
新鮮胚移植と凍結胚移植の違い|どちらがよい?選ばれる条件と注意点
体外受精や顕微授精を受ける際、「新鮮胚移植と凍結胚移植では、どちらの妊娠率が高いのですか?」と疑問に思う方は少なくありません。
採卵後すぐに移植できる新鮮胚移植と、胚をいったん凍結して別の周期に移植する凍結融解胚移植には、それぞれ異なる特徴があります。
凍結胚移植が広く行われるようになったことで、「凍結した方がよい」と説明されることもありますが、すべての方に凍結胚移植が適しているとは限りません。
この記事では、新鮮胚移植と凍結胚移植の違い、妊娠率を比較するときの注意点、それぞれが選ばれやすいケースについて解説します。
- 新鮮胚移植は採卵と同じ周期に、凍結融解胚移植は胚をいったん凍結して別の周期に行う方法です。
- 凍結胚移植がすべての方にとって、新鮮胚移植より妊娠・出産につながりやすいとは限りません。
- OHSSのリスクが高い場合や、ホルモン値・子宮内膜の状態が移植に適さない場合は、全胚凍結が選ばれやすくなります。
- 採卵数が少なく、ホルモン値や子宮内膜の状態が整っている場合は、新鮮胚移植が検討されることもあります。
- どちらを選ぶかは、年齢だけでなく、採卵数、胚の状態、ホルモン値、子宮内膜、OHSSのリスクなどを踏まえて判断されます。
新鮮胚移植と凍結胚移植の基本的な違い
新鮮胚移植とは
新鮮胚移植とは、採卵して受精・培養した胚を凍結せず、採卵と同じ月経周期のうちに子宮へ戻す方法です。
一般的には、採卵から数日後に初期胚または胚盤胞を移植します。採卵周期の子宮内膜やホルモンの状態に問題がなく、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の危険性が低いと判断された場合に行われます。
凍結融解胚移植とは
凍結融解胚移植とは、採卵後に育った胚をいったん凍結保存し、別の月経周期に融解して子宮へ戻す方法です。
採卵周期には移植を行わず、卵巣やホルモンの状態が落ち着いてから移植周期を設けます。採卵できた胚をすべて凍結する方法は「全胚凍結」や「freeze-all」と呼ばれます。
凍結胚移植の周期には、自身の排卵に合わせる自然周期・修正自然周期と、エストロゲンやプロゲステロンなどの薬で子宮内膜を整えるホルモン補充周期があります。
新鮮胚移植と凍結胚移植を比較
| 比較項目 | 新鮮胚移植 | 凍結融解胚移植 |
|---|---|---|
| 移植する時期 | 採卵と同じ周期 | 採卵とは別の周期 |
| 胚の凍結・融解 | 行わない | 行う |
| 移植までの期間 | 比較的短い | 通常は翌周期以降になる |
| 採卵時のホルモン環境 | 影響を受ける可能性がある | 採卵周期と切り離して調整できる |
| OHSSへの対応 | 妊娠すると症状が長引くことがある | 全胚凍結によりリスクを抑えられる場合がある |
| PGT-Aなどの胚検査 | 通常は実施しにくい | 検査結果を待って移植できる |
| 通院期間・工程 | 採卵から移植までを同じ周期で進められる | 凍結・保管・融解・移植周期が必要 |
妊娠率は凍結胚移植の方が高い?
凍結胚移植の妊娠率が新鮮胚移植より高く見えるデータはありますが、「胚を凍結すれば妊娠しやすくなる」と単純に考えることはできません。
新鮮胚移植と凍結胚移植では、移植される方の年齢、卵巣の反応、採卵数、胚の発育状態、子宮内膜の状態などが異なるため、移植1回あたりの妊娠率だけでは公平に比較できないからです。
移植1回あたりではなく累積出生率も確認する
体外受精の治療成績を考えるときは、「最初の胚移植で妊娠・出産できた割合」だけでなく、1回の採卵で得られた胚をすべて移植した場合の「累積出生率」も重要です。
これまでのランダム化比較試験をまとめたコクランレビューでは、全胚凍結を行う方法と、新鮮胚移植後に余剰胚を凍結する従来の方法との間で、累積出生率には大きな差がない可能性が示されています。
つまり、凍結胚移植が一律に優れているというより、患者さまの状態に合わせて選択することが大切です。
卵巣反応によって結果が異なる可能性がある
卵胞が多く育ち、採卵数が多くなる方では、採卵周期のホルモン環境やOHSSへの配慮から、全胚凍結が適している場合があります。
一方、採卵数が少ない方や卵巣予備能が低い方を対象とした近年の研究では、全胚凍結より新鮮胚移植の方が出生につながりやすかったという結果も報告されています。
この結果だけですべての方の治療方針を決めることはできませんが、「採卵数が少なくても必ず凍結した方がよい」とは限らないことを示しています。
凍結融解胚移植が選ばれやすいケース
OHSSのリスクが高い場合
採卵によって多くの卵胞が育った場合や、エストロゲン値が高い場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高くなることがあります。
採卵後に妊娠が成立すると、妊娠に伴って分泌されるhCGの影響により、OHSSの症状が悪化したり長引いたりする可能性があります。
そのため、OHSSのリスクが高いと判断された場合には、胚をすべて凍結して身体が落ち着いてから移植する方法が選ばれます。
採卵周期のホルモン値が移植に適さない場合
排卵誘発剤による卵巣刺激では、自然な月経周期とは異なるホルモン環境になることがあります。
採卵前にプロゲステロンが早く上昇した場合などは、胚の成長と子宮内膜が着床に適した時期にずれが生じる可能性があるため、新鮮胚移植を行わず全胚凍結が検討されることがあります。
ただし、どの数値から凍結を選ぶかは、治療方法や胚の状態、クリニックの基準などによって異なります。
子宮内膜や子宮内の状態を整える必要がある場合
子宮内膜が十分に厚くなっていない場合や、子宮内に液体がたまっている場合、ポリープや粘膜下筋腫などの確認・治療が必要な場合には、胚を凍結して移植を延期することがあります。
先に胚を保存しておくことで、子宮内の状態を確認してから移植に進めます。
PGT-Aなどの胚検査を行う場合
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)などを行う場合は、胚盤胞の一部を採取して検査結果を待つ必要があるため、一般的には胚を凍結します。
検査結果が判明した後に、移植する胚を選び、別の周期で凍結融解胚移植を行います。
新鮮胚移植が選ばれやすいケース
OHSSのリスクが低く、移植条件が整っている場合
採卵後の体調が安定しており、ホルモン値や子宮内膜の状態に問題がない場合は、新鮮胚移植を行えることがあります。
胚を凍結せず、採卵と同じ周期に移植できるため、移植までの期間を短くできることがメリットです。
採卵数や得られた胚が少ない場合
採卵数や受精した胚が少ない場合には、凍結・融解の工程を経ず、新鮮な状態で移植することが検討されます。
近年の研究では、卵巣予備能が低い方や採卵数が少ない方の一部では、全胚凍結よりも新鮮胚移植が適している可能性も示されています。
ただし、胚の発育状況や子宮内膜、ホルモン値などによって新鮮胚移植が見送られることもあります。
できるだけ早く移植へ進みたい場合
新鮮胚移植では、採卵と同じ周期に移植するため、凍結胚移植のように次の周期まで待つ必要がありません。
年齢や治療歴などから、できるだけ早く移植したいという希望がある場合には、新鮮胚移植の利点になることがあります。ただし、安全性や子宮内膜の状態を優先して延期される場合もあります。
胚を凍結すると質が低下する?
現在は、胚を急速に凍結する「ガラス化法」が広く用いられています。以前の緩慢凍結法と比べて、凍結・融解による胚への影響は少なくなっています。
ただし、すべての胚が凍結前と同じ状態で融解できるとは限りません。まれに、融解後に細胞が傷ついたり、移植できない状態になったりする可能性があります。
胚の凍結・融解後の生存率は、胚の発育段階や状態、培養室の技術、施設ごとの基準などによっても異なります。
妊娠後の経過にも違いはある?
新鮮胚移植と凍結胚移植では、妊娠後の経過にもわずかな違いが報告されています。
研究をまとめた報告では、凍結胚移植は新鮮胚移植と比べて、早産、低出生体重、在胎週数に対して小さく生まれるリスクが低い傾向が示されています。
一方で、凍結胚移植では、在胎週数に対して大きく生まれることや、妊娠高血圧症候群などとの関連を示した研究もあります。
これらのリスクには、凍結の有無だけでなく、凍結胚移植を自然周期で行ったか、ホルモン補充周期で行ったかといった違いも関係すると考えられています。
個人の妊娠経過を予測できるものではありませんが、どちらにも異なる特徴があることを理解しておくことが大切です。
「凍結胚の妊娠率が高い」という数字を見るときの注意点
クリニックの治療成績を見ると、凍結胚移植の方が新鮮胚移植より妊娠率が高く表示されていることがあります。
ただし、次のような条件がそろっているかを確認しなければ、単純には比較できません。
- 女性の年齢が同じか
- 初期胚と胚盤胞を分けて比較しているか
- PGT-Aを行った胚が含まれているか
- 移植1回あたりの妊娠率か、採卵1回あたりの累積出生率か
- 妊娠率、心拍確認率、出生率のどれを示しているか
- 新鮮胚移植ができなかった方をどのように集計しているか
妊娠率だけでなく、出生率、流産率、キャンセルされた周期なども含めて確認することが重要です。
どちらを選ぶかクリニックで確認したいこと
新鮮胚移植と凍結胚移植の選択について疑問がある場合は、担当医に次の点を確認してみましょう。
- 今回、凍結または新鮮胚移植を勧める理由
- 採卵数やホルモン値、OHSSリスクの評価
- 子宮内膜の厚さや状態
- 初期胚移植と胚盤胞移植のどちらを予定しているか
- 凍結・融解後の胚の生存率
- 移植周期を自然周期とホルモン補充周期のどちらで行うか
- 移植が延期または中止になる可能性
- 費用や通院回数、移植までの予定
「凍結胚移植の方が妊娠率が高いから」という説明だけではなく、自分の検査結果や治療経過に基づく理由を聞くことが大切です。
当院でお伝えしていること
当院には、採卵後や胚移植前の患者さまから、「新鮮胚移植と凍結胚移植のどちらがよいのか分からない」「急に全胚凍結になって不安」といったご相談があります。
新鮮胚移植と凍結胚移植には、それぞれメリットと注意点があります。凍結胚移植になったから状態が悪い、新鮮胚移植ができるから妊娠しやすい、という意味ではありません。
治療方法は、採卵数、ホルモン値、子宮内膜、胚の発育、OHSSのリスクなどを総合して決められます。まずは、今回その方法が選ばれた理由をクリニックで確認してみましょう。
当院では、クリニックでの治療を優先しながら、採卵後や移植周期の体調、睡眠、冷え、便通、肩こり、緊張なども確認し、その時期に合わせた鍼灸施術や生活上のアドバイスを行っています。
まとめ|凍結胚移植が必ず優れているわけではない
新鮮胚移植は、採卵と同じ周期に胚を移植できるため、移植までの期間が短いことが特徴です。一方、凍結融解胚移植は、採卵周期のホルモン環境と移植周期を切り離し、身体や子宮内膜の状態を整えてから移植できます。
OHSSのリスクが高い場合、ホルモン値や子宮内膜の状態が移植に適していない場合、PGT-Aを行う場合などには、全胚凍結が選ばれやすくなります。
一方、卵巣の反応が低い方や採卵数が少ない方などでは、新鮮胚移植が適している可能性もあります。
どちらがよいかは、年齢や妊娠率だけでは決められません。採卵数、胚の状態、子宮内膜、ホルモン値、OHSSのリスク、これまでの治療歴などを踏まえ、担当医と相談して決めることが大切です。
新鮮胚移植と凍結胚移植では、どちらの妊娠率が高いですか?
凍結胚移植の方が、移植1回あたりの妊娠率が高く示されることはあります。ただし、年齢、胚の発育段階、採卵数、子宮内膜の状態などの条件が異なるため、数字だけで単純に比較することはできません。
1回の採卵で得られた胚をすべて移植した場合の累積出生率では、全胚凍結が必ず優れているとは限らないとされています。ご自身に適した方法を担当医と確認することが大切です。
凍結すると胚の質が低下しませんか?
現在は、胚を短時間で凍結するガラス化法が広く用いられており、以前よりも凍結・融解による影響は少なくなっています。
ただし、すべての胚が必ず凍結前と同じ状態で融解できるわけではありません。融解後の生存率や移植できる基準については、治療を受けているクリニックへ確認しましょう。
採卵後に全胚凍結になったのは、状態が悪いからですか?
全胚凍結になったからといって、胚や身体の状態が悪いとは限りません。
OHSSを予防するため、採卵周期のホルモン値が高いため、子宮内膜と胚のタイミングを合わせるためなど、安全性や移植条件を考慮して全胚凍結が選ばれることがあります。不安な場合は、今回全胚凍結になった具体的な理由を担当医に確認してみましょう。
採卵数が少ない場合でも凍結胚移植になりますか?
採卵数が少ない場合でも、ホルモン値や子宮内膜の状態、胚の発育状況などによっては、凍結胚移植が選ばれることがあります。
一方で、移植条件が整っている場合は、新鮮胚移植が検討されることもあります。採卵数だけで決まるものではなく、複数の条件を合わせて判断されます。
凍結胚移植は自然周期とホルモン補充周期のどちらがよいですか?
排卵が安定している方では自然周期や修正自然周期、排卵時期を調整しにくい方や通院日程を管理したい場合にはホルモン補充周期が選ばれることがあります。
どちらにも特徴があり、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。月経周期、排卵の状態、治療歴、使用できる薬などを踏まえて担当医が判断します。
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📚参考文献
- Cochrane:生殖補助医療における新鮮胚移植と凍結胚移植の比較
全胚凍結と従来法の累積出生率やOHSSリスクなどを比較したシステマティックレビューです。 - American Society for Reproductive Medicine:Prevention of moderate and severe ovarian hyperstimulation syndrome
OHSSリスクが高い場合の全胚凍結などについてまとめた診療ガイドラインです。 - Wei D, et al. Frozen versus fresh embryo transfer in women with low prognosis for IVF treatment. BMJ. 2025.
卵巣予備能が低い方や採卵数が少ない方を対象に、新鮮胚移植と全胚凍結を比較したランダム化比較試験です。 - Maheshwari A, et al. E-Freeze randomised controlled trial.
新鮮胚移植と全胚凍結後の融解胚移植について、出生や妊娠合併症などを比較した多施設共同研究です。 - Tocariu R, et al. Fresh versus Frozen Embryo Transfer:A Systematic Review and Meta-Analysis of Neonatal Outcomes. 2024.
新鮮胚移植と凍結胚移植後の早産、出生体重などを比較したシステマティックレビューです。 - こども家庭庁:不妊治療って何をするの?検査やステップを専門医が解説
新鮮胚移植と凍結融解胚移植を含む、不妊治療の基本的な流れが解説されています。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
胚移植に向けた体調づくりを相談したい方へ
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大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、クリニックでの治療方針を大切にしながら、新鮮胚移植・凍結融解胚移植それぞれのスケジュールや、その時のお身体の状態に合わせた鍼灸施術を行っています。
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