
採卵後のOHSS予防と水分摂取~むくみ・お腹の張りが気になるときの過ごし方~
採卵後、「お腹が張る」「むくみが気になる」「水分はどのくらい飲めばいいの?」と不安になる方は少なくありません。
とくに不妊治療中に気をつけたいのが、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)です。
OHSSは、排卵誘発や採卵のあとに卵巣が強く反応し、血管の外へ水分が漏れやすくなることで起こります。軽症で済むことも多い一方、重くなると尿量低下、強い腹部膨満、息苦しさ、血栓症のリスク上昇などにつながることがあるため、採卵後は体調の変化を丁寧にみることが大切です。
結論からいうと、採卵後の水分摂取は大切です。ただし、医学的には「水分をたくさん飲めばOHSSを防げる」とまでは言えません。OHSS予防の中心は、刺激法の選択、トリガー方法の工夫、必要に応じた薬剤使用、全胚凍結などの治療側の予防策です。水分摂取は、そのうえでの補助的なセルフケアと考えるのが自然です。
- 採卵後のOHSS対策では、こまめな水分摂取が大切ですが、水分だけで予防できるわけではありません。
- OHSSでは、むくみがあっても体の中では脱水や血液濃縮が進むことがあるため、見た目だけで判断しないことが大切です。
- 採卵後は、一気飲みではなく少量ずつ補水しながら、尿量、体重、お腹の張り、息苦しさなどの変化を確認しましょう。
- 吐き気が強くて飲めない、急な体重増加、尿量低下、強い腹部膨満などがある場合は、早めに採卵した医療機関へ相談することが大切です。
- 鍼灸院では、採卵後の体調管理を補助的に支えることはできますが、OHSSの診断や治療は医療機関で行う必要があります。
目次
OHSSとは? なぜ採卵後にむくみや張りが出るの?
OHSSは、卵巣刺激後に血管透過性が高まり、血管内の水分が腹腔や胸腔などへ移動することで起こります。
その結果、体の中では次のような変化がみられることがあります。
- お腹の張り、腹水
- むくみ
- 体重増加
- のどの渇き
- 尿量低下
- 吐き気
- 息苦しさ
つまり、採卵後に「むくむ」「お腹が苦しい」と感じる背景には、単なる水分の摂りすぎではなく、体液の移動というOHSS特有の仕組みが関わっています。
採卵後の水分摂取はなぜ大切?
OHSSでは、血管の外へ水分が移るため、見た目にはむくんでいても、体の中では血液が濃縮しやすい状態になります。
そのため、採卵後は脱水を避け、口から飲める範囲でこまめに水分をとることが大切です。
ただし重要なのは、最適な水分量について明確な試験データは十分ではないことです。つまり、「1日2〜3Lが絶対に正しい」と断言できるわけではありません。
そのため、実際には以下のように考えるのがよいでしょう。
- のどが渇く前から少量ずつこまめに補水する
- 一気飲みは避ける
- 尿量や体調をみながら調整する
- 吐き気や腹部膨満が強く、思うように飲めない場合は無理をしない
特に、飲めないこと自体が注意すべきサインになるため、無理をせず治療施設へ相談することが大切です。
採卵後の過ごし方|OHSS予防のために意識したいポイント
1.水分は一気飲みではなく、少量ずつこまめに
採卵後は、まとめて大量に飲むよりも、少しずつ回数を分けて飲むほうが体への負担が少なく続けやすいです。
水やお茶だけでなく、食事がとれないときは経口補水液などを取り入れることもありますが、自己判断で無理に飲み続けるのではなく、飲めるかどうか自体も体調の目安として見ていきましょう。
2.「むくみ=水を控える」とは限らない
採卵後にむくみが出ると、水分を減らしたほうがよいのではと思う方もいます。
しかしOHSSでは、体の外に水がたまっていても、血管内は脱水気味になっていることがあります。見た目のむくみだけで判断せず、尿量、体重、息苦しさ、腹部の張りなどもあわせて確認することが大切です。
3.症状が悪化するなら「様子見しすぎない」
OHSSは採卵直後だけでなく、その後に妊娠が成立すると遅れて悪化することがあります。
そのため、「採卵から数日経ったから大丈夫」とは言い切れません。お腹の張りが強くなる、体重が急に増える、尿量が減るといった変化があれば、早めに相談しましょう。
4.安静だけでなく、体調観察が大切
「採卵後はとにかく安静にしていればよい」と思われがちですが、実際には体調の変化を観察することがとても大切です。
特に次のような項目は、意識して確認しておくと安心です。
- お腹の張りの強さ
- 体重の増え方
- 尿の回数や量
- 息苦しさの有無
- 吐き気や食事・水分がとれるかどうか
こんな症状があれば、早めに治療施設へ相談を
採卵後、次のような症状がある場合は、自己判断せず採卵した医療機関へ相談してください。
- お腹の張りや痛みがどんどん強くなる
- 体重が急に増える
- 尿の回数や量が減る、尿が濃い
- 吐き気や嘔吐で水分がとれない
- 息苦しい、胸が苦しい
- 強いのどの渇き、ふらつき
- 足の腫れや胸痛など、血栓を疑う症状
採卵後のむくみやお腹の張りは珍しくないものの、「よくあること」と決めつけてしまわないことが大切です。迷ったときは、早めに治療施設へ確認しましょう。
OHSS予防の中心は「水分」だけではない
ここは誤解しやすいポイントですが、OHSS予防としてもっとも重要なのは、採卵後のセルフケアだけでなく、治療計画そのものです。
実際の予防策としては、主に次のような方法が挙げられます。
- GnRHアンタゴニスト法を選ぶ
- GnRHアゴニストトリガーを用いる
- 必要に応じてカベルゴリンを使う
- 新鮮胚移植を避け、全胚凍結を検討する
- 高反応例ではモニタリングを強化する
つまり、水分は大切だが、OHSS予防の主役は治療側のリスク管理であることも知っておくと安心です。
鍼灸院でできるサポート
鍼灸院の立場では、OHSSそのものを診断・治療することはできません。そのため、医療機関での管理を前提にしながら、体調管理の面で補助的なサポートを行うことが大切です。
当院では、不妊治療中や採卵後の方に対して、次のようなサポートを行っています。
- 採卵後の冷えや緊張、腹部の張り感に配慮した体調サポート
- 水分・食事・休養の取り方についての一般的な生活アドバイス
- 体調変化に早く気づくためのご相談
- 異常サインがある場合に速やかな受診を促す対応
東洋医学では「気・血・水」の巡りという考え方があります。採卵後の時期も、無理をせず体を冷やしすぎないようにしながら、心身の負担をため込まないことが大切です。
Q1. 採卵後はどのくらい水分をとればよいですか?
採卵後の水分摂取は大切ですが、「1日何リットルが正解」と一律に決まっているわけではありません。のどが渇く前から少量ずつこまめに飲み、尿量や体調を見ながら調整することが基本です。無理に大量に飲む必要はありません。
Q2. 採卵後にむくみがあるときは、水分を控えたほうがいいですか?
必ずしもそうではありません。OHSSでは、見た目にはむくんでいても、体の中では血管内の水分が不足していることがあります。むくみだけで自己判断して水分を極端に減らすのではなく、尿量や体重、お腹の張りなどもあわせて確認し、不安があれば医療機関へ相談しましょう。
Q3. 採卵後のお腹の張りは、どこまで様子を見てよいですか?
軽い張り感は採卵後によくみられますが、日に日に苦しくなる、急にお腹が張る、痛みが強いといった場合は注意が必要です。特に体重増加や尿量低下、吐き気、息苦しさを伴うときは、早めに採卵した医療機関へ連絡しましょう。
Q4. 採卵後に水やお茶を飲めていれば大丈夫ですか?
水分がとれていることは大切ですが、それだけで安心とは言い切れません。OHSS予防では、治療方法や排卵誘発の管理が大きく関わります。採卵後は水分摂取に加えて、体重、尿量、腹部膨満感、呼吸のしづらさなどの変化もあわせて見ていくことが大切です。
Q5. 採卵後に鍼灸を受ける意味はありますか?
鍼灸はOHSSそのものを治療するものではありませんが、採卵後の冷えや緊張、体のだるさなどに配慮しながら、体調管理を補助的に支える目的で取り入れられることがあります。ただし、強い腹部膨満や尿量低下などOHSSが疑われる症状がある場合は、まず医療機関での確認が優先です。
まとめ
採卵後のOHSS対策では、こまめな水分摂取は大切なセルフケアのひとつです。
ただし、水分だけでOHSSを防げるわけではありません。
大切なのは、次の4点です。
- 採卵後の体調変化をよく見ること
- 無理のない範囲で少しずつ補水すること
- 尿量低下、急な体重増加、強い腹部膨満、息苦しさなどを見逃さないこと
- 症状があるときは早めに採卵した医療機関へ相談すること
採卵後のむくみや張りは珍しくありませんが、悪化のサインを見逃さないことが何より大切です。不安なときはひとりで抱え込まず、まずは治療施設へ相談してください。
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📚参考文献
- American Society for Reproductive Medicine. Prevention of moderate and severe ovarian hyperstimulation syndrome: a guideline. Fertility and Sterility. 2024.
- Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. The Management of Ovarian Hyperstimulation Syndrome (Green-top Guideline No. 5).
- ESHRE. Guideline on Ovarian Stimulation for IVF/ICSI.
- Gullo G, et al. Ovarian Hyperstimulation Syndrome (OHSS): A Narrative Review and Legal Implications. Journal of Personalized Medicine. 2024.
- RCOG patient information: Ovarian hyperstimulation syndrome.
- Leeds Teaching Hospitals NHS Trust: Ovarian Hyperstimulation Syndrome (OHSS).
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
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採卵後のお腹の張りやむくみは、よくある変化でもある一方で、「このまま様子を見てよいのかな」と不安になりやすい時期でもあります。東洋医学では、こうした時期は「気・血・水」の巡りが乱れやすく、冷えや緊張が重なることで不調を感じやすくなると考えます。
宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療と並行しながら、採卵後の体調管理を少しでも安心して進められるよう、お身体の状態に寄り添ったサポートを行っています。気になる症状がある方や、次の移植に向けて体調を整えておきたい方は、無理のないタイミングでご相談ください🍀







