
採卵前の点鼻薬を忘れた・時間がずれたら?スプレキュア・ブセレリンと採卵への影響
採卵前にクリニックから「○時に点鼻してください」と時間を指定され、
- 「点鼻薬をするのを忘れてしまった」
- 「指定された時間より30分・1時間ずれてしまった」
- 「スプレキュアをちゃんと点鼻できたか分からない」
- 「片方の鼻に入ったか自信がない」
- 「時間を間違えたら採卵できなくなる?」
と不安になる方は少なくありません。
採卵前に使う点鼻薬の中には、採卵に向けて卵子の最終成熟を促す「トリガー」として使用されるものがあります。
この場合、投与する時刻は採卵時刻から逆算して決められているため、普段の薬以上にタイミングが重要です。
結論からいうと、採卵前のトリガーとして指示された点鼻薬を忘れた、時間が大きくずれた、必要な回数を使用できたか分からない場合は、気づいた時点で採卵を予定しているクリニックへ連絡することが大切です。
自己判断で追加点鼻したり、「1時間くらいなら大丈夫だろう」と判断したりせず、指示を確認しましょう。
- 採卵前の点鼻薬は、卵子の最終成熟を促す「トリガー」として使われることがあります。
- ブセレリン製剤では、卵胞成熟を目的とする場合、通常は採卵の34~36時間前に使用します。
- トリガーの時間は採卵予定時刻から逆算されているため、指定時刻を守ることが重要です。
- 点鼻を忘れた場合は、自己判断で追加せず、気づいた時点で採卵予定のクリニックへ連絡しましょう。
- 「30分なら大丈夫」「1時間なら採卵に影響しない」という全員共通の基準はありません。
- 点鼻できたか分からない場合や、回数・左右を間違えた場合もクリニックへ確認しましょう。
- 時間がずれたからといって必ず採卵中止になるわけではなく、状況に応じて医療機関が対応を判断します。
採卵前の点鼻薬は何のために使う?
体外受精・顕微授精の採卵周期では、採卵の直前に「トリガー」と呼ばれる薬を使用します。
トリガーは、育ってきた卵胞の中にある卵子に最終的な成熟を促すための重要な薬です。
トリガーには、
- GnRHアゴニスト点鼻薬
- hCG製剤
- GnRHアゴニストとhCGを組み合わせる方法
などがあり、卵巣刺激法や卵胞数、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクなどによって使い分けられます。
日本では、ブセレリンを成分とするスプレキュア点鼻液やブセレリン点鼻液が、採卵前の卵胞成熟を目的として使用されることがあります。
なぜ採卵前の点鼻薬は時間指定が厳しいの?
採卵前のトリガーは、「今日中に使ってください」というような大まかな指定ではなく、
「22時に点鼻してください」
など、具体的な時刻を指定されることが多くあります。
その理由は、トリガーを使用してから卵子が成熟するまでに一定の時間が必要だからです。
ブセレリン点鼻液の添付文書では、生殖補助医療における卵胞成熟を目的とする場合、通常、採卵の34~36時間前に使用することが示されています。
つまり、例えば採卵が午前9時に予定されていれば、その採卵時刻から逆算して点鼻時刻が決められています。
この時間関係は、卵子が十分に成熟した状態で採卵しつつ、自然に排卵してしまう前に採卵するために重要です。
点鼻薬を忘れたらどうしたらいい?
採卵前のトリガーとして指示された点鼻薬を忘れたことに気づいた場合は、できるだけ早く採卵を予定しているクリニックへ連絡してください。
このとき、
- 本来の点鼻予定時刻
- 気づいた時刻
- 何回分を忘れたか
- すでに一部は点鼻したか
- 採卵予定日時
を伝えられるようにしておくと、状況が伝わりやすくなります。
点鼻を忘れたからといって、必ず採卵が中止になるわけではありません。
どの程度時間が経過したか、どの薬を使用しているか、採卵予定時刻などによって、医療機関がその後の対応を判断します。
忘れた分をすぐ追加で点鼻すればいい?
「忘れたことに気づいたから、すぐ多めに点鼻しておけばいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、自己判断で回数や量を増やすことは避けてください。
ブセレリンの患者向医薬品ガイドでも、自己判断で使用を中止したり、量を加減したりすると、本来の効果が得られない場合があるため、指示どおりに使用することが重要とされています。
特に採卵前のトリガーは、採卵時刻との関係を考えて投与されています。
追加が必要なのか、今から使用してよいのか、採卵時刻を変更する必要があるのかは、クリニックの判断を確認しましょう。
30分・1時間ずれたら採卵に影響する?
検索されることが多いのが、
- 「点鼻が30分遅れた」
- 「1時間早くしてしまった」
- 「2時間遅れて気づいた」
といった時間のずれです。
しかし、「○分までなら大丈夫」という、すべての採卵周期に共通する基準はありません。
採卵までの時間、使用したトリガーの種類、卵胞の発育状況などによって判断が変わるためです。
研究でも、トリガーから採卵までの時間と成熟卵の採取数との関連が検討されています。
そのため、「ネットでは1時間くらい大丈夫と書いてあったから」と自己判断するのではなく、実際の投与時刻をクリニックへ伝えることが重要です。
時間が早すぎるとどうなる?
トリガーを予定よりかなり早く使用すると、採卵までの時間が予定より長くなります。
卵胞成熟には一定の時間が必要ですが、採卵までの間隔が長くなりすぎると、採卵前に排卵が進んでしまう可能性も考慮する必要があります。
ただし、数十分のずれがどの程度影響するかは個々の治療条件によって異なります。
予定より早く使用した場合も、実際に使用した時刻を正確に伝えましょう。
時間が遅すぎると未熟卵が増える?
逆に点鼻が大きく遅れた場合、採卵までの時間が短くなります。
採卵時点で最終成熟が十分に進んでいない場合には、成熟卵(MII卵)が得られにくくなる可能性があります。
採卵前トリガーから採卵までの間隔について調べた研究でも、この時間が成熟卵の採取数に関連する可能性が報告されています。
ただし、「1時間遅れたら必ず未熟卵になる」という意味ではありません。
実際の対応は、予定している採卵時刻や薬剤、卵胞の状態などをもとに医療機関が判断します。
スプレキュア・ブセレリンは何回点鼻する?
ブセレリン製剤を生殖補助医療における卵胞成熟のために使用する場合、添付文書では、
左右の鼻腔にそれぞれ1噴霧することを1回とし、通常は採卵の34~36時間前に2回投与する
とされています。
ただし、患者さんの反応によって1~4回の範囲で調節されることがあります。
そのため、
- 左右に何回ずつ使用するか
- 何時と何時に使用するか
- 何分間隔を空けるか
については、必ず処方したクリニックからの指示を優先してください。
「1回目はしたけど2回目を忘れた」場合は?
トリガーとして複数回の点鼻を指示されている場合、「1回目はできたけれど2回目を忘れた」ということもあります。
この場合も、自己判断で「今から2回分まとめて使う」とはせず、クリニックへ連絡してください。
一部は使用できていること、本来の1回目と2回目の予定時刻、実際に使用した時刻を伝えます。
必要な対応は治療内容によって異なります。
片方の鼻にしか点鼻できなかった場合は?
「左右に1回ずつと言われたのに、片方にしか入らなかった気がする」というケースもあります。
ブセレリン製剤では左右の鼻腔への噴霧が指示されています。
必要な量を投与できたか分からない場合は、確認せず追加でもう一度噴霧するのではなく、クリニックへ問い合わせましょう。
点鼻回数を正確に覚えていない場合も、そのことをそのまま伝えて問題ありません。
ちゃんと鼻に入ったか分からない場合は?
点鼻したあとに、
- 薬液が鼻から流れてきた
- のどに流れた感じがした
- 噴霧された感覚がほとんどなかった
- 押したけれど薬液が出たか分からない
と不安になることもあります。
この場合も「念のためもう1回」と自己判断で追加せず、必要量を使用できたか分からないことをクリニックへ伝えましょう。
特にトリガーとして使用している場合は、投与量・時刻が重要なため、迷ったときに確認することが大切です。
点鼻した直後にくしゃみをしたら?
点鼻後すぐにくしゃみが出たり、鼻水が出たりして、「薬まで全部出てしまったのでは」と心配になることがあります。
実際にどの程度薬剤が鼻腔内に残り、吸収されたかをご自身で判断するのは困難です。
そのため、トリガーとしての点鼻直後に強くくしゃみをした、薬液がほとんど外へ出たように感じるなど、十分に投与できたか不安がある場合は処方元へ確認してください。
追加の点鼻が必要かどうかを自己判断するのは避けましょう。
点鼻薬以外に注射も指示されている場合は?
採卵周期によっては、GnRHアゴニストの点鼻薬だけでなく、hCG注射などを組み合わせる「デュアルトリガー」が選択されることがあります。
この場合、「点鼻はできたけれど注射を忘れた」「注射はできたけれど点鼻を忘れた」というケースでは、片方だけ使用できているから問題ないとは判断できません。
それぞれの薬には目的があり、処方された組み合わせを前提に採卵計画が組まれています。
どちらかを忘れた場合は、使用できた薬・使用できなかった薬・それぞれの時刻をクリニックへ伝えてください。
点鼻薬を忘れると空胞になる?
採卵前の点鼻薬を忘れたことで、「全部空胞になるのでは?」と不安になる方もいます。
採卵で卵子が回収できない原因は一つではなく、卵胞数、卵巣反応、卵子の成熟状態、トリガーへの反応など複数の要素が関係します。
そのため、点鼻時間がずれたことだけを理由に、「必ず空胞になる」と考えることはできません。
一方、最終卵胞成熟のためのトリガーが十分に作用しなければ、採卵結果に影響する可能性があるため、忘れたことに気づいた段階で早めに医療機関へ連絡することが重要です。
なぜGnRHアゴニストの点鼻薬を使うことがあるの?
GnRHアゴニストによるトリガーは、体内から一時的にLH・FSHの分泌を促し、卵子の最終成熟を誘導します。
また、GnRHアンタゴニスト法で卵巣刺激をしている場合、OHSSのリスクを下げる目的でGnRHアゴニストトリガーが選択されることがあります。
ASRMのガイドラインでも、中等度~重症OHSSのリスクを減らす方法として、GnRHアゴニストトリガーが推奨されています。
ただし、どのトリガーが適しているかは、卵胞数、ホルモン値、刺激法、新鮮胚移植を行うかどうかなどによって異なります。
点鼻薬には「排卵を防ぐ目的」で使う場合もある
注意したいのは、同じブセレリン点鼻薬でも、必ずしも採卵前のトリガーとして使用されるとは限らないことです。
ブセレリンには、
- 採卵前に卵胞成熟を促す目的
- 卵巣刺激中の早発排卵を防ぐ目的
の両方があります。
そのため、「点鼻薬を忘れた」といっても、どの目的で使用している薬なのかによって対応が異なります。
この記事では主に採卵直前のトリガーとしての使用について解説しています。日常的に複数回使用している点鼻薬を忘れた場合も、処方したクリニックの指示を確認してください。
忘れないためにできる工夫
採卵前のトリガーは夜間に指定されることもあり、普段の薬と時間が違うため、うっかり忘れてしまうことがあります。
次のような方法を準備しておくと安心です。
- スマートフォンのアラームを複数設定する
- 予定時刻の10~15分前にもアラームを設定する
- 点鼻薬を見える場所に準備しておく
- 家族やパートナーにも点鼻時刻を伝えておく
- クリニックからの指示書をすぐ確認できる場所に置く
- 点鼻後にチェックを付けて、使用したか記録する
特に2回以上点鼻する場合は、「やったつもり」にならないよう、使用した時刻をメモしておくと確認しやすくなります。
こんなときはすぐに採卵予定のクリニックへ連絡を
次のような場合は、インターネットだけで判断せず、採卵予定の医療機関へ連絡してください。
- トリガーの点鼻を完全に忘れていた
- 予定時刻から大きくずれている
- 1回目または2回目を忘れた
- 左右どちらかしか点鼻できていない
- 正しい回数を点鼻したか分からない
- 点鼻した薬液がほとんど外へ出たように感じる
- 点鼻と注射のどちらかを忘れた
- 指示された時刻そのものが分からなくなった
夜間でクリニックの通常診療時間外の場合も、不妊治療施設によっては採卵周期中の緊急連絡方法が案内されています。事前にもらった説明書や緊急連絡先を確認しましょう。
採卵前は、「卵胞は育っているかな」「ちゃんと卵子が採れるかな」と緊張しやすい時期です。
そこに点鼻時間のずれが加わると、「自分のミスで採卵がうまくいかなかったらどうしよう」とご自身を責めてしまう方もいます。
しかし、時間がずれたときに大切なのは、過ぎたことを責めることではなく、実際に何時に使用したかを確認し、できるだけ早く採卵予定のクリニックへ伝えることです。
点鼻の遅れだけで採卵結果を決めつけることはできません。状況に応じて医療機関がその後の対応を判断しますので、まずは正確な情報を伝えましょう。
Q. スプレキュアを30分遅れて点鼻しました。大丈夫ですか?
30分のずれが採卵にどの程度影響するかを一律には判断できません。本来の予定時刻と実際に点鼻した時刻を、採卵予定のクリニックへ伝えて確認してください。
Q. 1時間遅れただけなら連絡しなくてもいいですか?
採卵前のトリガーは採卵予定時刻から逆算されています。「1時間なら必ず大丈夫」という共通基準はないため、自己判断せずクリニックへ伝えることをおすすめします。
Q. 点鼻を忘れたので多めにスプレーしてもいいですか?
自己判断で量や回数を増やすのは避けてください。忘れた回数と予定時刻を伝え、追加投与が必要かクリニックへ確認しましょう。
Q. 点鼻薬がのどに流れてきました。失敗ですか?
のどに流れた感覚だけでは、必要な量が吸収されたかをご自身で判断できません。採卵前のトリガーで十分に点鼻できたか不安な場合は、追加する前にクリニックへ確認してください。
Q. 点鼻直後にくしゃみをしました。もう一度した方がいいですか?
自己判断ですぐ追加点鼻せず、どの程度薬液が外へ出たか分からないことをクリニックへ伝えてください。
Q. 点鼻薬を忘れたら採卵は中止になりますか?
必ず中止になるわけではありません。忘れてからの時間、使用した薬、採卵予定時刻、卵胞の状態などをもとに医師が対応を判断します。気づいた時点で早めに連絡しましょう。
Q. 点鼻が遅れたら未熟卵や空胞が増えますか?
最終卵胞成熟のタイミングは成熟卵を得るうえで重要ですが、未熟卵や空胞にはさまざまな要因が関係します。時間がずれたという事実だけで採卵結果を予測することはできません。
まとめ|採卵前の点鼻薬は「気づいた時点で連絡」が大切
採卵前に使用するスプレキュア・ブセレリンなどのGnRHアゴニスト点鼻薬は、卵子の最終成熟を促すトリガーとして使用されることがあります。
ブセレリン製剤では、卵胞成熟を目的とする場合、通常は採卵の34~36時間前に使用することとされています。
そのため、採卵前のトリガーは使用する「時間」が重要です。
もし、
- 点鼻を忘れた
- 予定時間からずれた
- 回数を間違えた
- ちゃんと噴霧できたか分からない
という場合は、自己判断で追加せず、実際の使用状況を採卵予定のクリニックへ伝えましょう。
一度時間がずれたからといって、それだけで採卵の結果が決まるわけではありません。状況を正確に伝え、その後の指示を確認することが大切です。
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📚参考文献
- PMDA|スプレキュア点鼻液0.15% 患者向医薬品ガイド
生殖補助医療における卵胞成熟を目的とした使用方法、採卵34~36時間前の投与、自己判断で用量を変更しないことなどを参照。 - PMDA|ブセレリン点鼻液0.15%「ILS」患者向医薬品ガイド
生殖補助医療における卵胞成熟および早発排卵防止での用法・用量について参照。 - PMDA|ブセレリン点鼻液0.15% 添付文書
卵胞成熟を目的とする場合の使用量、採卵34~36時間前の投与、卵胞発育確認などを参照。 - Optimal timing for triggering oocyte maturation during in vitro fertilization cycles varies between gonadotropin-releasing hormone agonist and human chorionic gonadotropin use
59,206採卵周期を対象に、GnRHアゴニストまたはhCGによるトリガーから採卵までの時間と成熟卵数との関連を検討した研究。 - Ideal lag time from ovulation to oocyte aspiration using a GnRH agonist trigger
GnRHアゴニストトリガーから採卵までの時間と成熟卵回収について検討した研究。 - American Society for Reproductive Medicine. Prevention of moderate and severe ovarian hyperstimulation syndrome: a guideline
OHSSリスクを低減する方法としてのGnRHアゴニストトリガーなどについてまとめたASRMガイドライン。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
採卵に向けて、できることから身体を整えたい方へ
採卵前は、点鼻薬や注射の時間、卵胞の育ち方など、気になることが増えやすい時期です。「時間がずれてしまった」「ちゃんとできていたかな」と不安になることもあると思います。
点鼻薬の使用時間や追加投与については、採卵スケジュールに関わるため、まずは採卵予定のクリニックへ確認することが大切です。
そのうえで、「採卵に向けて体調を整えたい」「採卵を繰り返しているので身体づくりについて相談したい」という方は、鍼灸を選択肢のひとつとして取り入れることもできます。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療のスケジュールやこれまでの採卵経過を伺いながら、採卵前・採卵後・胚移植前後など、その時期に合わせた鍼灸施術を行っています。
「次の採卵までにできることを相談したい」「今の治療と鍼灸をどう組み合わせたらいい?」という方も、どうぞお気軽にご相談ください🍀







