
不妊治療は肝臓に負担がかかる?サプリ・脂肪肝との関係もわかりやすく解説
不妊治療を続けていると、「薬をいくつも使っていて肝臓は大丈夫?」「妊活サプリで肝機能障害になることはある?」「脂肪肝があると妊娠しにくいの?」と不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいうと、不妊治療で使われる薬そのものが、一般的に強い肝障害を起こすことは多くありません。ただし、まれな副作用や、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に伴う肝機能異常、さらに自己判断で続けているサプリメントが問題になることはあります。
また、近年は脂肪肝(現在はMASLDと呼ばれることが多い)と、排卵障害、インスリン抵抗性、PCOSなどの背景が重なり、妊活とまったく無関係ではないこともわかってきました。とはいえ、脂肪肝があるから必ず不妊になるわけではありません。大切なのは、肝臓をいたわりながら、必要な治療を安全に続けることです。
- 不妊治療で使われる薬が、一般的に強い肝障害を起こすことは多くありません。
- ただし、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に伴って肝機能の数値が変動することがあります。
- 妊活中は、自己判断でサプリを増やしたり、海外製品を長く飲み続けたりすることに注意が必要です。
- 脂肪肝は、排卵障害やインスリン抵抗性、PCOSなどと関連し、妊活に影響する背景のひとつになることがあります。
- だるさ、食欲低下、黄疸、尿の色が濃いなどの症状があるときは、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。


目次
不妊治療の薬は肝臓に負担をかけるのか
まず知っておきたいのは、不妊治療薬=肝臓に強い負担と単純にはいえない、ということです。医学文献では、不妊治療薬は薬剤性肝障害の非常にまれな原因とされており、特にゴナドトロピン製剤やGnRH関連薬は、通常の使用で明らかな肝障害と強く結びついていないと整理されています。
ただし例外として、排卵誘発や採卵周期で起こりうるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)では、腹水や血液濃縮などに伴ってAST・ALTが上がることがあります。これは「薬そのものの毒性」というより、治療に伴う体の反応の一部として肝機能異常が出ることがある、という理解が実際に近いです。
クロミフェンについても、通常は大きな問題を起こさない一方で、OHSSに関連して肝酵素上昇がみられることがあります。重い肝炎や慢性肝炎の原因として一般的とはいえません。
妊活中に注意したいのは「自己判断のサプリ」
検索でも特に多いのが、「サプリで肝機能障害は起こるのか」という疑問です。ここは注意したいポイントです。
肝臓の分野では、薬だけでなく、ハーブや栄養補助食品も薬物性肝障害の原因になりうるとされています。実際に肝障害の評価では、サプリやハーブの使用歴を必ず確認することが重要とされています。
特に気をつけたいのは、次のようなケースです。
- 成分が多く、何を飲んでいるか把握しにくいもの
- 海外製で含有量や品質管理がわかりにくいもの
- 「妊活によさそう」と複数を併用しているケース
サプリは「自然由来だから安全」と思われがちですが、自然由来でも肝障害は起こりえます。とくに妊活中はサプリの種類が増えやすいため、処方薬、漢方、市販薬、サプリをすべて含めて、主治医や薬剤師に共有することが大切です。
自己免疫性肝炎とは?妊活中に関係するの?
自己免疫性肝炎は、自分の免疫が肝臓を攻撃してしまう病気です。症状としては、だるさ、吐き気、食欲低下、上腹部痛、黄疸、尿の色が濃くなるなどがあり、無症状のまま見つかることもあります。
ここで慎重にお伝えしたいのは、妊活サプリが自己免疫性肝炎をよく起こすとまでは言えないという点です。自己免疫性肝炎の原因は完全にはわかっておらず、薬剤がきっかけになるケースはありますが、安易に「妊活サプリ=自己免疫性肝炎」と結びつけるのは正確ではありません。
そのため、妊活中の情報発信では「自己免疫性肝炎を発症する可能性がある」と断定的に書くよりも、まれに薬剤やサプリが肝障害のきっかけになることがあり、詳しい評価が必要になると伝えるほうが、医学的には適切です。
脂肪肝と不妊は関係ある?
「脂肪肝 不妊」で検索する方が多いのは、とても自然なことです。
現在、脂肪肝はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と呼ばれることが増えています。これは単に肝臓だけの問題ではなく、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常、2型糖尿病、PCOSなどと深く関わる代謝の病気として考えられています。
つまり、脂肪肝そのものが直接「妊娠を妨げる原因」と断定はできないものの、排卵障害やホルモンバランス、インスリン抵抗性などを介して、妊活に影響しうる背景の一つと考えられています。
妊活中に脂肪肝を指摘された場合は、「肝臓だけの問題」と切り離さず、体重、血糖、脂質、月経や排卵の状態もあわせて見直すことが重要です。
こんな症状があるときは早めに受診を
肝機能障害は、初期には自覚症状が乏しいこともありますが、次のような症状があれば注意が必要です。
- 強いだるさ
- 食欲低下
- 吐き気
- 右上腹部の違和感や痛み
- 尿の色が濃い
- 白目や皮膚が黄色っぽい(黄疸)
こうした症状は、薬剤性肝障害でも自己免疫性肝炎でもみられることがあるため、サプリや薬を自己判断で続けず、主治医に早めに相談してください。
また、「ASTやALTが3桁なら不妊治療を中断」と一律に言い切ることはできません。実際には、数値の高さだけでなく、症状、ビリルビン、凝固能、原因の推定、治療内容などを総合して判断します。異常があれば自己判断せず、治療中のクリニックで相談することが大切です。
妊活中に肝臓を守るためにできること
1.飲んでいるものを全部共有する
処方薬だけでなく、サプリ、漢方、市販薬、プロテイン、海外製品も含めて伝えましょう。肝障害の評価では、この情報がとても重要です。
2.脂肪肝や体重増加を放置しない
脂肪肝は、妊活とは無関係な別の問題ではなく、代謝やホルモン環境のサインであることがあります。食事、運動、睡眠、血糖管理を整えることは、肝臓にも妊活にも大切です。
3.定期採血を軽く見ない
採卵周期や薬剤調整中に採血を行うのは、卵巣の反応だけでなく、全身状態を安全にみる意味もあります。異常があれば、治療内容の見直しにつながります。
鍼灸でできること・できないこと
鍼灸については、肝機能障害そのものを治すとは言えません。ここは誤解のないようにしておきたい点です。
一方で、不妊治療中の方に対して鍼灸は、緊張やストレスの緩和、睡眠や自律神経の乱れのサポート、肩こりや冷え、疲労感などの不調ケアといった面で役立つことがあります。結果として、治療を続けやすい体調管理の一部になることはありますが、肝機能異常が疑われるときは、まず医療機関での評価が優先です。
まとめ
不妊治療と肝臓の関係で、必要以上に怖がる必要はありません。ただし、次の点は押さえておきたいところです。
- 不妊治療薬で重い肝障害が頻繁に起こるわけではない
- OHSSでは肝機能異常が出ることがある
- 自己判断のサプリや海外製品は注意が必要
- 脂肪肝は妊活と無関係ではなく、代謝の見直しが大切
- 黄疸、濃い尿、強いだるさ、食欲低下があれば早めに相談する
妊活は、卵巣や子宮だけを見るものではありません。肝臓を含めた全身の状態を整えながら、安全に治療を続けていくことが、結果的に安心につながります。
不妊治療の薬で肝臓が悪くなることはありますか?
不妊治療で使われる薬が、一般的に重い肝障害を起こすことは多くありません。ただし、まれに肝機能の異常がみられることがあり、特にOHSSに伴ってASTやALTが上がることがあります。心配なときは、採血結果を主治医と一緒に確認することが大切です。
妊活サプリでも肝機能障害は起こりますか?
はい、薬だけでなく、サプリやハーブ製品が肝機能障害の原因になることがあります。特に、成分が多いもの、海外製品、複数を併用している場合は注意が必要です。妊活中に飲んでいるものは、サプリも含めて主治医や薬剤師に共有しておくと安心です。
脂肪肝があると妊娠しにくくなりますか?
脂肪肝があるから必ず妊娠しにくくなる、というわけではありません。ただ、脂肪肝はインスリン抵抗性やPCOS、体重増加などと関係することがあり、結果として妊活に影響する場合があります。肝臓だけでなく、体重や血糖、月経周期もあわせて見直すことが大切です。
肝機能の数値が少し高いだけでも治療は中止になりますか?
必ずしもすぐに治療中止になるわけではありません。実際には、ASTやALTの値だけでなく、症状の有無、ほかの血液検査の結果、服用中の薬やサプリなどを総合して判断します。数値の異常を指摘されたときは、自己判断せず主治医に相談しましょう。
妊活中に肝臓のためにできることはありますか?
まず大切なのは、飲んでいる薬やサプリをすべて共有することです。加えて、脂肪肝や体重増加を放置しないこと、採血結果をきちんと確認すること、食事や睡眠、運動を整えることも大切です。無理のない範囲で体調管理を続けることが、安心して妊活を進める助けになります。
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📚参考文献
- AASLD Practice Guidance on Drug, Herbal, and Dietary Supplement–Induced Liver Injury
- NIH LiverTox: Infertility Agents
- NIH LiverTox: Clomiphene
- NIH LiverTox: Gonadotropins
- NIDDK: Autoimmune Hepatitis – Symptoms & Causes
- MedlinePlus: Drug-induced liver injury
- EASL–EASD–EASO Clinical Practice Guidelines on MASLD (2024)
- Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease and Infertility (2024 review)
- Review on MASLD across women’s reproductive lifespan
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊活中の体調管理に不安がある方へ
不妊治療を続けていると、薬やサプリのこと、体調の変化、検査結果の見方など、細かな不安が重なることがあります。
「このまま治療を続けて大丈夫かな」「疲れやすさや冷えも関係しているのかな」と気になっていても、どこまで相談してよいのか迷われる方も少なくありません。
宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療と併用しながら、お身体の状態に合わせた鍼灸ケアをご提案しています。肝機能そのものを治療するものではありませんが、妊活中のストレス、冷え、睡眠の乱れ、疲労感など、体調管理の面から無理なく整えていくお手伝いをしています。
「治療を頑張っているけれど、体調面も整えたい」「自分に合うケアを相談しながら取り入れたい」とお考えの方は、初回カウンセリングで現在の治療状況やお悩みをお聞かせください。
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