
肥満は男性の精子の質を低下させる?【肥満と不妊の関係】
男性の肥満や過体重が不妊に与える影響については、まだ完全には解明されていない部分もあります。しかし、近年の多くの研究が、体重管理が精子の質や妊娠率に深く関わっていることを示唆しています。
この記事では、男性の肥満が不妊に与える具体的な影響と、精子の質を改善するための食事や運動のポイントについて、最新の知見を交えて詳しく解説します。
肥満が精子と生殖機能に与える影響
男性の肥満は、精子の質や生殖能力に多角的な悪影響を及ぼす可能性があります。
精子の質が低下する
- 精液量、濃度、運動率の低下: 肥満男性は、精液の量や精子の濃度、運動率が低下する傾向にあります。特に、乏精子症(精子の数が少ない状態)が多く見られるという報告もあります。また、腹囲(お腹周り)が大きいほど、精液の状態が悪化することも分かっています。
- DNAの損傷: 肥満によって、精子のDNAが損傷する(断片化する)リスクが高まります。精子のDNAが損傷すると、受精卵の成長が止まったり、流産の原因になったりすることがあります。
- ミトコンドリアと活性酸素: 肥満は、精子のエネルギー源であるミトコンドリアの機能を低下させ、細胞を酸化させる活性酸素を増加させます。これらの問題は、通常の精液検査では見つからないことが多いため、不妊の隠れた原因となっている可能性があります。
不妊リスクの上昇とARTの妊娠率低下
- 不妊リスクが1.66倍に: 肥満男性のカップルは、正常体重の男性に比べ、不妊リスクが1.66倍も高まることが研究で示されています。
- ART(生殖補助医療)の成功率低下: 体外受精などのART(生殖補助医療)においても、肥満は妊娠率を低下させると言われています。ある研究では、肥満男性のカップルの妊娠率が約32%低下し、出生率も同様に低くなることが報告されています。
肥満は、ホルモン分泌の乱れや精子形成の阻害など、さまざまな要因で男性の生殖能力に悪影響を及ぼします。
参考文献: Campbell JM, et al. Paternal obesity negatively affects male fertility and assisted reproduction outcomes: a systematic review and meta-analysis. Reprod Biomed Online, 2015; 31: 593-604.
精子の質を改善するための食事と運動
精子の質を改善し、不妊リスクを軽減するためには、健康的な食生活と適度な運動が不可欠です。
地中海ダイエットで精子の質が向上
高脂肪食は精液の状態を悪化させる可能性がありますが、地中海ダイエットのような食生活は精子の質を良好に保つ傾向が見られます。
地中海ダイエットとは、野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツ類、魚介類、オリーブオイルなどを中心とした食事です。抗酸化物質、オメガ3脂肪酸、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれているため、精子の酸化ストレスを軽減し、質の向上に役立ちます。
参考文献: Karayiannis D, et al. Association between adherence to the Mediterranean diet and semen quality parameters in male partners of couples attempting fertility. Hum Reprod, 2017; 32: 215-222.
適度な運動で体重管理
運動不足はもちろん、過度な運動も精子の質に悪影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
- おすすめの運動: 毎日30分程度のウォーキングやジョギング、水泳など、無理のない範囲で続けられる有酸素運動が推奨されます。
- 注意点: サイクリングなど、睾丸に強い圧迫がかかる運動は、精子に悪影響を与える可能性があるため、控えめにするのが無難です。
まとめ:体重管理は「未来のパパ」になるための第一歩
男性の肥満や過体重は、精子の質や不妊リスクに深く関わっています。
- 健康的な体重を維持し、地中海ダイエットのようなバランスの取れた食生活を心がけましょう。
- 適度な運動習慣を取り入れることで、精液の質が改善し、不妊リスクを軽減することが期待できます。
妊活は、夫婦二人三脚で行うものです。ご夫婦で一緒に食生活や運動習慣を見直すことが、妊娠への近道となるでしょう。