
男性が高熱を出したあと、精子はどのくらいで回復する?
インフルエンザやコロナ、強い風邪などで高熱が出たあと、
- 精子に影響はあるの?
- どのくらいで元に戻る?
- 人工授精や体外受精は今周期していい?
と不安になる方は少なくありません。
結論からいうと、高熱のあとの精子への影響は一時的なことが多いです。
ただし、精子は毎日すぐに作られるわけではなく、作られてから成熟して射精されるまでに時間がかかります。
そのため、高熱の影響が落ち着くまで2〜3か月ほどみておく考え方がよく使われます。
特に38℃以上の発熱が数日続いた場合は、精子濃度、運動率、形態、DNAの状態に一時的な変化が出る可能性があります。
- 男性が高熱を出したあとの精子への影響は、一時的なことが多いと考えられています。
- 精子が作られて成熟するまでには約74日かかるため、回復の目安としては2〜3か月ほどみておくと安心です。
- 特に38℃以上の高熱が数日続いた場合は、精子濃度や運動率、形態などに一時的な変化が出ることがあります。
- 人工授精や体外受精を控えている場合は、高熱があったことを主治医に伝え、必要に応じて精液検査を受けながら進めると安心です。
- 1回の検査結果だけで決めつけず、体調や経過を見ながら落ち着いて判断していくことが大切です。
目次
38℃以上の発熱で何が起こるのか
精子は熱に弱い性質があります。
そのため、38℃以上の高熱が2日以上続くような発熱があると、精巣の温度環境が乱れ、精子を作る過程に影響が出やすくなります。
研究では、発熱後に精子濃度の低下、運動率の低下、正常形態率の低下、精子DNA断片化の悪化などがみられることがあります。
こうした変化は、とくに感染から数週間〜3か月以内に出やすいと報告されています。
大切なのは、「高熱が出た=ずっと妊娠できない」ではないということです。
多くの報告では、こうした影響は永続的ではなく、時間の経過とともに回復していく可能性が高いとされています。
COVID-19後の研究でも、感染直後より3か月後のほうが精液所見が改善している傾向が示されています。
造精サイクルの目安は約74日
精子の回復時期を考えるうえで大切なのが、造精サイクルです。
人の精子は、精巣の中で作られてから成熟するまでに約74日かかるとされています。
そのため、高熱の影響を受けた精子が入れ替わるまでには、少なくとも1回分の造精サイクルが必要になります。
実際、レビュー論文でも、発熱やCOVID-19後の精子への影響は約74日、つまり1サイクル程度は見込んでおくのが妥当と整理されています。
そのため、実際の目安としては次のように考えるとわかりやすいです。
- 軽い発熱や短期間の発熱なら、比較的早く整うこともある
- 38℃以上の高熱が数日続いた場合は、2〜3か月ほどみると安心
- 精液所見がもともと不安定な場合は、さらに慎重にみることがある
つまり、「解熱した翌週には完全に元通り」ではないことがある、という理解が大切です。
どのくらいで回復する?
読者の方がいちばん知りたいのは、ここだと思います。
一般的には、2〜3か月程度で回復傾向をみることが多いです。
COVID-19関連の報告では、感染後90日未満では精液所見が落ちやすく、3か月を過ぎると改善してくる傾向がみられます。
一方で、一部の研究では、完全に安定するまでに3〜6か月ほどかかる例もあります。
そのため実際には、「まずは2〜3か月をひとつの目安にし、必要なら精液検査で確認する」という考え方が現実的です。
特に、人工授精や体外受精を控えている場合は、感覚だけで判断するより、検査結果を参考にしたほうが安心です。
精液検査はいつ受けるといい?
精液検査は、高熱の直後すぎる時期より、少し間をあけてからのほうが判断しやすいです。
すぐに検査すると、そのときの一時的な悪化だけを見てしまうことがあります。
一方で、今まさに人工授精や体外受精を控えているなら、現時点の精子の状態を把握する意味で、早めに検査することにも価値があります。
考え方としては、次のように整理するとわかりやすいです。
- 今周期に人工授精や体外受精を予定している
まず現時点の状態確認として検査を考える - 回復しているかを見たい
高熱から2〜3か月後を目安に再検する - 1回の結果だけで判断しないほうがよい
精液検査は変動があるため、異常があれば再検が勧められます
つまり、「高熱後に1回悪かった=ずっと悪い」ではないということです。
精液所見は日によっても変動するため、タイミングを見て再確認することが大切です。
人工授精(AIH)前はどう考える?
人工授精では、自然妊娠よりも精液所見の影響を受けやすい面があります。
そのため、男性が高熱後まもない時期で、もともと精子濃度や運動率に不安がある場合は、今周期をそのまま進めるか、少し待つかを相談する価値があります。
特に慎重に考えたいのは、次のようなケースです。
- 38℃以上の高熱が数日続いた
- 発熱からまだ1か月以内
- 以前から精液所見が不安定
- 今回の人工授精をなるべく良い条件で受けたい
この場合は、事前に精液検査をする、もしくは1〜2周期様子を見るという考え方も現実的です。
高熱後の精子は一時的にぶれやすいため、結果が読みづらくなることがあるからです。
体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)前はどう考える?
体外受精や顕微授精では、採精日が重要になります。
高熱の影響が残っている時期だと、精液所見が普段より悪くなっている可能性があるため、特に男性因子がある場合は主治医に共有しておくことが大切です。
ただし、IVF/ICSIでは精子を洗浄・選別して使えることもあり、高熱後だから必ず中止というわけではありません。
一方で、できるだけ良い条件で臨みたい周期なら、採精日との距離や直近の精液所見を見て、少し延期したほうがよい場合もあります。
そのため、IVF/ICSI前の考え方としては、
- 高熱があったことを必ず伝える
- 可能なら事前に精液所見を確認する
- 直前で迷う場合は主治医と相談する
この3点が大切です。
コロナとインフルエンザで違いはある?
読者の方が気にしやすい点ですが、実用上は、「ウイルスの名前」より「発熱の強さ・長さ」が大切です。
COVID-19関連の研究は多く、感染後の精液所見悪化が報告されていますが、その背景には感染そのものだけでなく、発熱や炎症反応の影響があると考えられています。
レビューでも、発熱が精子への悪影響の大きな要因として扱われています。
そのため、インフルエンザでもコロナでも、高熱が出たなら精子に一時的な影響が出る可能性があると考えておくとよいです。
逆に、熱がほとんど出ていない軽症なら、影響は比較的小さい可能性があります。
こんなときは受診・相談を
次のような場合は、泌尿器科や不妊治療クリニックへ相談すると安心です。
- 高熱後3か月以上たっても精液所見が戻らない
- 精液量や精子濃度が大きく落ちた
- もともと男性不妊を指摘されている
- 人工授精や体外受精・顕微授精を近く控えている
- 精液検査をいつ受けるか迷っている
不安が強いときは、時間だけで判断せず、検査で確認するのがいちばん安心につながります。
Q1. 高熱が出たあと、精子はどれくらいで元に戻りますか?
一般的には、2〜3か月ほどをひとつの目安に考えることが多いです。
これは、精子が作られてから成熟するまでに時間がかかるためです。ただし、発熱の程度やもともとの精液所見によって個人差があるため、必要に応じて精液検査で確認しながら判断すると安心です。
Q2. 38℃以上の高熱が出た場合、どんな影響が考えられますか?
38℃以上の高熱が数日続いた場合は、精子濃度、運動率、形態などに一時的な影響が出ることがあります。
ただし、高熱が出たからといってずっと影響が残るわけではありません。多くは時間の経過とともに回復していくため、必要以上に悲観しすぎないことも大切です。
Q3. 高熱のあと、すぐに精液検査を受けたほうがいいですか?
今まさに人工授精や体外受精を控えている場合は、現時点の状態を確認する意味で早めに検査を受けることもあります。
一方で、回復しているかを見たい場合は、高熱から2〜3か月ほどたってから再検するほうが判断しやすいこともあります。精液所見は変動しやすいため、1回の結果だけで決めないことが大切です。
Q4. 高熱のあとでも、人工授精や体外受精は進めて大丈夫ですか?
必ずしも中止になるわけではありませんが、高熱の影響が残っている時期は精液所見が不安定になることがあります。
特に人工授精や採精を伴う体外受精では、高熱があったことを主治医に伝え、必要に応じて精液検査をしながら進めると安心です。できるだけ良い条件で臨みたい場合は、少し時期を調整することもあります。
Q5. どんなときに病院へ相談したほうがいいですか?
高熱後3か月以上たっても精液所見が戻らない場合や、もともと男性不妊を指摘されている場合、人工授精や体外受精を近く控えている場合は相談しておくと安心です。
また、精液検査をいつ受けるべきか迷うときも、一度相談しておくと今後の見通しが立てやすくなります。不安が強いときは、時間だけで判断せず、検査で確認していくことが大切です。
📚参考文献
- SARS-CoV-2 infection and implications for male reproductive health. Reproductive BioMedicine Online. 2022.
- Impact of fever and COVID-19 on semen parameters and sperm DNA integrity(PMC掲載論文)
- Longitudinal evaluation of semen parameters after COVID-19 recovery(PMC掲載論文)
- COVID-19 and male fertility: review of recovery timing and spermatogenesis cycle(PMC掲載論文)
- WHO manual for semen analysis, 6th edition: interpretation and repeat testing considerations(PMC掲載解説)
- World Health Organization. WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edition.
- American Society for Reproductive Medicine (ASRM). Patient Management and Clinical Recommendations During the Coronavirus (COVID-19) Pandemic.
- Effects of COVID-19 infection on male fertility and spermatogenesis(PMC掲載レビュー)
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
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