
生理の「血の塊」はなぜ出る?子宮内膜の仕組みから、出にくくするためにできることまで
「生理のとき、レバーのような血の塊が出る」
「そもそも生理って、身体の中で何がはがれているの?」
「塊を減らすには、どうしたらいい?」
妊活中の方から、よくいただくご質問です。この記事では、子宮内膜がどんな構造をしていて、生理のときに何がはがれているのかという土台から解説し、そのうえで血の塊が出る理由と出にくくするためにできることを、医学的な根拠にもとづいて整理します。
結論を先にお伝えすると、血の塊は「経血の量が多い・出るスピードが速い」ときにできやすくなります。ただし大きな塊が毎回続く場合は、子宮の病気が隠れているサインのこともあり、妊娠のしやすさにも関わります。まずは仕組みから見ていきましょう。


子宮内膜は「二層+三層」でできている
子宮内膜は、大きく分けると2つの層からできています。
機能層と基底層
| 層の名前 | 位置 | 生理のときは |
|---|---|---|
| 機能層(緻密層+海綿層) | 子宮の内腔側(表面) | はがれ落ちる |
| 基底層 | 筋層側(深部) | 残る(新しい内膜を再生する土台) |
さらに細かく見ると、機能層は表面側の緻密層(ちみつそう)と、その下の海綿層(かいめんそう)に分かれます。この2つを合わせたものが機能層で、生理のときにはがれるのはこの部分です。
その下にある基底層は残ります。基底層には内膜のもとになる細胞(幹細胞・前駆細胞)があり、ここから毎周期、新しい機能層が作り直されます。
つまり、生理は「子宮内膜が全部なくなる」のではなく、表面の機能層だけが入れ替わり、土台の基底層は残り続けているのです。
なぜはがれるのか
生理が始まる直前、エストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンが下がります。するとプロスタグランジンという物質が出て、内膜に血液を送っているらせん動脈が収縮します。血流が途絶えた機能層は維持できなくなり、はがれ落ちて外に出ていきます。これが月経です。
生理痛が起こるのも、このプロスタグランジンによる子宮の収縮が関わっています。
【要注意】「三層構造(トリラミナー)」は別の話です
不妊治療を受けていると、超音波検査で「内膜がきれいな三層構造ですね」「トリラミナーになっています」と言われることがあります。
ここで混同されやすいのですが、この「三層構造」は、前述の緻密層・海綿層・基底層のことではありません。
トリラミナー=エコーに映る「見え方」の名前
トリラミナー(三層構造・タイプA)とは、超音波(エコー)の画面に3本の線として映る見え方を指す言葉です。具体的には、
- 外側の明るい2本の線 … 内膜と子宮筋層の境目
- その内側の暗い帯 … エストロゲンで厚くなっている機能層
- 中央の明るい1本の線 … 向かい合った子宮内腔の面
という組み合わせで「3本線」に見えます。この所見は、排卵前(卵胞期の後半)にエストロゲンの働きで内膜が厚くなっている時期に見られるものです。排卵後はプロゲステロンの影響で内膜全体が均一に明るく映るようになり、この三層構造は見えなくなります。
つまり整理すると、
- 緻密層・海綿層・基底層 … 実際の組織の層(=はがれるのは機能層)
- トリラミナー(三層構造) … エコーに映る見え方(=内膜がよく育っているサイン)
同じ「三層」でも、まったく別の分類です。移植前に「三層構造」と言われたら、それは「内膜がエストロゲンに反応してきちんと育っています」という意味だと理解しておくと安心です。
なお、トリラミナーは着床に有利な所見とされていますが、これだけで着床の成否が決まるわけではないという指摘もあります。厚さや血流とあわせて、主治医が総合的に判断します。
では、血の塊は何がはがれているの?
ここが本題です。結論から言うと、血の塊は「特定の層がそのまま出てきたもの」ではありません。
経血は、はがれた機能層の組織と血液、頸管粘液などが混ざったものです。実は血液の割合は一部で、残りははがれた内膜組織や分泌物が占めています。
血の塊とは、この中の固まった血液に、はがれた内膜の組織や粘液が混ざったかたまりです。「基底層まではがれてしまった」わけではないので、その点はご安心ください。
なぜ血の塊が出るの?──「溶かす働き」が追いつかないから
では、なぜ固まってしまうのでしょうか。
本来、経血は固まりにくくできている
生理のあいだ、子宮内膜からはプラスミンという酵素や、その活性化因子がたくさん分泌されています。これは、できかけた血のかたまり(フィブリン)をすぐに溶かす働き(線溶)を持っています。
このおかげで、経血は子宮の中で固まらずサラサラと流れ出ていきます。ケガをしたときの出血がすぐ固まるのに、経血がふつうは固まらないのは、この仕組みがあるからです。
量が多い・速いと、追いつかない
ところが、出血の量が多かったり、出るスピードが速かったりすると、この溶かす働きが追いつきません。溶けきる前に血液が固まってしまい、塊として出てきます。
さらに研究では、この凝固と線溶のバランスが崩れると、月経量が多い状態(過多月経)につながることも示されています。
つまり、血の塊が出る=経血の量が多いサインと考えるとわかりやすいです。ここから、次の大切な話につながります。
大きな塊は「身体からのサイン」かもしれない
小さな塊がときどき出る程度は、多くの場合心配いりません。一方で、次のような場合は過多月経(月経量が多い状態)の可能性があります。
- 大きな血の塊(500円玉大以上)が毎回のように出る
- 昼でも1〜2時間ごとにナプキンを替えないと不安
- 夜用ナプキンやタンポンとの併用が必要
- 経血が7日以上続く
- 疲れやすい・息切れ・めまいなど、貧血のような症状がある
背景に子宮の病気が隠れていることも
過多月経や大きな塊の背景には、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ、あるいはホルモンバランスの乱れ・血液を固める働きの異常などが隠れていることがあります。
とくに子宮筋腫や子宮腺筋症は、月経量を増やすだけでなく、子宮内膜の受容能(着床のしやすさ)にも影響しうることが知られています。
だからこそ、妊娠を希望している方にとっては、「塊を減らす」より先に、まず婦人科で原因を調べてもらうことが最優先です。超音波検査などで、筋腫や腺筋症などの有無を確認できます。
血の塊を出にくくするために ①医療でできること
原因を確認したうえで、量や塊を減らす選択肢があります。いずれも医師が判断・処方するものです。
トラネキサム酸(非ホルモンの内服薬)
トラネキサム酸は、プラスミンによる線溶を抑えて、できた塊を安定させ、出血量を減らすお薬です。研究では月経血量を約30〜60%減らすと報告されています。
ホルモン剤ではないため月経周期に影響せず、生理中の数日だけ服用します。ただし血栓の既往がある方などには使えないことがあり、必ず医師の処方のもとで使用します。また、これは症状を抑えるお薬で、原因そのものを治すものではありません。
鉄剤・原因への治療
経血量が多い方は鉄欠乏や貧血を伴いやすいことが報告されています。血液検査で鉄の状態を確認し、必要なら鉄剤で補うことも大切です。
なお、低用量ピルやホルモン付加子宮内システムで月経量を減らす方法もありますが、これらは妊娠を妨げるため、妊活中の方には基本的に向きません。妊娠を希望している場合は、症状を抑えるより、筋腫や腺筋症といった原因そのものへの治療を主治医と相談するのが基本です。
血の塊を出にくくするために ②生活の土台づくり
医療的な評価・治療と並行して、身体のコンディションを整える生活習慣も役立ちます。
冷え対策と血流
東洋医学では、経血に塊が混じる状態を、巡りが滞った「瘀血(おけつ)」や、冷えによる「寒凝(かんぎょう)」といった考え方でとらえます。西洋医学の言葉に置き換えると、骨盤内の血流を保ち、身体を冷やしすぎないことにあたります。
- 湯船にゆっくりつかる
- 腹部・腰・足首を温める
- 薄着で身体を冷やしすぎない
運動・栄養・生活リズム
- 適度な運動(ウォーキング・ストレッチなど)で骨盤内の血流を促す
- 鉄分を意識したバランスの良い食事
- 睡眠をしっかりとる・ストレスをためすぎない
- 喫煙を避ける
※これらは「塊を必ず減らす」と証明された治療ではなく、身体を整えるための土台づくりです。症状が強いときは、セルフケアだけで様子を見ず、必ず医療の評価を受けてください。
鍼灸でできること
鍼灸が向き合うのは「巡り」
そのうえで、鍼灸が向き合うのは血の巡りです。
東洋医学では、経血に塊が混じる状態を、巡りが滞った「瘀血(おけつ)」や、冷えによる「寒凝(かんぎょう)」ととらえます。これを西洋医学の言葉に置き換えると、骨盤内・子宮への血流の状態にあたります。
研究では、子宮動脈の血流の流れにくさ(拍動係数:PI)が高い女性に電気鍼を行ったところ、この血流抵抗が下がったと報告されています(Human Reproduction, 1996)。ただしこれは10名・非ランダム化の小規模な研究であり、結論づけられるものではありません。また、鍼の刺激が腹部の一酸化窒素(NO)を増やし、局所の子宮血流を高めたとする報告もあります(Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2011)。
なお、子宮動脈の血流抵抗が高いほど組織への血の巡りが乏しくなることは、ドップラー超音波を用いた研究でも指摘されています。「巡り」は東洋医学だけの概念ではなく、数値として捉えられる対象でもあるのです。
だから、こう位置づけています
鍼灸は「塊を減らす治療」ではありません。原因の確認と医療的な治療を前提としたうえで、骨盤内の巡り・冷え・自律神経のバランスを整える補完的な役割。それが、鍼灸のできることだと考えています。
できることの順番【まとめ】
- まず原因を確認する
大きな塊・多量が続くなら婦人科を受診(筋腫・腺筋症などの評価) - 医療でできることを相談する
トラネキサム酸・鉄剤・原因治療(妊活中はホルモン治療より原因治療を優先) - 生活の土台を整える
冷え対策・血流・鉄分・睡眠・禁煙 - 鍼灸で補完する
骨盤内の巡り・冷え・自律神経を整える(塊を減らす治療ではなく、原因治療の代わりにもならない)
塊は「身体からのサイン」。減らすことだけを目的にせず、その奥にある原因を大切にすることが、結果的に妊娠しやすい身体づくりにつながります。
Q. 生理ではがれているのはどこですか?
A. 子宮内膜の「機能層(緻密層+海綿層)」です。その下の「基底層」は残り、そこから新しい内膜が再生されます。毎周期入れ替わっているのは表面の機能層です。
Q. 超音波で言われる「三層構造」とは違うのですか?
A. 別のものです。三層構造(トリラミナー)は、排卵前に内膜がエコーで3本の線に見える所見のこと。組織の層(緻密層・海綿層・基底層)とは分類が異なります。
Q. 血の塊が出るのは異常ですか?
A. 小さな塊がときどき出る程度は、多くの場合心配いりません。ただし500円玉大以上の塊が毎回続く・経血量がとても多い・貧血症状がある場合は、過多月経の可能性があり受診をおすすめします。
Q. 塊を減らす市販薬はありますか?
A. 出血量を減らすトラネキサム酸は医師の処方薬です。自己判断で使わず、まず原因を調べてもらいましょう。
Q. 妊活中でも塊や量が多いと影響しますか?
A. 筋腫や腺筋症などが背景にある場合、月経量だけでなく着床のしやすさにも関わることがあります。妊娠を希望している方こそ、早めに原因を確認しておくと安心です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療に代わるものではありません。経血量が多い・大きな血の塊が続く・貧血症状があるなどの場合は、自己判断せず婦人科を受診してください。
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📚参考文献
- Physiology, Uterus. StatPearls(NCBI Bookshelf).
- Three-dimensional understanding of the morphological complexity of the human uterine endometrium. PMC, 2021.
- Development of a 3D tissue slice culture model for human endometrial repair and regeneration. PMC.
- Imaging the normal endometrium throughout life. ECR 2024 / EPOS(European Society of Radiology).
- 月経血中のフィブリン・プラスミンと線溶に関する研究(American Journal of Obstetrics and Gynecology ほか).
- Increased plasma clot permeability and susceptibility to lysis are associated with heavy menstrual bleeding. PLOS One, 2015.
- Tranexamic acid(作用・適応). MedlinePlus/NCBI PMC.
- Management of heavy menstrual bleeding in a multidisciplinary young women’s clinic. PMC, 2025.
- Stener-Victorin E, et al. Reduction of blood flow impedance in the uterine arteries of infertile women with electro-acupuncture. Human Reproduction, 1996.
- Zhang R, et al. Acupuncture treatment improves local uterine blood flow by increasing nitric oxide in the skin of the abdomen. Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2011.
- Effects of acupuncture on uterine hemodynamics(子宮動脈の血流抵抗と組織灌流). Journal of Pain Research, 2026.
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
生理の血の塊や冷えが気になる方へ
生理のたびに大きな血の塊が出る、経血量が多い、強い痛みや貧血のような症状がある場合は、まず婦人科で原因を確認することが大切です。
そのうえで、冷えや身体の巡り、睡眠、ストレス、自律神経の乱れなども気になっている方は、妊活中の身体を整える方法のひとつとして鍼灸を取り入れることもできます。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、お身体の状態や月経周期、不妊治療の予定などを伺いながら、お一人おひとりに合わせた施術をご提案しています。
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