
排卵日に飲酒してしまったら?1回のお酒が排卵・受精に与える影響
「今日が排卵日かもしれないのに、お酒を飲んでしまった」
「排卵検査薬が陽性だった日に飲酒すると、排卵や受精に影響する?」
妊活中は、普段なら気にならない少量の飲酒でも、「今周期はもう妊娠できないのでは」と不安になることがあります。
結論からいうと、排卵日に1回お酒を飲んだからといって、排卵が止まったり、妊娠できなくなったりすると断定できる根拠はありません。
一方で、アルコールが女性ホルモンに一時的な変化を与える可能性や、排卵期に多く飲む人では妊娠の成立しやすさが低下したという研究もあります。そのため、「1回飲んだから今周期はだめ」と考える必要はありませんが、妊娠の可能性がある排卵日前後からは控えるのが安心です。
この記事では、排卵日の飲酒による影響を「排卵」「卵子・受精」「排卵後」の順に、医学的に誤解のないように解説します。
- 排卵日に1回飲酒しただけで、排卵が止まると示した研究はありません。
- 「1杯飲むと卵子が傷つく」「受精できなくなる」と断定できるデータもありません。
- ただし、飲酒直後に女性ホルモンの値が一時的に変化する可能性は報告されています。
- 排卵期に多量の飲酒をする人では、妊娠しやすさの低下と関連した研究があります。
- 飲んでしまった後は自分を責めず、その日以降の飲酒を控えればよいでしょう。


排卵日にお酒を飲んでも、今周期が無駄になるわけではありません
排卵日にお酒を飲んだとしても、その1回だけを理由に「今周期は妊娠できない」と判断する必要はありません。
人を対象とした研究では、少量から中等量の最近の飲酒によって、直ちに排卵が起こらなくなるという明確な結果は示されていません。
また、「排卵日に飲酒すると、その場で卵子の質が低下する」「受精できなくなる」といった単純な仕組みが証明されているわけでもありません。
飲んでしまったことを何度も振り返ったり、タイミングを取ったことを後悔したりする必要はありません。大切なのは、過ぎた飲酒を責めることではなく、これからの飲酒を控えて体調を整えることです。
そもそも「排卵日」は正確に分かるとは限りません
排卵日は、基礎体温、排卵検査薬、おりもの、アプリなどから予測できますが、医療機関の超音波検査を含めても、排卵が起こる時刻まで正確に把握できるとは限りません。
排卵検査薬が陽性になった日も、すでに排卵した日ではなく、排卵が近づいていることを示している場合があります。アプリ上の排卵予定日と、実際の排卵日がずれることも珍しくありません。
そのため、「排卵日に飲んだ」と思っていても、実際には次のような可能性があります。
- まだ排卵前だった
- 排卵が近づいている時期だった
- すでに排卵後だった
米国生殖医学会では、妊娠しやすい期間を排卵日までの6日間としています。排卵予定日付近は、受精につながる可能性がある大切な時期と考えましょう。
排卵日の飲酒で、排卵が止まったり遅れたりする?
排卵は、脳の視床下部や下垂体、卵巣から分泌される複数のホルモンが連携して起こります。そのため、習慣的な多量飲酒は、月経周期やホルモンの働きに影響する可能性があります。
一方、健康な女性を対象にした前向き研究では、最近の中等量の飲酒は、無排卵や月経周期の乱れなどの短期的な月経機能と明確には関連しませんでした。
ただし、飲酒した翌日には、エストラジオールや黄体形成ホルモンなどの値が一時的に高くなる傾向が確認されています。
つまり、現時点の研究からは、次のように考えるのが適切です。
- 排卵日の1回の飲酒で、必ず排卵が止まるとはいえない
- 少量でも女性ホルモンにまったく影響しないとは言い切れない
- 習慣的な多量飲酒と、1回の飲酒は分けて考える必要がある
排卵が遅れた周期があったとしても、その原因を前日の飲酒だけに結びつけることはできません。排卵日は、睡眠、体調、ストレス、発熱、体重の変化など、さまざまな要因によって前後します。
排卵日の飲酒で卵子が傷つくことはある?
「アルコールが卵子に直接届き、すぐに質を低下させるのでは」と心配される方もいます。
しかし、人を対象とした研究で、排卵日に1回飲酒したことによって卵子が傷つく、受精できなくなると証明したデータはありません。
卵子の状態には、年齢、卵巣機能、基礎疾患、喫煙、生活習慣など多くの要因が関係します。1日の行動だけで、卵子の状態や妊娠の結果が決まるわけではありません。
ただし、「直接的な影響が証明されていない」ことと、「どれだけ飲んでも安全」ということは別です。排卵期の飲酒については研究が限られており、個人ごとの安全量を示すことはできません。
排卵期の飲酒と妊娠しやすさを調べた研究
2021年に発表された前向き研究では、月経周期を排卵前、排卵期、黄体期に分けて、飲酒量と妊娠の成立しやすさとの関係が調べられました。
その結果、排卵期に週6杯を超える飲酒をしていた人では、飲酒していない人と比べて妊娠の成立しやすさが低い傾向がみられました。また、排卵後の黄体期では、中等量以上の飲酒も妊娠しやすさの低下と関連していました。
ただし、この研究が示しているのは、一定期間の飲酒習慣と妊娠しやすさの「関連」です。
排卵日に1杯飲んだことが原因で妊娠しなかった、と証明した研究ではありません。
飲酒量は本人の申告であり、食事、睡眠、喫煙、パートナーの生活習慣など、すべての違いを完全に取り除くこともできません。そのため、結果を1回の飲酒にそのまま当てはめないことが大切です。
排卵日に飲んだアルコールが、すぐ赤ちゃんに影響する?
排卵日当日は、まだ受精前、または受精が起こる可能性がある段階です。そのため、排卵日に飲んだアルコールが、その瞬間に胎児へ届くという説明は正確ではありません。
一方で、排卵日は受精につながる可能性がある時期であり、その後は妊娠に気づかない期間へと続きます。
どの時点からどの量なら確実に安全かを人で検証することはできません。CDCやNHSなどの公的機関では、妊娠中だけでなく、妊娠を希望している場合も飲酒を避けることが最も安全と案内しています。
これは「排卵日に少し飲んだら必ず問題が起こる」という意味ではなく、妊娠に気づく前の飲酒をできるだけ避けるための予防的な考え方です。
排卵日にお酒を飲んでしまった後にできること
1.それ以上の飲酒を控える
すでに飲んだアルコールをなかったことにはできませんが、その後の飲酒量は減らせます。排卵日または排卵予定日に飲んだことに気づいたら、その日以降は控えるようにしましょう。
2.水分と食事を普段どおり取る
水分を取り、消化しやすい食事を取りながら、普段どおり過ごしてください。
大量の水を一気に飲む、食事を抜く、激しい運動や発汗でアルコールを抜こうとするといった行動は必要ありません。水分を取っても、アルコールの分解速度を急激に速められるわけではありません。
3.タイミングを取ったことを後悔しない
排卵日に飲酒したからといって、タイミングを取ったことが無駄になるわけではありません。1回の飲酒だけを理由に、今周期の妊活をあきらめる必要はありません。
4.自己判断で治療周期を中止しない
タイミング療法、人工授精、採卵、胚移植などの治療中に飲酒した場合も、自己判断で薬を中止したり、予約をキャンセルしたりしないでください。
使用中の薬や予定されている処置によって注意点が異なるため、多量に飲んだ場合や体調に変化がある場合は、通院中のクリニックへ相談しましょう。
5.強い症状がある場合は医療機関へ相談する
意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が悪い、何度も嘔吐する、呼吸がおかしいといった症状がある場合は、妊活中かどうかにかかわらず、急性アルコール中毒の可能性があります。すぐに救急要請を検討してください。
今後はいつからお酒を控えればいい?
最も分かりやすい方法は、妊活をしている期間はできるだけ飲まないことです。ただし、生活の中で完全に避けることが負担になる方もいるでしょう。
その場合は、少なくとも次のようなルールを検討してみてください。
- 排卵検査薬が陽性になったら飲まない
- 排卵予定日の数日前から飲まない
- 排卵後から妊娠判定日までは飲まない
- 連日の飲酒や、一度に多く飲むことを避ける
- 妊娠検査薬が陽性になった後は飲酒しない
ただし、「排卵前なら安全」「排卵後に少量なら安全」と保証できる境界線があるわけではありません。妊娠の可能性がある周期は控えることが、最も迷いの少ない選択です。
妊活中の飲酒量や、高温期を含めたアルコールとの付き合い方については、排卵日・排卵後・高温期の飲酒は妊活に影響する?でも詳しく解説しています。
この記事のまとめ
排卵日に1回お酒を飲んだからといって、排卵が止まったり、今周期に妊娠できなくなったりすると断定できる根拠はありません。
また、1杯の飲酒によって卵子が傷つく、受精できなくなると証明されているわけでもありません。飲んでしまったことを過度に責める必要はないでしょう。
ただし、排卵期の多量飲酒は妊娠しやすさの低下と関連した研究があり、妊娠を希望している場合に安全と保証できる飲酒量も決まっていません。
飲んでしまった後は、その日以降の飲酒を控え、食事や水分、睡眠を普段どおり整えてください。妊活は、一度の行動だけではなく、無理なく続けられる生活習慣の積み重ねで考えることが大切です。
Q1.排卵日にビールを1杯飲みました。妊娠できなくなりますか?
ビールを1杯飲んだことだけで、妊娠できなくなるとはいえません。排卵や受精が必ず妨げられるとする根拠もありません。過度に自分を責めず、その後の飲酒を控えて普段どおり過ごしてください。
Q2.排卵検査薬が陽性になった日に飲んでしまいました
排卵検査薬の陽性は、排卵が近づいていることを示しますが、その時点で排卵済みとは限りません。1回の飲酒だけで排卵しなくなるとはいえませんが、受精につながる可能性がある時期なので、それ以降は控えるのが安心です。
Q3.排卵日の翌日なら飲んでも大丈夫ですか?
排卵日の翌日は、すでに受精が起こっている可能性があります。また、予測した排卵日が実際とはずれていることもあります。明確に安全な量は示されていないため、排卵後から妊娠判定までは控えることをおすすめします。
Q4.ビールよりワインの方が影響は少ないですか?
妊娠や妊活への影響を考える際に重要なのは、飲み物の種類よりも含まれるアルコールの量です。ワインや日本酒であれば安全という根拠はありません。ノンアルコール飲料を選ぶ場合も、アルコール分が完全に0.00%か表示を確認しましょう。
Q5.人工授精の前日や当日に飲酒してしまったら中止になりますか?
少量の飲酒だけで必ず中止になるとは限りませんが、治療内容や使用している薬によって対応が異なります。自己判断で薬を中止せず、飲酒量や飲んだ時間を通院中のクリニックへ伝えて確認してください。
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📚参考文献
- Anwar MY, Marcus M, Taylor KC. The association between alcohol intake and fecundability during menstrual cycle phases. Human Reproduction. 2021.
月経周期を排卵前・排卵期・黄体期に分け、各時期の飲酒量と妊娠の成立しやすさとの関連を調べた前向き研究です。排卵期の多量飲酒および黄体期の中等量以上の飲酒との関連を確認するために参照しました。 - Schliep KC, Zarek SM, Schisterman EF, et al. Alcohol intake, reproductive hormones, and menstrual cycle function: a prospective cohort study. American Journal of Clinical Nutrition. 2015.
最近の飲酒と女性ホルモン、無排卵や月経周期の乱れなどの短期的な月経機能との関係を調査した研究です。1回の飲酒と排卵への影響を説明する際に参照しました。 - American Society for Reproductive Medicine. Optimizing natural fertility: a committee opinion.
妊娠しやすい期間の考え方や、妊娠を希望する方の飲酒を含む生活習慣についてまとめた米国生殖医学会の委員会見解です。 - Centers for Disease Control and Prevention. About Alcohol Use During Pregnancy.
妊娠中および妊娠を希望している時期には、安全と確認された飲酒量がないとする公的機関の案内です。妊娠判明前を含めた予防的な考え方の参考にしました。 - NHS. Drinking alcohol while pregnant.
妊娠中または妊娠を計画している場合は、飲酒しないことが最も安全と案内している英国国民保健サービスの情報です。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊活中の生活習慣に迷ったときはご相談ください
排卵日前後にお酒を飲んでしまうと、「今周期に影響してしまったのでは」と不安になることもあると思います。しかし、妊娠の結果は一度の飲酒だけで決まるものではありません。ご自身を責めすぎず、これからの睡眠や食事、体調を無理のない範囲で整えていくことが大切です。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、月経周期や不妊治療の予定、冷え、睡眠、ストレスなども伺いながら、お一人おひとりの状態に合わせた妊活中の体調管理をお手伝いしています。
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排卵日前後に飲酒した方から、「せっかくタイミングを取ったのに、すべて台無しにしてしまった気がします」とご相談いただくことがあります。
妊娠の結果は、1回の食事や飲酒だけで決まるものではありません。飲んでしまったことを責め続けるよりも、その後の睡眠や食事を整え、無理なく過ごすことをおすすめしています。
飲酒が習慣になっている場合は、急に完璧を目指すのではなく、「排卵検査薬が陽性になったら控える」「妊娠を希望する周期はノンアルコール飲料に替える」など、続けやすいルールを決める方法もあります。