
鍼灸でPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の症状が緩和される?
「月経がなかなか来ない」「ホルモンの値が乱れている」といった悩みを抱えるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方は少なくありません。薬や生活改善を続けても変化が見えにくいとき、体の“自律神経の緊張”が背景にあることもあります。そのようなPCOSの体質に対して、最近注目されているのが低周波※1の電気鍼(EA)※2によるアプローチです。やさしい電気刺激で体のバランスを整え、月経リズムを取り戻す研究結果も報告されています。
※1 ゆっくりリズムの微弱な電気刺激
※2 Electro-acupuncture/鍼にやさしい電気を流す鍼治療
結論
ゆっくりリズムの電気を流す鍼治療(低周波の電気鍼)は、PCOSで高まりがちな“緊張モード”を落ち着かせる可能性が示されています。その結果として、月経が整いやすくなったり、男性ホルモンが下がった人が増えたという報告があります。
ただし、基本線は生活改善や医療(薬・代謝管理)。電気鍼は+αの土台づくりとして取り入れるのが現実的です。
研究でわかったこと
「緊張モード」を下げた試験(公平な比較)
- 対象:PCOSの方を公平にグループ分けし、低周波の電気鍼を受ける人、運動に取り組む人、何もしない人、に分けました。
- やったこと:16週間(約4か月)続け、筋肉の緊張サイン(MSNA)を直接測定。
- 結果:電気鍼と運動のグループで、“緊張モード”がしっかり下がったことが確認されました。
→ PCOSで偏りがちな自律神経のバランスが、落ち着く方向へ動いたと考えられます。
月経と男性ホルモンの指標が改善した試験
- 対象:84名のPCOSの方を同様に公平にグループ分け。
- やったこと:低周波の電気鍼を中心に16週間行い、その後も様子を見ました(追跡期間)。
- 結果:月経が起こる回数が増えた(周期が整いやすくなった)。男性ホルモン(テストステロン)が下がった人が増えた。
→ PCOSの特徴である希発月経・男性ホルモン高めの2点に、前向きな変化が見られました。
なぜ「低周波」の電気鍼なの?
低周波=ゆっくりリズムの電気は、小さな筋収縮を伴うやさしい刺激。これが体のスイッチを“緊張→リラックス”に切り替える助けになり、
- 卵巣まわりの血流が整いやすい
- 脳と卵巣のホルモンの連携が乱れにくい
という流れにつながると考えられます。PCOSで崩れやすい自律神経とホルモンの橋渡しを支えるイメージです。
どんな方に向いている?
- 月経がなかなか来ない/周期が長くなりがち
- 緊張しやすい・眠りが浅い・肩首が張るなどのサインが強い
- 採卵や移植に向けて、体調の“下地”を整えたい
- 運動や食事の見直しを並行して進めたい
施術の進め方(当院例)
- 現状チェック:月経状況、睡眠、冷え、胃腸、肌の張りなどを丁寧に確認
- 低周波の電気鍼+温めケア:体質に合わせ、必要に応じて経絡調整も併用
- 生活サポート提案:軽い運動・食事の整えは研究でも良い影響が出やすい組み合わせ
- 頻度と期間:目安は週1回前後×約4か月(試験の設定に準拠)。その後は体調に合わせて調整
- ふり返り:月経や体調の記録を元に、効いているポイントを一緒に見つける
よくある質問
Q. 痛みはありますか?
A. 鍼はチクッとする程度、電気は心地よいトントンという感覚が多いです。強さはその都度調整します。
Q. お薬や治療と一緒で大丈夫?
A. はい。医療(生活改善・薬)の上に“土台づくり”として重ねるイメージです。主治医と情報共有しながら進めます。
Q. 副作用は?
A. まれに内出血やだるさが出ることがありますが、多くは短時間で落ち着く軽い反応です。血液をサラサラにする薬などは事前にお知らせください。
大切なポイント
低周波の電気鍼は、PCOSに多い”緊張モード”の偏りをリセットするアプローチ。月経が整いやすくなり、男性ホルモンが下がった人が増え、その結果として妊活の下地づくりに役立つ可能性があります。
ただし、主役は生活習慣と医療。電気鍼は相乗効果を狙う+αとして、運動・食事の整えと一緒に取り入れるのがおすすめです。
📚参考文献
- Stener-Victorin E, Jedel E, Janson PO, Sverrisdottir YB. Low-frequency electroacupuncture and physical exercise decrease high muscle sympathetic nerve activity in polycystic ovary syndrome. American Journal of Physiology – Regulatory, Integrative and Comparative Physiology. 2009;297(2):R387–R395. doi:10.1152/ajpregu.00197.2009.
- Jedel E, Labrie F, Odén A, et al. Impact of electro-acupuncture and physical exercise on hyperandrogenism and oligo/amenorrhea in women with polycystic ovary syndrome: a randomized controlled trial. American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism. 2011;300(1):E37–E45. doi:10.1152/ajpendo.00495.2010.
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