
男性妊活でカフェイン・コーヒーは控えるべき?精子・不妊治療への影響
「男性妊活中はコーヒーを控えた方がいい?」「カフェインを飲むと精子に影響する?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、適量のカフェイン摂取によって男性の精液所見が明確に悪化するとは、現時点では言い切れません。
一方、不妊治療を受けているカップルを対象とした研究では、男性のカフェイン入りコーヒーや紅茶の摂取量と、体外受精・顕微授精後の生児獲得との間に関連がみられたという報告があります。
ただし、これは「コーヒーを飲むと妊娠しにくくなる」という因果関係を証明した研究ではありません。
この記事では、男性妊活におけるカフェイン・コーヒー・アルコールと精子、不妊治療成績との関係について、研究結果をもとにわかりやすく解説します。
- 男性のカフェイン摂取と精子濃度・運動率・形態などの精液所見には、明確な関連が確認されていない研究が多くあります。
- 不妊治療を受けたカップルの研究では、男性のカフェイン入りコーヒー・紅茶の摂取量が多いグループで、生児獲得確率が低かったという関連が報告されています。
- アルコールについても飲料の種類によって異なる関連がみられましたが、観察研究のため因果関係は分かりません。
- ビールを飲めば妊娠しやすくなるという意味ではなく、妊活のためにビールを増やすことはおすすめできません。
- 妊活中はカフェインやアルコールだけを気にするのではなく、睡眠・喫煙・体重・運動・食事など生活習慣全体を見直すことが大切です。


男性妊活でカフェインは精子に影響する?
カフェインは、コーヒーだけではなく、紅茶、緑茶、エナジードリンク、コーラ、一部の栄養ドリンクなどにも含まれています。
男性妊活では「カフェインを飲むと精子が減るのでは?」と心配されることがありますが、これまでの研究をまとめたシステマティックレビューでは、コーヒーや紅茶などから摂取するカフェインと一般的な精液所見との関連について、研究結果は一貫していません。
つまり、コーヒーを飲んでいるという理由だけで精子の数や運動率が悪くなる、と単純に考える必要はありません。
ただし、男性の妊孕性は精液検査の数値だけで判断できるものではありません。不妊治療後の妊娠や生児獲得まで含めると、まだ分かっていない部分もあります。
男性の飲み物と不妊治療成績を調べた研究
今回取り上げるのは、ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院などの研究グループによるEARTH Studyの解析です。
2007年から2019年に不妊治療を受けた男性を対象として、妊娠前の飲料摂取量と精液所見、不妊治療成績との関連が調べられました。
精液所見については343人・896検体、不妊治療成績については296組のカップル・714治療周期が解析されています。
調べられた主な飲料は次のとおりです。
- カフェイン入り飲料
- アルコール飲料
- 砂糖入り飲料
- 人工甘味料入り飲料
研究では、精液量、精子濃度、精子数、運動率、正常形態率などに加え、受精、着床、臨床妊娠、妊娠喪失、生児獲得などが調べられました。
研究全体では精液所見との明確な関連はみられなかった
まず重要なのは、カフェイン飲料・アルコール飲料・砂糖入り飲料・人工甘味料入り飲料という大きな分類では、男性の精液所見との明確な関連は確認されなかったという点です。
また、飲料全体の摂取量についても、受精・着床・臨床妊娠・生児獲得との一貫した関連は確認されませんでした。
その一方で、「コーヒー」「紅茶」「ビール」「蒸留酒」など飲料の種類を個別に解析すると、一部で生児獲得との関連がみられました。
カフェイン入りコーヒー・紅茶と生児獲得の関連
IVF・ICSI(体外受精・顕微授精)を受けたカップルについて詳しく解析したところ、男性のカフェイン入りコーヒーや紅茶の摂取量が多いグループほど、生児獲得確率が低いという関連がみられました。
☕ カフェイン入りコーヒー
摂取量が最も少ないグループ:生児獲得確率 約49%
摂取量が最も多いグループ:生児獲得確率 約33%
🫖 カフェイン入り紅茶
摂取量が最も少ないグループ:生児獲得確率 約49%
摂取量が最も多いグループ:生児獲得確率 約31%
ただし、この数字だけを見て「男性がコーヒーや紅茶を飲むと生児獲得率が下がる」と判断することはできません。
この研究は飲み物を無作為に割り付けた試験ではなく、普段の飲料摂取と治療成績を追跡した観察研究です。
年齢、食生活、睡眠、仕事内容、ストレス、その他の生活習慣など、完全には調整できない要因が結果に影響している可能性があります。
アルコールは男性妊活にどう影響する?
アルコールについても、すべてのお酒で同じ結果になったわけではありません。
🥃 蒸留酒
摂取量が最も少ないグループ:生児獲得確率 約45%
摂取量が最も多いグループ:生児獲得確率 約32%
蒸留酒の摂取量が多い男性では、生児獲得確率が低い方向の関連がみられました。
🍺 ビール
摂取量が最も少ないグループ:生児獲得確率 約32%
摂取量が最も多いグループ:生児獲得確率 約51%
一方、ビールでは摂取量が多いグループほど生児獲得確率が高いという関連がみられました。
ただし、これは「ビールを飲むと妊娠しやすくなる」という意味ではありません。
研究者自身も、ビールを飲む人と蒸留酒を飲む人では食事や生活習慣などに違いがある可能性や、測定されていない要因が影響した可能性を指摘しています。
そのため、妊活を目的としてビールの摂取量を増やすことはおすすめできません。
砂糖入り飲料・人工甘味料入り飲料について
この研究では、砂糖入り飲料や人工甘味料入り飲料についても調べられました。
研究全体では、これらの飲料と精液所見や主要な不妊治療成績との間に、一貫した明確な関連は確認されませんでした。
ただし、糖分の多い飲料を日常的に大量摂取することは、体重増加や代謝面など別の健康問題にもつながる可能性があります。
男性妊活では、一つの飲料だけを見るのではなく、食生活全体を考えることが大切です。
男性妊活ではコーヒーをやめた方がいい?
今回の研究だけを理由に、妊活中の男性がコーヒーを完全にやめる必要があるとは言えません。
米国生殖医学会(ASRM)も、妊娠を希望している時期のカフェインは少量から中等量にとどめるという考え方を示しており、中等量のカフェイン摂取が男性の精液所見を悪化させるという明確な根拠は示されていません。
毎日コーヒーやエナジードリンクを何杯も飲んでいる方は、まず「自分がどのくらいカフェインを摂っているのか」を確認してみるとよいでしょう。
特に、次のような飲み方が続いている場合は見直してみてもよいでしょう。
- コーヒーを1日に何杯も飲んでいる
- エナジードリンクや高カフェイン飲料を習慣的に飲んでいる
- 夕方から夜にもカフェインを多く摂っている
- カフェインによって睡眠時間が短くなっている
- コーヒーとエナジードリンクなど複数の飲料からカフェインを摂っている
急にすべてやめる必要はなく、通常のコーヒーの一部をデカフェにする、夜はノンカフェイン飲料にするなど、無理なく調整してみましょう。
男性妊活で飲み物より先に確認したい生活習慣
男性妊活では、「コーヒーを飲んだかどうか」だけに神経質になる必要はありません。
精子の状態には、さまざまな生活習慣や身体の状態が関係します。
- 喫煙していないか
- 飲酒量が多くなっていないか
- 十分な睡眠を確保できているか
- 肥満や急激な体重増加がないか
- サウナや長風呂などで精巣を頻繁に温めていないか
- 適度な運動をしているか
- 食事が偏っていないか
- 強いストレスや疲労が続いていないか
飲み物一つに原因を求めるのではなく、改善できる生活習慣を少しずつ見直していくことが現実的です。
精子が気になる場合は精液検査で確認を
「コーヒーを飲んでいるから精子が悪いのでは」と心配していても、実際の精子の状態は飲み物だけでは判断できません。
妊娠を希望している期間が長くなっている場合や、すでに不妊治療を始めている場合、精子について心配がある場合には、精液検査で確認することが大切です。
精液検査では、精液量、精子濃度、総精子数、運動率、形態などを確認できます。
異常を指摘された場合は、自己判断でサプリメントや食事だけで対応せず、泌尿器科や男性不妊を扱う医療機関に相談してください。
男性妊活では、「コーヒーもお酒も全部やめないといけないのでは」と生活習慣を気にしすぎてしまう方もいらっしゃいます。
一つの飲み物だけで妊娠の結果が決まるわけではありません。まずは飲みすぎになっていないかを確認し、睡眠・食事・運動・ストレスなども含めて、無理なく続けられる範囲で整えていくことが大切です。
精液検査で異常を指摘されている場合や、不妊治療中で飲酒・カフェインについて心配がある場合は、治療を受けている医療機関にも相談してみましょう。
Q. 男性妊活中はコーヒーを完全にやめた方がいいですか?
A. 現時点では、妊活中の男性がコーヒーを完全に禁止する必要があるとは言えません。毎日大量に飲んでいる場合は量を確認し、無理のない範囲で減らすことを検討しましょう。
Q. カフェインを飲むと精子の数や運動率が下がりますか?
A. コーヒーや紅茶からのカフェイン摂取と一般的な精液所見との関係は、研究によって結果が一致していません。心配な場合は、実際に精液検査を受けて確認する方が確実です。
Q. 妊活中ならビールを飲んだ方がいいですか?
A. いいえ。今回紹介した研究ではビール摂取と生児獲得に正の関連がみられましたが、ビールに妊娠率を高める効果があると証明されたわけではありません。妊活を目的に飲酒量を増やす必要はありません。
Q. エナジードリンクもカフェインとして考えた方がいいですか?
A. はい。製品によってはカフェインを多く含むため、コーヒーだけでなくエナジードリンク、紅茶、緑茶、コーラなども含めて1日の摂取量を確認するとよいでしょう。
Q. 精液検査が悪かったら生活習慣だけ改善すれば大丈夫ですか?
A. 精液所見の変化には精索静脈瘤、ホルモン、発熱、薬剤などさまざまな原因があります。異常を指摘された場合は、生活習慣だけで対応せず、必要に応じて男性不妊を扱う医療機関へ相談してください。
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📚参考文献
-
[1] Salas-Huetos A, Mitsunami M, Mínguez-Alarcón L, et al. The association of men’s beverage intake with semen quality and assisted reproduction outcomes in patients undergoing fertility treatment. Andrology. 2025;13:473-484.
男性のカフェイン・アルコール・砂糖入り飲料などの摂取と、精液所見および不妊治療成績との関連を調べたEARTH Studyの研究です。 -
[2] Ricci E, Viganò P, Cipriani S, et al. Coffee and caffeine intake and male infertility: a systematic review. Nutr J. 2017;16:37.
男性のコーヒー・カフェイン摂取と精液所見、精子DNA、妊孕性に関する研究をまとめたシステマティックレビューです。 -
[3] American Society for Reproductive Medicine. Optimizing natural fertility: a committee opinion. Fertil Steril. 2022.
妊娠を希望する男女の生活習慣についてまとめた米国生殖医学会の委員会意見で、カフェインやアルコールとの付き合い方についても示されています。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
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