
夜勤を続けながら妊活・妊娠初期を過ごす方へ|流産リスクと睡眠・勤務の工夫
看護師や介護職、医療職、工場勤務など、妊活中も夜勤を続けなければならない方は少なくありません。
妊娠を希望している方や妊娠が分かったばかりの方のなかには、
「夜勤を続けていると妊娠しにくくなるのでは?」
「夜勤をしたことで流産したらどうしよう」
「妊娠が分かったら、すぐに夜勤をやめるべき?」
と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
夜勤や交代勤務と流産との間には、一定の関連を示した研究があります。ただし、夜勤をしたから流産する、夜勤をやめれば必ず流産を防げるという意味ではありません。
この記事では、夜勤と流産リスクに関する研究の捉え方と、夜勤を続けながら妊活・妊娠初期を過ごす場合の勤務や睡眠の工夫について解説します。
- 夜勤や交代勤務と流産との関連を示す研究はありますが、夜勤だけが原因とは断定できません。
- 研究で示されているリスクの上昇は、全員が流産するという意味ではありません。
- 妊活中は、夜勤を完全になくすことよりも、睡眠不足や疲労をため込まない工夫が大切です。
- 妊娠中は、本人が請求した場合、時間外労働・休日労働・深夜業の免除を受けられる制度があります。
- 出血や強い腹痛などがある場合は、勤務を続けず、産婦人科へ相談してください。
夜勤をすると流産しやすくなる?
夜勤と流産の「関連」を示す研究はある
夜勤、交代勤務、長時間労働と妊娠経過については、これまでに複数の研究が行われています。
過去の研究をまとめたシステマティックレビューやメタ解析では、固定夜勤や交代勤務に就いている妊婦は、日勤のみの妊婦と比べて流産などの妊娠転帰がわずかに増える可能性が報告されています。[1][2]
夜間に働くことで体内時計と生活時間にずれが生じやすくなり、睡眠時間の短縮、睡眠の質の低下、疲労の蓄積などが重なることが背景として考えられています。[3]
「関連がある」と「夜勤が原因」は同じではない
夜勤と流産に関する研究の多くは、勤務状況と妊娠経過を観察した研究です。
夜勤をしている方は、勤務時間だけでなく、睡眠時間、仕事内容、立ち仕事、重量物の取り扱い、心理的な負担、年齢、基礎疾患などの条件も異なります。
そのため、研究結果だけから「夜勤が流産の直接的な原因」と断定することはできません。専門家の見解でも、夜勤による流産リスクの上昇があるとしても、小さいまたは中程度であり、研究上の偏りやほかの要因の影響も考慮する必要があるとされています。[2]
一度の夜勤で妊娠の結果が決まるわけではない
「妊娠に気づかず夜勤をしてしまった」「胚移植後に夜勤が入っていた」と、自分を責める必要はありません。
妊娠初期の流産には、胚の染色体の問題など、本人の行動だけでは避けられない要因が大きく関係します。一般的な仕事や運動、日常生活上のストレスが、そのまま流産の原因になるわけではありません。[4]
夜勤をした事実だけで妊娠の結果が決まるわけではないため、過度に不安にならず、これからの勤務や休息について考えていきましょう。
妊活中と妊娠初期では考え方が異なる
妊活中は睡眠不足をため込まないことを優先する
夜勤や交代勤務は、月経周期の乱れと関連する可能性が報告されています。一方、夜勤が不妊の直接的な原因になるかについては、研究結果が一貫しているわけではありません。[5]
妊活中は「毎日同じ時間に眠らなければいけない」と考えすぎるよりも、次のような状態を避けることを優先しましょう。
- 夜勤明けにも予定を詰め込み、ほとんど眠らない
- 休日に無理に早起きして、慢性的な睡眠不足になる
- 眠気を抑えるため、カフェインやエナジードリンクを大量にとる
- 連続夜勤のあとも十分な休息をとれない
- 月経不順や体調不良が続いているのに我慢する
勤務時間そのものだけでなく、勤務後にどのくらい休めているか、睡眠で疲れが取れているかも確認してみてください。
妊娠が分かったら勤務内容を主治医に伝える
妊娠が分かったら、初回の診察時に夜勤があることを産婦人科へ伝えましょう。
特に、次のような勤務条件がある場合は、夜勤の回数や勤務内容を具体的に伝えることが大切です。
- 連続して夜勤に入ることがある
- 夜勤が週に何度もある
- 勤務時間が長く、残業が多い
- 長時間の立ち仕事がある
- 患者さまの移乗など、身体に力を入れる仕事が多い
- 休憩や仮眠を取りにくい
- 過去に流産や切迫流産を経験している
勤務を続けてよいかどうかは、妊娠週数、出血や腹痛の有無、これまでの妊娠歴、持病、仕事内容などを含めて個別に判断します。
妊娠中は夜勤の免除を申し出ることができる
日本では、妊娠中および産後1年を経過していない女性が請求した場合、事業主は時間外労働、休日労働、深夜業をさせることができません。
ここでいう深夜業とは、午後10時から午前5時までの勤務です。労働基準法第66条に定められており、本人からの請求が必要です。[6]
「妊娠したら自動的に夜勤がなくなる」とは限らないため、必要な場合は早めに上司や人事担当者へ相談しましょう。
母健連絡カードを利用できることもある
医師から、夜勤の免除、勤務時間の短縮、休憩時間の延長、通勤緩和、休業などの指導を受けた場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用できます。
主治医が記載した内容を職場へ提出することで、必要な配慮を伝えやすくなります。事業主は、カードに記載された指導内容に応じた措置を講じる必要があります。[7]
口頭では勤務変更を相談しにくい場合や、体調についてどこまで説明すればよいか迷う場合にも活用できます。
夜勤を続ける場合の睡眠の工夫
1.24時間のなかで睡眠時間を確保する
夜勤明けの睡眠は、日中の光や生活音の影響を受けるため、夜間の睡眠より短くなりやすい傾向があります。
一度に長く眠れない場合は、夜勤前後の仮眠も含め、24時間のなかで睡眠時間を確保するようにしましょう。
遮光カーテン、アイマスク、耳栓などを利用し、家族にも休む時間を伝えておくと、日中でも睡眠環境を整えやすくなります。
2.夜勤前や夜勤中に短い仮眠をとる
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、夜勤中に20~50分程度の仮眠をとることで、眠気、疲労、仕事の効率が改善する可能性が示されています。[3]
長く眠りすぎると、起きた直後に強い眠気やぼんやり感が残ることがあります。職場で仮眠が認められている場合は、休憩時間内に無理のない範囲で取り入れましょう。
3.夜勤明けの予定を詰め込みすぎない
夜勤明けに買い物、通院、家事、外出などを続けて入れると、睡眠時間が削られてしまいます。
不妊治療中は通院日が増えやすいため、可能であれば夜勤明けではない日に予約する、家事を家族と分担するなど、睡眠時間を守る工夫をしてみましょう。
夜勤明けの強い眠気がある状態での運転にも注意が必要です。
4.光の使い方を勤務回数に合わせる
光は体内時計を調節する大きな要素です。ただし、夜勤の頻度によって適切な対応は異なります。
週に1~2回程度の夜勤で、普段は日勤中心の場合は、体内時計を完全に夜型へ変えようとせず、日勤日の生活リズムを大きく崩さない方法もあります。
一方、夜勤が頻繁に続く方が無理に日勤のリズムへ戻そうとすると、かえって睡眠不足になる場合があります。体調や勤務形態に合わせて調整してください。[3]
5.カフェインの摂取時間と量を確認する
カフェインは夜勤中の眠気を軽減することがありますが、勤務の後半に多くとると、帰宅後の睡眠を妨げる可能性があります。
コーヒーだけでなく、緑茶、紅茶、エナジードリンクなどにもカフェインが含まれます。
妊娠中のカフェインについては、海外の産婦人科ガイドラインでは1日200mg未満が一つの目安とされています。飲料によって含有量が異なるため、商品表示を確認し、心配な場合は主治医に相談してください。[8]
6.食事を抜きすぎない
忙しい夜勤中に食事を抜き、勤務後にまとめて食べると、胃腸への負担や睡眠の妨げにつながることがあります。
おにぎり、スープ、卵、豆腐、ヨーグルトなど、食べやすいものを準備し、一度に食べすぎないようにしましょう。
妊娠初期につわりがある場合は、食べられるものを少量ずつとり、水分がとれないほど症状が強い場合は産婦人科へ相談してください。
夜勤を続けている方には、「毎日同じ時間に寝なければ」と無理をするよりも、夜勤明けに予定を詰め込みすぎず、24時間の中で睡眠時間を確保することをお伝えしています。冷えが気になる場合も、厚着や温めすぎを一律に勧めるのではなく、身体が不快にならない範囲で調整することが大切です。
当院では、睡眠、疲労、ストレス、首肩の緊張、手足の冷え、月経周期などを伺い、良導絡測定による自律神経の傾向や、東洋医学的な体質の見方も参考にしながら施術方針を考えています。鍼灸は流産を予防するものではありませんが、夜勤に伴う疲れや緊張などに向き合うための補助的なケアとして取り入れることができます。
夜勤の調整を相談したほうがよい状態
次のような状態がある場合は、無理に勤務を続けず、産婦人科や勤務先へ相談しましょう。
- 妊娠中に性器出血がある
- 強い腹痛や繰り返す腹痛がある
- めまい、ふらつき、失神しそうな感覚がある
- 発熱や強い体調不良がある
- 水分や食事をほとんどとれない
- 医師から安静や勤務制限を指示されている
- 夜勤後も眠れず、日常生活に支障が出ている
- 勤務中の眠気が強く、安全に仕事を続けることが難しい
妊娠中の出血や腹痛は、必ずしも流産を意味するものではありません。しかし、妊娠経過の確認が必要になることがあるため、自己判断だけで様子を見続けないようにしてください。[9]
妊娠に気づかず夜勤をしていました。大丈夫でしょうか?
妊娠に気づく前に夜勤をしていたことだけで、流産すると決まるわけではありません。ご自身を責めず、妊娠が分かった時点で勤務状況を主治医へ伝えてください。
妊娠が分かったら、すぐに夜勤をやめるべきですか?
すべての妊婦が直ちに夜勤をやめなければならないという一律の基準はありません。
出血や腹痛の有無、過去の妊娠歴、持病、夜勤の回数、仕事内容、休憩の取りやすさなどによって判断が異なります。夜勤が心配な場合は、主治医と職場の双方へ早めに相談しましょう。
胚移植後に夜勤があります。休んだほうがよいですか?
胚移植後の勤務については、治療を受けているクリニックの指示を優先してください。
一度の夜勤によって着床や妊娠の結果が決まるとはいえませんが、長時間労働や睡眠不足、身体的な負担が強い勤務の場合は、事前に勤務変更が可能か相談しておくと安心です。
夜勤をやめられない場合、妊活を休むべきでしょうか?
夜勤をしているという理由だけで、妊活を諦めたり休んだりする必要はありません。
勤務回数、睡眠、月経周期、治療内容などを確認し、現在の生活のなかで続けられる方法を考えることが大切です。月経不順や強い疲労が続く場合は、婦人科や不妊治療クリニックへ相談しましょう。
まとめ
夜勤や交代勤務と流産との関連を示した研究はありますが、夜勤をしたから流産するという単純な関係ではありません。
妊活中や妊娠初期に大切なのは、夜勤をしている自分を責めることではなく、睡眠不足や疲労をできるだけ減らし、体調の変化を見逃さないことです。
妊娠が分かった後は、夜勤の回数や仕事内容を主治医へ伝えましょう。必要に応じて、深夜業の免除や母健連絡カードなどの制度も利用できます。
一人で無理を重ねず、医療機関、勤務先、家族などに相談しながら、続けられる働き方を探していきましょう。
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📚参考文献
- [1]Cai C, et al. The impact of occupational shift work and working hours during pregnancy on health outcomes: a systematic review and meta-analysis. American Journal of Obstetrics and Gynecology. 2019.
夜勤・交代勤務・長時間労働と、流産や早産などの妊娠転帰との関連を検討したシステマティックレビュー・メタ解析。 - [2]American College of Obstetricians and Gynecologists. Employment Considerations During Pregnancy and the Postpartum Period.
妊娠中・産後の就労について、夜勤、長時間労働、立ち仕事、重量物の取り扱いなどの研究と勤務上の配慮をまとめた指針。 - [3]厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
交代勤務や夜勤に伴う睡眠の問題、仮眠、光、カフェインなど、良質な睡眠を確保するための考え方をまとめた資料。 - [4]American College of Obstetricians and Gynecologists. Early Pregnancy Loss.
妊娠初期の流産について、主な原因、症状、診断、治療などを解説した患者向け資料。 - [5]Stocker LJ, et al. Influence of shift work on early reproductive outcomes: a systematic review and meta-analysis. Obstetrics & Gynecology. 2014.
交代勤務と月経周期の乱れ、不妊、妊娠初期の流産との関連を検討したシステマティックレビュー・メタ解析。 - [6]厚生労働省「妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限」
妊産婦が請求した場合に受けられる、時間外労働・休日労働・深夜業の制限について解説した資料。 - [7]厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」
妊娠中や産後に医師から受けた勤務上の指導を職場へ伝え、必要な措置を申し出るための制度とカードの利用方法。 - [8]American College of Obstetricians and Gynecologists. Moderate Caffeine Consumption During Pregnancy.
妊娠中のカフェイン摂取量と、流産や早産などの妊娠経過との関連についてまとめた指針。 - [9]American College of Obstetricians and Gynecologists. Bleeding During Pregnancy.
妊娠中に起こる出血の主な原因と、医療機関へ相談する必要がある症状について解説した患者向け資料。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
夜勤を続けながらの妊活に、不安を抱えていませんか?
夜勤や不規則な勤務が続くと、睡眠不足や疲れが重なり、「このまま妊活を続けて大丈夫かな」と心配になることもあると思います。
夜勤をしていることだけで妊娠の結果が決まるわけではありません。まずは勤務状況や睡眠、月経周期、治療の予定などを整理し、今の生活の中で無理なく整えられることを考えていくことが大切です。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、妊活中の夜勤や睡眠、疲労、冷え、肩こり、自律神経の乱れなどのお悩みを伺いながら、お身体の状態に合わせた鍼灸をご提案しています。
仕事を続けながらの妊活について、一人で抱え込まず、できることから一緒に整理してみませんか。気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください🍀








当院では、夜勤のある方から「仕事を続けながら妊活しても大丈夫でしょうか」「夜勤をしていることが妊娠に影響しないか心配です」と相談されることがあります。夜勤をしているという理由だけで、ご自身を責めたり、すぐに仕事を辞めなければならないと考えたりする必要はありません。
まずは、夜勤の回数や連続勤務の有無、夜勤明けに眠れているか、月経周期に乱れがないかを一緒に確認します。出血や強い腹痛がある場合、月経不順が続く場合、妊娠後の勤務に不安がある場合は、鍼灸だけで判断せず、婦人科や不妊治療クリニックへ相談することも大切です。