
【夏に妊娠率が下がるのはなぜ?】冷えと暑熱ストレス
「夏は妊娠しにくい季節」と聞いたことはありませんか?
暑さと妊娠率の低下には、冷えや体温の変化、ストレスによる体調不良などが複雑に関係しています。今回は、夏に妊娠率が低下する原因について、東洋医学的な視点と最新の知見をもとに解説します。
目次
人の体温調節機能は“暑さ”には強いが“冷え”には弱い?
人間には体温を一定に保つための調節機能が備わっています。しかし、暑さには汗をかいて対応できても、冷えに対する防御機能は非常に限られているのです。特に、体の中でも冷えやすいのが「子宮」です。子宮は体外とつながっている管腔性器官であり、冷気の影響を受けやすい部位です。
赤ちゃんはなぜ“赤ちゃん”?──温かさと柔らかさの象徴
「赤ちゃん」と呼ばれる理由のひとつに、赤血球が多く体温が高い=“赤い・温かい”という説があります。体温が高く血流が良い赤ちゃんの肌は、柔らかくしっとりしています。一方、大人になるにつれて肌は白く乾燥し、筋肉や内臓も硬くなりやすくなります。これは冷えや血流の低下、代謝の衰えが関係しています。
冷えが招くリスク──血流の低下と病気の関係
冷えると硬くなるのは、物体だけでなく人の体も同じです。皮膚や筋肉が硬くなると、それに続いて内臓や血管も硬化し、病気のリスクが高まります。
- 心筋梗塞や脳梗塞:血管の硬化による循環障害
- がん:冷えと深い関係があるとされ、特に「硬く冷たい臓器」にできやすい
夏はなぜ“妊娠しにくい季節”なのか?
夏は基礎代謝が低下しやすい
暑い季節は体が熱を生み出す必要がないため、基礎代謝が自然と落ちてしまいます。さらに、冷房や冷たい飲食物の摂取で体を内側から冷やしてしまい、子宮や卵巣の機能が低下します。
子宮は冷えやすい臓器
特に子宮は中が空洞の「管腔性器官」であるため、体の外気温の影響を受けやすく、冷えによって血流が悪くなり着床しにくい環境になってしまうのです。
データで見る:夏に妊娠が減る傾向
厚生労働省の人口動態統計によると、日本では4月〜6月生まれの出生数が他の季節よりもやや少ない傾向があります。これは、夏(7月〜9月)に妊娠した割合が少ないことが影響している可能性があると考えられています。
“暑熱ストレス”も妊娠率低下の要因に?
暑熱ストレスとは?
暑さによる生理的・精神的ストレスのことで、以下のような影響を引き起こします。
- 自律神経の乱れ
- 睡眠の質の低下
- 栄養吸収の低下
- 免疫力の低下
- ホルモン分泌の不安定化
畜産学の研究では、牛の繁殖にも暑熱ストレスが影響し、繁殖性が大きく低下することが分かっています。この知見は人間にもあてはまるとされており、夏の体調管理が妊娠の成立に影響する可能性が示唆されています。
まとめ
妊娠しやすい身体づくりには、「温めすぎ」でも「冷やしすぎ」でもなく、適切な体温と血流を保つことが大切です。特に夏は油断しがちな季節。以下のような点に気をつけましょう。
夏の妊活で気をつけたいポイント
- 冷房の効いた場所では足元やお腹を冷やさない
- 冷たい飲み物は控えめにし、温かいスープなどで内臓を温める
- 適度な運動で基礎代謝をキープ
- 入浴や足浴で1日の冷えをリセット
参考文献
- 石原結實(2021)『冷えは万病のもと』青春出版社
- 厚生労働省「人口動態統計(年次)」
- 阪谷美樹(2018)『暑熱ストレスと牛の繁殖性』The Journal of Farm Animal in Infectious Disease, 2.