
妊娠中に必要な栄養素とは?葉酸・鉄・カルシウムと食事の注意点
妊娠中は、赤ちゃんの成長や胎盤の形成、母体の血液量の増加などに伴い、妊娠前より意識したい栄養素があります。
特に大切なのが、葉酸・鉄・たんぱく質・カルシウム・ビタミンDなどを、食事全体のバランスの中で不足させないことです。
一方で、「赤ちゃんのためにたくさん食べなければ」「サプリを増やしたほうがよい」と考える必要はありません。妊娠中は、必要な栄養を摂ることと同時に、ビタミンAやヨウ素などの摂りすぎ、食品の安全性にも注意することが大切です。
この記事では、妊娠中に必要な栄養素、それぞれを多く含む食べ物、妊娠中に注意したい食品やサプリメントについてわかりやすく解説します。
- 妊娠中は、特定の食品だけを増やすのではなく、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が基本です。
- 葉酸・鉄・たんぱく質・カルシウム・ビタミンDなどを不足させないよう意識しましょう。
- 妊娠を計画している時期から妊娠初期は、食事に加えて葉酸400μg/日の摂取が推奨されています。
- レバーのビタミンA、昆布などのヨウ素、複数サプリメントの重複は「摂りすぎ」にも注意が必要です。
- 魚を一律に避ける必要はありませんが、一部の魚の水銀や、妊娠中の食中毒には注意しましょう。


妊娠中の栄養は「特定の食品」より食事全体のバランスが大切
妊娠すると、母体では胎児の成長、胎盤の形成、血液量の増加、子宮や乳腺の発達など、さまざまな変化が起こります。
そのため妊娠前と比べて必要量が増える栄養素がありますが、すべての栄養素を単純に増やせばよいわけではありません。
基本となるのは、主食・主菜・副菜を組み合わせながら、さまざまな食品から栄養を摂ることです。
- 主食:ご飯、パン、麺類など
- 主菜:魚、肉、卵、大豆製品など
- 副菜:野菜、きのこ、海藻など
- 牛乳・乳製品
- 果物
つわりなどで食べられるものが限られる時期には、毎食完璧にそろえる必要はありません。体調に合わせながら、食べられるものを少しずつ取り入れていきましょう。
妊娠中に必要なエネルギーと三大栄養素
エネルギー(カロリー)
妊娠中は、妊娠の進行に伴ってエネルギーの必要量も変化します。
ただし、「2人分食べなければならない」という意味ではありません。妊娠前の体格や活動量、妊娠中の体重増加などによっても必要な量は異なります。
単純に食事量を増やすのではなく、主食・主菜・副菜を組み合わせながら、必要なエネルギーと栄養素を確保することが大切です。
たんぱく質
たんぱく質は、胎児の筋肉、内臓、血液、皮膚などをつくる材料となるほか、母体の組織を維持するためにも必要な栄養素です。
肉だけに偏らず、魚・卵・大豆製品・乳製品など、さまざまな食品から摂るとバランスを整えやすくなります。
たんぱく質を含む食品
- 魚
- 鶏肉・豚肉・牛肉
- 卵
- 牛乳・ヨーグルト
- 豆腐
- 納豆
- その他の大豆製品
脂質
脂質はエネルギー源になるほか、細胞膜やホルモンの材料となり、脂溶性ビタミンの吸収にも関わっています。
妊娠中も脂質を極端に避ける必要はありません。青魚、ナッツ、植物油など、食品全体のバランスを考えながら取り入れましょう。
- 青魚
- オリーブオイル
- えごま油・亜麻仁油
- ナッツ類
魚には良質なたんぱく質や脂質が含まれるため、妊娠中も大切な食品です。ただし、一部の大型魚は水銀を比較的多く含むため、種類や食べる頻度への配慮が必要です。
炭水化物
炭水化物は、母体と胎児の重要なエネルギー源です。
体重増加が気になるからといって、ご飯やパンなどの主食を極端に減らす自己流の糖質制限はおすすめできません。
ご飯、雑穀米、オートミール、いも類などを、その日の食事や体調に合わせて取り入れましょう。
妊娠中に特に意識したいミネラル
鉄
鉄は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンをつくるために必要な栄養素です。
妊娠中は母体の血液量が増え、胎児や胎盤にも鉄が必要になるため、特に妊娠中期から後期にかけて不足に注意したい栄養素のひとつです。
鉄が不足すると鉄欠乏性貧血となり、疲れやすさ、息切れ、動悸、めまいなどがみられることがあります。
鉄を含む食品
- 赤身の肉
- かつお・いわしなどの魚
- あさりなどの貝類
- 小松菜
- ほうれん草
- 納豆・豆腐などの大豆製品
植物性食品に含まれる鉄は、ビタミンCを含む野菜や果物などと組み合わせると吸収されやすくなります。
なお、レバーは鉄を多く含みますが、ビタミンA(レチノール)も非常に多く含む食品です。妊娠中は「鉄分補給のため」と頻繁に食べるのではなく、摂取量や頻度に注意しましょう。
カルシウム
カルシウムは胎児の骨や歯の形成に関わるほか、母体の骨の健康、筋肉や神経の働きにも必要です。
日本人の食事摂取基準では、妊娠によるカルシウムの付加量は設定されていません。妊娠中には腸管からのカルシウム吸収率が高まるためです。
ただし、妊娠前から摂取量が少ない方もいるため、日頃の食事で十分に摂れているかを意識することは大切です。
カルシウムを含む食品
- 牛乳
- ヨーグルト
- チーズ
- 小魚
- 豆腐
- 小松菜
- ごま
亜鉛
亜鉛は、細胞分裂やたんぱく質・DNAの合成などに関わるミネラルです。
胎児が成長する妊娠期にも必要な栄養素ですが、多く摂ればよいわけではありません。食事からバランスよく摂ることを基本にしましょう。
亜鉛を含む食品
- 十分に加熱した牡蠣
- 牛赤身肉
- 豚肉
- 卵
- 納豆
- 大豆製品
ヨウ素(ヨード)
ヨウ素は甲状腺ホルモンをつくるために必要な栄養素です。甲状腺ホルモンは、胎児の成長や脳・神経系の発達にも関わります。
ヨウ素は海藻や魚介類などに含まれ、日本の食生活では摂取しやすい栄養素です。
一方、昆布には特に多くのヨウ素が含まれているため、「妊娠中によいから」と昆布や昆布だしを大量に摂り続けることは避けましょう。
甲状腺疾患で治療中の方や、医師からヨウ素について指導を受けている方は、主治医の指示を優先してください。
妊娠中に意識したいビタミン
葉酸
葉酸は、細胞分裂やDNA合成に関わるビタミンB群の一種です。
特に妊娠初期は胎児の神経管が形成される重要な時期で、葉酸の摂取は神経管閉鎖障害の発症リスク低減と関係しています。
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦について、通常の食品から摂る葉酸に加えて、サプリメントや葉酸強化食品などから葉酸400μg/日を摂ることが望ましいとされています。
ただし、葉酸を摂れば神経管閉鎖障害を完全に防げるという意味ではありません。また、サプリメントは多ければ多いほどよいわけではないため、製品の摂取目安量を守りましょう。
葉酸を含む食品
- ほうれん草
- 小松菜
- ブロッコリー
- 枝豆
- 納豆
- アボカド
ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収や骨代謝に関わる栄養素です。
鮭、いわし、さんま、卵、きのこ類などに含まれています。また、皮膚に日光が当たることによって体内でもつくられます。
- 鮭
- いわし
- さんま
- 卵
- きのこ類
ビタミンB群
ビタミンB群は、糖質・脂質・たんぱく質などの代謝を助けるほか、赤血球の形成や神経機能などにも関わります。
- 豚肉
- 魚
- 卵
- 納豆
- 大豆製品
- 野菜類
ビタミンC
ビタミンCは抗酸化作用を持つほか、鉄の吸収を助ける働きがあります。
- キウイ
- いちご
- 柑橘類
- ブロッコリー
- パプリカ
妊娠中は「摂りすぎ」にも注意しましょう
妊娠中は栄養不足が気になる一方で、栄養素によっては摂りすぎにも注意が必要です。
レバーやビタミンAサプリ
レバーなどに多く含まれるビタミンAの一種「レチノール」は、過剰摂取に注意が必要です。
レバーを一度食べただけで過度に心配する必要はありませんが、妊娠中に頻繁に大量摂取したり、ビタミンAを含む複数のサプリメントを重ねたりすることは避けましょう。
昆布などのヨウ素
ヨウ素も身体に必要な栄養素ですが、昆布や昆布だしなどに偏って摂取すると過剰になることがあります。
「身体によいものは多いほどよい」と考えず、さまざまな食品を組み合わせることが基本です。
サプリメントの重複
葉酸サプリ、プレナタルサプリ、マルチビタミン、鉄サプリなどを複数使用すると、同じ成分が重複することがあります。
新しいサプリメントを追加するときは、それぞれの商品名だけでなく栄養成分表示を確認しましょう。
貧血や甲状腺疾患などで治療を受けている方は、自己判断でサプリメントを増やさず、医師や管理栄養士に相談してください。
妊娠中は食品の安全性にも注意
妊娠中は栄養だけでなく、食中毒や食品中の成分にも注意が必要です。
一部の魚は水銀量に注意する
魚はたんぱく質や脂質などを摂れる大切な食品なので、妊娠したからといって魚を避ける必要はありません。
ただし、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロなど、一部の魚介類については水銀の摂取量を抑えるため、食べる量や頻度の目安が示されています。
魚の種類を分散し、特定の大型魚ばかりを繰り返し食べないことがポイントです。
加熱せず食べる食品にも注意する
妊娠中はリステリアなどによる食中毒にも注意が必要です。
生ハム、加熱せずに食べる一部のナチュラルチーズ、スモークサーモンなどは、保存状態や製造方法を確認し、必要に応じて十分に加熱して食べましょう。
肉・魚介類なども、生や加熱不足を避け、食品を衛生的に扱うことが大切です。
アルコールは避ける
妊娠中の飲酒は避けましょう。「少量なら大丈夫」と自己判断せず、ノンアルコール飲料なども表示を確認してください。
また、コーヒーやお茶、エナジードリンクなどをよく飲む方は、1日のカフェイン摂取量にも注意しましょう。
つわりで食べられないときは完璧を目指さなくて大丈夫
妊娠初期は、つわりによってにおいや味の好みが変わり、これまで通りの食事ができなくなることがあります。
その時期に「赤ちゃんのために栄養バランスを完璧にしなければ」と無理をすると、食事そのものが負担になることがあります。
食べられるものを少量ずつ取り、水分を確保することを優先しながら、体調が落ち着いてきたら少しずつ食事の種類を増やしていきましょう。
食事について医師や助産師へ相談したいケース
次のような場合は、自己判断だけで食事やサプリメントを調整せず、妊婦健診などで医師・助産師・管理栄養士に相談しましょう。
- つわりが強く、水分や食事をほとんど摂れない
- 体重が急激に減っている
- 貧血を指摘されている
- 妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群について指導を受けている
- 甲状腺疾患などで食事について制限を受けている
- 複数のサプリメントを使用している
- 体重増加や食事量について不安がある
妊娠中に必要な栄養量は、妊娠週数だけでなく、妊娠前の体格、体重増加、持病、血液検査の結果などによっても異なります。個別の栄養管理が必要な場合は、主治医の指示を優先してください。
妊娠すると、「これは食べていい?」「この栄養素が足りないかも」と、食事の一つひとつが気になることがあります。
大切なのは、毎日完璧な食事を続けることではありません。つわりや体調の変化がある時期は、食べられるものを取り入れながら、少し長い目で食事全体を整えていきましょう。
貧血や体重管理、妊娠糖尿病、甲状腺疾患などで個別の食事指導を受けている場合は、一般的な情報よりも主治医や管理栄養士からの指示を優先してください。
Q. 妊娠中は2人分食べたほうがいいですか?
A. 2人分の量を食べる必要はありません。妊娠週数に応じて必要なエネルギー量は増えますが、単純に食事量を倍にするのではなく、食事の質とバランスを整えることが大切です。
Q. 妊娠が分かってから葉酸を飲み始めても意味がありますか?
A. 葉酸は妊娠前から妊娠初期に特に重要ですが、妊娠が分かってからでも栄養管理は大切です。自己判断で過量に摂らず、適切な量を継続しましょう。
Q. 鉄分を摂るためにレバーを食べてもいいですか?
A. レバーには鉄が多い一方、ビタミンAの一種であるレチノールも非常に多く含まれます。妊娠中は頻繁な大量摂取を避け、赤身肉、魚、大豆製品、青菜など他の食品も活用しましょう。
Q. 妊娠中は魚を食べないほうがいいですか?
A. 魚を一律に避ける必要はありません。魚はたんぱく質や脂質を摂れる食品です。ただし、一部の大型魚は水銀量が比較的多いため、厚生労働省が示している摂取量・頻度の目安を参考にしましょう。
Q. 妊娠中はサプリメントを飲んだほうがいいですか?
A. 葉酸などサプリメントの活用が推奨される栄養素もありますが、すべての栄養素をサプリで補う必要はありません。複数の商品を使う場合は成分が重複していないか確認し、治療中の方は主治医にも相談しましょう。
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📚参考文献
-
[1] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版). 2024.
妊娠中のエネルギー、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの摂取基準を示しています。 -
[2] こども家庭庁. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針. 2021.
妊娠前から妊娠中、産後までのバランスのよい食生活や体重管理について示しています。 -
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット. 葉酸とサプリメント―神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果. 2026.
妊娠前から妊娠初期における葉酸摂取と、サプリメントからの400μg/日の摂取について解説しています。 -
[4] 厚生労働省. 妊娠中、育児中のご自身の食事や赤ちゃんの食事に関する情報提供. 2026年閲覧.
妊娠中に注意したいリステリア食中毒や、魚介類に含まれる水銀などの食品安全情報を案内しています。 -
[5] 厚生労働省. 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について. 2005.
妊娠中も魚介類の栄養上の利点を活かしながら、水銀量の多い一部の魚について摂取頻度を調整する考え方を示しています。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
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