
妊活で「365日」意識したい栄養:たんぱく質
妊活は短距離走ではなくマラソン。排卵・受精・着床・初期発育――1年を通して体はめまぐるしく働きます。その土台づくりに欠かせないのがたんぱく質です。ここでは、たんぱく質を「なぜ・どれくらい・どう摂るか」を、論文と公的資料に基づいて整理しました。
目次
たんぱく質が妊活に効く“科学的な理由”
生殖ホルモンの主要素材
卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、妊娠初期を支えるhCGは、いずれも糖たんぱく質ホルモン(=たんぱく質が主成分)です。材料が乏しければ合成も滞ります。
卵子・内膜・卵管・子宮など“組織”の材料
卵子や内膜は細胞と細胞外マトリクスでできており、その再生・修復にアミノ酸が必要です(一般生理)。不足が続けば内膜の回復力や卵胞の育ちにも影響します。
インスリンと排卵に関わる代謝の安定
高インスリンは排卵障害や卵質低下のリスク因子。低GIを意識した食事(炭水化物の質を整え、食事にたんぱく質や脂質を適度に組み合わせる)は、インスリン感受性の改善や月経周期の整いに寄与した試験報告があります(PCOS対象)。
食事パターンとしての裏づけ
個々の栄養素にこだわりすぎるより、地中海食などの“全体の食事パターン”が体外受精(ART)の生児獲得や妊娠率と関連した系統的レビュー/メタ解析があります(ただし研究の質は中等度で、結論は一部不一致)。
たんぱく質“の種類”と排卵性不妊
大規模前向き研究では、動物性たんぱくの一部を植物性たんぱくに置換すると、排卵性不妊のリスクが低下。妊活中は動物・植物のバランスを意識する価値があります。
【ポイント】
①「十分量」を毎日 ②「質(種類)のバランス」 ③「食事全体のパターン」をそろえる――の3本柱で考える。
どれくらい摂ればいい?(日本の基準)
- 成人女性の推奨量(RDA):1日50 g(日本人の食事摂取基準2020より)
- 妊娠期の追加量(目安):妊娠初期+0 g/中期+5 g/後期+25 g → 後期は計75 g/日(2025策定解説記事に明記。基はMHLWの基準)
妊活中(まだ妊娠していない)でも、体重1kgあたり約0.8–1.0gを目安に“不足しない”設計を。体力づくりや冷え対策の筋量維持にも役立ちます。腎機能に不安がある方は必ず医療者に相談を。
何から摂る?“質”のそろえ方
植物性と動物性を半々イメージで
- 植物性:大豆製品(納豆・豆腐・高野豆腐・豆乳)、雑穀、ナッツ。
植物性たんぱくの比率を上げると、観察研究で排卵性不妊リスク低下が示唆。 - 動物性:魚(青魚・白身)、卵、鶏むね・ささみ、発酵乳。
ARTのコホートでは魚の摂取増が生児獲得と関連した分析も(置き換え解析)。
「地中海食」的に整えると全体最適に近づく
オリーブ油・魚・豆・全粒・野菜果物・ナッツを軸に、赤身肉や加工肉は控えめ――この食事パターン自体がARTの最終アウトカムと関連したレビュー多数(エビデンスは中等度)。
1日の“実践プラン”(合計≈60–70 g)
- 朝:納豆1パック(8g)+卵1個(6g)+ヨーグルト150g(6g)
- 昼:鶏むね100gのサラダ(22g)+全粒パン or 玄米
- 間食:無塩ミックスナッツ25g(5g) or 高たんぱくヨーグルト(10g)
- 夜:鮭の切り身100g(20g)+冷ややっこ半丁(8–10g)+具だくさん味噌汁
※()内はおおよそのたんぱく質量。実際は製品表示や食材で前後します。
食べ方のコツ(続けやすさ重視)
毎食に主たんぱく(豆・魚・卵・鶏・乳のどれか)を“ひとつ”入れる。
- GIを下げる工夫:主食は全粒/雑穀・冷やご飯、食物繊維と一緒に、先にサラダやたんぱく質から食べる。PCOSのある方は特に有効です。
- 脂質の質を改善:調理油はオリーブ油、魚(n-3)を週2回以上――「地中海食」パターンの中核。
- サプリは脇役:基本は“食事”で。サプリは医療者と相談のうえで不足時のみ。
よくある質問
Q1. たんぱく質を増やすと太りますか?
エネルギー過多でなければ直ちに体脂肪は増えません。むしろ満腹感や血糖安定に寄与し、低GIの食事設計に組み込みやすくなります。
Q2. 肉は避けたほうがいい?
完全にゼロにする必要はありません。ただし植物性や魚を増やす置き換えは、排卵性不妊の低リスクやART転帰との関連が報告されています。加工肉は控えめに。
Q3. 何かにアレルギーがあります…
大豆・卵・乳・魚などにアレルギーがある方は、別の食品群で代替し、医療者に個別相談を。
まとめ
- 妊活では毎日(365日)たんぱく質を「十分量×良質×食事パターン」で整える。
- 植物性たんぱくや魚を増やし、低GIの食べ方を組み合わせる。
- 目安は女性50 g/日、妊娠後期は75 g/日程度へ(個人差あり)。体調や疾患のある方は必ず医療者に相談を。
📚参考文献
- Cahoreau C, Klett D, Combarnous Y. Structure–Function Relationships of Glycoprotein Hormones and Their Subunits’ Ancestors. Frontiers in Endocrinology. 2015;6:26.
- Marsh KA, Steinbeck KS, Atkinson FS, Petocz P, Brand-Miller JC. Effect of a low glycemic index compared with a conventional healthy diet on polycystic ovary syndrome. American Journal of Clinical Nutrition. 2010;92(1):83–92.
- Kellow NJ, Le Cerf J, Horta F, Dordevic AL, Bennett CJ. The Effect of Dietary Patterns on Clinical Pregnancy and Live Birth Outcomes in Men and Women Receiving Assisted Reproductive Technologies: A Systematic Review and Meta-Analysis. Advances in Nutrition. 2022;13(3):857–874.
- Winter HG, Alesi S, Papacosta E, et al. Can Dietary Patterns Impact Fertility Outcomes? A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2023;15(11):2443.
- Chavarro JE, Rich-Edwards JW, Rosner BA, Willett WC. Protein intake and ovulatory infertility. American Journal of Obstetrics and Gynecology. 2008;198(2):210.e1–210.e7.
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- Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Overview of the dietary reference intakes for Japanese (2020). 2020.
- 柴崎直明. 日本における栄養素等摂取基準の課題をふまえたたんぱく質の摂取量とその考え方. 日本臨床栄養学会雑誌. 2025;46(2):139–147.
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