
胚盤胞まで育たない原因とは?栄養不足との関係も解説
体外受精や顕微授精を行う中で、「受精はするのに胚盤胞まで育たない」「途中で成長が止まってしまう」「何度採卵しても胚盤胞にならない」と悩まれる方は少なくありません。
胚盤胞まで育たないと、「卵子が悪いのかな」「もう妊娠は難しいのかな」と、ご自身を責めてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、胚盤胞まで育たない原因はひとつではありません。卵子の状態、精子の状態、年齢、染色体の問題、培養環境、採卵周期の条件など、さまざまな要素が関係します。
その中で、見落とされやすい要素のひとつが、栄養状態や体づくりです。
- 胚盤胞まで育たない原因は、卵子の質だけでなく、精子の質・年齢・染色体要因・培養環境・採卵周期の状態など複数あります
- 栄養不足や低BMI、極端な食事制限は、卵胞発育やホルモンバランスに影響する可能性があります
- コレステロールは、細胞膜や女性ホルモンの材料になるため、妊活中は「低ければよい」と単純に考えないことが大切です
- たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂り、睡眠や血流、ストレスケアも含めて身体を整えることが大切です
- 鍼灸は胚を直接育てる治療ではありませんが、冷え・血流・自律神経・胃腸の働きなどを整え、妊活を続けやすい身体づくりをサポートできます


胚盤胞とは?なぜ途中で育たないことがあるのか
胚盤胞とは、受精卵が分割を繰り返し、一般的に受精後5〜6日目ごろに到達する発育段階のことです。
体外受精では、受精卵が順調に分割し、胚盤胞まで育つかどうかが、移植や凍結の判断に関わることがあります。
ただし、すべての受精卵が胚盤胞まで育つわけではありません。途中で発育が止まることもあり、それは必ずしも「身体が悪い」「努力が足りない」という意味ではありません。
胚の発育には、卵子や精子のもつ情報、受精後のエネルギー代謝、染色体の状態、培養環境などが複雑に関わっています。
目次
胚盤胞まで育たない主な原因
胚盤胞まで育たない背景として、主に次のような要因が考えられます。
1. 卵子の質や年齢の影響
胚の発育には、卵子の状態が大きく関わります。
特に年齢が上がると、卵子の染色体異常の割合が増えやすくなり、受精しても途中で発育が止まることがあります。
これはご本人の努力不足ではなく、年齢に伴う生物学的な変化です。そのため、胚盤胞にならないことが続く場合は、主治医と採卵方法や刺激方法、移植方針について相談することが大切です。
2. 精子の質の影響
胚の発育は、卵子だけで決まるものではありません。
精子のDNA損傷や酸化ストレス、精液所見の低下なども、受精後の胚発育に影響する可能性があります。
「受精したから精子側は問題ない」とは限らず、胚盤胞まで育たない場合には、男性側の生活習慣や精子の質を見直すことも大切です。
3. 染色体や遺伝的な要因
受精卵が途中で成長を止める背景には、染色体の異常が関係することがあります。
この場合、食事や生活習慣だけで完全に防ぐことはできません。必要に応じて、主治医からPGT-Aなどの検査について説明を受けることもあります。
ただし、検査の適応や考え方は年齢・胚の数・治療歴によって異なるため、医師と相談しながら判断することが大切です。
4. 培養環境や治療条件の影響
胚盤胞まで育つかどうかは、培養液や培養環境、採卵周期のホルモン状態などにも左右されます。
同じ方でも、周期によって採れる卵子の数や質、受精後の発育が変わることがあります。
そのため、1回の結果だけで「もう無理」と判断する必要はありません。
5. 栄養不足や体づくりの影響
そして、もうひとつ見直したいのが、栄養状態です。
胚盤胞まで育つためには、卵子が成熟する段階から、身体の中で十分な材料が整っていることが大切です。
たとえば、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、鉄、亜鉛、ビタミンDなどは、妊活中の身体づくりに関わる栄養素です。
もちろん、特定の栄養素を摂れば必ず胚盤胞になる、というものではありません。ですが、慢性的な栄養不足や低エネルギー状態があると、卵胞の発育やホルモンバランスに影響する可能性があります。
一見健康そうでも、栄養不足のことがあります
「普通に食べているから大丈夫」「痩せすぎではないから問題ない」と思っていても、実際には必要な栄養が不足していることがあります。
特に、次のような方は注意が必要です。
- 食事量が少ない
- 忙しくて食事を抜くことが多い
- 肉・魚・卵などのたんぱく質が少ない
- 糖質を極端に控えている
- BMIが低め
- 疲れやすい
- 冷えやすい
- 月経量が少ない、周期が乱れやすい
妊活中は「太らないこと」だけを意識するよりも、卵子やホルモンをつくるための材料が足りているかを見ることが大切です。
胚盤胞とコレステロールの関係
コレステロールというと、「低いほうが健康によい」と思われがちです。
しかし、妊活中はコレステロールを単純に悪者と考えるのではなく、ホルモンや細胞膜の材料として見ることも大切です。
コレステロールは、卵子の細胞膜や、エストロゲン・プロゲステロンなどの性ホルモンの材料になります。これらのホルモンは、排卵、子宮内膜、着床環境などに関わる大切なホルモンです。
そのため、極端な脂質制限や低栄養状態が続くと、ホルモンバランスや卵胞発育に影響する可能性があります。
ただし、ここで大切なのは、コレステロールを無理に高くすればよいという意味ではないということです。
高コレステロールが望ましいということではなく、低栄養や極端な食事制限によって、身体に必要な材料が不足していないかを確認することが大切です。
健康診断や血液検査で気になる数値がある場合は、自己判断せず、医師や管理栄養士に相談しましょう。
胚盤胞が育ちやすい身体づくりで意識したいこと
胚盤胞まで育たない原因を栄養だけに求めることはできません。
しかし、次の採卵に向けて身体づくりを見直すことは、できる対策のひとつです。
たんぱく質をしっかり摂る
たんぱく質は、筋肉、血液、ホルモン、酵素など、身体の土台をつくる重要な栄養素です。
妊活中は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などをバランスよく取り入れることが大切です。
ただし、たんぱく質を多く摂れば必ず胚盤胞になるという意味ではありません。大切なのは、極端な食事制限を避け、身体に必要な材料を安定して届けることです。
脂質を極端に避けすぎない
妊活中は、脂質を完全に避ける必要はありません。
良質な脂質は、ホルモンや細胞膜の材料として大切です。
魚、卵、ナッツ類、オリーブオイルなどを、食事全体のバランスを見ながら取り入れるとよいでしょう。
筋肉を落とさない
栄養を摂るだけでなく、それを身体の中で活かすことも大切です。
筋肉量が少ないと、血流や代謝が低下しやすく、冷えや疲れやすさにつながることがあります。
激しい運動をする必要はありませんが、ウォーキング、軽い筋トレ、ストレッチなどを続けることで、血流や代謝を支えやすくなります。
睡眠とストレスを整える
卵胞の発育やホルモンバランスには、自律神経や睡眠の質も関係します。
夜更かし、慢性的な疲労、強いストレスが続くと、身体が妊活に必要な回復をしにくくなることがあります。
「何かを頑張る」だけでなく、休む時間をつくることも妊活の大切な一部です。
鍼灸でできるサポート
鍼灸は、胚盤胞を直接つくる治療ではありません。
しかし、妊活中の身体づくりとして、血流、自律神経、冷え、肩こり、睡眠、胃腸の働きなどを整えるサポートとして取り入れられることがあります。
そのため、「鍼灸をすれば胚盤胞になる」と断定することはできません。
一方で、冷えや胃腸の不調、睡眠の乱れ、ストレス、首肩こりなどがある方にとっては、妊活を続けるための身体の土台を整える選択肢のひとつになります。
胚盤胞まで育たないときに確認したいこと
胚盤胞まで育たないことが続く場合は、まず主治医と治療方針を確認することが大切です。
そのうえで、日常生活では次の点を見直してみましょう。
- 食事量が足りているか
- たんぱく質が不足していないか
- 脂質を極端に制限していないか
- BMIが低すぎないか
- 疲労や睡眠不足が続いていないか
- 冷えや胃腸の不調がないか
- 男性側の精子の質も確認できているか
胚盤胞まで育たない原因は、ひとつに絞れないことが多いです。
だからこそ、検査や治療だけでなく、食事・睡眠・血流・ストレス・体力など、身体全体を見直すことが大切です。
胚盤胞まで育たないのは、卵子の質だけが原因ですか?
卵子の状態は大きく関係しますが、それだけが原因とは限りません。精子の質、年齢、染色体要因、培養環境、採卵周期の条件、栄養状態など、複数の要素が関係します。
栄養を改善すれば、必ず胚盤胞まで育ちますか?
栄養改善だけで必ず胚盤胞になるとは言えません。ただし、低栄養や極端な食事制限がある場合は、卵胞発育やホルモンバランスに影響する可能性があるため、身体づくりの一環として見直す価値があります。
コレステロールは高いほうが妊活によいのですか?
高ければよいという意味ではありません。コレステロールはホルモンや細胞膜の材料になりますが、高すぎる場合は健康面で注意が必要です。大切なのは、低栄養や極端な脂質制限によって必要な材料が不足していないかを見ることです。
胚盤胞まで育たないとき、男性側も検査したほうがよいですか?
胚の発育には精子の状態も関係します。受精していても、精子のDNA損傷や酸化ストレスが胚発育に影響する可能性があるため、必要に応じて男性側の検査や生活習慣の見直しも検討しましょう。
鍼灸で胚盤胞まで育つようになりますか?
鍼灸が胚を直接育てるわけではありません。しかし、冷え、血流、自律神経、睡眠、胃腸の働きなどを整えることで、妊活を続けやすい身体づくりをサポートすることは可能です。
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📚参考文献
- Chavarro JE et al. Protein intake and ovulatory infertility. Human Reproduction, 2008.
- Arias A et al. Implications of High-Density Cholesterol Metabolism for Oocyte Biology and Female Fertility. Frontiers in Cell and Developmental Biology, 2022.
- Sciorio R et al. Culture conditions in the IVF laboratory: state of the ART and possible new directions. Journal of Assisted Reproduction and Genetics, 2023.
- Masoud A et al. Systematic review and meta-analysis of the efficacy of acupuncture as an adjunct to IVF. 2022.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
次の採卵に向けて、身体づくりを見直したい方へ
胚盤胞まで育たないことが続くと、「何を変えればいいのかわからない」「自分の身体に原因があるのでは」と不安になることもあると思います。
ただ、胚の発育には卵子や精子の状態、年齢、培養環境、栄養状態、血流、自律神経など、さまざまな要素が関わります。結果だけを見て、ご自身を責めすぎる必要はありません。
宇都宮鍼灸良導絡院では、体外受精や顕微授精に取り組まれている方に向けて、東洋医学と西洋医学の両面からお身体の状態を確認しながら、妊活中の身体づくりをサポートしています。
鍼灸は胚を直接育てる治療ではありませんが、冷え・胃腸の不調・睡眠の乱れ・ストレス・血流の滞りなどを整え、次の採卵や移植に向けて、身体が本来の働きを発揮しやすい状態を目指します。
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