
【不妊治療とBMIの関係】体重制限は必要?年齢別に考える妊活中の体づくり
不妊治療を進める中で、医師から「少し体重を落としましょう」「BMIを意識しましょう」と言われ、不安になった方もいらっしゃるかもしれません。
「体重が原因で妊娠できないの?」「痩せるまで不妊治療を始められないの?」「年齢的に、減量に時間をかけて大丈夫?」と感じるのは、とても自然なことです。
結論からいうと、BMIは不妊治療の結果に影響する可能性がありますが、体重だけで妊娠の可能性が決まるわけではありません。
大切なのは、BMIだけを見るのではなく、年齢・AMH・排卵の状態・採卵や移植の予定・持病の有無などを含めて、治療のタイミングを考えることです。
近年の研究でも、BMIと年齢はどちらも体外受精・顕微授精などのART治療成績に関係することが報告されています。特にBMIが25以上の場合、年齢によって「減量を優先するのか」「治療と並行するのか」の考え方が変わってきます。
- BMIは不妊治療の結果に影響する可能性がありますが、体重だけで妊娠の可能性が決まるわけではありません。
- BMI25以上の場合、排卵やホルモン環境、妊娠後のリスクに関係することがあるため、体重管理がすすめられることがあります。
- 35歳未満では、治療前に3〜6か月ほどかけて、体重の3〜5%程度を目安にゆるやかに整えることがプラスになりやすいと考えられます。
- 35歳以上では、減量だけに時間をかけすぎず、治療のタイミングと体づくりを並行して考えることが大切です。
- 極端な食事制限や急激な減量は、排卵やホルモンバランスに悪影響を与える可能性があるため、食事・運動・睡眠を無理なく整えることが大切です。


目次
- 1 BMIとは?不妊治療でなぜ見られるの?
- 2 BMIが高いと不妊治療にどんな影響がある?
- 3 研究では「BMI」と「年齢」がART成績に関係すると報告
- 4 35歳未満でBMI25以上の場合|治療前のゆるやかな減量がプラスになりやすい
- 5 35〜37歳の場合|減量と治療開始のバランスが大切
- 6 38歳以上の場合|体重管理は大切。ただし治療を遅らせすぎない
- 7 痩せすぎも妊活には注意が必要
- 8 妊活中の体重管理で意識したい食事
- 9 妊活中の運動は「燃やす体」をつくることが目的
- 10 睡眠とストレスもBMI・ホルモン環境に関係する
- 11 不妊治療中に「体重制限」と言われたときの考え方
- 12 まとめ|BMIは大切。でも「体重だけ」で妊娠力は決まりません
- 13 この記事の監修者
BMIとは?不妊治療でなぜ見られるの?
BMIとは、身長と体重から計算する体格の指標です。
BMI=体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m
たとえば、身長160cm・体重60kgの場合は、60 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = BMI23.4となります。
一般的には、BMI18.5未満は「やせ」、18.5〜24.9は「標準」、25以上は「過体重・肥満」に分類されます。
ただし、BMIはあくまで目安であり、筋肉量や体脂肪率、月経周期、ホルモン状態までは反映しません。
不妊治療でBMIが見られる理由は、体重や体脂肪が、排卵・ホルモン環境・卵巣刺激への反応・妊娠中の合併症リスクなどに関係する可能性があるためです。
BMIが高いと不妊治療にどんな影響がある?
BMIが高い場合、以下のような影響が考えられます。
- 排卵が乱れやすくなる
- 卵巣刺激で薬の量が増えることがある
- 採卵数や胚盤胞到達率に影響する可能性がある
- 妊娠後に妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群などのリスクが上がる
- 流産や分娩時のリスクが高まる可能性がある
ただし、ここで大切なのは、「BMIが高い=妊娠できない」ではないということです。
実際には、年齢、卵巣予備能、精子の状態、子宮内膜、胚の染色体、治療方法など、妊娠には多くの要因が関係します。BMIはその中のひとつです。
また、BMIが高い方に対しても、体重指導は大切ですが、年齢によっては「減量が終わるまで治療を止める」ことがかえって不利になる場合もあります。
特に35歳以上では、卵子の年齢の影響も考慮しながら、治療と体づくりを並行する視点が大切です。
研究では「BMI」と「年齢」がART成績に関係すると報告
2023年にHuman Reproductionに掲載されたポルトガルの多施設研究では、体外受精・顕微授精を初めて受けた14,213人を対象に、BMIと年齢がART治療後の累積生児獲得率にどう関係するかが検討されました。
累積生児獲得率とは、1回の移植だけでなく、採卵後に得られた胚を使った複数回の移植も含めて、最終的に赤ちゃんを出産できる割合のことです。
この研究では、標準体重の方と比べて、過体重・肥満の方では累積生児獲得率が低下する傾向が示されました。
さらに、BMIだけでなく年齢も治療結果に大きく関係し、特に35歳を境に減量の考え方を変える必要があることが示唆されています。
35歳未満でBMI25以上の場合|治療前のゆるやかな減量がプラスになりやすい
35歳未満でBMIが25以上の場合は、治療前から数か月かけて体重を整えることが、排卵・ホルモン環境・妊娠後のリスク軽減につながる可能性があります。
目安としては、3〜6か月で体重の3〜5%程度をゆるやかに落とすことを目標にするとよいでしょう。
たとえば、体重70kgの方であれば、約2〜3.5kgの減量です。
「10kg痩せないと意味がない」と考える必要はありません。急激な減量よりも、食事・睡眠・運動を整えながら、体脂肪を少しずつ落としていくことが大切です。
海外の報告でも、不妊治療前の生活習慣介入では5〜10%の減量が目標にされることがありますが、生殖アウトカムへの効果は研究によって差があり、すべての人に同じ効果があるとは限りません。
35〜37歳の場合|減量と治療開始のバランスが大切
35〜37歳では、BMIの改善も大切ですが、年齢による卵子の変化も無視できません。
この年代では、「痩せてから治療」ではなく、「治療計画を立てながら体づくりも同時に進める」という考え方が現実的です。
たとえば、以下のような流れが考えられます。
- 3か月ほど食事と運動を集中して整える
- その間に検査や採卵計画を進める
- 必要に応じて採卵と体重管理を並行する
- 移植前に体調や体重をさらに整える
BMIを整えることは大切ですが、減量に時間をかけすぎて治療のタイミングを逃してしまうのは避けたいところです。
38歳以上の場合|体重管理は大切。ただし治療を遅らせすぎない
38歳以上では、年齢の影響がさらに大きくなります。
この年代では、体重を落とすこと自体はプラスに働く可能性がありますが、減量だけで年齢要因を完全に補うことは難しいと考えられます。
そのため、BMIが高い場合でも、まずは主治医と相談しながら、以下のような方法が検討されることがあります。
- 採卵を先に進める
- 胚を凍結してから体調を整える
- 移植に向けて体重や血糖、血圧を整える
- 食事・運動・睡眠を治療と並行して改善する
大切なのは、「体重を落とさないと治療できない」と一人で思い込まないことです。
年齢、AMH、卵胞数、既往歴によって、最適な進め方は変わります。
痩せすぎも妊活には注意が必要
不妊治療とBMIというと「太りすぎ」に注目されがちですが、痩せすぎも妊活には注意が必要です。
BMIが低すぎる場合、体がエネルギー不足と判断し、排卵が乱れたり、月経不順や無月経につながることがあります。
極端な糖質制限、食事量の大幅なカット、短期間での急激な減量は、排卵やホルモンバランスに悪影響を与える可能性があります。
妊活中の体づくりでは、「体重を減らすこと」だけでなく、必要な栄養を満たしながら、妊娠に向けた体の土台を整えることが大切です。
妊活中の体重管理で意識したい食事
妊活中の食事では、単にカロリーを減らすのではなく、減らすものと満たすものを分けて考えることが大切です。
控えたいもの
- 揚げ物やスナック菓子の頻度
- 砂糖入り飲料
- アルコール
- 夜遅い時間の食事
- 菓子パンや甘い間食の習慣
- 食べないダイエット
意識して摂りたいもの
- 魚、卵、大豆製品、鶏肉などのたんぱく質
- 野菜、海藻、きのこ類
- 玄米、雑穀、オートミールなどの未精製の炭水化物
- 鉄、亜鉛、葉酸、ビタミンDなど妊活に関わる栄養素
- 魚、ナッツ、オリーブオイルなどに含まれる良質な脂質
特にたんぱく質は、筋肉量を保ち、代謝を落とさずに体重管理をするうえで大切です。
妊活中の運動は「燃やす体」をつくることが目的
妊活中の運動は、激しい運動をする必要はありません。
まずは、続けられる範囲で体を動かすことが大切です。
おすすめは、以下のような運動です。
- 速歩20〜30分を週5日程度
- 週2〜3回の軽い筋トレ
- スクワット、プランクなどの自重トレーニング
- 階段を使う
- ひと駅分歩く
- こまめに立つ
目安として、週150分程度の中等度の有酸素運動は、体重管理や代謝改善に役立ちます。
運動は体重を落とすためだけでなく、血流、自律神経、睡眠の質、ストレス対策にもつながります。
睡眠とストレスもBMI・ホルモン環境に関係する
体重管理というと食事と運動に目が向きがちですが、睡眠不足やストレスも大切なポイントです。
睡眠時間が短いと、食欲を調整するホルモンや血糖コントロールに影響し、体重が落ちにくくなることがあります。
妊活中は、以下のような小さな習慣が体づくりの土台になります。
- 起床時間をそろえる
- 夜更かしを減らす
- 寝る前のスマホ時間を短くする
- 深夜の間食を避ける
- 軽い散歩や深呼吸で緊張をゆるめる
不妊治療中に「体重制限」と言われたときの考え方
体重制限と言われると、「今の自分ではダメ」と言われたように感じてしまう方もいるかもしれません。
しかし本来、BMIを整える目的は、誰かを責めるためではありません。
目的は、以下のようなことです。
- 排卵やホルモン環境を整えやすくする
- 採卵や移植の条件を少しでもよくする
- 妊娠後の母体と赤ちゃんのリスクを減らす
- 治療の安全性を高める
また、BMIの基準は医療機関によって異なります。麻酔の安全性、採卵時のリスク、妊娠後の管理体制などによって、治療前に一定の体重管理を求められることがあります。
不安な場合は、主治医に次のように確認してみるとよいでしょう。
- どのくらいのBMIを目標にすればよいか
- 減量してから採卵なのか、採卵と並行してよいのか
- 移植前までに整えればよいのか
- AMHや年齢を考えると、治療を遅らせてもよいのか
- 食事制限や運動で注意することはあるか
一人で判断せず、治療計画と体づくりをセットで考えることが大切です。
まとめ|BMIは大切。でも「体重だけ」で妊娠力は決まりません
BMIは、不妊治療や妊娠後の経過に関係する大切な指標です。
特にBMI25以上の場合、体重を整えることで、排卵・ホルモン環境・妊娠後のリスクに良い影響が期待できることがあります。
ただし、不妊治療では年齢の影響も大きいため、すべての方が「痩せてから治療開始」でよいわけではありません。
35歳未満であれば、治療前にゆるやかな減量を行うことがプラスになりやすい一方で、35歳以上では治療のタイミングを遅らせすぎないことも重要です。
大切なのは、体重を責めることではなく、今の体の状態を知り、妊娠に向けてできることを一つずつ整えていくことです。
無理なダイエットではなく、食事・運動・睡眠・ストレスケアを通して、治療を受ける体の土台を整えていきましょう。
Q1. BMIが高いと不妊治療は受けられませんか?
BMIが高いからといって、必ず不妊治療を受けられないわけではありません。
ただし、医療機関によっては、採卵時の麻酔リスクや妊娠後の合併症リスクなどを考慮して、一定のBMIを目安に体重管理をすすめる場合があります。
大切なのは、自己判断で治療を止めることではなく、年齢・AMH・採卵計画・持病の有無などを含めて、主治医と相談しながら進めることです。
Q2. 不妊治療前にどのくらい体重を落とせばよいですか?
目安としては、BMI25以上の場合、まずは体重の3〜5%程度を無理なく整えることが考えられます。
たとえば体重70kgの方であれば、約2〜3.5kg程度です。
ただし、年齢や治療スケジュールによって優先順位は変わります。特に35歳以上では、減量に時間をかけすぎず、治療と並行して体づくりを進めることも大切です。
Q3. BMIが標準なら不妊には関係ありませんか?
BMIが標準範囲であっても、不妊の原因がまったくないという意味ではありません。
妊娠には、卵子の年齢、排卵、卵管、精子、子宮内膜、胚の状態、ホルモンバランスなど、さまざまな要因が関係します。
BMIは妊活や不妊治療で確認する大切な指標のひとつですが、すべてを判断できるものではありません。
Q4. 痩せれば妊娠しやすくなりますか?
BMIが高い方の場合、体重を整えることで排卵やホルモン環境、妊娠後のリスクに良い影響が期待できることがあります。
ただし、痩せれば必ず妊娠する、というわけではありません。
また、急激なダイエットや食事制限は、かえって排卵や月経周期に悪影響を与えることがあります。妊活中は、体重を減らすことだけでなく、必要な栄養を満たしながら体を整えることが大切です。
Q5. 35歳以上でも減量を優先した方がいいですか?
35歳以上では、BMIの改善も大切ですが、年齢による卵子の変化も考える必要があります。
そのため、減量だけを優先して治療開始を大きく遅らせるよりも、検査や採卵計画を進めながら、食事・運動・睡眠を整える方法が現実的な場合があります。
特に38歳以上では、治療のタイミングを確保しながら、安全な範囲で体重管理を並行することが大切です。
Q6. 妊活中にしてはいけないダイエットはありますか?
極端な糖質制限、食事量を大きく減らすダイエット、短期間で急激に体重を落とす方法はおすすめできません。
エネルギー不足になると、排卵やホルモンバランスに影響することがあります。
妊活中は、体重だけを見るのではなく、たんぱく質・鉄・亜鉛・葉酸・ビタミンDなど、妊娠に向けた体づくりに必要な栄養をしっかり満たすことを意識しましょう。
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📚参考文献
- Rafael F, et al. The combined effect of BMI and age on ART outcomes. Human Reproduction. 2023;38:886.
- American Society for Reproductive Medicine. Obesity and reproduction: a committee opinion. 2021.
- Hoek A, et al. Weight loss interventions prior to infertility treatment. Human Reproduction. 2024.
- Carosso AR, et al. The relevance of female overweight in infertility treatment. 2025.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
体重管理とあわせて、妊娠に向けた体づくりを整えたい方へ
不妊治療中にBMIや体重について指摘されると、「自分の体が妊娠に向いていないのでは」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、妊活中の体づくりは、体重を減らすことだけが目的ではありません。食事・運動・睡眠・ストレスの影響を受けながら、ホルモンバランスや自律神経、血流の状態を整えていくことも大切です。
宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療の段階や月経周期、お身体の状態に合わせて、妊娠に向けた体づくりをサポートしています。
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