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腎虚とは?女性にみられやすいサイン・原因・改善方法を東洋医学の視点から解説

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「最近、疲れやすくなった」「足腰がだるい」「冷えやすい」「月経量が減ってきた気がする」――。

このような変化が続くと、東洋医学では「腎虚(じんきょ)」という体質が関係していると考えることがあります。

ただし、最初に知っておきたいのは、腎虚は西洋医学の病名ではなく、漢方医学や東洋医学で使われる体の状態を表す言葉だということです。

東洋医学でいう「腎」は、現代医学の腎臓という臓器だけを意味するものではありません。成長、発育、老化、生殖、排尿、水分代謝、骨や足腰の働きなどを含む、より広い概念として捉えられています。

この記事では、腎虚とはどのような状態なのか、女性にみられやすいとされるサインや原因、日常生活で取り入れられる養生方法について、医学的な注意点も含めてわかりやすく解説します。

この記事の要点まとめ
  • 腎虚は東洋医学の体質・状態を表す言葉で、現代医学の腎臓病とは異なります
  • 女性では、冷え、疲れやすさ、足腰のだるさ、月経や更年期の変化などと関連づけて考えられることがあります
  • 背景には、加齢、体質、過労、睡眠不足、病後・産後の消耗などが関係すると考えられています
  • 「腎虚の改善」では、特定の食材や方法に頼るのではなく、睡眠・休養・食事・運動などを整えることが基本です
  • 月経異常や強い倦怠感が続く場合は、腎虚と自己判断せず、婦人科や内科で原因を確認することも大切です

経血が少ない原因としての腎虚タイプの特徴と対策を説明するイメージイラスト

腎虚とは?

腎虚とは、東洋医学でいう「腎」の働きが不足したり、弱ったりしている状態を表す言葉です。

東洋医学では、腎は人が生まれながらに持つ生命力や、成長・発育・生殖・老化などに関係すると考えられています。年齢や体質、疲労などによって腎の働きが弱くなった状態を「腎虚」と捉えます。

大阪大学大学院医学系研究科の先進融合医学共同研究講座でも、漢方医学における腎は、人の一生を支える生命力に関係し、加齢とともにその働きが低下して腎虚が生じるという考え方が紹介されています。

腎虚と腎臓病は同じものではない

「腎」という文字が使われているため、「腎臓が悪いという意味ですか?」と不安になる方もいらっしゃいます。

しかし、東洋医学の腎虚と、現代医学で診断される腎臓病は同じものではありません。

腎虚は、問診、舌や脈、体質、体全体の症状などから総合的に判断する東洋医学の見立てです。一方、腎臓病は血液検査や尿検査、画像検査などをもとに診断されます。

むくみ、血尿、尿量の大きな変化、強い倦怠感などがある場合は、腎虚だと自己判断せず、内科や泌尿器科で相談してください。

東洋医学でいう「腎精」とは

腎虚を理解するうえで、「腎精(じんせい)」という考え方も重要です。

腎精とは、成長や発育、生殖、加齢などの土台になるものとして考えられており、生まれながらに受け継ぐものと、食事や生活によって補われるものがあるとされています。

腎精が不足すると、東洋医学では、疲れやすさ、足腰の衰え、月経や生殖に関わる変化、耳鳴り、物忘れなどが現れやすくなると考えます。

ただし、「生命エネルギー」や「腎精」を血液検査などで直接測定できるわけではありません。あくまで、東洋医学における体の捉え方の一つです。

腎虚は女性にどう関係する?

東洋医学では、女性の成長、月経、妊娠、出産、更年期などの変化にも、腎の働きが関係すると考えます。

そのため、女性では次のような悩みがあるときに、腎虚の視点から体質を考えることがあります。

  • 以前より疲れやすくなった
  • 足腰がだるい、力が入りにくい
  • 腰や下半身が冷えやすい
  • 月経周期や月経量が変化してきた
  • 妊活中で冷えや体力の低下が気になる
  • 更年期に入り、ほてりや冷え、疲労感が増えた
  • 頻尿や夜間尿が気になる

ただし、これらは腎虚だけにみられる症状ではありません。

更年期には、卵巣機能の低下に伴う女性ホルモンの変化によって、疲れやすさ、腰や手足の冷え、発汗、睡眠の不調、腰痛など、さまざまな症状が現れることがあります。生活に支障がある場合は、我慢せず婦人科へ相談することが勧められています。

当院でお伝えしていること

当院では、妊活中の方から「以前より月経量が少なくなった」「冷えや疲れが取れにくい」「採卵や移植に向けて体調を整えたい」といったご相談をよくいただきます。こうしたお悩みがある場合も、すべてを腎虚だけに当てはめるのではなく、月経周期、睡眠、冷え、首肩こり、胃腸の状態、ストレスなどを含めて体全体を確認することを大切にしています。

東洋医学的な体質の見方に加え、良導絡測定によって自律神経のバランスを確認しながら、その日の体調に合わせて鍼灸を行います。ただし、月経量の急な変化、無月経、不正出血などがある場合は、ホルモンや卵巣機能などを確認するため、婦人科や不妊治療クリニックへの相談もおすすめしています。

腎虚の主な症状

腎虚は、体の冷えや働きの低下が目立つタイプと、潤いの不足やほてりが目立つタイプに分けて考えることがあります。

冷えやだるさが目立つ「腎陽虚」

腎陽虚(じんようきょ)は、体を温めたり動かしたりする力が不足している状態として捉えられます。

  • 腰や足が冷える
  • 足腰がだるい
  • 疲れやすく、朝から元気が出にくい
  • 寒がりで手足が冷たい
  • 尿が近い、夜中に何度もトイレに起きる
  • むくみやすい
  • おりものが水っぽいと感じる

ほてりや乾燥が目立つ「腎陰虚」

腎陰虚(じんいんきょ)は、体を潤したり、余分な熱を落ち着かせたりする働きが不足している状態として捉えられます。

  • 手のひらや足の裏がほてる
  • 夕方から夜にかけて熱っぽくなる
  • 口やのどが乾きやすい
  • 寝汗をかきやすい
  • 耳鳴りやめまいが気になる
  • 目が乾く、かすみやすい
  • 腰や膝がだるい

実際には、冷えとのぼせが同時にあるなど、複数の体質が重なっていることもあります。症状の一覧だけで「自分は腎陽虚」「自分は腎陰虚」と決めつけず、全身の状態から判断することが大切です。

腎虚の原因として考えられるもの

東洋医学では、腎虚の背景として、次のような要因を考えます。

1.加齢による変化

腎虚は、東洋医学において加齢との関係が深い代表的な概念です。

年齢とともに体力や筋力、排尿機能、生殖機能などが変化することを、東洋医学では腎の働きの衰えとして捉える場合があります。

ただし、年齢を重ねれば必ず強い症状が出るわけではありません。体質や生活環境、病気の有無などによって個人差があります。

2.慢性的な疲労や過労

仕事、家事、育児、介護などで無理が続き、休んでも疲れが取れない状態は、東洋医学では体の土台を消耗させると考えます。

特に、疲れているのに休めない状態や、睡眠不足が長く続いている場合は、まず生活の中に休む時間を確保することが大切です。

3.睡眠不足や不規則な生活

夜更かしや睡眠不足が続くと、日中の倦怠感や集中力の低下だけでなく、心身の健康にも影響します。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠は心身の健康を保つうえで重要であり、睡眠環境や生活習慣を見直しても不調が続く場合は、睡眠障害が隠れている可能性があるため、医療機関への相談が勧められています。

4.もともとの体質

子どもの頃から虚弱だった、冷えやすい、疲れが回復しにくいなど、もともとの体質によって腎虚傾向がみられると考えることもあります。

また、無理なダイエットや栄養不足が続くと、体力の低下や月経異常につながる場合があります。

5.病後や産後の消耗

長引く病気のあとや、妊娠・出産後に体力が戻らないまま無理を重ねることも、腎虚の背景になると考えられます。

産後は、睡眠不足や授乳、育児などによる負担が重なりやすい時期です。疲れが強いときは、周囲の助けを借りながら休養を優先しましょう。

腎虚を改善する方法はある?

腎虚について調べている方のなかには、「どうすれば改善できますか?」「何を食べればよいですか?」と気になっている方も多いでしょう。

ただし、現代医学において「腎虚を改善する」と証明された特定の生活習慣や食品があるわけではありません。

東洋医学の養生では、何か一つを加えて急に変えようとするのではなく、体の消耗を減らし、睡眠・食事・運動・休養を少しずつ整えていくことを大切にします。

1.睡眠と休養を優先する

寝不足や疲労が続いている場合は、まず十分に休むことが基本です。

  • 毎日の起床時刻を大きくずらさない
  • 眠る直前までスマートフォンを見続けない
  • 夕方以降のカフェインや過度な飲酒を控える
  • 休日に予定を詰め込みすぎない
  • 疲れている日は運動や家事を無理に頑張らない

長時間寝ても疲れが取れない、強い眠気やいびきがある、眠れない状態が続く場合は、睡眠時無呼吸症候群や不眠症などが隠れている可能性もあります。

2.体を冷やしすぎない

冷えが気になる方は、冷房や薄着、冷たい飲食物の摂りすぎを見直してみましょう。

  • 腰、お腹、足首を冷やしすぎない
  • シャワーだけで済ませず、体調に合わせて湯船に浸かる
  • 冷たい飲み物ばかりにならないようにする
  • 長時間同じ姿勢を続けない

ただし、ほてりや発汗が強い方が無理に体を温めすぎると、かえってつらくなる場合があります。冷え対策は、ご自身が心地よく感じる範囲で行ってください。

3.無理のない範囲で体を動かす

足腰のだるさや体力低下が気になる場合でも、急に激しい運動を始める必要はありません。

散歩、ストレッチ、軽い筋力トレーニングなど、体調に合わせて続けられるものから始めましょう。

厚生労働省の身体活動・運動ガイドでも、運動量には個人差があり、可能なものから取り組むことが大切とされています。短時間の身体活動を積み重ねる方法でも、健康維持に役立つと考えられています。

4.食事を極端にしない

東洋医学の養生では、黒豆、黒ごま、山芋、くるみ、栗などが「腎を補う食材」として紹介されることがあります。

  • 黒豆、黒ごま、黒きくらげ
  • 山芋、長芋
  • 栗、くるみ
  • 魚、肉、卵、大豆製品
  • 温かい汁物や煮物

ただし、黒い食材や特定の食品だけを食べても、腎虚が治るわけではありません。

主食、主菜、副菜を組み合わせ、たんぱく質、鉄、ビタミン、ミネラルなどを幅広く摂ることが大切です。妊活中の方も、自己流の糖質制限や極端なダイエットは避けましょう。

5.体力を使い切らない

東洋医学の養生では、頑張ったあとにまとめて休むよりも、日頃から消耗しすぎないことを重視します。

疲れている日に予定を減らす、人に頼る、休憩を早めに取るなど、小さな調整を積み重ねることも大切な養生です。

当院でお伝えしていること

腎虚が気になる方には、特別な食材やセルフケアを一度に増やすよりも、まず睡眠時間を確保し、疲れを翌日に持ち越さない生活を意識していただくようお伝えしています。冷えが気になる場合も、無理に汗をかくほど温める必要はありません。腰や足首を冷やさない、温かい飲み物や汁物を取り入れる、入浴後は早めに休むなど、続けやすい方法から始めることが大切です。

妊活中は、治療予定や月経周期に気持ちが向きやすく、知らないうちに緊張や睡眠不足が続くこともあります。鍼灸は妊娠や月経の変化を保証するものではありませんが、冷え、疲労、首肩こり、睡眠など、妊活中に気になりやすい不調を整えるための選択肢の一つとして、病院での検査や治療と併用していただけます。

腎虚に使われることがある漢方薬

腎虚に関連する処方として、六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸などが知られています。大阪大学の先進融合医学共同研究講座でも、これらが腎虚を補う方剤として紹介されています。

  • 六味丸:疲れやすさ、排尿の変化、ほてりや口渇などを目標に用いられることがあります
  • 八味地黄丸:疲労しやすく、腰や足の冷え、排尿の変化などがある場合に用いられることがあります
  • 牛車腎気丸:腰痛、しびれ、排尿に関する症状などに用いられることがあります

ただし、漢方薬は「腎虚だからこの薬」と単純に選ぶものではありません。

漢方薬は、「証」と呼ばれる体質、冷えやほてりの有無、胃腸の状態、体力、ほかの症状などを含めて選びます。八味地黄丸の医療用添付文書にも、体質や症状を考慮して使用すること、ほかの漢方薬との生薬の重複に注意することが記載されています。

また、八味地黄丸については、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいと記載されています。妊活中、妊娠中、授乳中の方は、市販薬を含めて自己判断で服用せず、医師や薬剤師へ相談してください。

六味丸や牛車腎気丸についても、体質や服用中の薬との組み合わせを確認したうえで使用する必要があります。

月経量が少ないのは腎虚が原因?

東洋医学では、月経量の減少や月経周期の乱れを、腎虚や血虚などと関連づけて考えることがあります。

しかし、実際の月経異常には、さまざまな原因があります。

  • 妊娠
  • 急激な体重減少や過度な運動
  • 強いストレス
  • 多嚢胞性卵巣症候群
  • 高プロラクチン血症
  • 甲状腺機能異常
  • 早発卵巣不全
  • 更年期に伴う卵巣機能の変化

排卵障害の背景には、視床下部性排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群、早発卵巣不全、高プロラクチン血症、甲状腺機能異常などがあるため、鑑別が必要とされています。

甲状腺機能の異常でも、無月経、周期の乱れ、月経量の変化、疲れやすさ、寒がりなどがみられることがあります。

月経量が年々少なくなっている、月経が数か月来ない、妊娠を希望しているのに周期が不安定といった場合は、腎虚だけで説明せず、婦人科でホルモンや卵巣の状態を確認しておくことが大切です。

こんな症状があるときは医療機関へ相談を

次のような症状がある場合は、東洋医学的な体質改善だけで様子を見続けず、婦人科や内科へ相談してください。

  • 3か月以上月経が来ていない
  • 月経量が急に減った、または大きく変化した
  • 月経以外の出血がある
  • 妊娠を希望しており、月経周期の乱れが続いている
  • 動悸、息切れ、めまい、強い倦怠感がある
  • 急な体重減少や体重増加がある
  • 強いほてり、発汗、眠れない状態が続いている
  • 血尿、強いむくみ、尿量の大きな変化がある

東洋医学による体質の見立てと、西洋医学による検査は、どちらか一方を選ぶものではありません。

必要な検査で病気が隠れていないかを確認しながら、睡眠や食事、運動、鍼灸や漢方などを体調に合わせて取り入れていくことが安心につながります。

まとめ

腎虚とは、東洋医学でいう「腎」の働きが不足した状態を表す言葉です。現代医学の腎臓病と同じ意味ではありません。

女性では、冷え、疲れやすさ、足腰のだるさ、月経の変化、更年期の不調、排尿に関する悩みなどがあるときに、腎虚の視点から体質を考えることがあります。

日常生活では、十分な睡眠と休養、体を冷やしすぎない工夫、無理のない運動、偏りの少ない食事などを意識し、体の消耗を減らしていくことが基本です。

ただし、月経異常や強い倦怠感、排尿の異常などには、ホルモンや甲状腺、婦人科・泌尿器科の病気が関係している場合もあります。

「腎虚だから仕方がない」と自己判断せず、必要なときには医療機関で検査を受けながら、東洋医学の考え方を無理なく取り入れていきましょう。

当院でよく受けるご相談

腎虚とは腎臓が悪いという意味ですか?

いいえ、同じ意味ではありません。腎虚は東洋医学で使われる体質や状態の考え方です。現代医学の腎臓病は、血液検査や尿検査などで診断されます。血尿、強いむくみ、尿量の変化などがある場合は、内科や泌尿器科へ相談してください。

腎虚は女性に多いのでしょうか?

腎虚は女性だけに使われる考え方ではありません。ただし、東洋医学では腎が成長、生殖、月経、妊娠、更年期などと関係すると考えるため、女性の体調を考える際によく用いられます。

腎虚はどのように改善すればよいですか?

睡眠不足や過労を見直し、食事、休養、運動など生活全体を整えることが基本です。特定の食品だけで改善するものではなく、体力を消耗しすぎない生活を継続することが大切です。

腎虚に漢方薬は使えますか?

六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸などが用いられることがあります。ただし、冷えやほてり、胃腸の状態、体力などによって適する処方は異なります。特に妊活中や妊娠中、ほかの薬を服用している方は、医師や薬剤師へ相談してください。

月経量が少ないのは腎虚が原因ですか?

東洋医学では腎虚と関連づけることがありますが、腎虚だけが原因とは限りません。甲状腺機能異常、ホルモンの変化、過度な体重減少、早発卵巣不全などでも月経量や周期が変化することがあります。変化が続く場合は婦人科へ相談しましょう。

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この記事の監修者

宇都宮泰子 監修者写真

院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)

FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)

  • 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
  • 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
  • 日本生殖医学会会員

不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。

※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。

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東洋医学では、こうした体の変化を腎虚だけで判断するのではなく、睡眠や食事、月経の状態、冷え、疲労の程度などを含めて、体全体のバランスから考えていきます。

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