ART児は自然妊娠児よりもリスクが高い
ART児は自然妊娠児よりも早産リスクが高い
不妊治療を進めている多くの方にとって、体外受精(ART: Assisted Reproductive Technology)は希望の光です。しかし、ARTによって生まれた子ども(ART児)は、自然妊娠児と比べていくつかのリスクがあることが知られています。その中でも特に「早産」のリスクが高まることが報告されています。この記事では、そのリスクと背景について詳しく見ていきましょう。
ART児と早産リスクの関係
さまざまな研究が示すところによると、ARTで生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比較して「早産」のリスクが高まることがわかっています。特に、新鮮胚移植によって生まれた子どもは、低出生体重児(LBW)や在胎週数に対して小さい赤ちゃん(SGA)のリスクが高い傾向にあります。また、凍結融解胚移植によって生まれた子どもは、逆に大きめの赤ちゃん(LGA)として生まれることが多いですが、それでも早産のリスクは依然として残っています。
Elias et al. (2020) の研究によれば、ART児は自然妊娠児に比べて早産や低出生体重のリスクが高いことが確認されています。また、凍結融解胚移植児はLGAのリスクが高まる一方、新鮮胚移植児はLBWやSGAのリスクが高まる傾向が見られます
日本におけるARTの現状
2021年の日本産婦人科学会による最新のARTデータによれば、ARTによって年間69,797人の子どもが生まれています。この数は過去最多であり、全出生児数の約11.6人に1人がARTによる出生であることを示しています。特に、凍結融解胚移植による出生が大多数を占めています。
凍結融解胚移植による出生児は、大きめの赤ちゃん(LGA)のリスクが高い一方、新鮮胚移植による出生児は早産や低出生体重、SGA(在胎週数に対して小さめの赤ちゃん)のリスクが高い傾向があります。
早産リスクを理解した上での選択
ARTによる妊娠は、不妊治療を受ける多くのカップルにとって貴重な選択肢です。しかし、治療方法によっては、周産期におけるリスクが増加する可能性があることも理解しておくことが重要です。特に、早産や低出生体重といったリスクは、出産のタイミングや赤ちゃんの健康状態に影響を与えるため、妊娠中の適切な管理が欠かせません。
主治医としっかりと話し合い、治療の選択肢を理解した上で、リスクを軽減するための最善の方法を選択しましょう。凍結融解胚移植が適しているのか、新鮮胚移植が良いのか、それぞれのケースに応じて異なるため、医療チームとの連携が重要です。
まとめ
不妊治療は、多くの方にとってかけがえのない希望となる手段です。しかし、ARTによる妊娠では、自然妊娠に比べて早産のリスクが高まることを理解し、そのリスクに備えた対策を講じることが重要です。妊娠中は適切なケアを受け、早産のリスクをできるだけ軽減するために、医療チームと緊密に連携して進めていくことが推奨されます。
参考文献
- Elias et al., Archives of gynecology and Obstetrics, 2020
- 日本産婦人科学会, ARTデータブック 2021