
妊娠中の「幸せホルモン」セロトニンとは?気分・睡眠・心の安定との関係をわかりやすく解説
妊娠中は、つわりや眠気、体の重だるさだけでなく、気分の落ち込みや不安を感じやすくなる時期です。「妊娠しているのに気持ちが不安定」「理由ははっきりしないのに涙が出る」と悩む方も少なくありません。
そんな妊娠中の心身の変化を考えるうえで、よく話題になるのが「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンです。セロトニンは、気分・睡眠・食欲・痛みの感じ方などに関わる大切な物質ですが、妊娠中の不調をすべてセロトニンだけで説明できるわけではありません。妊娠中のこころとからだは、ホルモン変動、睡眠の乱れ、生活環境の変化など、さまざまな要因の影響を受けます。
この記事では、妊娠中のセロトニンの基本、妊娠中の気分や睡眠との関係、日常生活でできる整え方について、医学的に誤解のないようにわかりやすく解説します。
- セロトニンは一般に「幸せホルモン」と呼ばれますが、正確には気分や睡眠、食欲、痛みの感じ方などに関わる神経伝達物質です。
- 妊娠中はホルモン変化や睡眠不足、不安などが重なり、気分が不安定になりやすくなりますが、それ自体は珍しいことではありません。
- 妊娠中のセロトニンは母体の心身だけでなく、胎盤や胎児の発達との関わりも研究されています。
- 朝の光を浴びる、無理のない運動をする、食事のバランスを整えるなど、毎日の生活習慣を見直すことが心身の安定につながります。
- 気分の落ち込みや不安が強く続くときは、自分だけで抱え込まず、産婦人科やかかりつけ医に相談することが大切です。


目次
セロトニンとは?「幸せホルモン」と呼ばれる理由
セロトニンは、脳や腸などで働く物質で、特に脳内では神経伝達物質として、気分や睡眠、食欲、痛みの感じ方、ストレス反応などに関わっています。一般には「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、これはあくまで通称であり、実際には心の安定に関わる神経伝達物質として理解するのが適切です。
セロトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンを材料に合成されます。また、セロトニンは睡眠に関わるメラトニンの材料にもなるため、生活リズムや睡眠の質とも関係があります。
妊娠中に気分が不安定になりやすいのはなぜ?
妊娠中は、エストロゲンやプロゲステロンなどの変化に加え、つわり、疲労、睡眠不足、出産や育児への不安などが重なり、精神的にも身体的にも負担がかかりやすくなります。そのため、気分の浮き沈みや不安感が出ること自体は珍しいことではありません。
セロトニンはこうした気分や睡眠、ストレス反応に関わるため、妊娠中のメンタルヘルスを考えるうえで無関係ではありません。ただし、「セロトニンが少ないから妊娠中につらい」「セロトニンを増やせばすべて解決する」といった単純な話ではありません。妊娠中の心の不調は、複数の要因が重なって起こるものとして捉えることが大切です。
妊娠中のセロトニンは赤ちゃんにも関係する?
近年の研究では、妊娠中のセロトニンは母体だけでなく、胎盤や胎児の発達とも関わることが示されています。特に初期の発達段階では、胎盤がセロトニンの供給や調節に関わり、胎児の脳の発達に影響する可能性があると報告されています。
ただし、ここで大切なのは、こうした知見をもって「妊婦さんが落ち込むと赤ちゃんに悪い」と不安を強めすぎないことです。研究は主に発達の仕組みを示したものであり、日常の気分の波を過度に恐れる必要はありません。つらさが続くときは我慢せず、産婦人科やかかりつけ医、助産師などに相談することが重要です。
妊娠中のセロトニンと睡眠・不安・痛みの関係
セロトニンは、気分の安定だけでなく、睡眠や痛みの感じ方にも関わります。妊娠中は睡眠の質が落ちやすく、眠れてもすっきりしない、夜中に何度も目が覚める、といった悩みが増えやすい時期です。セロトニンはメラトニンの材料となるため、朝の光を浴びることや生活リズムを整えることは、妊娠中の睡眠リズムを整えるうえでも役立つ可能性があります。
また、セロトニンは痛みの感じ方にも関わることが知られています。妊娠中の肩こり、頭痛、だるさ、腰の重さなどは体の変化そのものでも起こりますが、ストレスや睡眠不足が重なると、よりつらく感じやすくなることがあります。こうしたときは、「気のせい」ではなく、心身が疲れているサインとして休息や相談を優先することが大切です。
妊娠中にセロトニンを整えるためにできること
妊娠中は、薬やサプリを自己判断で使う前に、まず生活習慣を整えることが基本です。特別なことを増やすよりも、毎日の過ごし方を少しずつ整えていくことが、心身の安定につながります。
1.朝の光を浴びて生活リズムを整える
起床後にカーテンを開けて光を浴びる、朝食の時間を整えるなど、体内時計を意識した生活は、睡眠リズムを整える助けになります。妊娠中は夜の睡眠が乱れやすいため、朝の過ごし方を整えることはとても大切です。
2.無理のない範囲で体を動かす
散歩、マタニティ向けのストレッチ、医師から制限を受けていない範囲での軽い運動は、気分転換や睡眠の質の改善に役立ちます。妊娠中の運動は、「頑張る」よりも「続けやすい」ことが大切です。出血、張り、痛みなどがある場合は、自己判断せず医師に確認しましょう。
3.トリプトファンを含む食品を意識する
セロトニンの材料になるトリプトファンは、乳製品、大豆製品、卵、魚、肉などに含まれます。ただし、特定の食品をたくさん食べればセロトニンが大きく増える、という単純なものではありません。妊娠中は偏った食事より、主食・主菜・副菜をそろえた食事を意識することが大切です。
4.ひとりで抱え込まない
妊娠中の不安や落ち込みは珍しいことではありません。気分の落ち込みが続く、眠れない、何も楽しめない、涙が止まらない、不安で日常生活に支障が出るといった場合は、早めに産婦人科や医療者へ相談しましょう。つらさを我慢しすぎないことも大切なセルフケアです。
「セロトニンを増やすために薬をやめる」は危険です
妊娠中のセロトニンという言葉から、抗うつ薬や不安の薬について心配になる方もいるかもしれません。しかし、妊娠中の薬の継続・中止は自己判断で決めるべきではありません。
「薬を飲んでいるから不安」「やめたほうがいいのでは」と悩む場合も、まずは処方医や産婦人科に相談してください。勝手に中断すると、かえって症状の悪化につながることがあります。
まとめ
妊娠中の「幸せホルモン」として知られるセロトニンは、気分、睡眠、食欲、痛みの感じ方などに関わる大切な物質です。妊娠中はホルモン変化や生活の変化により、気持ちが不安定になりやすく、セロトニンが関わる仕組みも注目されています。
ただし、妊娠中の不調をすべてセロトニンで説明することはできません。大切なのは、朝の光、無理のない運動、バランスのよい食事、十分な休息、そしてつらいときに相談することです。気分の落ち込みや不安が続くときは、我慢せず医療者に相談してください。
妊娠中に気分が落ち込みやすいのは、セロトニン不足が原因ですか?
妊娠中の気分の落ち込みには、セロトニンだけでなく、ホルモン変化、つわり、睡眠不足、生活環境の変化、不安などさまざまな要因が関わります。セロトニンはその一部に関係すると考えられますが、すべてをセロトニン不足だけで説明することはできません。
妊娠中に「幸せホルモン」を増やすには何をしたらいいですか?
まずは、朝の光を浴びる、無理のない範囲で体を動かす、バランスのよい食事を心がける、休息をとるといった基本的な生活習慣を整えることが大切です。特別な方法を探すより、毎日のリズムを安定させることが心身の安定につながります。
妊娠中にセロトニンを増やすためにサプリを飲んでもいいですか?
妊娠中は、サプリメントや健康食品を自己判断で使う前に、主治医や医療者に相談することが大切です。体によいと思っていても、成分や量によっては妊娠中に注意が必要なものもあります。まずは食事や生活習慣を整えることを基本に考えましょう。
妊娠中の不安や涙もろさは、よくあることですか?
はい、妊娠中は心身の変化が大きいため、不安になったり涙もろくなったりすることは珍しくありません。ただし、気分の落ち込みが長く続く、眠れない、何も楽しめない、日常生活に支障が出るといった場合は、早めに産婦人科などへ相談することが大切です。
妊娠中に飲んでいる心の薬は、自分でやめたほうがいいですか?
自己判断で薬を中止するのはおすすめできません。急にやめることで、かえって症状が悪化することもあります。妊娠中の薬について不安があるときは、処方医や産婦人科に必ず相談したうえで判断することが大切です。
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📚参考文献
- StatPearls: Physiology, Serotonin
- ACOG: Depression During Pregnancy
- ACOG: Anxiety and Pregnancy
- ACOG: Exercise During Pregnancy
- NHS: Depression in pregnancy
- Bonnin A, et al. Fetal, maternal, and placental sources of serotonin and new implications for developmental programming of the brain. 2011.
- Rosenfeld CS. Placental serotonin signaling, pregnancy outcomes, and regulation of fetal brain development. 2020.
- St-Pierre J, et al. Effects of prenatal maternal stress on serotonin and fetal development. 2016.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊娠中の不安や不調を、ひとりで抱え込まないために
妊娠中は、体の変化だけでなく、気持ちの揺らぎや眠りの浅さ、原因のはっきりしないだるさやつらさを感じることがあります。「これくらいで相談していいのかな」と思ってしまう方もいらっしゃいますが、毎日を少しでも安心して過ごすために、早めに心身を整えることはとても大切です。
宇都宮鍼灸良導絡院では、妊娠中のお身体の状態やその時期のお悩みに合わせて、無理のない施術をご提案しています。気分の落ち込みや不安そのものを治すものではありませんが、肩こり・首こり・頭の重さ・疲れやすさ・眠りの浅さなど、心身の緊張に伴いやすい不調をやわらげるサポートとして、鍼灸を取り入れる方もいらっしゃいます。
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