましたが、無事にご出産されることを心より願っております。そして、ご家族3人で幸せなご家庭を築かれていかれることを願っております。
もしあなたが、Mさんのように不妊治療で悩んでいらっしゃるなら、ぜひ一度当院にご相談ください。あなたの「妊娠したい」という願いを、心身両面から全力でサポートさせていただきます。
Mさん妊娠お喜びの声
▢ お悩みの症状またはご来院当初の目的をお聞かせください。
1回目の移植で稽留流産、2回目の移植が陰性となり、他に何か出来ることがないか探してい 時に鍼灸が良いと聞いたので挑戦してみようと思ったため。
▢ 鍼灸以外で妊娠(陽性反応)された方法に〇をつけてください。
自然妊娠 次の移植を控えていた前の周期で自己タイミング法での自然妊娠
▢ ご自身で「これは良かった!」「自分に合っていた!」と思われた妊活があればお教えください。
レーザー・温活・ウォーキング ・サプリメント
▢ 鍼灸施術を受けていただいた感想をお聞かせください。
初めての鍼灸で最初は不安でしたが痛みもなくこれなら続けられそうと思い通わせて頂きました。毎回レーザーと鍼灸を受けていましたが、終わった後にはポカポカして身体が温まっているのを実感しました。自宅での温活と併せて冷え症は改善したと思います。
1番変化を感じたのは生理痛とドロッとした経血 がほとんどなくなったことでした。毎回その時の体調や治療のスケジュールに合わせた施術をして頂いたおかげで、便秘や腰痛などのマイナートラブルの改善や、採卵での凍結結果の改善、移植時の内膜が厚くなったりたりと通い始める前と比べて良くなったなと感じることがたくさんありました。
いつも正嗣先生にお願いしていたのですが、クリニックで聞けなかったことや疑問に思ったことを質問すると分かりやすく教えて下さり転院の相談にも乗って頂きました。施術中も世間話をしたり楽しく受けることが出来ました。
▢ 同じように悩まれている方ヘアドバイス(ご自身でやって良かったこと、若しくは続けることが出来たセルフ妊活など)、やメッセージがあればお願いいたします。
不妊治療を始めてから約2年半、保険での移植6回が上手くいかず、いつまで続けたらいいのか、でも諦められないからもう1回頑張ろうと思った矢先のまさかの自然妊娠でした。驚きしかなく、最初はまた流産してしまうかもしれないと不安ばかりでしたが、何とか安定期を迎えることが出来てひとまずホッとしているところです。不妊治療中は、先も見えないしいつまで続くのか分からない不安と恐怖で治療のことでいつも頭がいっぱいでした。周りに気軽に話せることでもなかったので、余計に一人で抱えこんでいた様に思います。
こちちに通うようになって、病院以外で治療について話せる場所があったのはとても大きいことでした。先生たちの豊富な知識と色んな方の経験談などを聞かせてもらって、自分の中の疑問が解決していくことで次はこうしてみようと前向きに治療に向かえたと思います。ありがとうございました。
※【免責事項】すべての方にあてはまるものではありません。効果の実感には個人差があります。
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月経期のヨガはOK?妊娠しやすい体をつくるための注意点と実践法
月経中の身体の変化について
月経は、女性にとって毎月の自然な生理現象ですが、その過程でいくつかの複雑な身体の変化が起こります。その一例として、月経血が逆流して腹腔内に入ることがあります。これは稀な現象ではありますが、この期間中、子宮は内膜を排出するために収縮し、ホルモンバランスも変動します。そのため、適切なヨガの実践が重要になります。
月経血の逆流とは
月経血の逆流は、月経期間中に子宮内膜が子宮から排出される際、一部の血液や組織が卵管を通じて腹腔内に逆流する現象です。この現象は一般に「レトログレード月経」と呼ばれます。通常の月経では、子宮から膣を通じて外部に排出されるべき血液が、逆流してしまうことがあります。
逆流の原因
月経血の逆流の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
- 子宮の収縮:子宮筋の異常な収縮が逆流を引き起こす可能性があります。
- 卵管の形状や機能:卵管の閉塞や異常が原因となることがあります。
- ホルモンの影響:ホルモンのバランスが逆流に影響を与えることがあります。
※ヨガのポーズによっては逆流を促してしまうポーズがあります。
逆流による健康への影響
月経血が腹腔内に逆流すると、様々な健康問題が生じる可能性があります。
- 子宮内膜症:逆流した子宮内膜が腹腔内に着床し、炎症や痛みを引き起こします。
- 慢性的な骨盤痛:持続的な痛みや不快感が生じることがあります。
- 不妊症:子宮内膜症の進行によって不妊症の原因となることがあります。
対処法と治療
月経血の逆流に関連する問題に対処するための方法や治療法がいくつか存在します。
- 薬物療法:ホルモン療法や鎮痛剤の使用が一般的です。
- 手術療法:子宮内膜症の手術や卵管の処置が必要な場合があります。
- 生活習慣の改善:適切な運動や食事、ストレス管理が症状の緩和に役立ちます。
月経中にヨガをする利点
月経中にヨガを行うことで、以下のような利点があります。
- ホルモンバランスの調整
ヨガはホルモンバランスを整える効果があることが多くの研究で示されています。ヨガを習慣的に行うことで、副交感神経のバランスが整い、神経を静める脳内の神経伝達物質であるギャバ(GABA)の分泌が増加します。GABAは神経の興奮を抑え、ストレス、恐怖、抑うつ、不安を和らげる効果があります。 - メンタルの安定と幸福感の向上
ヨガはメラトニンの濃度を高めて睡眠を調整し、オキシトシン(「幸せのホルモン」として知られる)の濃度を高めることで幸福感を向上させます。さらに、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の分泌も増加し、天然の抗うつ剤として作用します。 - 血流促進
適切なポーズを行うことで骨盤内の血流が促進され、月経痛の軽減に役立つとともに、子宮や卵巣への酸素供給と栄養供給が増加し、妊娠しやすい身体作りに貢献します。 - ストレス軽減
ヨガのリラクゼーション効果により、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、ホルモンバランスを維持しやすくします。日本の研究では、ヨガのクラス後にセロトニンの分泌が上昇し、コルチゾールの抑制が確認されています。
避けるべきヨガのポーズ
一部の専門家は、月経血の自然な排出を妨げる可能性があるとして、以下のポーズを避けるべきだとしています一方で、医学的な明確な根拠は十分に確立されていません 。
- 太鼓橋のポーズ
- 肩立ちのポーズ
- 鋤のポーズ
- これらに類似するポーズ
ヨガの実践時の注意点
- 無理をせず、自分の体調に合わせる。
- 深い呼吸を意識して、リラックスを重視。
- 強いストレッチや圧迫を避け、ゆったりと動く。
- 月経中のヨガは個々の体調や感覚に従い、無理のない範囲で行うことが推奨される。
まとめ
月経期のヨガは、身体に負担をかけず、リラックスを促すことが重要です。また、ヨガを習慣的に行うことでホルモンバランスが整い、血流が改善され、妊娠しやすい身体が作られます。適切なポーズを選ぶことで、月経期を快適に過ごし、健康的なライフスタイルを維持することができます。
参考文献
- 太田裕伊, 藤雅之, 長澤佳穂, 山本康嗣, 丸岡寛, 津戸寿幸, 加藤俊. 後腹膜腔に発生した子宮内膜症性嚢胞の1例. 日本産科婦人科内視鏡学会雑誌. 2022; 38(2): 219-223. doi: 10.5180/jsgoe.38.2_219.
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不妊の検査でわかること【妊娠への第一歩は正確な診断から】
不妊症の原因を明確にするためには、男女ともにしっかりとした検査が必要です。適切な検査を行うことで、原因を特定し、最適な治療を受けることができます。特に女性においては、卵巣機能やホルモンバランスの確認が重要です。
女性の不妊検査
女性側の不妊検査には、いくつかの重要なステップがあります。
- 基礎体温の測定
基礎体温を記録することで、排卵が正常に行われているか確認します。排卵後の体温上昇を見て、低温期と高温期がしっかりと分かれているかをチェックします。 - 頸管粘液検査
頸管粘液が精子をサポートするかを確認します。クラミジアなどの感染症も調べられます。 - フーナーテスト
排卵期に性交後、頸管粘液中の精子の運動性を確認し、精子が子宮内に進むことができているかを調べる検査です。 - 子宮卵管造影
卵管の通過性や子宮の形態に異常がないかを確認します。卵管閉塞や狭窄が不妊の原因となっていないかをチェックします。 - 経膣超音波検査
超音波を用いて子宮や卵巣の状態を確認します。卵胞の発育や子宮内膜の厚さを観察し、排卵のタイミングを把握することが可能です。 - ホルモン検査
脳下垂体や甲状腺から分泌されるホルモンの状態を確認し、ホルモンバランスに問題がないかをチェックします。 - AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査
AMHは、卵巣内にどれくらいの卵子が残っているかを測定する検査です。卵巣予備能の指標となるため、年齢や月経周期に関係なく、卵巣の機能を客観的に把握するための重要な検査です。特に、卵巣の機能低下や早発閉経のリスクを確認する際に有用です。 - 排卵と卵胞発育の確認
排卵が実際に起こっているか、卵胞が正常に発育しているかを確認することも不妊診断において欠かせません。経膣超音波を使って、排卵の兆候や卵胞の大きさを測定し、タイミングを正確に把握します。これにより、排卵障害や無排卵の原因を特定することが可能です。 - 抗精子不動化抗体
抗精子不動化抗体とは、精子を不動化させる作用を持つ自己抗体の総称であり、精子の活動を阻害することで卵子との受精を妨げ、免疫性不妊の原因となる。
不妊の検査にはさまざまな種類がありますが、基本的には上記のような検査を受けることが重要です。これらの検査は、不妊の原因を包括的に評価し、適切な治療方針を立てるための基盤となります。追加の検査が必要な場合もありますが、まずはこれらの基本的な検査を行うことをおすすめします。
男性の不妊検査
男性側では、精液検査が一般的ですが、これだけでは不十分な場合があります。精索静脈瘤や精子のDNA損傷といった精液検査で検出しにくい問題も存在します。したがって、精液検査に加え、触診を行ってくれる医療機関を選ぶことが重要です。
触診の重要性
男性の不妊症の診断において、触診は欠かせないステップです。精索静脈瘤や精管の異常は触診で初めて発見されることが多く、精液所見だけでは見つからない異常を発見できるため、触診や超音波検査を行ってくれる医療機関を推奨します。
まとめ
不妊症の検査は、正確な診断と早期の対応が妊娠への大切なステップです。女性はホルモンバランスや卵巣機能の確認を含め、男性は精液検査に加え、触診も含めた包括的な検査を行うことが重要です。適切な医療機関を選び、最適な治療を受けることが成功のカギとなります。
参考文献
- ・日本産科婦人科学会:「不妊カップルに対する検査のアルゴリズム」(最終アクセス日: 2025年1月23日)
- ・厚生労働省:「不妊治療の実態に関する調査研究について」令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「不妊治療の実態に関する調査研究(概要版)
- ・厚生労働省:「生殖医療ガイドラインの考え方」東京大学大学院医学系研究科産婦人科学大須賀穣1 2021.11.17 中医協