
精子DNA断片化検査とは?精子の質と男性不妊の関係
目次
精液検査で問題がなくても、精子の質に課題があることはある?
妊活や不妊治療を進める中で、「精液検査では問題ないと言われたのに、なかなか妊娠しない」「胚盤胞にはなるけれど、その後の結果につながりにくい」と感じる方もいらっしゃいます。
一般的な精液検査では、精子の数、運動率、濃度、形態などを確認します。これらは男性不妊を評価するうえでとても大切な検査です。
一方で、精液検査だけでは見えにくい部分もあります。その一つが、精子のDNAの状態です。
精子DNA断片化検査は、精子の中にあるDNAがどの程度損傷しているかを調べる検査です。精子の数や動きが大きく悪くなくても、DNAに傷が多い場合、受精後の胚発育や妊娠の継続に影響する可能性があると考えられています。
- 精液検査では、精子の数・運動率・形態などを確認できますが、精子DNAの損傷までは詳しくわからないことがあります。
- 精子DNA断片化検査は、精子の中にあるDNAがどの程度損傷しているかを調べる検査です。
- 精子DNA損傷は、加齢、喫煙、睡眠不足、肥満、酸化ストレス、精索静脈瘤、精巣への熱のかけすぎなどと関係する可能性があります。
- 精液検査で大きな異常がなくても、原因不明不妊、反復流産、胚発育不良、移植しても結果につながりにくい場合は、主治医に相談してみてもよい検査です。
- 精子の質を守るためには、禁煙、睡眠、食事、適度な運動、熱対策、ストレスケアなど、数ヶ月単位で生活習慣を整えることが大切です。
精子DNA断片化とは?
精子DNA断片化とは、精子の中にある遺伝情報であるDNAに、切断や損傷が起きている状態を指します。
精子は卵子と受精したあと、受精卵の発育に関わります。そのため、精子のDNAが安定していることは、受精後の胚の成長にとっても大切な要素の一つです。
ただし、精子DNA断片化があるからといって、必ず妊娠できない、必ず流産するという意味ではありません。妊娠や出産には、卵子の質、年齢、子宮環境、ホルモン、免疫、生活習慣など、さまざまな要因が関係します。
そのため、精子DNA断片化検査は「男性側の精子の質をより詳しく知るための一つの検査」と考えるとよいでしょう。
精液検査と精子DNA断片化検査の違い
精液検査では、主に次のような項目を確認します。
- 精液量
- 精子濃度
- 総精子数
- 運動率
- 前進運動率
- 精子の形態
これらは、精子がどのくらいいるか、どのくらい動いているか、形に大きな異常がないかを見る検査です。
一方、精子DNA断片化検査では、精子の見た目や動きではなく、精子の中にあるDNAの損傷の程度を評価します。
つまり、精液検査が「外から見える精子の状態」を確認する検査だとすると、精子DNA断片化検査は「精子の内側の質」を見るための検査といえます。
精子DNA損傷が増える原因
精子DNAの損傷には、さまざまな要因が関係すると考えられています。
- 加齢
- 喫煙
- 過度な飲酒
- 睡眠不足
- 肥満
- 強い酸化ストレス
- 精索静脈瘤
- 高熱や感染症
- 精巣への熱のかけすぎ
- 栄養バランスの乱れ
特に、酸化ストレスは精子DNA損傷と関係が深いと考えられています。酸化ストレスとは、体の中で活性酸素が増えすぎ、細胞を傷つけやすくなる状態のことです。
精子は酸化ストレスの影響を受けやすい細胞です。そのため、喫煙、睡眠不足、ストレス、偏った食生活、肥満などが重なると、精子の質に影響する可能性があります。
どんな人が精子DNA断片化検査を考える?
精子DNA断片化検査は、すべての方に必ず必要な検査ではありません。
ただし、次のようなケースでは、主治医に相談してみてもよい場合があります。
- 精液検査では大きな異常がないのに妊娠しにくい
- 原因不明不妊と言われている
- 体外受精や顕微授精をしても胚発育が思うように進まない
- 良好胚を移植しても結果につながりにくい
- 流産を繰り返している
- 男性の年齢が高めで精子の質が気になる
- 喫煙・肥満・睡眠不足など生活習慣に不安がある
- 精索静脈瘤を指摘されたことがある
検査を受けるかどうかは、治療歴、女性側の年齢、卵子の状態、胚の発育状況、これまでの移植結果などをふまえて判断することが大切です。
精子DNA断片化が高いと言われたらどうする?
精子DNA断片化の数値が高いと言われると、不安になる方も多いと思います。
しかし、数値が高いからといって、すぐに妊娠をあきらめる必要はありません。大切なのは、原因になりうる要素を確認し、改善できるところから整えていくことです。
たとえば、喫煙、睡眠不足、過度な飲酒、肥満、精巣への熱のかけすぎなどは、日常生活の中で見直せる可能性があります。
また、精索静脈瘤や感染、炎症などが関係している場合もあるため、必要に応じて泌尿器科や男性不妊外来で相談することも大切です。
精子の質を守るために男性が見直したい生活習慣
精子は日々作られていますが、生活習慣の影響を受けやすいと考えられています。
妊活中の男性は、次のようなことを意識してみましょう。
- 禁煙する
- 過度な飲酒を控える
- 睡眠時間を確保する
- バランスのよい食事を意識する
- 適度な運動を取り入れる
- 肥満を改善する
- サウナや長風呂など精巣への熱をかけすぎない
- ストレスをため込みすぎない
- ノートパソコンを膝の上で長時間使わない
精子の状態は、今日変えた生活習慣が明日すぐに反映されるものではありません。精子が作られて成熟するまでには一定の期間があるため、妊活では数ヶ月単位で身体を整える意識が大切です。
鍼灸でできる男性妊活のサポート
男性妊活では、精子そのものだけでなく、全身の血流、自律神経、睡眠、ストレス、冷え、疲労感などを整えていく視点も大切です。
鍼灸では、身体の緊張をゆるめ、血流や自律神経のバランスを整えることを目的に施術を行います。
精子DNA断片化検査の数値を鍼灸だけで直接改善できると断定することはできませんが、妊活中の男性の身体づくりや生活習慣の見直しをサポートする一つの方法として取り入れられることがあります。
特に、睡眠の質が悪い、疲れが抜けにくい、ストレスが強い、冷えや血流の悪さが気になる方は、身体全体を整える視点も大切にしてみてください。
まとめ|精液検査だけでなく「精子の質」に目を向けることも大切
精液検査は、男性不妊を調べるうえでとても重要な検査です。
しかし、精子の数や運動率に大きな問題がなくても、精子DNAの損傷など、通常の精液検査だけでは見えにくい要素が関係していることがあります。
精子DNA断片化検査は、精子の内側の質を知るための一つの検査です。原因不明不妊、反復流産、体外受精や顕微授精で結果につながりにくい場合などは、主治医に相談してみる価値があります。
妊活は女性だけが頑張るものではありません。男性側も、検査や生活習慣の見直しを通して、できることから身体を整えていくことが大切です。
精子DNA断片化検査とは何ですか?
精子DNA断片化検査とは、精子の中にあるDNAがどの程度損傷しているかを調べる検査です。通常の精液検査では、精子の数や運動率、形などを確認しますが、DNAの損傷までは詳しく評価できません。精子の“見た目”だけではわかりにくい、内側の質を知るための検査と考えるとわかりやすいです。
精液検査が正常でも、精子の質に問題があることはありますか?
あります。精液検査で精子の数や運動率に大きな異常がなくても、精子DNAの損傷や酸化ストレスなど、通常の検査だけでは見えにくい要素が関係している場合があります。ただし、妊娠しにくい原因は女性側・男性側・胚・子宮環境など複数の要因が関係するため、精子DNAだけで判断するものではありません。
どんな人が精子DNA断片化検査を受けた方がよいですか?
すべての方に必ず必要な検査ではありませんが、原因不明不妊と言われている方、精液検査では大きな異常がないのに妊娠しにくい方、体外受精や顕微授精で胚発育が思うように進まない方、良好胚を移植しても結果につながりにくい方、流産を繰り返している方などは、主治医に相談してみてもよい場合があります。
精子DNA損傷は改善できますか?
原因によって異なりますが、生活習慣の見直しによって改善を目指せる部分もあります。喫煙、睡眠不足、過度な飲酒、肥満、精巣への熱のかけすぎ、ストレス、栄養バランスの乱れなどは、精子の質に影響する可能性があります。必要に応じて、男性不妊外来や泌尿器科で精索静脈瘤や炎症などの確認を受けることも大切です。
精子の質を整えるには、どのくらい前から生活習慣を見直すとよいですか?
精子は日々作られていますが、生活習慣の影響がすぐ翌日に反映されるわけではありません。精子が作られて成熟するまでには一定の期間があるため、妊活中は少なくとも数ヶ月単位で身体を整える意識が大切です。採卵や体外受精を予定している場合は、できるだけ早めに男性側も生活習慣を見直しておくとよいでしょう。
📚参考文献
- American Urological Association / American Society for Reproductive Medicine. Diagnosis and Treatment of Infertility in Men: AUA/ASRM Guideline.
- American Society for Reproductive Medicine. Diagnosis and treatment of infertility in men: AUA/ASRM guideline part I.
- Agarwal A, et al. Sperm DNA Fragmentation: A New Guideline for Clinicians. World Journal of Men’s Health. 2020.
- Esteves SC, et al. Sperm DNA fragmentation testing: Summary evidence and clinical practice recommendations. Andrologia. 2021.
- European Society of Human Reproduction and Embryology. Recurrent Pregnancy Loss Guideline.
- Atik RB, et al. ESHRE guideline: recurrent pregnancy loss: an update in 2022. Human Reproduction Open. 2023.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
男性側の妊活も、できることから整えていきましょう
精液検査で大きな異常がない場合でも、精子DNAの損傷や酸化ストレスなど、通常の検査だけでは見えにくい「精子の質」が関係していることがあります。
とはいえ、検査結果だけに一喜一憂しすぎる必要はありません。精子の状態は、睡眠・食事・喫煙・飲酒・ストレス・血流・自律神経の乱れなど、日々の生活習慣とも関わっています。
宇都宮鍼灸良導絡院では、妊活中の女性だけでなく、男性側の身体づくりについてもご相談いただけます。疲れが抜けにくい、睡眠の質が悪い、ストレスが強い、冷えや血流の悪さが気になる方は、妊活の一環として身体全体を整えることも大切です。
「男性側も何かできることを始めたい」「精子の質が気になる」という方は、無理のない範囲で生活習慣を見直しながら、必要に応じて鍼灸による体調管理もご検討ください🍀







