
男性の妊活検査は何をする?精液検査・ホルモン・精子DNAまで解説
男性の妊活検査は、まず精液検査が基本です。
ただし、すべての男性が妊活を始める前から一律に多くの検査を受ける必要があるわけではありません。精液検査の結果やこれまでの病歴、精巣の状態などによって、ホルモン検査、超音波検査、遺伝学的検査などが追加されることがあります。
また、「精液検査が正常なら男性側には何も問題がない」というわけでもありません。
この記事では、男性の妊活では何の検査から始めればよいのか、精液検査でわかること・わからないこと、泌尿器科や男性不妊外来で行われる追加検査までわかりやすく解説します。
- 男性の妊活検査では、まず病歴の確認と精液検査が基本です。
- 精液検査のWHO下限参考値は、妊娠できる・できないを分ける境界値ではありません。
- 精液検査の結果には変動があるため、1回の結果だけで判断しないことが大切です。
- 必要に応じて、ホルモン検査、超音波検査、遺伝学的検査、精子DNA断片化検査などが検討されます。
- 精液検査で異常がある場合や妊活が長引いている場合は、男性不妊を扱う泌尿器科への相談も検討しましょう。
男性の妊活検査は何から始める?まずは精液検査が基本
日本泌尿器科学会の「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」では、男性不妊の初期評価として、妊孕性に関する病歴の確認と精液検査を行い、必要に応じて身体診察、血液検査、画像検査を行うことが示されています。
つまり、最初からすべての検査を受けるのではなく、まず現在の状態を確認し、その結果に応じて必要な検査を追加していくのが基本です。
また、不妊の原因は男性側・女性側のどちらか一方だけとは限りません。妊活が長引いている場合は、夫婦のどちらか一方だけを調べるのではなく、必要に応じて双方の評価を進めることが大切です。
まず受けたい「精液検査」でわかること
男性の妊活検査で中心となるのが精液検査です。
採取した精液を調べることで、精子の数や動きなど、妊娠に関係する基本的な状態を確認します。
精液検査で確認する主な項目
- 精液量
- 精子濃度
- 総精子数
- 総運動率
- 前進運動率
- 精子の形態
施設や精液の状態によっては、精子の生存率や白血球などについて確認されることもあります。
WHOの基準値は「妊娠できる・できない」の境界ではありません
WHOの精液検査マニュアル第6版では、自然妊娠した男性のデータをもとにした下限参考値が示されています。
- 精液量:1.4mL
- 精子濃度:1,600万/mL
- 総運動率:42%
- 前進運動率:30%
- 正常形態率:4%
ただし、これらは「この数値以上なら妊娠できる」「下回ったら妊娠できない」と判断するための境界値ではありません。
精液検査の結果は複数の項目を組み合わせて評価し、女性側の年齢や排卵・卵管などの状態も含めて、妊活全体を考える必要があります。
精液検査は1回だけで判断しないことが大切
精液の状態は毎回まったく同じではありません。
発熱や体調不良、禁欲期間、採精状況などによって、精子濃度や運動率などが変化することがあります。
日本の男性不妊症診療ガイドラインでも、精液検査の結果には変動があるため、複数回の結果をもとに評価することが示されています。
検査前の禁欲期間や採精方法については、検査を受ける医療機関の指示に従ってください。
精液検査以外にはどんな男性不妊検査がある?
精液検査で異常が見つかった場合や、男性側の状態を詳しく確認する必要がある場合には、泌尿器科や男性不妊外来で追加検査が検討されます。
すべての検査を全員が受けるわけではなく、精液検査の結果や症状、既往歴に応じて必要なものを選びます。
1.問診・身体診察
男性不妊の評価では、精液検査だけでなく、これまでの病気や手術、治療歴なども重要です。
たとえば、停留精巣、精巣捻転、性感染症、精巣の病気、抗がん剤治療・放射線治療の経験などが確認されることがあります。
身体診察では、精巣の大きさや硬さ、精巣上体や精管の状態、精索静脈瘤の有無などを確認します。
2.精索静脈瘤などを確認する超音波検査
精索静脈瘤は、精巣周囲の静脈が拡張する状態で、男性不妊と関係することがあります。
診察だけでなく、必要に応じて陰嚢の超音波検査などを用いて確認されます。
精巣の痛みや腫れ、左右差などが気になる場合も、自己判断せず泌尿器科へ相談しましょう。
3.ホルモン検査
精子を作る働きには、脳下垂体や精巣から分泌されるホルモンが関係しています。
精子数が少ない場合や無精子症が疑われる場合などには、血液検査で次のようなホルモンを確認することがあります。
- FSH(卵胞刺激ホルモン)
- LH(黄体形成ホルモン)
- テストステロン
- 症状に応じてプロラクチンなど
ホルモン値だけで男性不妊の原因がすべてわかるわけではなく、精液検査や身体診察などと組み合わせて判断します。
4.遺伝学的検査
無精子症や精子数が非常に少ない場合などには、染色体検査やY染色体微小欠失などの遺伝学的検査が検討されることがあります。
すべての男性に必要な検査ではありません。精液検査の結果をもとに、男性不妊を専門とする医師と相談して判断します。
5.感染・炎症に関する検査
精液中の白血球が多い場合や、排尿時の痛み、精巣・陰嚢の違和感などがある場合には、感染や炎症について調べることがあります。
症状に応じて尿検査、培養検査、性感染症検査などが検討されます。
6.勃起・射精に関する評価
妊活では、精子そのものだけでなく、勃起や射精の問題によって性交や採精が難しくなることもあります。
性交のタイミングが取りにくい、勃起を維持しにくい、射精しにくいなどの悩みがある場合も、男性不妊外来や泌尿器科で相談できます。
精液検査が正常でも妊娠しないことがある理由
精液検査で基準範囲内と言われても、男性側に関係する要因がすべて否定されるわけではありません。
一般的な精液検査では、精子の数・運動性・形態などを中心に評価しますが、それだけでは詳しくわからない項目もあります。
精子DNA断片化(SDF)
その一つが、精子のDNAの損傷を調べる精子DNA断片化検査です。
精子DNA断片化は、一般的な精液検査の精子数・運動率・形態とは異なる情報を評価する検査で、原因不明不妊、不育症、生殖補助医療の成績などとの関連が研究されています。
ただし、すべての男性に一律に行う検査ではありません。検査が必要かどうかは、これまでの妊活歴や治療歴を含めて主治医と相談します。
詳しくは精子DNA断片化検査とは?精子の質と男性不妊の関係でも解説しています。
酸化ストレスに関する検査
精子と酸化ストレスの関係も研究されています。
一方で、酸化ストレスや活性酸素を評価する検査は、現時点ですべての男性不妊患者にルーチンで行う検査として確立しているわけではありません。
「精液検査では問題ないのに妊娠に至らない」という場合には、精子だけに原因を求めるのではなく、女性側の要因も含めて総合的に確認することが大切です。
精液検査だけでは確認しにくい要因については、精液検査だけではわからない!男性不妊の隠れた原因も参考にしてください。
男性の妊活検査はどこで受ける?
精液検査は、不妊治療クリニックや生殖医療を扱う医療機関、男性不妊を診療している泌尿器科などで受けられます。
精液検査のみであれば婦人科・不妊治療クリニックで対応している施設もありますが、精液所見に異常がある場合や男性側を詳しく調べたい場合は、男性不妊を扱う泌尿器科へ相談するとよいでしょう。
受診前には、採精を自宅で行えるか、院内採精が必要か、禁欲期間を何日に設定するかなどを確認しておくと安心です。
早めに男性不妊外来や泌尿器科へ相談したいケース
日本のガイドラインでは、避妊をせず定期的に性交渉を続けても1年間妊娠に至らない場合、男女ともに医療機関で評価を受けることが推奨されています。
ただし、必ず1年間待たなければならないという意味ではありません。
次のような場合は、早めに医療機関へ相談してもよいでしょう。
- 精液検査で異常を指摘された
- 無精子症や精子数がかなり少ないと言われた
- 精巣の大きさや左右差、痛み、腫れが気になる
- 精索静脈瘤を指摘されたことがある
- 停留精巣や精巣の手術歴がある
- 抗がん剤治療や放射線治療を受けたことがある
- 勃起や射精について困っている
- 体外受精・顕微授精などの不妊治療を予定している
- 妊活が長引いている
女性パートナーの年齢や婦人科的な要因によっても、検査を始める適切な時期は変わります。迷う場合は、不妊治療を扱う医療機関へ相談してください。
検査結果が悪かったら、まず原因を確認する
精液検査の数値が低かったとしても、1回の結果だけで今後を決める必要はありません。
再検査や診察によって、精索静脈瘤、ホルモン異常、感染・炎症など、治療を検討できる原因が見つかる場合があります。
また、発熱、喫煙、睡眠不足、肥満、過度な飲酒など、精子の状態と関係する可能性がある生活習慣を見直すこともあります。
精子は作られて成熟するまでに一定の時間がかかるため、生活習慣については短期間の変化だけで判断せず、数か月単位で考えることが大切です。
詳しくは精子の質は何ヶ月で変わる?男性妊活を3ヶ月前から始めたい理由をご覧ください。
検査は「どちらに原因があるか」を責めるためのものではありません
男性側の検査をすすめると、「自分に原因があると言われるのが怖い」と抵抗を感じる方もいます。
しかし、妊活の検査は夫婦のどちらが悪いかを決めるものではありません。
現在の状態を確認することで、タイミング法を続けるのか、人工授精や体外受精・顕微授精を検討するのか、男性側の治療を優先するのかなど、今後の選択肢を整理するための情報になります。
女性側だけが検査や治療を抱え込まず、必要に応じて男性側も一緒に確認していくことが大切です。
妊活では、女性側の通院や検査が増える一方で、男性側の検査が後回しになっているご夫婦もいらっしゃいます。
精液検査や男性不妊の診断・治療は医療機関で行うことが基本です。当院でも、まず必要な医学的検査を受けていただくことを大切にしています。
そのうえで、病院での治療方針を大切にしながら、睡眠や食事、ストレスなど日常生活を含めた妊活中のコンディションづくりを一緒に整理していきます。男性側の検査について迷っている場合も、お二人で抱え込まず主治医や専門医へ相談してみてください。
Q1. 男性の妊活検査は何から始めればよいですか?
まずは精液検査が基本です。結果や病歴に応じて、泌尿器科で身体診察、ホルモン検査、超音波検査などが追加されます。
Q2. 精液検査は1回受ければ十分ですか?
精液所見は体調や採精条件などによって変動します。1回の結果だけで決めつけず、必要に応じて複数回の結果を確認します。
Q3. 精液検査が正常なら男性側には問題がないのですか?
一般的な精液検査だけでは、精子DNAの状態など評価できない項目もあります。ただし追加検査が全員に必要なわけではないため、妊活歴や治療歴を踏まえて主治医と相談しましょう。
Q4. 精液検査で異常があったら泌尿器科へ行った方がよいですか?
異常が続く場合や、精子数がかなり少ない、無精子症を指摘された、精索静脈瘤や精巣の症状がある場合などは、男性不妊を扱う泌尿器科への相談をおすすめします。
Q5. 男性が検査を受けたがらない場合はどう伝えればよいですか?
「原因を探すため」ではなく、「二人の現在の状態を一緒に確認して、今後の妊活を考えたい」と伝えると受け止めやすくなることがあります。
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📚参考文献
-
[1] 日本泌尿器科学会. 男性不妊症診療ガイドライン2024年版.
男性不妊の初期評価、精液検査、ホルモン検査、精子DNA断片化、遺伝学的検査などについてまとめられた国内ガイドラインです。 -
[2] World Health Organization. WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edition. 2021.
精液検査の標準的な測定方法や品質管理、精液所見の参考値などを示したWHOの検査マニュアルです。 -
[3] AUA/ASRM. Diagnosis and Treatment of Infertility in Men: AUA/ASRM Guideline Part I. 2020.
男性不妊の初期評価として、病歴、精液検査、必要に応じた専門的評価を行う考え方を示しています。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
男性側の検査も含めて、夫婦で妊活を整理したい方へ
男性の妊活では、まず医療機関で必要な検査を受け、現在の精子の状態や男性側の要因を確認することが大切です。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、病院での検査や治療方針を大切にしながら、睡眠・食事・ストレスなども含め、妊活中の身体づくりやコンディション調整をサポートしています。
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