
歯周病が妊娠までの時間を延ばす可能性〜口腔ケアは“妊活”の必須ステップ〜
妊娠を希望する方が増えている一方で、「なかなか授かれない」という悩みも少なくありません。よく知られている原因としては、年齢、卵巣・精子の状態、ホルモンバランス、子宮・卵管の通過性などがありますが、近年「口腔内の環境」、特に 歯周病(歯を支える骨や歯ぐきが細菌感染・慢性炎症によって破壊される病態)が、 妊孕力(妊娠する力)を低下させる可能性 が注目されています。
今回は、歯周炎と妊活(妊娠しやすさ・妊娠までの時間)との関連を、最新のエビデンスを交えてわかりやすく整理し、妊活の視点から口腔ケアの重要性をお伝えします。
目次
歯周炎とは何か?
まず、歯周炎の理解から始めましょう。
歯周病は、歯ぐき(歯肉)に炎症が起きる「歯肉炎」から始まり、さらに進行すると「歯を支える骨(歯槽骨)」や歯根膜・歯周ポケットへと及び、「歯周炎(=歯周病が骨まで進行した状態)」となります。
症状としては、歯ぐきの腫れ・出血・歯のぐらつき・口臭などがありますが、自覚症状が乏しい場合が多く、「気づいたら進行していた」ということも少なくありません。
成人30歳以上の方の約8割が何らかの歯周病を抱えているというデータもあります。歯周病原因菌(例えば Porphyromonas gingivalis など)が、歯ぐきから血管内に入り、体内に炎症性サイトカインをめぐらせることにより、様々な全身疾患と関係する可能性が指摘されています。
このように、口腔内だけの問題ではなく、全身の“炎症・細菌連鎖”という観点から見ても、歯周病は軽視できない存在です。
歯周炎と「妊娠しやすさ/妊娠までの時間」との関係
多くの研究で、歯周炎が妊娠までにかかる時間を延ばす可能性が示されています。以下、主なポイントを整理します。
妊娠までの時間(TTC:Time To Conception)が延びるという報告
例えば、ある研究では、歯周病のある女性は、歯周病のない女性と比べて 妊娠までに平均2か月程度長くかかったという報告があります。また、歯周病と不明原因不妊との関連を検討した研究でも、歯周病のある女性は妊活(妊娠を希望して開始)において妊娠まで時間を要する可能性があるという指摘があります。
さらに、総合的なレビューでは、「歯周病=慢性炎症状態」が、妊孕力低下の背景因子となる可能性があるとしています。
男性側も関連あり
歯周病は女性だけでなく、男性の精液・精子の質にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、歯周炎のある男性で精子濃度・運動能・形態などが低下していたという報告があります。
このことから、カップル全体として“口腔内の炎症負荷”を軽減することが、妊活支援として有効である可能性が高いです。
なぜ妊娠まで時間がかかるのか?そのメカニズム
歯周病が妊活に影響する可能性のあるメカニズムは、以下のように整理できます。
- 歯周病による慢性炎症が体内でサイトカイン・炎症性物質を増やし、卵巣・子宮・精子・精巣などの生殖器への影響を及ぼす可能性。
- 歯周病菌が血流・リンパを通じて全身に影響を与え、「歯ぐきだけの問題」にとどまらないという仮説。
- 妊娠の準備(卵胞発育・排卵・受精・着床・維持)において、微小な炎症環境や免疫・血管周囲環境が適切であることが重要ですが、歯周病の存在がこの環境を乱す可能性。
また、男性側では「歯周病 → 精子DNA損傷」などの関連も検討されており、生殖細胞レベルでも影響があり得ます。つまり、歯周病は単に“お口のトラブル”ではなく、妊活という観点から見ると「妊娠する力を下げるかもしれないリスク因子」ということができそうです。
“歯周病と妊活”を考えるうえで押さえておきたいポイント
ここでは、妊活を顔上している方(特に女性)にとって知っておきたい要点をまとめます。
- 歯周病の有無をチェックする
→ 妊娠を希望する段階で、まず歯科で「歯周炎」の診断を受けたことがあるか、また歯ぐき・歯周ポケット・歯槽骨の状態について相談することは有効です。 - 歯周炎を放置しない
→ 歯周炎が「治療を受けていない」場合、妊孕力の低下がより強く出るという報告があります。 - 口腔内ケアは日常から
→ ブラッシング・歯間清掃(フロス・歯間ブラシ)・定期歯科検診を習慣化。歯垢・歯石を長期間放置することが、炎症惹起・菌の血管への侵入機会を増やします。 - 妊活期間中だけでなく“妊活を見据えて”
→ 妊娠を望むタイミングに入る前から、口腔ケアを整えることが望ましいです。例えば、不妊治療・鍼灸治療・生活習慣改善などを始める段階で、“お口の環境”もセットで整えておくと、チームとしてのアプローチになります。 - 男性も一緒にケアを
→ 精子の質と口腔内環境の関連も報告されており、パートナーとともに口腔ケアを意識することが、より“カップルとしての妊活”において効果的です。
鍼灸院・妊活サポートの視点からのメッセージ
当院「宇都宮鍼灸良導絡院」では、不妊・妊活をサポートする鍼灸治療を行う際、身体と心のトータルケアを大切にしています。
口腔ケアは一般に“歯科の領域”と思われがちですが、妊活においては「口腔=身体全体の一部」と捉えることが重要です。
- 鍼灸治療を通じて自律神経のバランス・血流・ホルモンの巡りを整えること
- レーザーで慢性炎症や細菌負荷を軽減することで、妊娠に至るための微細な環境を整えること
これらを統合的に支援することが可能です。妊活に励む皆さんに、ぜひ当院がお手伝いできることを知っていただきたいと考えています。
お口チェック・セルフケアのすすめ
具体的なセルフケアとしては以下を参考にしてください。
- 朝晩の歯みがき+就寝前の歯間・舌清掃を習慣化
- 定期的な歯科検診・歯石除去(年1〜2回を目安に)
- 歯ぐきの出血・腫れ・ぐらつきがあれば早めに歯科受診
- 食事・生活習慣の見直し(砂糖・喫煙・ストレスは歯周病を悪化させる因子)
- 妊活中・治療中であれば、歯科と鍼灸・不妊治療チームで連携をとる
おわりに
歯周病=「妊活を遅らせるかもしれない」という切り口は、これまであまり語られてこなかった視点かもしれません。しかし、最新の文献レビューでも “歯周病と妊孕力低下の関連” が示されています。妊娠を望む方にとって、「歯ぐきの健康」も忘れてはいけない大切な要素です。身体全体を丁寧に整えることで、鍼灸治療との相乗効果も高まるでしょう。
ぜひ、歯科検診を妊活プランに組み込んでみてください。ご相談・フォローが必要であれば、当院でもサポートいたします。






📚参考文献
- Can periodontal disease affect conception? A literature review. PMC 2022.
- Is there an association between periodontal disease and infertility in men and women? Reproductive Medicine 2024; 4871 patients.
- Periodontitis, female fertility and conception (Review). Spandidos-Publications 2022; 160:3.
- Exploring the link between periodontal disease and sperm quality. BMC Oral Health 2025; Published online.
- Periodontal disease: a potential modifiable risk factor limiting time to conception. Hum Reprod 2012;27(5):1332-1336.
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宇都宮鍼灸良導絡院は、大阪市都島区にある妊活専門の鍼灸院です。体質改善から不妊治療のサポートまで、患者様一人ひとりに合わせた施術をご提供しています。妊活や体調のお悩みなど、どうぞお気軽にご相談ください🍀







