
不妊クリニックの血液検査で「基準値内」でも安心しすぎない理由
血液検査が基準値内でも妊活では見直したい項目
妊活中や不妊治療中は、不妊クリニックで血液検査を受ける機会が多くあります。
検査結果を見て「基準値内だから大丈夫」と感じる方も多いと思いますが、妊活では少し注意が必要です。
なぜなら、検査の基準値は「日常生活を送るうえで大きな異常がないか」を見るための目安であり、必ずしも妊娠を目指す身体づくりにとって十分な状態を示しているとは限らないからです。
もちろん、基準値内であれば過度に心配する必要はありません。ただし、採卵結果が思うようにいかない、胚盤胞まで育ちにくい、内膜が薄い、移植がうまくいかない、流産を繰り返すなどの場合には、血液検査の数値をもう少し丁寧に見直すことが役立つことがあります。
妊活では「病気ではないけれど足りていない」状態に注意
血液検査では、貧血、甲状腺機能、ホルモン値、血糖、ビタミンやミネラルの状態などが確認されることがあります。
ここで大切なのは、数値が基準値内かどうかだけでなく、妊活において身体が十分に働ける状態かどうかを見ることです。
たとえば、日常生活では大きな不調を感じていなくても、卵胞の発育、排卵、受精、着床、妊娠初期の維持には、栄養状態や代謝、ホルモンバランスが関わっています。
そのため、妊活では「異常なし」と言われたけれど、もう少し整えられる余地があるというケースがあります。
特に確認したいのがビタミンD
妊活中に確認しておきたい項目のひとつが、ビタミンDです。
ビタミンDは骨の健康に関わる栄養素として知られていますが、近年では卵巣機能、子宮内膜、免疫調整、体外受精の成績との関連も注目されています。
体外受精などの生殖補助医療を受けている女性を対象にした研究では、ビタミンDが十分な方は、不足または欠乏している方と比べて、臨床妊娠に至る可能性が高いことが報告されています。
一方で、ビタミンDの濃度と流産リスクについては、明確な関連が認められなかったという報告もあります。
そのため、ビタミンDは「摂れば必ず妊娠する」というものではありませんが、妊活中に不足していないかを確認しておきたい栄養素のひとつといえます。
ビタミンDが不足しやすい人の特徴
ビタミンDは、食事から摂取するだけでなく、日光を浴びることで皮膚でも作られます。
そのため、次のような方はビタミンDが不足しやすい傾向があります。
- 日焼けを避けるために、外出時は常に紫外線対策をしている
- 屋内で過ごす時間が長い
- 魚を食べる頻度が少ない
- 冬場や梅雨の時期に外出が減りやすい
- 体外受精や採卵に向けて栄養状態を見直したい
特に妊活中の女性は、日焼け対策をしっかりされている方も多いため、知らないうちにビタミンDが不足していることがあります。
紫外線を無理に浴びる必要はありませんが、過度に避けすぎることでビタミンD不足につながる可能性があることは知っておきたいポイントです。
AMHが低い方はビタミンDも確認しておきたい
AMHが低い方の中には、ビタミンDが不足しているケースもあります。
AMHは卵巣予備能の目安として使われる検査であり、AMHが低いからといって自然妊娠や採卵が必ず難しいと決まるわけではありません。
ただし、採卵数が少ない、卵胞が育ちにくい、空胞が続く、胚盤胞まで育ちにくいといった場合には、ホルモン値だけでなく、栄養状態や血流、睡眠、ストレス、代謝なども含めて見直すことが大切です。
ビタミンDもその中のひとつとして、必要に応じてクリニックで相談してみるとよいでしょう。
鉄・フェリチンも妊活では見直したい項目
貧血の検査では、ヘモグロビンの数値を見ることが多いですが、妊活ではフェリチンという「貯蔵鉄」の状態も大切です。
ヘモグロビンが基準値内でも、フェリチンが低い場合、身体の中に蓄えられている鉄が少ない状態のことがあります。
鉄は、酸素を運ぶ働きだけでなく、エネルギー産生、卵胞発育、子宮内膜の状態、妊娠初期の身体づくりにも関わります。
疲れやすい、冷えやすい、立ちくらみがある、月経量が多い、爪が割れやすい、髪が抜けやすいといった症状がある方は、鉄不足が隠れている可能性もあります。
ただし、鉄も自己判断で多量に摂取すればよいものではありません。フェリチンや炎症反応などを確認しながら、医師の判断のもとで対策することが大切です。
甲状腺機能は妊活・妊娠初期に関わることがある
甲状腺ホルモンは、月経周期、排卵、妊娠初期の維持に関わる重要なホルモンです。
一般的な健康診断では大きな問題がない場合でも、妊活や不妊治療ではTSH、FT4、甲状腺抗体などを確認することがあります。
特に、流産を繰り返している方、月経不順がある方、疲れやすさや冷えが強い方、甲状腺疾患の既往がある方は、クリニックで相談しておくと安心です。
甲状腺の数値は、妊活中・妊娠中で目標とされる範囲が変わることがあります。そのため、自己判断ではなく、必ず専門医の判断に従うようにしましょう。
血糖・インスリン抵抗性も見逃せない
血糖値が基準値内でも、食後に血糖が上がりやすい、インスリンが効きにくい状態が隠れていることがあります。
特に、PCOS、多嚢胞性卵巣症候群の方では、インスリン抵抗性が排卵障害やホルモンバランスに関わることがあります。
甘いものをよく食べる、食後に眠くなりやすい、体重が増えやすい、月経周期が長い、排卵しにくいといった方は、血糖やインスリンの状態を確認することが妊活のヒントになる場合があります。
妊活では「糖質を完全に抜く」ことが正解ではありません。大切なのは、血糖値が急激に上下しにくい食べ方を意識し、たんぱく質、食物繊維、脂質、炭水化物のバランスを整えることです。
亜鉛・葉酸・ビタミンB群も身体づくりに関わる
亜鉛、葉酸、ビタミンB群も、妊活中に意識したい栄養素です。
亜鉛は細胞分裂やホルモンバランスに関わり、葉酸は妊娠前から摂取がすすめられる栄養素です。
また、ビタミンB群はエネルギー代謝や赤血球の働きにも関係します。
ただし、サプリメントを何種類も自己判断で追加すると、過剰摂取や飲み合わせの問題が起こることもあります。
妊活中は「足りないものを確認して補う」という考え方が大切です。
自己判断でサプリを増やしすぎないことが大切
妊活中は、少しでも良い結果につなげたいという気持ちから、サプリメントをいくつも試したくなることがあります。
しかし、ビタミンDのような脂溶性ビタミンは、過剰に摂取すると体内に蓄積しやすく、カルシウム代謝に影響する可能性があります。
また、鉄や亜鉛などのミネラルも、必要量を超えて摂りすぎると体調不良や他の栄養素の吸収に影響することがあります。
大切なのは、検査で不足の有無を確認し、医師や専門家に相談しながら必要な対策を行うことです。
鍼灸では血流・自律神経・胃腸の働きから妊活を支えます
血液検査で栄養状態を確認することは大切ですが、妊活では栄養を摂るだけでなく、その栄養を吸収し、全身に巡らせる身体の状態も重要です。
胃腸の働きが弱い、冷えが強い、睡眠が浅い、ストレスが多い、自律神経が乱れやすいといった状態では、せっかく食事やサプリメントを意識しても、身体づくりにつながりにくいことがあります。
鍼灸では、卵巣や子宮まわりの血流、自律神経のバランス、胃腸の働き、冷えや緊張の改善を目的に、妊活中の身体を整えていきます。
採卵や移植に向けて、血液検査の数値だけでなく、体調全体を見直したい方は、生活習慣や体質面からのケアも取り入れてみるとよいでしょう。
この記事のまとめ
- 血液検査が基準値内でも、妊活では見直したい項目がある
- ビタミンDは体外受精の成績との関連が報告されている
- 鉄・フェリチン、甲状腺、血糖、亜鉛、葉酸なども妊活では重要
- サプリメントは自己判断で増やしすぎず、検査結果をもとに相談することが大切
- 妊活では栄養だけでなく、血流、自律神経、胃腸の働きも整えていくことが大切
よくある質問
血液検査が基準値内なら妊活では問題ありませんか?
基準値内であれば大きな異常がないことが多いですが、妊活では「妊娠を目指すために十分か」という視点で見直すことがあります。特に、採卵結果や移植結果が思うようにいかない場合は、ビタミンD、フェリチン、甲状腺、血糖などを確認することがあります。
ビタミンDは妊活中に必ず摂った方がいいですか?
ビタミンD不足がある場合は、医師の判断のもとで補充を検討することがあります。ただし、不足していない方が自己判断で多量に摂取する必要はありません。まずはクリニックで検査や相談をすることが大切です。
ビタミンDを摂れば卵子の質は良くなりますか?
ビタミンDは卵巣機能や子宮内膜との関連が注目されていますが、摂れば必ず卵子の質が良くなるというものではありません。卵子の質には、年齢、睡眠、栄養、血流、酸化ストレス、ホルモン環境など複数の要因が関わります。
フェリチンが低いと妊娠しにくくなりますか?
フェリチンは体内に蓄えられた鉄の目安です。鉄は酸素運搬やエネルギー産生に関わるため、不足がある場合は体調や妊活に影響する可能性があります。ただし、鉄の補充は自己判断ではなく、検査結果をもとに医師へ相談しましょう。
サプリメントは何種類も飲んだ方が効果的ですか?
多く飲めばよいというものではありません。脂溶性ビタミンやミネラルは過剰摂取に注意が必要です。妊活中は、検査で不足を確認し、必要なものを適切に補うことが大切です。
妊活中の身体づくりを見直したい方へ
血液検査では大きな異常がなくても、冷え、疲れやすさ、胃腸の弱さ、睡眠の質、自律神経の乱れなどが、妊活中の身体づくりに影響していることがあります。
宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療の状況や体質、生活習慣をうかがいながら、採卵・移植・タイミングに向けた身体づくりをサポートしています。
「検査では問題ないと言われたけれど、なかなか結果につながらない」「採卵や移植に向けて体調を整えたい」という方は、無理のない範囲でご相談ください。
参考文献
- Chu J, et al. Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis. Human Reproduction. 2018.
- American Society for Reproductive Medicine. Subclinical hypothyroidism in the infertile female population: a guideline.
- Holzer I, et al. Iron status in women with infertility and controls. 2023.
- 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome.
※当サイトに掲載している内容は、医学的な情報をもとに作成していますが、診断や治療を行うものではありません。検査結果の判断やサプリメントの使用については、必ず主治医や専門医にご相談ください。







