
骨盤の歪みは不妊の原因になる?妊活中に知っておきたい姿勢・腰痛・骨盤まわりの考え方
妊活をしていると、
「骨盤が歪んでいると妊娠しにくいのでしょうか?」
「骨盤矯正をした方が妊娠しやすくなりますか?」
「腰痛があるのですが、妊活に影響しますか?」
といったご相談をいただくことがあります。
インターネットやSNSでは、「骨盤の歪みが不妊の原因になる」「骨盤を整えると子宮や卵巣への血流が良くなり、妊娠しやすくなる」といった説明を目にすることもあります。
しかし現在の医学的な考え方では、「骨盤が歪んでいること自体が不妊の直接的な原因である」とは言えません。
だからといって、妊活中の腰痛や骨盤まわりの違和感を我慢する必要がないわけでもありません。
この記事では、「骨盤の歪み」と妊娠の関係を整理しながら、妊活中の姿勢や腰痛、骨盤まわりの身体の状態をどのように考えればよいのかをお伝えします。
結論|骨盤の歪みだけを不妊の原因と考える必要はありません
まず大切なのは、
骨盤の歪みがあるから妊娠できない、と考える必要はない
ということです。
不妊にはさまざまな原因があり、女性側では排卵の問題、卵巣機能、卵管の通過性、子宮内の状態、子宮内膜症、ホルモンなどが関係します。
また、精子の数・運動率・形態など男性側の要因が関係することもあります。
さらに、検査をしても明確な原因が見つからない「原因不明不妊」もあります。
そのため、
「骨盤が歪んでいるから着床できない」
「骨盤を矯正すれば妊娠率が上がる」
「骨盤の位置を戻せば卵巣機能が改善する」
と単純に結びつけることはできません。
そもそも「骨盤が歪む」とはどういうこと?
日常的に使われている「骨盤の歪み」という言葉には、医学的に一つの明確な定義があるわけではありません。
例えば、
- 立ったときに左右の肩や腰の高さが違う
- 脚を組む癖がある
- 片脚に体重をかけて立つことが多い
- 左右で股関節の動かしやすさが違う
- 骨盤が前に傾いている、または後ろに傾いているように見える
といった状態をまとめて「骨盤が歪んでいる」と表現している場合があります。
人の身体は完全な左右対称ではありません。また、骨盤や背骨、股関節は身体を動かすたびに位置関係が変わります。
そのため、多少の左右差があるだけで「異常」「妊娠しにくい身体」と判断する必要はありません。
「骨盤の歪み=子宮や卵巣への血流不足」とは限りません
以前は、「骨盤が歪むことで血管が圧迫され、子宮や卵巣への血流が悪くなり、不妊につながる」と説明されることもありました。
しかし、一般的な姿勢の左右差や骨盤の傾きだけから、子宮や卵巣への血流が低下していると判断することはできません。
もちろん、血液は子宮や卵巣を含めた全身の組織へ酸素や栄養を届けているため、循環は身体にとって大切です。
ただし、
「骨盤を矯正する → 子宮・卵巣の血流が増える → 妊娠しやすくなる」
という流れを、そのまま妊娠率の向上と結びつけることはできません。
では、妊活中に姿勢や骨盤まわりを整える意味はないの?
そういうわけではありません。
妊活や不妊治療中の方には、
- デスクワークで座っている時間が長い
- 腰やお尻がいつも重だるい
- 股関節まわりが硬い
- 肩こりや首こりも強い
- 身体を動かす機会が減っている
- 採卵や移植の時期に身体を動かすことを控えすぎている
といった方も少なくありません。
腰痛や身体のこわばりが続けば、仕事や睡眠、運動など日常生活にも影響します。
そのため、妊娠率を上げるために「骨盤を正しい位置へ戻す」というよりも、
痛みやこわばりを減らし、無理なく身体を動かせる状態をつくる
という視点で身体を整えることが大切だと考えています。
妊活中の腰痛は放置しなくても大丈夫です
不妊治療中は、どうしても卵胞の大きさやホルモン値、採卵数、胚のグレード、子宮内膜などに意識が向きます。
そのため、
「腰痛は昔からだから」
「妊活とは関係ないと思っている」
「今は治療を優先したいので我慢している」
という方もいらっしゃいます。
しかし、腰痛があるから妊娠しにくいわけではない一方で、腰痛を我慢し続ける必要もありません。
慢性的な腰痛に対しては、無理のない範囲で身体を動かすことや、個人の状態に合わせた運動などが推奨されています。
痛みがある方は、完全に安静にするのではなく、症状に合わせて日常生活の中で身体を動かしていくことも大切です。
「良い姿勢」をずっと保とうとしなくても大丈夫
「姿勢が悪いから骨盤が歪む」と考えて、一日中背筋を伸ばそうとしている方もいます。
しかし、身体にとって負担になりやすいのは、必ずしも一つの「悪い姿勢」だけではありません。
例えば、姿勢がきれいでも何時間も同じ姿勢を続ければ、腰や首、肩がつらくなることがあります。
妊活中も、
- 30~60分を目安に一度立ち上がる
- 座りっぱなしが続いたら少し歩く
- 仕事の合間に肩や股関節を軽く動かす
- 痛みのない範囲でストレッチをする
- 無理のない範囲で散歩などを取り入れる
など、「完璧な姿勢を保つ」よりも、こまめに姿勢を変えることを意識してみてください。
自宅でできる妊活中の骨盤まわりのセルフケア
1.座りっぱなしを減らす
長時間のデスクワークでは、腰やお尻、股関節まわりがこわばりやすくなります。
仕事中でも、可能であれば1時間に一度程度立ち上がり、数分歩くだけでも構いません。
2.軽く歩く
特別な運動をしなければならないわけではありません。
体調が良い日は、買い物や通勤を利用して少し歩くなど、続けやすい方法から始めてみましょう。
3.股関節を無理なく動かす
股関節まわりが硬い方は、痛みのない範囲で脚を開いたり、軽く曲げ伸ばししたりするだけでも構いません。
「骨盤を正しい位置に戻そう」と強く伸ばしたり、痛みを我慢してストレッチしたりする必要はありません。
4.採卵後などは無理をしない
採卵前後は卵巣が腫れている場合があります。
特に採卵後は、激しい運動や強いねじり動作などについてクリニックから指示を受けている場合がありますので、自己判断で強いストレッチや運動を行わず、医師の指示を優先してください。
妊活中のセルフケアは「毎日これをしなければ妊娠できない」というものではありません。治療中は通院や薬、仕事との調整だけでも負担になります。歩ける日は少し歩く、座りっぱなしなら一度立つ、疲れている日は休む、といった程度から始めてください。
当院では、腰や骨盤だけを見るのではなく、肩こり、冷えの感じ方、睡眠、疲労、自律神経の状態なども含めて身体全体を確認しています。良導絡測定なども参考にしながら、その方が現在困っている症状に合わせて施術内容を考えています。
鍼灸や骨盤まわりの施術をどう考える?
鍼灸や身体への施術を、「骨盤を矯正して妊娠率を上げるためのもの」と考える必要はありません。
当院では、不妊治療そのものは婦人科・生殖医療クリニックで受けていただきながら、
- 腰痛
- 肩こり
- 首こり
- 頭痛
- 身体のだるさ
- 睡眠の悩み
- 冷えやほてりなどの自覚症状
など、妊活中に一緒に抱えている身体の悩みにも目を向けています。
「妊活中だから腰痛は後回し」と考えず、身体がつらいときは、その症状について相談していただいて構いません。
こんな腰痛は医療機関へ相談してください
腰痛の多くは筋肉や関節などが関係するものですが、中には医療機関での確認が必要な場合があります。
次のような症状がある場合には、鍼灸やセルフケアだけで様子を見ず、整形外科や婦人科などの医療機関へ相談してください。
- 脚に強いしびれや力の入りにくさがある
- 排尿・排便の異常を伴う
- 発熱を伴う強い腰痛がある
- 転倒や事故のあとから強く痛む
- 安静にしていても非常に強い痛みが続く
- 強い下腹部痛や不正出血など婦人科症状を伴う
また、妊活を続けていて妊娠に至らない場合は、「骨盤が歪んでいるから」と自己判断するのではなく、必要に応じて婦人科・生殖医療専門クリニックで検査を受けることが大切です。
Q.骨盤が歪んでいると着床しにくくなりますか?
一般的な骨盤の左右差や姿勢だけを理由に、着床しにくくなるとは言えません。着床には胚の状態、子宮内膜、ホルモンなどさまざまな要因が関係しています。
Q.妊活中は骨盤矯正を受けた方がいいですか?
妊娠するために必ず骨盤矯正を受けなければならないわけではありません。腰痛や股関節まわりの違和感などがある場合には、その症状を楽にすることを目的として身体のケアを検討するとよいでしょう。
Q.脚の長さが違うと言われました。不妊に影響しますか?
見た目の脚の長さや左右差だけで、不妊の原因と判断することはできません。不妊について気になる場合は、骨格の左右差ではなく、生殖医療で行われる検査をもとに原因を確認することが重要です。
Q.腰痛があります。妊活中でも運動して大丈夫ですか?
一般的な腰痛では、無理のない範囲で身体を動かすことが勧められる場合があります。ただし、採卵前後、手術後、強い痛みがある場合などは状況が異なります。治療中の方はクリニックからの指示を優先してください。
まとめ|骨盤を「妊娠できない原因」にしすぎないことも大切です
妊活中は、「何か身体に悪いところがあるから妊娠できないのでは」と考えてしまうことがあります。
骨盤の左右差や姿勢が気になると、
「これを治さなければ妊娠できないのでは?」
と不安になる方もいるかもしれません。
しかし、現在の医学的な考え方では、一般的に言われる「骨盤の歪み」そのものを不妊の直接的な原因と考える根拠は十分ではありません。
一方で、腰痛や肩こり、股関節の硬さなど、日常生活で困っている身体の症状は我慢しなくても大丈夫です。
骨盤を「妊娠しやすい形」にすることを目指すのではなく、身体を動かしやすくし、妊活や不妊治療を続ける間もできるだけ快適に過ごせる状態を目指す。
そのような視点で、自分の身体と付き合っていくことをおすすめします。
📝こちらの記事もおすすめです
- スマホ疲れと妊活【目・首肩こり・自律神経の乱れを整えるには】
長時間同じ姿勢を続けることで起こりやすい首肩こりや身体のこわばりについて、妊活中の生活習慣という視点から確認できます。 - 自律神経と妊活の関係|ストレス・血流・ホルモンバランスへの影響
腰痛や身体の緊張だけでなく、睡眠・ストレス・自律神経など、妊活中のコンディションを全身から考えたい方におすすめです。 - 妊活中の冷えは不妊に関係する?子宮の冷えと血流・体質改善の考え方
「冷えや血流が悪いから妊娠できないのでは?」という不安について、骨盤の歪みと同様に、原因を単純化しすぎず整理しています。
📚参考文献
- World Health Organization. Infertility. WHO Fact Sheet. 2025. 不妊の定義および女性・男性それぞれの主な原因について。
- World Health Organization. Guideline for the prevention, diagnosis and treatment of infertility. 2025. 不妊の予防・診断・治療に関するWHOガイドライン。
- World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. 2023. 慢性腰痛に対する身体活動・運動などの考え方について。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊活中の腰痛や身体のこわばりもご相談ください
妊活や不妊治療をしていると、採卵や移植、ホルモン値などが優先になり、「腰痛や肩こりはいつものことだから」と身体のつらさを後回しにしてしまうことがあります。
骨盤の歪みそのものを不妊の原因と考える必要はありませんが、腰痛や股関節まわりのこわばり、肩こり、冷え、睡眠の悩みなどを我慢し続ける必要もありません。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療の状況や月経周期を確認しながら、腰や骨盤まわりだけでなく、肩こりや冷え、自律神経の状態なども含めてお身体をみています。
「妊活中だけれど腰痛も気になる」「身体のこわばりを少し楽にしたい」という方も、気になる症状があればお気軽にご相談ください🍀








当院でも「妊活中なので骨盤矯正を受けた方がいいですか?」と聞かれることがあります。その際には、骨盤の歪みそのものを不妊の原因として考えるのではなく、腰痛や股関節の硬さ、長時間の座位、冷えを感じやすい生活、肩こりや睡眠など、現在困っている症状を一緒に確認するようにしています。
妊活中だからといって身体の不調をすべて「妊娠できない原因」に結びつける必要はありません。まずは今感じているつらさを少しずつ減らし、日常生活を過ごしやすくすることを大切にしています。