
男性の肥満は精子に影響する?男性不妊との関係と改善のためにできること
妊活というと、女性側の体づくりに目が向きやすいですが、妊娠はご夫婦お二人で進めていくものです。
近年、男性の体重や生活習慣が、精子の数・運動率・DNAの状態などに関係している可能性があることが分かってきています。
もちろん、肥満があるからといって必ず男性不妊になるわけではありません。体重だけで妊娠の可能性が決まるものでもありません。
ただし、男性の肥満や内臓脂肪の増加は、ホルモンバランス、酸化ストレス、精子の質に影響する可能性があり、妊活中に見直しておきたい大切なポイントのひとつです。
この記事では、男性の肥満と精子の関係、男性不妊への影響、そして妊活中にできる食事・運動の工夫について解説します。
- 男性の肥満や過体重は、精子の数・濃度・運動率・DNAの状態に影響する可能性があります。
- 肥満があるからといって、必ず男性不妊になるわけではありません。体重だけで妊娠の可能性が決まるものではありません。
- 内臓脂肪の増加は、ホルモンバランスの乱れや酸化ストレスを通して、精子形成に関係することがあります。
- 食事では、極端な制限よりも、野菜・魚・豆類・全粒穀物などを取り入れたバランスのよい食生活が大切です。
- 運動は、無理な短期ダイエットではなく、ウォーキングなど続けやすい習慣から始めることが妊活中の体づくりにつながります。


目次
男性の肥満とは?BMI25以上は日本では「肥満」とされる
肥満度の目安としてよく使われるのが、BMIです。
BMIは、以下の計算式で求められます。
BMI=体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m
日本では、BMI25以上が「肥満」と定義されています。ただし、肥満そのものがすぐに病気というわけではなく、健康障害を伴う場合などに「肥満症」として治療の対象になります。
妊活においては、BMIだけでなく、腹囲や内臓脂肪、血糖値、脂質、血圧なども関係します。特にお腹まわりの脂肪が増えている場合は、ホルモンや代謝の乱れにつながりやすいため注意が必要です。
肥満は精子にどのような影響を与える?
男性の肥満は、精子の状態にいくつかの面から影響する可能性があります。
精子の数や濃度が低下する可能性
研究では、肥満男性では精子濃度や総精子数が低下しやすい傾向が報告されています。
精子の数が少ない状態は「乏精子症」と呼ばれ、自然妊娠や人工授精、体外受精の成績にも関わることがあります。
ただし、精液検査の結果は体調、睡眠、禁欲期間、ストレス、発熱などでも変動します。1回の検査結果だけで判断せず、必要に応じて再検査や泌尿器科での評価を受けることが大切です。
精子の運動率が下がる可能性
精子は、卵子に向かって進む力が必要です。
肥満によって酸化ストレスや炎症が増えると、精子の運動に必要なミトコンドリア機能に影響し、運動率が低下する可能性があります。
通常の精液検査では、精子濃度や運動率などを確認しますが、精子の細かな機能までは分からないこともあります。
精子DNAの損傷に関係する可能性
肥満では、体内の炎症や酸化ストレスが増えやすくなります。
酸化ストレスが強くなると、精子のDNAが傷つきやすくなる可能性があります。精子DNAの損傷は、受精後の胚発育や流産リスクと関連する可能性が指摘されています。
ただし、精子DNAの損傷があるからといって、必ず妊娠できない、必ず流産するという意味ではありません。あくまで妊娠しやすさに関わる可能性のある要素のひとつとして考えることが大切です。
男性ホルモンのバランスに影響する可能性
肥満があると、男性ホルモンであるテストステロンが低下しやすくなることがあります。
また、脂肪組織では男性ホルモンが女性ホルモン様の働きを持つホルモンへ変換されやすくなるため、ホルモンバランスが乱れ、精子形成に影響する可能性があります。
性欲の低下、勃起機能の低下、疲れやすさなどがある場合は、生活習慣だけでなく泌尿器科での相談も検討するとよいでしょう。
肥満は男性不妊や体外受精の成績にも関係する?
男性の肥満は、自然妊娠だけでなく、生殖補助医療、いわゆるARTの成績にも関係する可能性があります。
海外のシステマティックレビュー・メタ解析では、男性の肥満が男性の生殖能力やARTの成績に悪影響を与える可能性が示されています。
ただし、ここで大切なのは「肥満=妊娠できない」と考えすぎないことです。
妊娠には、女性側の年齢、卵子の状態、卵管、子宮内膜、排卵、男性側の精子、性交や治療のタイミングなど、多くの要素が関係します。
肥満はその中のひとつの要素であり、改善できる可能性のある生活習慣因子として捉えることが大切です。
精子の質を改善するためにできること
精子は日々つくられているため、生活習慣の影響を受けやすい細胞です。
すぐに結果が出るとは限りませんが、食事・運動・睡眠・ストレスケアを整えることは、男性の妊活において重要です。
食事は「極端な制限」よりも、バランスを整えることが大切
妊活中の男性におすすめしたいのは、急激な糖質制限や極端なダイエットではなく、長く続けられる食事改善です。
特に参考になる食事パターンとして、地中海食があります。
地中海食とは、野菜、果物、豆類、全粒穀物、魚、ナッツ類、オリーブオイルなどを中心とした食事です。
研究では、地中海食に近い食事をしている男性ほど、精子濃度、総精子数、運動率などの精液所見が良好である可能性が示されています。
妊活中の男性に意識したい食事
次のような食事を意識するとよいでしょう。
- 野菜、きのこ、海藻類を増やす
- 魚、大豆製品、卵、赤身肉などでたんぱく質をとる
- 白米やパンだけでなく、雑穀、玄米、全粒粉なども取り入れる
- ナッツ類やオリーブオイルなど、良質な脂質を適量とる
- 揚げ物、加工食品、甘い飲み物、過度な飲酒を控えめにする
大切なのは、「これを食べたら妊娠できる」という考え方ではなく、精子がつくられやすい体内環境を整えることです。
運動は“ほどよく続ける”ことがポイント
肥満がある男性では、減量によって精子濃度や精子数が改善する可能性が報告されています。
ただし、急激な減量や過度な運動は、かえって体に負担となることがあります。
妊活中は、無理な短期ダイエットよりも、続けられる運動習慣を作ることが大切です。
おすすめの運動
- 1日20〜30分程度のウォーキング
- 軽いジョギング
- 水泳
- 自宅でできる筋トレ
- 階段を使う、こまめに歩くなど日常活動を増やす
運動不足は精子の質に悪影響を与える可能性がありますが、過度な運動も負担になる場合があります。
「たくさん運動すればするほど良い」というよりも、無理なく続けられる運動を習慣にすることが大切です。
サウナ・長風呂・下着の締めつけにも注意
精子をつくる精巣は、熱に弱い臓器です。
肥満そのものに加えて、サウナ、長時間の長風呂、膝上でのパソコン作業、締めつけの強い下着、長時間の自転車などは、陰のう周辺の温度上昇や圧迫につながることがあります。
完全に禁止する必要はありませんが、妊活中は頻度や時間を見直してみるとよいでしょう。
「痩せないと妊娠できない」と思い詰めないことも大切
男性の肥満は、精子の質や妊娠率に関係する可能性があります。
しかし、体重だけが不妊の原因ではありません。
「自分のせいかもしれない」と責めすぎる必要はありませんし、短期間で無理に体重を落とそうとする必要もありません。
大切なのは、今の体の状態を知り、できるところから整えていくことです。
特に、妊活期間が長くなっている場合や、精液検査で異常を指摘された場合は、自己判断だけで悩まず、泌尿器科や男性不妊外来で相談することをおすすめします。
まとめ:男性の肥満は、精子の質を見直すきっかけになる
男性の肥満や過体重は、精子の数、運動率、DNAの状態、ホルモンバランスなどに影響する可能性があります。
一方で、食事や運動、睡眠、ストレスケアなどを整えることで、精子の状態が改善する可能性もあります。
妊活は女性だけが頑張るものではなく、ご夫婦で一緒に体を整えていくことが大切です。
まずは、無理なダイエットではなく、毎日の食事を少し整えること、歩く時間を増やすこと、睡眠を確保することから始めてみましょう。
肥満だと精子の質は必ず悪くなりますか?
肥満があるからといって、必ず精子の質が悪くなるわけではありません。ただし、肥満や内臓脂肪の増加は、精子の数・運動率・DNAの状態、ホルモンバランスなどに影響する可能性があります。妊活中であれば、体重だけでなく、食事・運動・睡眠なども含めて見直していくことが大切です。
どのくらい痩せれば精子の状態は改善しますか?
どのくらい体重を落とせば必ず改善する、という明確な基準はありません。大切なのは、急激に痩せることではなく、無理のない範囲で体脂肪や内臓脂肪を減らし、代謝やホルモンバランスを整えていくことです。まずは食事内容を整え、ウォーキングなど続けやすい運動を習慣にすることから始めるとよいでしょう。
精子は生活習慣を変えるとすぐに良くなりますか?
精子は日々つくられていますが、精子が成熟するまでには一定の期間がかかります。そのため、生活習慣を見直しても、すぐに精液検査の数値が変わるとは限りません。一般的には、数か月単位で食事・運動・睡眠・ストレスケアを続けながら、必要に応じて再検査を受けることが大切です。
男性不妊が心配な場合、まず何をすればよいですか?
まずは精液検査を受けて、精子の数・濃度・運動率などを確認することが大切です。精液検査の結果は体調や禁欲期間によって変動するため、1回の結果だけで判断しすぎる必要はありません。異常を指摘された場合や妊活期間が長くなっている場合は、泌尿器科や男性不妊外来で相談すると安心です。
妊活中の男性は、サウナや長風呂を避けた方がよいですか?
精子をつくる精巣は熱に弱いため、サウナや長風呂、締めつけの強い下着、長時間の自転車などは、陰のう周辺の温度上昇につながることがあります。完全に禁止する必要はありませんが、妊活中は頻度や時間を控えめにし、体に負担をかけすぎないよう意識するとよいでしょう。
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📚参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と肥満症」
- World Health Organization. WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edition, 2021.
- Campbell JM, Lane M, Owens JA, Bakos HW. Paternal obesity negatively affects male fertility and assisted reproduction outcomes: a systematic review and meta-analysis. Reproductive BioMedicine Online. 2015;31:593-604.
- Karayiannis D, et al. Association between adherence to the Mediterranean diet and semen quality parameters in male partners of couples attempting fertility. Human Reproduction. 2017;32:215-222.
- Andersen E, et al. Sperm count is increased by diet-induced weight loss and maintained by exercise or GLP-1 analogue treatment: a randomized controlled trial. Human Reproduction. 2022;37:1414-1422.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
男性の妊活も、体づくりから整えていきませんか?
男性の肥満や生活習慣は、精子の状態や妊活に関係する可能性があります。とはいえ、「痩せないと妊娠できない」「自分が原因かもしれない」と、ひとりで抱え込みすぎる必要はありません。
妊活では、検査結果だけでなく、睡眠・食事・ストレス・血流・自律神経の状態など、日々の体のコンディションを整えていくことも大切です。
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