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着床不全・不育症と免疫療法|Th1/Th2・NK細胞・タクロリムスの考え方

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「何度移植しても着床しない」「妊娠しても流産を繰り返してしまう」「検査では大きな異常がないと言われたのに、なぜ結果につながらないのか分からない」。

このようなお悩みを抱えている方の中には、「免疫が関係しているのでは?」と考えたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

着床や妊娠の継続には、受精卵の状態、子宮内膜、ホルモン、血流、慢性子宮内膜炎、血液凝固、甲状腺機能、生活習慣など、さまざまな要因が関わります。

その中の一つとして近年注目されているのが、母体の免疫バランスです。

今回は、着床不全・不育症と免疫療法について、Th1/Th2、NK細胞、タクロリムス、夫リンパ球移植療法の考え方を、できるだけ分かりやすく整理していきます。

この記事の要点まとめ
  • 着床不全・不育症には、免疫バランスが関係している可能性があります。
  • Th1/Th2、NK細胞、タクロリムスは、反復着床不全や不育症の分野で注目されています。
  • ただし、免疫療法はすべての方に必要な治療ではありません。
  • 夫リンパ球移植療法は、現在では有効性や安全性の面から慎重に考えられています。
  • 免疫だけに原因を決めつけず、胚・子宮内膜・ホルモン・血液凝固・甲状腺・慢性炎症などを総合的に確認することが大切です。

着床不全や不育症の原因としての免疫異常とその治療法を解説する図解

着床不全・不育症と免疫の関係

妊娠は、母体にとってとても不思議な現象です。

赤ちゃんは、お母さんとお父さんの両方の遺伝情報を持っています。そのため、母体の免疫から見ると、赤ちゃんは完全に「自分」と同じ存在ではありません。

本来、免疫はウイルスや細菌などの異物を排除するために働きます。しかし妊娠中は、胎児を攻撃しすぎないように、免疫が細かく調整されています。

この免疫の調整がうまく働くことで、受精卵が子宮内膜に着床し、その後の妊娠が維持されやすくなると考えられています。

ただし、ここで大切なのは、免疫だけが着床不全や不育症の原因とは限らないということです。

免疫はあくまで多くの要因の一つであり、胚の染色体、子宮環境、ホルモン、血液凝固、甲状腺、慢性炎症なども含めて、総合的に考える必要があります。

Th1/Th2とは?不育症・着床不全で注目される理由

免疫療法の話でよく出てくるのが、Th1/Th2という言葉です。

Th1、Th2は、免疫細胞の一種であるヘルパーT細胞の働き方を示す考え方です。

  • Th1は、細菌やウイルスなどに対して攻撃的に働く免疫反応に関わります。
  • Th2は、抗体産生やアレルギー反応などに関わる免疫反応とされています。

妊娠においては、以前から「Th1が強くなりすぎると、胎児や胎盤に対する免疫反応が過剰になり、着床や妊娠継続に影響する可能性がある」と考えられてきました。

そのため、反復着床不全や不育症の一部では、Th1/Th2比を調べることがあります。

特に、Th1/Th2比が高い場合には、母体の免疫が攻撃的に傾いている可能性があるとして、免疫を調整する治療が検討されることがあります。

ただし、Th1/Th2の検査は、まだ標準的な検査として確立しているとは言い切れません。

血液で測るのがよいのか、子宮内膜で見るべきなのか、どの時期に測るのが適切なのか、どの数値を異常と判断するのかなど、まだ統一されていない部分があります。

そのため、Th1/Th2が高いから必ず流産する、必ず着床しない、というものではありません

NK細胞とは?不育症との関係

NK細胞とは、ナチュラルキラー細胞と呼ばれる免疫細胞です。

名前だけを見ると「攻撃する細胞」という印象が強いかもしれませんが、妊娠に関わるNK細胞は、単純に悪者というわけではありません。

子宮内には、子宮NK細胞と呼ばれる細胞が存在し、着床や胎盤形成、子宮内膜の血管づくりに関わると考えられています。

つまり、NK細胞は妊娠にとって必要な働きも持っています。

一方で、NK細胞の数や活性が高い場合、妊娠の維持に影響する可能性があるとして、不育症や反復着床不全の検査で注目されることがあります。

ただし、NK細胞についても注意が必要です。

血液中のNK細胞と、子宮内に存在するNK細胞は、同じように考えられるものではありません。血液検査でNK細胞の数や活性が高いからといって、それだけで着床不全や不育症の原因と判断できるわけではありません。

NK細胞の検査結果は、専門医のもとで、その他の検査結果や治療歴と合わせて慎重に判断することが大切です。

タクロリムスとは?着床不全の免疫療法で使われる理由

タクロリムスは、免疫の働きを抑える薬の一つです。

もともとは臓器移植後の拒絶反応を抑えるためなどに使われてきた薬で、免疫細胞の過剰な反応を抑える働きがあります。

反復着床不全の分野では、Th1/Th2比が高い方に対して、タクロリムスを使用することで妊娠率が改善したという報告があります。

考え方としては、母体の免疫が受精卵や胎盤に対して攻撃的に働きすぎている可能性がある場合に、その反応を調整し、着床や妊娠継続を助けることを目的とします。

ただし、タクロリムスは誰にでも使う治療ではありません

免疫抑制薬であるため、感染症への注意、肝機能・腎機能、血中濃度、妊娠中の安全性、他の薬との飲み合わせなどを慎重に確認する必要があります。

また、すべての着床不全にタクロリムスが有効というわけではありません。

タクロリムスは、あくまでTh1/Th2比の上昇など、免疫学的な異常が疑われる一部のケースで検討される治療です。使用するかどうかは、不妊治療専門医・不育症専門医の判断が必要です。

夫リンパ球移植療法とは?

夫リンパ球移植療法は、夫のリンパ球を妻に投与することで、母体の免疫反応を調整し、妊娠を維持しやすくすることを目的とした免疫療法です。

以前は、原因不明の習慣流産や不育症に対する治療として注目されていました。

背景には、母体が胎児を受け入れるために必要な免疫の調整がうまく働かない場合、流産につながるのではないかという考え方があります。

過去には、夫リンパ球移植療法によって妊娠継続率が改善したとする報告もあります。

一方で、近年のガイドラインやシステマティックレビューでは、有効性は明確ではないとされ、現在は慎重な扱いになっています。

また、夫のリンパ球を移植するという性質上、輸血に近い医療行為として考える必要があります。感染症のリスク、同種抗体の産生、胎児への影響など、安全性の面でも注意が必要です。

そのため、現在では一般的に広く行われている治療ではなく、実施している医療機関も限られています。

免疫療法を考える前に確認したいこと

着床不全や不育症が続くと、「何か見落とされている原因があるのでは」と不安になるのは自然なことです。

ただ、免疫療法を考える前に、まずは基本的な検査が整理されているかを確認することが大切です。

確認したい主な項目には、次のようなものがあります。

  • 胚の染色体異常の可能性
  • 子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮奇形などの子宮因子
  • 慢性子宮内膜炎
  • 子宮内フローラ
  • 甲状腺機能
  • ビタミンD
  • 血液凝固異常
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • ホルモン補充周期の子宮内膜や黄体ホルモン値
  • ERA検査など着床の窓に関する検査
  • 精子の質やDNA損傷の可能性

免疫だけに注目しすぎると、他の大切な原因を見落としてしまうことがあります。

免疫療法は、原因不明のまま何となく行うものではなく、必要な検査を行ったうえで、適応があるかどうかを専門医と相談しながら検討することが大切です。

免疫療法は「希望」でもあり「慎重さ」も必要な治療

着床不全や不育症を経験された方にとって、免疫療法は一つの希望になることがあります。

特に、何度も移植しているのに着床しない、妊娠しても初期流産を繰り返す、検査では大きな異常が見つからないという場合、「免疫」という視点から見直すことで、治療方針が広がることもあります。

一方で、免疫療法はまだ研究段階の部分も多く、すべての方に有効性が確立しているわけではありません。

検査結果の解釈も難しく、医療機関によって考え方が異なることもあります。

そのため、免疫療法を検討する際は、次のような点を確認しておくと安心です。

  • 自分はなぜ免疫療法の対象になるのか
  • どの検査結果をもとに判断しているのか
  • 期待できる効果はどの程度か
  • 副作用やリスクは何か
  • 妊娠後はいつまで治療を続けるのか
  • 他の治療との優先順位はどう考えるのか

分からないまま治療を進めるのではなく、納得できるまで説明を受けることが大切です。

鍼灸でできること|免疫療法の代わりではなく、体づくりの一つとして

鍼灸は、タクロリムスや免疫療法の代わりになるものではありません。

また、Th1/Th2やNK細胞の数値を直接治す治療として説明することも適切ではありません。

ただし、妊活中の体づくりという視点では、鍼灸がサポートできることがあります。

たとえば、冷え、血流、自律神経の乱れ、睡眠の質、胃腸の働き、ストレスによる緊張などは、妊活中の方が感じやすい不調です。

自律神経や血流、体調の土台を整えることは、採卵・移植・妊娠継続を目指すうえで大切な準備になります。

特に、着床不全や不育症で治療が長くなっている方は、心身ともに緊張が続きやすくなります。

  • まただめだったらどうしよう
  • 次の移植までに何をしたらいいのか分からない
  • 検査や薬が増えて不安

このような不安を抱えながら治療を続けることは、想像以上に大きな負担です。

鍼灸では、妊娠を保証することはできませんが、治療を続ける身体と心のコンディションを整えるお手伝いはできます。

この記事のまとめ

何度も結果が出ないと、「自分の体が悪いのでは」と責めてしまう方も少なくありません。

ですが、着床不全や不育症は一つの原因だけで説明できないことも多く、あなたの努力不足ではありません。

治療の選択肢を一つずつ整理しながら、信頼できる医療機関で相談し、ご自身が納得できる形で進めていきましょう。

よくあるご質問(FAQ)

Th1/Th2が高いと必ず着床しにくいのでしょうか?

必ず着床しにくいとは言い切れません。Th1/Th2は免疫バランスを考えるうえで参考になる検査の一つですが、検査結果だけで着床不全や不育症の原因を断定することはできません。胚の状態、子宮内膜、ホルモン、血流、慢性子宮内膜炎など、他の要因と合わせて判断することが大切です。

NK細胞が高いと言われたら治療が必要ですか?

NK細胞の数値が高いからといって、必ず治療が必要とは限りません。血液中のNK細胞と子宮内のNK細胞は同じものとして考えられるわけではなく、検査結果の解釈には注意が必要です。専門医のもとで、これまでの治療歴や他の検査結果と合わせて相談することが大切です。

タクロリムスは着床不全に効果がありますか?

Th1/Th2比が高い反復着床不全の一部で、タクロリムスの有用性を示した報告があります。ただし、すべての方に効果がある治療ではなく、免疫抑制薬であるため副作用や感染症への注意も必要です。使用するかどうかは、専門医の判断が必要です。

夫リンパ球移植療法は現在も行われていますか?

以前は習慣流産や不育症に対する免疫療法として行われていましたが、現在は有効性や安全性の面から慎重な扱いになっています。実施している医療機関も限られており、一般的に広く行われている治療ではありません。

📝こちらの記事もおすすめです

📚参考文献

  • 不育症管理に関する提言2025
    不育症の検査・治療について、日本国内での考え方を整理した資料です。夫リンパ球免疫療法については、有効性や安全性の面から慎重な扱いが示されています。
  • 日本生殖医学会 生殖医療ガイドライン
    反復着床不全に対するTh1/Th2測定や免疫治療について、現時点での推奨や注意点が整理されています。
  • ASRM. The role of immunotherapy in in vitro fertilization: a guideline. Fertility and Sterility. 2018.
    体外受精における免疫療法の位置づけをまとめたガイドラインです。免疫療法について、研究報告はあるものの慎重な判断が必要とされています。
  • Nakagawa K, et al. Tacrolimus treatment in women with repeated implantation failure and elevated Th1/Th2 cell ratios.
    Th1/Th2比が高い反復着床不全の方に対するタクロリムス治療について報告した研究です。
  • Wong LF, et al. Immunotherapy for recurrent miscarriage. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2014.
    不育症に対する免疫療法の有効性を検討したシステマティックレビューです。夫リンパ球免疫療法などについて検討されています。
  • Raghupathy R. Th1-type immunity is incompatible with successful pregnancy. Immunology Today. 1997.
    妊娠とTh1/Th2免疫バランスの関係について考察した文献です。
  • Shima T, Inada K, Nakashima A, et al. Paternal antigen-specific regulatory T cells and implantation. Journal of Reproductive Immunology. 2015.
    妊娠初期の免疫寛容や制御性T細胞の働きについて検討した研究です。

この記事の監修者

宇都宮泰子 監修者写真

院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)

FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)

  • 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
  • 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
  • 日本生殖医学会会員

不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。

※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。

着床不全・不育症でお悩みの方へ

何度移植しても着床しない、妊娠しても流産を繰り返してしまうと、「何が原因なのか」「次に何を見直せばよいのか」と不安になる方も少なくありません。

着床不全や不育症は、免疫だけでなく、血流、自律神経、冷え、胃腸の働き、睡眠、ストレスなど、身体全体の状態も関係していることがあります。

宇都宮鍼灸良導絡院では、妊活・不妊治療中の方のお身体の状態を丁寧に確認しながら、採卵・移植・妊娠継続に向けた体づくりをサポートしています。

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