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男性不妊に鍼灸は効く?——論文からわかる「できること・できないこと」

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鍼灸は、男性不妊に対して「精液所見(とくに運動率や総運動精子数=TMSC)」の一部を改善する可能性が、ランダム化比較試験(RCT)や系統的レビューで示されています。

一方で、妊娠率の向上まで一貫して証明されたわけではありません。そのため現時点では、鍼灸を「生活改善・医療介入(泌尿器科/生殖医療)」と並走する補完療法として位置づけるのが現実的です。

鍼灸で「期待できること」

1) 精子の運動性・総運動精子数(TMSC)の改善

RCTでは、偽鍼(プラセボ)と比較して、総運動精子数(TMSC)が有意に改善したという報告があります(Fertility and Sterility, 2009)。ただし、精液量が低下するなど、指標によっては改善しないものもあり、鍼灸が万能とは言えません。

また近年の臨床試験では、電気鍼(EA)でTMSCや運動率の改善が示唆されています(2024年)。ただしサンプル規模が小さい研究も多く、今後の再現性検証が必要です。

2) 精子DNA損傷(DFI)やストレス関連所見の改善“示唆”

症例レベルでは、電気鍼により精子DNA断片化指数(DFI)の改善が報告されています。強い結論には至りませんが、酸化ストレスの低減や、自律神経・ホルモン調整を介した可能性が議論されています。

3) 精索静脈瘤(バリコーゼル)関連のサポート

精索静脈瘤に対しては、手術(静脈瘤修復術)が精液所見を改善する根拠が確立しています。鍼灸は、痛みの軽減や自覚症状の緩和、術後の体調管理などで補助的に関与できる可能性がありますが、根本治療は手術が第一選択です。

鍼灸で「できないこと」

  • 閉塞性無精子症など、解剖学的な原因の直接解消はできません(泌尿器科の治療が必要です)。
  • 妊娠率の一貫した上乗せ効果は、現時点のエビデンスだけでは断言できません。メタ解析・系統的レビューでも「運動率・濃度の改善はあり得るが、妊娠率は不明〜未確定」という結論が多いです。

作用メカニズム(仮説)

自律神経の調整、視床下部—下垂体—性腺(HPG)軸への影響、精巣血流の改善、抗酸化・抗炎症作用などが総合的に働き、精液所見の一部に反映している可能性が示されています(レビュー)。ただし、ヒトでの直接的な機序証明は限定的です。

安全性

鍼灸は、熟練の施術者が適切に行えば重篤な有害事象は稀とされています。内科的・泌尿器科的治療の妨げにならない補完療法として選択されることが多い一方、治療前に基礎疾患・服薬状況・不妊検査の結果を共有しておくことが重要です。

どんな方に向く?

  • 原因不明(特に軽度〜中等度)の精液所見低下で、生活改善や医療の方針と併走したい方
  • ストレス・睡眠・自律神経の乱れが強く、体調の土台づくりから整えたい方
  • 精索静脈瘤術後の体調管理や痛みの軽減サポートを希望する方(※根本治療は手術)

まとめ

  • 鍼灸は、「精液所見の一部を底上げし得る補完療法」として選択肢になり得ます。
  • 原因診断と医療連携を土台に、8〜12週の評価期間で現実的にチェックしていきましょう。
  • 迷ったら、泌尿器科での評価(精索静脈瘤、ホルモンなど)と並行してご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)

Q. 鍼灸だけで妊娠率は上がりますか?

A. 現時点では、精液所見の一部改善は示されても、妊娠率の確実な上乗せは結論が出ていません。生活・医療の併用が前提です。

Q. どのくらいで効果をみれば良いですか?

A. 8〜12週間を一区切りに、同条件の精液検査で比較するのが現実的です(研究でも数週〜数か月で評価されることが多いです)。

Q. 電気鍼(EA)は必要ですか?

A. 一部の小規模RCTでEAの有望な結果がありますが、手法は施設差が大きく、確立標準はありません。個別にご相談ください。

Q. 手術や投薬と迷っています。

A. 原因に応じた第一選択が大切です。たとえば精索静脈瘤では手術の有効性に強い根拠があります。鍼灸は補完として考えましょう。

📚参考文献

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