
オキシトシンとは?妊娠・妊活・精子との関係をわかりやすく解説
「オキシトシン」という言葉を聞いたことはありますか?
オキシトシンは、一般的に「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」と呼ばれることがあります。
妊娠・出産・授乳に関わるホルモンとして知られている一方で、近年ではストレスや安心感、人とのつながりにも関係するホルモンとして注目されています。
妊活中の方の中には、「オキシトシンが増えると妊娠しやすくなるの?」「スキンシップは妊活に良いの?」「精子にも関係があるの?」と気になる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、オキシトシンの基本的な働きと、妊娠・妊活・精子との関係について、医学的にわかっている範囲でわかりやすく解説します。
- オキシトシンは、分娩や授乳に関わる「生殖のホルモン」です。
- 安心感や人とのつながりにも関係するため、「幸せホルモン」と呼ばれることがあります。
- 妊活では、オキシトシンを無理に増やすことより、安心できる環境づくりが大切です。
- 体外受精や胚移植では、子宮収縮との関係から研究されていますが、すべての方に必要な治療ではありません。
- 精子との関係も研究されていますが、現時点では「オキシトシンで精子が良くなる」と断定できる段階ではありません。


目次
オキシトシンとはどんなホルモン?
オキシトシンは、脳の視床下部で作られ、下垂体後葉から分泌されるホルモンです。
もともとは、分娩時の子宮収縮や、授乳時に母乳を押し出す「射乳反射」に関わるホルモンとして知られてきました。
実際に、オキシトシンは子宮の筋肉を収縮させ、陣痛や分娩の進行に関係します。また、授乳時には赤ちゃんが乳頭を吸う刺激によってオキシトシンが分泌され、母乳が出やすくなります。
そのため、オキシトシンは「生殖に関わるホルモン」として長く研究されてきました。
一方で、近年では脳や神経への働きも注目されており、人との信頼関係、安心感、ストレス反応の調整にも関わる可能性があると考えられています。
なぜ「幸せホルモン」と呼ばれるの?
オキシトシンが「幸せホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれるのは、安心できる人との関わりや、心地よい触れ合いと関係しているためです。
たとえば、信頼できる人に話を聞いてもらう、手をつなぐ、抱きしめる、やさしく触れられるといった場面では、心が落ち着いたり、安心感を感じたりすることがあります。
研究では、社会的なサポートとオキシトシンが組み合わさることで、ストレス時のコルチゾール反応や不安感が抑えられる可能性が示されています。
つまり、オキシトシンは単に「気分を良くするホルモン」というより、安心できる関係性の中で、ストレスをやわらげる方向に働きやすいホルモンと考えるとわかりやすいです。
オキシトシンはスキンシップで増える?
オキシトシンは、心地よい身体接触やスキンシップと関係が深いとされています。
やさしいマッサージ、抱擁、手をつなぐ、ペットとの触れ合いなどは、安心感やリラックスと結びつきやすい行動です。
また、性的興奮やオルガスムの際に血中オキシトシンが上昇することも報告されています。これは、子宮や精管などの平滑筋の収縮に関係している可能性があります。
ただし、大切なのは「心地よい」と感じられることです。
無理なスキンシップや、気持ちがついていかない接触は、かえってストレスになることもあります。妊活中は「良いと聞いたからやらなければ」と考えすぎず、安心できる範囲で取り入れることが大切です。
オキシトシンは「万能な幸せホルモン」ではない
オキシトシンは、よく「幸せホルモン」と表現されますが、実際にはそれほど単純な働きではありません。
近年の研究では、オキシトシンは社会的な情報を目立ちやすくする、いわば「社会的なサインへの感度を高めるホルモン」と考えられています。
そのため、安心できる人との関係では信頼感や絆を深める方向に働くことがありますが、状況によっては不安や警戒心、内集団への偏りなどが強まる可能性も指摘されています。
つまり、オキシトシンは「増えれば増えるほど良い」というものではありません。
どのような環境で、誰と、どのような気持ちで過ごすかが大切です。
オキシトシンと妊娠の関係
オキシトシンは、妊娠・出産・授乳に深く関わるホルモンです。
特に出産時には、子宮を収縮させることで陣痛や分娩の進行に関わります。医療現場では、分娩誘発や分娩促進、産後出血の管理などに医療用オキシトシンが用いられることがあります。
ただし、これは医師の管理下で使用される薬剤です。
「オキシトシンは妊娠に関係するホルモンだから、自分で増やせば妊娠率が上がる」と考えるのは注意が必要です。
現時点では、オキシトシンを増やせば妊娠しやすくなると断定できる段階ではありません。
オキシトシンと妊活の関係
妊活においてオキシトシンが注目される理由のひとつは、ストレスとの関係です。
妊活中は、通院、検査、治療結果への不安、仕事との両立、周囲との関係など、心身に負担がかかりやすい時期です。
強いストレスが続くと、睡眠の質が下がったり、食事が乱れたり、身体が緊張しやすくなったりすることがあります。
オキシトシンは、安心できる人との関わりや社会的サポートの中で、ストレス反応をやわらげる方向に働く可能性があります。
その意味では、妊活中に大切なのは「オキシトシンを無理に増やすこと」ではなく、安心できる環境や、心がゆるむ時間をつくることです。
体外受精・胚移植とオキシトシン
オキシトシンは、子宮の収縮にも関係しています。
子宮にはオキシトシン受容体があり、オキシトシンの作用によって子宮の動きが高まることがあります。
体外受精の胚移植では、子宮の過度な収縮が着床に影響する可能性があると考えられており、オキシトシンの働きを抑える薬である「アトシバン」が研究されています。
反復着床不成功の方を対象とした研究では、アトシバンの使用によって妊娠成績が改善する可能性が示された報告があります。
一方で、すべての方に有効と断定できるわけではなく、研究結果にはばらつきがあります。
そのため、アトシバンの使用については、自己判断ではなく、生殖医療の専門医と相談することが大切です。
オキシトシンと精子の関係
「精子と幸せホルモンは関係あるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
近年、ヒト精子においてオキシトシン受容体などの関連が研究されており、精子の運動性との関係が示唆されています。
ただし、現時点では基礎研究や観察研究の段階であり、オキシトシンを増やせば精子の質が改善するとまでは言えません。
男性不妊においては、精液検査、ホルモン検査、生活習慣、精索静脈瘤の有無、喫煙、睡眠、栄養、酸化ストレスなど、さまざまな要因を総合的に見ていく必要があります。
オキシトシンは興味深い研究テーマではありますが、現時点では「男性不妊の治療法」として考えるより、今後の研究が期待される分野と捉えるのがよいでしょう。
妊活中にできるオキシトシンを味方にする工夫
オキシトシンを「薬のように増やす」と考えるより、安心感やリラックスを得られる生活習慣を整えることが大切です。
安心できるスキンシップを大切にする
手をつなぐ、抱きしめる、背中をさする、やさしくマッサージを受けるなど、心地よい触れ合いは安心感につながります。
ただし、無理に行う必要はありません。
「自分が安心できる」「心地よい」と感じられる範囲で取り入れましょう。
信頼できる人に話す時間をつくる
妊活中の不安は、一人で抱え込むほど大きくなりやすいものです。
パートナー、家族、友人、医療者、カウンセラーなど、安心して話せる相手に気持ちを共有することも大切です。
話すことで問題がすぐ解決しなくても、「わかってもらえた」と感じるだけで、心が少し軽くなることがあります。
ペットや自然との触れ合いを取り入れる
ペットとの触れ合いや、穏やかな時間を過ごすことも、安心感につながります。
犬と飼い主のアイコンタクトや触れ合いによって、双方のオキシトシンが高まる可能性を示した研究もあります。
身体の緊張をゆるめる時間を持つ
妊活中は、知らないうちに肩や首、お腹、腰まわりに力が入りやすくなります。
深呼吸、入浴、軽いストレッチ、鍼灸、マッサージなど、自分に合った方法で身体をゆるめる時間をつくることも、心身のリラックスにつながります。
医療用オキシトシンの自己判断使用は避ける
医療用オキシトシンは、分娩誘発や産後出血の管理など、医療現場で慎重に使われる薬剤です。
妊活や妊娠率向上を目的に、自己判断で使用するものではありません。
サプリメントや点鼻薬などの情報を見かけた場合も、必ず医師に相談しましょう。
オキシトシンは、分娩や授乳に関わる「生殖のホルモン」であり、安心感や人とのつながりにも関係するホルモンです。
そのため「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、実際には単純に幸福感を高めるだけのホルモンではありません。
妊活においては、オキシトシンそのものを増やすことよりも、安心できる人間関係、心地よいスキンシップ、ストレスを抱え込みすぎない環境づくりが大切です。
また、体外受精や胚移植においては、子宮収縮との関係からオキシトシンの働きを抑える薬が研究されていますが、すべての方に必要なものではありません。
精子との関係についても研究は進んでいますが、現時点では「オキシトシンで精子が良くなる」と断定できる段階ではありません。
妊活中は、情報に振り回されすぎず、医学的にわかっていることと、まだ研究段階のことを分けて考えることが大切です。
Q1. オキシトシンが増えると妊娠しやすくなりますか?
現時点では、オキシトシンが増えることで妊娠率が上がるとは断定できません。
オキシトシンは安心感やストレス緩和に関わる可能性がありますが、妊娠には卵子・精子・子宮環境・ホルモンバランス・年齢・治療状況など、さまざまな要因が関係します。
妊活中は「オキシトシンを増やすこと」だけにこだわるのではなく、睡眠、食事、ストレスケア、医療機関での検査や治療をバランスよく考えることが大切です。
Q2. オキシトシンは「幸せホルモン」なので、たくさん出した方が良いですか?
オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、多ければ多いほど良いという単純なホルモンではありません。
安心できる関係性や心地よい触れ合いの中では、リラックスや信頼感と関係する可能性があります。一方で、状況や人間関係によって働き方が変わることもあります。
大切なのは、無理にオキシトシンを増やそうとすることではなく、自分が安心できる環境を整えることです。
Q3. スキンシップは妊活に良い影響がありますか?
心地よいスキンシップは、安心感やリラックスにつながることがあります。
手をつなぐ、抱きしめる、やさしくマッサージを受けるなど、自分が心地よいと感じる触れ合いは、妊活中のストレスケアの一つとして役立つ可能性があります。
ただし、気持ちがついていかないスキンシップは、かえって負担になることもあります。妊活のために無理をするのではなく、安心できる範囲で取り入れることが大切です。
Q4. オキシトシンは精子の質にも関係しますか?
オキシトシンと精子の運動性との関係を示唆する研究はありますが、現時点ではまだ研究段階です。
そのため、オキシトシンを増やせば精子の質が良くなるとは言えません。
精子の状態には、睡眠、喫煙、飲酒、栄養、酸化ストレス、精索静脈瘤、ホルモン状態など多くの要因が関係します。気になる場合は、まず泌尿器科や不妊専門クリニックで精液検査を受けることが大切です。
Q5. 医療用オキシトシンやアトシバンは妊活で使った方が良いですか?
医療用オキシトシンやアトシバンは、医師の管理下で使用される薬です。
オキシトシンは分娩誘発や分娩促進などで使われることがあり、アトシバンは子宮収縮を抑える目的で研究・使用されることがあります。
ただし、妊活中のすべての方に必要なものではありません。体外受精や胚移植に関わる薬の使用については、必ず生殖医療の専門医に相談しましょう。
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📚参考文献
- Endocrine Society. Brain Hormones.
- Patel H, et al. Physiology, Posterior Pituitary. StatPearls. NCBI Bookshelf.
- Osilla EV, et al. Oxytocin. StatPearls. NCBI Bookshelf.
- Heinrichs M, et al. Social support and oxytocin interact to suppress cortisol and subjective responses to psychosocial stress. Biological Psychiatry. 2003.
- Shamay-Tsoory SG, Abu-Akel A. The Social Salience Hypothesis of Oxytocin. Biological Psychiatry. 2016.
- Carmichael MS, et al. Plasma oxytocin increases in the human sexual response. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 1987.
- Wang R, et al. Efficacy of atosiban for repeated embryo implantation failure. Frontiers in Endocrinology. 2023.
- Li X, et al. Efficacy of atosiban for repeated implantation failure in frozen embryo transfer. Frontiers in Endocrinology. 2023.
- Lymperi S, et al. Oxytocin preprotein and oxytocin receptor mRNA expression in spermatozoa. Reproductive BioMedicine Online. 2023.
- Stadler B, et al. Oxytocin in the Male Reproductive Tract. International Journal of Molecular Sciences. 2020.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊活中のストレスや身体の緊張が気になる方へ
妊活中は、通院や治療結果への不安、仕事との両立などで、気づかないうちに心身が緊張しやすくなります。
オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、妊活において大切なのは、ホルモンを無理に増やそうとすることではなく、安心できる環境の中で、心と身体をゆるめる時間を持つことです。
宇都宮鍼灸良導絡院では、妊活中の方のお身体の状態や治療状況をお伺いしながら、自律神経の乱れ、冷え、首肩こり、睡眠の質、ストレスによる緊張などを含めて、東洋医学と西洋医学の両面から体質づくりをサポートしています。
「妊活中の不安が強い」「身体がいつも緊張している」「移植や採卵に向けて体調を整えたい」と感じている方は、無理に一人で抱え込まず、一度ご相談ください。
ご自身のペースで妊活を続けていくために、心身を整える時間を持つことも、体質改善への大切な一歩です🍀







