
妊活中に電子タバコやアイコスは大丈夫?精子への影響と男性不妊の考え方
「紙巻きたばこは妊活によくないと聞くけれど、電子タバコやアイコスなら大丈夫ですか?」というご相談は、妊活中のご夫婦からよくいただきます。
特に男性は、自分の喫煙習慣や電子タバコ、加熱式たばこが妊娠にどのくらい関係するのかが見えにくく、不安になりやすいものです。
結論からお伝えすると、妊活中は紙巻きたばこだけでなく、電子タバコやアイコスなどの加熱式たばこも「安全」とは言い切れません。
男性側の喫煙やニコチンへの曝露は、精子の数・運動率・形態、さらに精子DNAなどに影響する可能性が指摘されています。
ただし、「電子タバコを吸っている男性は必ず妊娠しにくくなる」とまで断定できる十分な研究があるわけではありません。
「紙巻きよりましなら大丈夫」と考えたくなるお気持ちは自然です。しかし妊活の時期は、現在わかっている情報をもとに、できる範囲で不安要素を減らしていくことが大切です。
- 電子タバコやアイコスは、妊活中の男性にとって「安全」とは言い切れません。
- 電子タバコの使用と精子数の低下との関連を報告した研究があります。
- 加熱式たばこは紙巻きたばこより一部の有害物質が少ない場合がありますが、「妊活中でも安全」という意味ではありません。
- 電子タバコによって必ず不妊になる、妊娠しにくくなると断定できる段階ではありません。
- 体外受精や顕微授精をしている場合でも、男性側の生活習慣を整えることは大切です。
- 妊娠を目指す時期は、紙巻きたばこ・電子タバコ・加熱式たばこを含め、禁煙を目指すことが望ましいと考えられます。


電子タバコとアイコスは同じもの?
まず整理しておきたいのが、「電子タバコ」と「アイコス」は厳密には同じものではないという点です。
一般的に電子タバコ、いわゆるVAPEは、液体を加熱して発生したエアロゾルを吸入する製品を指します。ニコチンを含むものもあれば、ノンニコチンとされる製品もあります。
一方でIQOS(アイコス)は、たばこ葉を燃やさずに加熱して吸入する「加熱式たばこ」です。
呼び方が一緒にされることもありますが、仕組みは異なります。
ただし妊活の観点では、どちらも「完全に安全」とは言えないことが大切です。
なぜ男性の電子タバコやアイコスが妊活で問題になるのか
妊活は女性だけの問題ではありません。受精や胚の発育には、男性側の精子の状態も関わります。
精液検査では、主に精子の数、運動率、形態などを確認しますが、妊娠しやすさを考えるうえでは、それ以外にも精子DNAの損傷や酸化ストレスなどが研究されています。
紙巻きたばこについては、精液所見や男性の生殖機能に悪影響を与える可能性が以前から指摘されています。
近年では、電子タバコや加熱式たばこについても、精子や生殖機能への影響が研究されるようになってきました。
ただし電子タバコや加熱式たばこは比較的新しい製品でもあり、紙巻きたばこほど人を対象とした研究が蓄積されているわけではありません。
そのため、「紙巻きたばこよりましなら大丈夫」と考えるのではなく、妊活中はできるだけ避ける方向で考えることが大切です。
電子タバコは精子に影響する?妊娠しにくくなる可能性は?
電子タバコを吸っている男性は、「このせいで妊娠しにくくなるのでは?」と心配になるかもしれません。
現時点では、男性の電子タバコ使用によって必ず妊娠しにくくなる、とまでは断定できません。
電子タバコと男性の生殖機能については、紙巻きたばこと比べると人を対象とした研究がまだ限られているためです。
ただし、若年男性を対象にした研究では、電子タバコを毎日使用している男性で、使用していない男性と比べて総精子数が少なかったという関連が報告されています。
この研究は観察研究のため、「電子タバコだけが原因で精子数が減った」と断定することはできません。
睡眠、飲酒、体重、ストレス、紙巻きたばこの併用など、さまざまな要因が関係している可能性があります。
また、電子タバコのエアロゾルには、製品によってニコチンのほか、加熱によって生じる化学物質や微粒子などが含まれることがあります。
生殖機能への影響については今後さらに研究が必要ですが、現在のところ「電子タバコなら精子に影響しない」「妊活中でも安心」と言えるだけの根拠はありません。
そのため妊娠を目指している場合は、紙巻きたばこから電子タバコへ切り替えることをゴールにするのではなく、できる範囲で禁煙を目指すことが望ましいと考えられます。
アイコスは紙巻きたばこよりまし?
アイコスなどの加熱式たばこは、たばこ葉を燃やさずに加熱するため、紙巻きたばこより一部の有害物質への曝露が少ない場合があります。
そのため、「紙巻きたばこよりは妊活に悪くないのでは」と考える方も少なくありません。
しかし、「一部の有害物質が少ない可能性がある」ことと、「妊活中に安全である」ことは別の話です。
加熱式たばこの排出物にも、ニコチンをはじめ、さまざまな化学物質が含まれます。
また、加熱式たばこを使う男性の精子や妊娠率については、紙巻きたばこと比べて研究がまだ十分とはいえません。
妊活中の男性にとって大切なのは、「どれが少しましか」だけで判断するのではなく、妊娠を目指している期間に続ける必要があるかという視点です。
精子の状態を少しでも整えたい時期であれば、紙巻きたばこ・電子タバコ・加熱式たばこのいずれも避ける方向で考えることが望ましいでしょう。
どのような仕組みで精子に影響する可能性がある?
電子タバコや加熱式たばこで問題になるのは、ニコチンだけではありません。
製品によって成分は異なりますが、加熱によって発生する化学物質、香料、微粒子などが体内に入ることで、酸化ストレスや炎症、血管機能などに影響する可能性が研究されています。
男性不妊では、精子の数だけでなく、精子の運動性や形態なども重要です。
また、通常の精液検査では確認しないことも多い「精子DNAの損傷」についても研究が進められています。
精子DNAの損傷が多い場合、受精や胚発育、妊娠成績との関連が報告されていますが、その評価方法や治療への取り入れ方については症例によって異なります。
そのため、精液検査の数値だけで喫煙の影響の有無を判断することはできません。
体外受精や顕微授精なら影響は少ない?
「体外受精や顕微授精なら、よい精子を選ぶから電子タバコの影響はあまり関係ないのでは?」と思われる方もいます。
たしかに、顕微授精では精子を選んで卵子に注入します。
しかし、男性の電子タバコ使用と体外受精・顕微授精の成績については、まだ十分な研究がそろっているとはいえません。
2024年には、男性の電子タバコ使用とその後の胚発育について検討した学会報告があり、胚の染色体正常率などとの関連が示唆されました。
ただし、これは学会抄録段階の報告であり、使用製品の種類、使用頻度、他の生活習慣などの影響もあるため、現時点で強く断定することはできません。
また2025年には、男性が紙巻きたばこを使用しているカップルと電子タバコを使用しているカップルについて、精液所見やIVF・ICSI成績を比較した研究も報告されています。
この研究では電子タバコ群の方が一部の項目で良い結果がみられましたが、電子タバコ使用者と非喫煙者を比較した研究ではありません。
そのため、「紙巻きたばこより一部の影響が少ない可能性がある」という結果を、「電子タバコなら妊活中でも安全」と受け取ることはできません。
現時点では、電子タバコが精子や体外受精・顕微授精の成績にどの程度影響するのかについて、さらに研究が必要です。
治療を控えている場合も、「電子タバコなら問題ない」と考えるのではなく、男性側もできる範囲で禁煙と生活習慣の見直しに取り組むことが大切です。
妊活中はいつからやめるのがよい?
精子がつくられ、成熟して射精される状態になるまでには一定の期間が必要です。
そのため、禁煙や生活習慣の改善を始めても、その影響が精液所見などにすぐ反映されるとは限りません。
妊娠を目指す場合は、精子がつくられて成熟するまでの期間を考え、ひとつの目安として妊活開始の約3か月前から禁煙や生活習慣の見直しに取り組むとよいでしょう。
ただし、すでに妊活中であっても遅すぎるということではありません。
「もっと早くやめておけばよかった」と過去を気にしすぎるより、今からできることを始めることが大切です。
自分だけでやめることが難しい場合は、禁煙治療について医療機関に相談する方法もあります。
妊活中の男性が今日からできること
1.「切り替え」ではなく「禁煙」を目標にする
紙巻きたばこから電子タバコへ、電子タバコからアイコスへ切り替えるだけでは、妊活上の安心につながるとは言い切れません。
最終的には、紙巻きたばこ・電子タバコ・加熱式たばこを含めて「やめる」ことを目標にしましょう。
2.禁煙について医療機関に相談する
自己流で禁煙するのが難しい方は少なくありません。
ニコチン依存が関係している場合、気合いだけでやめようとすると続かないこともあります。
禁煙治療を行っている医療機関などを利用できる場合もあるため、必要に応じて相談してみましょう。
妊活はパートナーと一緒に取り組むものです。
「自分ひとりで何とかしないと」と抱え込まず、必要な支援を利用することも大切です。
3.睡眠・食事・運動も一緒に見直す
男性妊活では、喫煙だけでなく、睡眠不足、肥満、過度の飲酒、ストレス、熱ストレスなども見直したいポイントです。
禁煙とあわせて生活習慣全体を整えていきましょう。
- 睡眠時間をできるだけ確保する
- 野菜、魚、果物などを取り入れたバランスのよい食事を意識する
- 適度な運動を続ける
- 過度な飲酒を控える
- 長時間のサウナなど、陰嚢が高温になる環境を繰り返さない
- 長時間座りっぱなしにならないよう、適度に身体を動かす
一つだけにこだわりすぎず、続けられることから少しずつ整えることが大切です。
4.必要に応じて精液検査を受ける
「まだ若いから大丈夫」「自覚症状がないから問題ない」と思っていても、精子の状態は検査しないと分からないことがあります。
喫煙歴がある方だけでなく、妊活が長引いている方、体外受精や顕微授精を予定している方などは、必要に応じて精液検査について医療機関へ相談してみましょう。
男性側の状態を確認することは、誰かを責めるためではありません。
ご夫婦で妊娠に向けた選択肢を整理するための一つの情報になります。
まとめ
妊活中の電子タバコやアイコスについて、「紙巻きたばこではないから大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。
しかし現時点では、電子タバコや加熱式たばこを妊活中でも安全なものとしてすすめられるだけの根拠はありません。
一方で、電子タバコを使用している男性は必ず精子が悪くなる、必ず妊娠しにくくなるという意味でもありません。
過去の喫煙を必要以上に心配するのではなく、妊娠を目指している今だからこそ、禁煙や睡眠、食事、運動など、できることから生活習慣を整えていくことが大切です。
Q1.妊活中に電子タバコを少しだけ吸うのもだめですか?
少量であれば必ず悪影響が出る、とまでは言えません。
ただし、妊活中に「この量までなら安全」と言える使用量が明確に分かっているわけではありません。
妊娠を目指す時期は、できるだけ使用しない方向で考えることが望ましいでしょう。
Q2.ノンニコチンの電子タバコなら大丈夫ですか?
ニコチンが含まれていない製品であっても、加熱によって発生する化学物質や香料、微粒子などの影響について十分に分かっているわけではありません。
「ノンニコチンだから妊活中でも完全に安全」とは言い切れないため、積極的にすすめられるものではありません。
Q3.アイコスは電子タバコですか?
一般的には一緒に扱われることもありますが、厳密には別物です。
アイコスはたばこ葉を加熱する「加熱式たばこ」です。
電子タバコは、液体を加熱して発生したエアロゾルを吸入する製品を指します。
ただし、妊活中はどちらも安全とは言い切れません。
Q4.禁煙すると、どのくらいで精子は変わりますか?
ひとつの目安として約3か月を意識するとよいでしょう。
精子がつくられて成熟するまでには時間がかかるため、禁煙や生活習慣の改善がすぐに精液所見へ反映されるとは限りません。
ただし、3か月待たなければ意味がないということではありません。すでに妊活中でも、今から生活習慣を見直すことが大切です。
Q5.体外受精や顕微授精なら、男性の電子タバコは関係ありませんか?
「関係ない」とは言い切れません。
男性の電子タバコ使用と体外受精・顕微授精の成績については、まだ研究が限られています。
治療を控えている時期も、電子タバコなら問題ないと考えるのではなく、男性側もできる範囲で禁煙や生活習慣の見直しに取り組むことが望ましいでしょう。
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📚参考文献
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Holmboe SA, et al. Use of e-cigarettes associated with lower sperm counts in a cross-sectional study of young men from the general population. Human Reproduction. 2020.
若年男性を対象に、電子タバコ使用と精子数との関連を調べた研究です。電子タバコ使用者で総精子数が少ない傾向が報告されていますが、観察研究のため因果関係の断定には注意が必要であることを確認するために参考にしました。 -
Lee J, et al. The effect of sperm from male patients who use electronic cigarettes on subsequent embryo development. Human Reproduction. 2024.
男性の電子タバコ使用と体外受精における胚発育への影響を検討した学会抄録です。現時点では断定的な結論ではなく、今後の研究が必要であることを確認するために参考にしました。 -
CDC. Heated Tobacco Products. Smoking and Tobacco Use.
加熱式たばこについて、紙巻きたばこより一部の有害物質への曝露が少ない場合があっても、安全であることを意味しないという公的情報を確認するために参考にしました。 -
Cui X, et al. Potential effect of smoking on semen quality through DNA damage and the downregulation of Chk1 in sperm. Molecular Medicine Reports. 2016.
紙巻きたばこの喫煙と精液所見、精子DNA損傷との関連について検討した研究です。男性妊活において喫煙習慣を見直す重要性を考える参考にしました。 -
Australian Government Department of Health and Aged Care. Pregnancy and smoking, vaping and tobacco.
妊娠や妊活に関連する喫煙、電子タバコ、たばこ製品についてまとめられた公的情報を確認するために参考にしました。 -
American Society for Reproductive Medicine. Tobacco or marijuana use and infertility: a committee opinion. Fertility and Sterility. 2024.
紙巻きたばこや電子タバコなどの使用と、男女の妊孕性、精子、体外受精などとの関連についてまとめたASRMの委員会意見です。電子タバコについて人を対象とした研究がまだ限られていることを確認するために参考にしました。 -
Kim HK, et al. Impact of conventional cigarette and electronic cigarette use on sperm quality and IVF/ICSI outcomes. Scientific Reports. 2025.
男性の紙巻きたばこ使用者と電子タバコ使用者について、精液所見やIVF・ICSI成績を比較した研究です。電子タバコ群で一部良い結果がみられた一方、非喫煙者との比較ではなく、電子タバコの安全性を示す研究ではないことを確認するために参考にしました。 -
World Health Organization. WHO issues first global guideline on infertility. 2025.
WHOの不妊症に関する世界的なガイドラインについての公表資料です。妊娠を希望する男女に対する生活習慣の見直しとして、たばこの中止が推奨されていることを確認するために参考にしました。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
男性妊活の体づくりもご相談ください
妊活では、女性側のケアだけでなく、男性側の生活習慣や体調づくりも大切です。
電子タバコやアイコス、喫煙習慣が気になっていても、「何から見直せばいいのか分からない」と感じる方も少なくありません。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、妊活中のご夫婦に向けて、自律神経や血流、睡眠、ストレス、生活習慣などを含めた体づくりをサポートしています。
喫煙だけを必要以上に気にするのではなく、今の状態に合わせて、できることから少しずつ整えていきましょう🍀








妊活中の男性からは、「紙巻きたばこをアイコスに変えれば大丈夫ですか?」「今から禁煙しても遅いですか?」というご相談をいただくことがあります。
妊活では喫煙だけに意識を向けすぎるのではなく、睡眠、食事、飲酒、ストレス、運動なども含めて生活習慣全体を見ていくことが大切です。すでに妊活や不妊治療を始めている場合でも、過去の喫煙を気にしすぎず、今からできることを一つずつ整えていきましょう。
精液所見が気になる場合や妊活が長引いている場合は、生活習慣だけで判断せず、泌尿器科や不妊治療クリニックで精液検査などについて相談することも大切です。