
卵子の質とミトコンドリアの関係|増やせば若返る?CoQ10・運動・AMHも解説
「卵子の質を良くするには、ミトコンドリアが大切」「ミトコンドリアを増やすと卵子が若返る」といった情報を、妊活中に目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ミトコンドリアは、細胞が活動するためのエネルギーをつくる器官です。卵子にも多く存在しており、卵子の成熟や受精、その後の胚発育に重要な役割を持っています。[1]
ただし、結論からいうと、「ミトコンドリアを増やせば卵子の質が上がる」「加齢した卵子を若返らせることができる」と確立された方法は現在ありません。
卵子の加齢には、ミトコンドリアだけでなく、染色体の分配、DNA修復、酸化ストレスなどさまざまな変化が関係しています。
この記事では、卵子の質とミトコンドリアの関係、年齢による変化、AMHとの違い、CoQ10や運動・食事について、現在わかっている研究をもとにわかりやすく解説します。
- 卵子の質とミトコンドリアの関係
- 年齢とともに卵子のミトコンドリアがどう変化するのか
- ミトコンドリアを増やせば卵子が若返るのか
- AMHと卵子の質の違い
- CoQ10・運動・食事など妊活中にできること
卵子の質とミトコンドリアはどう関係する?
ミトコンドリアは、ほとんどの細胞の中に存在する「細胞小器官」です。
代表的な役割は、私たちが活動するために必要なATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーをつくることです。
身体を動かす、心臓を動かす、細胞を修復するといったさまざまな活動にエネルギーが必要ですが、卵子も例外ではありません。
卵子は、成熟して受精し、その後の胚へと発育していく過程で多くのエネルギーを必要とするため、ミトコンドリアは生殖において重要な役割を担っています。[1]
卵子の成熟を支える
卵子が成熟するときには、染色体を正しく分けるための「紡錘体」と呼ばれる構造がつくられます。
この過程にもエネルギーが必要であり、ミトコンドリアの機能低下は、紡錘体の形成や染色体の分配などに影響する可能性が研究されています。[1]
受精後の胚発育にも関係する
受精した卵子は、その後、細胞分裂を繰り返して胚へと成長します。
初期の胚発育でも卵子由来のミトコンドリアが重要な役割を担うため、ミトコンドリアの機能と卵子の発育能力との関係について多くの研究が行われています。[1]
年齢とともに卵子のミトコンドリアも変化する
妊娠しやすさを考えるうえで、大きく関係する要因の一つが女性の年齢です。
年齢とともに卵子の数が減っていくだけでなく、染色体異常の割合が増えるなど、生殖能力にも変化が生じます。
卵子の加齢に伴って、研究では次のようなミトコンドリアの変化が報告されています。[1]
- エネルギー産生能力の変化
- ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変化
- 活性酸素や酸化ストレスの増加
- ミトコンドリアを正常に保つ仕組みの変化
- 細胞内でのミトコンドリアの配置や働きの変化
こうした変化が重なることで、卵子の正常な成熟や染色体分配、胚発育などに影響する可能性が考えられています。
ただし、ここで大切なのは、「卵子の老化=ミトコンドリアの低下だけが原因」ではないということです。
染色体をまとめる構造の変化やDNA修復能力など、卵子の加齢にはさまざまな仕組みが関係しています。ミトコンドリアはその一つです。
ミトコンドリアを増やせば卵子の質は上がる?
「卵子のミトコンドリアを増やしたら、卵子の質も上がるのでしょうか?」
妊活中の方からも気になる質問の一つです。
しかし、現在の研究からは、ミトコンドリアの「数」だけを増やせば卵子の質が改善すると単純に考えることはできません。
ミトコンドリアでは、数だけでなく、エネルギーをつくる能力、ミトコンドリアDNAの状態、酸化ストレス、品質を維持する仕組みなども重要だからです。
また、特定の食事や運動、サプリメントによって加齢した卵子を若い状態に戻せると確立された方法もありません。
「ミトコンドリアを増やす=卵子が若返る」と考えるのではなく、卵子の加齢に関係する仕組みの一つとして理解しておくのがよいでしょう。
AMHが低いと卵子の質も悪い?
妊活中によく耳にする検査の一つに「AMH(抗ミュラー管ホルモン)」があります。
AMHは、主に卵巣内に残っている卵胞の数、つまり卵巣予備能を推測するための指標として使用されます。
一方で、
「AMHが高い=卵子の質が良い」「AMHが低い=卵子の質が悪い」という意味ではありません。
ASRM(米国生殖医学会)も、AMHや胞状卵胞数(AFC)は採卵時に得られる卵子数の予測には有用である一方、卵子の質や妊娠・出生などを単独で予測する力は限定的としています。[2]
卵子の質について考える場合は、AMHだけを見るのではなく、年齢、これまでの採卵数、成熟卵数、受精率、胚発育などを含めて総合的に考えることが大切です。
卵子のミトコンドリアのために妊活中にできることは?
「卵子を若返らせる方法がないなら、何をしても意味がないの?」と思う必要はありません。
年齢そのものを変えることはできませんが、妊娠を目指すうえで、全身の健康状態を整えるためにできることはあります。
喫煙している場合は禁煙を考える
喫煙は、妊娠しやすさや生殖機能、不妊治療の成績に悪影響を及ぼすことが知られている生活習慣の一つです。[3]
妊娠を希望している場合は、電子タバコを含め、喫煙を避けることを検討しましょう。
極端な食事制限や断食をしない
「空腹状態をつくればミトコンドリアが増える」といった情報を見かけることがありますが、妊活中に無理なカロリー制限や断食を行うことを積極的にすすめる根拠はありません。
体重や栄養状態は月経や排卵にも関係します。特定の食品だけに偏らず、必要なエネルギー、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することを基本に考えましょう。
無理のない範囲で運動する
ウォーキングなどの適度な運動は、体力維持、睡眠、体重管理、ストレス管理など、全身の健康づくりに役立ちます。
一方で、「ウォーキングをすると卵子のミトコンドリアが増え、卵子の質が上がる」とまで断定できる臨床的な根拠はありません。
「卵子を変えるための運動」ではなく、妊活を続ける身体の健康管理の一つとして無理なく取り入れるのがおすすめです。
睡眠・休養を確保する
不妊治療中は、通院や仕事との両立、採卵や移植の結果への不安などから、身体だけでなく気持ちも疲れやすくなります。
睡眠不足や強い疲労を我慢し続けるよりも、生活リズムを整え、休める時間を確保することも大切です。
当院では「卵子を若返らせるために○○をしてください」というお伝えはしていません。妊活中は、睡眠不足、肩こりや腰痛、冷え、疲労感、ストレスなどを抱えながら治療を続けている方も少なくありません。鍼灸や良導絡測定なども用いながら、その方の体調を確認し、妊活を続けやすい身体のコンディションを整えることを大切にしています。不妊治療が必要な場合は、婦人科・不妊治療クリニックでの治療を優先しながら並行して考えていきます。
CoQ10は卵子の質やミトコンドリアに効果がある?
ミトコンドリアとの関係から、妊活中のサプリメントとしてよく知られているのがCoQ10(コエンザイムQ10)です。
CoQ10はミトコンドリアのエネルギー産生に関係する物質で、抗酸化作用もあります。
卵巣予備能が低下した女性がIVF・ICSIを受ける際のCoQ10については、2024年のシステマティックレビュー・メタ解析で、採卵数や臨床妊娠率などの改善と関連した結果が報告されています。[4]
ただし、解析された研究数や研究方法には限界があります。
そのため、「CoQ10を飲めば誰でも卵子の質が良くなる」と確立されているわけではありません。
サプリメントは、持病や薬との併用によって注意が必要なこともあります。不妊治療中の方は自己判断で多種類を追加せず、主治医に相談して使用しましょう。
ミトコンドリア移植で卵子を若返らせる治療はある?
卵子の細胞質やミトコンドリアに働きかける生殖補助医療については、これまでさまざまな研究が行われてきました。
その一つに、第三者の卵子を利用する「ミトコンドリア置換」や「紡錘体移植」などの技術があります。
ただし、これは一般的な「卵子を若返らせる治療」として確立されたものではありません。
もともとミトコンドリア置換技術は、特定の重篤なミトコンドリア病が母親から子どもへ伝わることを防ぐ目的などで研究されてきた技術です。
ESHRE(欧州ヒト生殖医学会)は、不妊治療を目的としたミトコンドリア提供・紡錘体移植について、有効性や安全性に十分な科学的根拠がないとして慎重な立場を示しています。[5]
「新しい治療だから卵子が若返る」と考えるのではなく、治療を検討する際は科学的根拠、安全性、日本国内での位置づけなどを十分に確認することが必要です。
Q.ミトコンドリアが多ければ卵子の質は良いのですか?
単純に「数が多いほど良い」とは言えません。ミトコンドリアは数だけでなく、エネルギーをつくる能力、DNAの状態、酸化ストレスや品質管理なども重要です。また、卵子の質はミトコンドリアだけで決まるものではありません。
Q.卵子のミトコンドリアを増やす方法はありますか?
現在のところ、特定の食べ物・運動・サプリメントによって、人の卵子のミトコンドリアを確実に増やし、妊娠率や出生率を高められると確立された方法はありません。健康維持につながる食事・運動・睡眠などを基本に考えましょう。
Q.ウォーキングで卵子のミトコンドリアは増えますか?
運動によって骨格筋などのミトコンドリアが適応することは知られていますが、それをそのまま「ウォーキングで卵子のミトコンドリアが増えて卵子の質が良くなる」と考えることはできません。適度な運動は妊活中の健康管理として取り入れましょう。
Q.AMHが低いと卵子の質も悪いのでしょうか?
AMHは主に卵巣に残っている卵胞数を推測する指標です。AMHが低いという理由だけで卵子の質が悪いと判断することはできません。年齢やこれまでの治療結果などを含めて判断します。
Q.CoQ10を飲めば卵子の質は改善しますか?
一部の不妊治療患者を対象とした研究では有望な結果が報告されていますが、すべての方に同じ効果があることが確立されているわけではありません。不妊治療中の場合は主治医と相談してください。
Q.鍼灸で卵子のミトコンドリアを増やすことはできますか?
現在のところ、鍼灸によって人の卵子のミトコンドリアが増え、それによって卵子が若返ると断定できる臨床的な根拠はありません。当院でもそのような説明は行っていません。鍼灸は、不妊治療と並行しながら、痛みや疲労、冷え、睡眠、ストレスなど妊活中の身体全体のコンディションを整える目的で取り入れています。
まとめ|ミトコンドリアは卵子に大切だが「増やせば若返る」とは限らない
- ミトコンドリアは卵子の成熟や受精後の胚発育に重要な役割を持つ
- 加齢に伴いミトコンドリアの機能やDNAなどにも変化が起こる可能性がある
- 卵子の老化はミトコンドリアだけで決まるものではない
- AMHは主に卵子の「数」に関する指標で、卵子の質そのものを測る検査ではない
- ミトコンドリアを増やして卵子を若返らせると確立された食事・運動・サプリメントはない
妊活中は一つの情報だけにとらわれず、年齢やAMH、これまでの治療経過を踏まえて必要な不妊治療を受けながら、食事・睡眠・運動・禁煙など、自分の身体を健康に保つためにできることを続けていくことが大切です。
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📚参考文献
- [1] Wang T, et al. Mitochondrial dysfunction in oocytes: implications for fertility and ageing. Journal of Ovarian Research. 2025.
卵子の加齢に伴うミトコンドリア機能、エネルギー産生、酸化ストレス、ミトコンドリアDNAなどの変化についてまとめたレビューです。 - [2] American Society for Reproductive Medicine. Testing and interpreting measures of ovarian reserve: a committee opinion. Fertility and Sterility. 2020.
AMHやAFCなどの卵巣予備能検査について、卵子数の予測には有用である一方、卵子の質や妊娠・出生の予測には限界があることを解説したASRMの委員会意見です。 - [3] American Society for Reproductive Medicine. Tobacco or marijuana use and infertility: a committee opinion. Fertility and Sterility. 2024.
喫煙と女性・男性の生殖機能、不妊治療成績との関係についてまとめたASRMの委員会意見です。 - [4] Lin G, et al. Clinical evidence of coenzyme Q10 pretreatment for women with diminished ovarian reserve undergoing IVF/ICSI: a systematic review and meta-analysis. Annals of Medicine. 2024.
卵巣予備能が低下した女性のIVF・ICSIにおけるCoQ10前投与について、採卵数や妊娠成績などを検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。 - [5] European Society of Human Reproduction and Embryology. Spindle transfer in the treatment of infertility: an ESHRE position statement.
卵子の「若返り」を目的とした紡錘体移植などについて、有効性や安全性の科学的根拠が十分ではないとして慎重な姿勢を示したESHREの見解です。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
妊活中の身体づくりで迷ったら、ご相談ください
卵子やミトコンドリアについて調べていると、「食事はどうしたらいい?」「運動した方がいい?」「自分の場合は何をしたらいい?」と、かえって迷ってしまうこともあります。
卵子の年齢そのものを戻すことはできませんが、妊活中は、睡眠、疲労、冷え、肩こり・腰痛、ストレス、生活リズムなど、今の身体の状態を整えながら治療を続けていくことも大切です。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、不妊治療の状況も確認しながら、鍼灸や良導絡測定を通して、一人ひとりの体調に合わせた妊活サポートを行っています。
「今の治療と並行して、身体のコンディションも整えたい」「自分の場合は何を意識したらいいのかな」と気になることがありましたら、お気軽にご相談ください🍀








「AMHが低かったので、卵子の質も悪いのでしょうか?」というご相談をいただくことがあります。AMHは主に卵巣に残っている卵胞数を推測する指標であり、卵子の質そのものを測定する検査ではありません。数字だけを見て必要以上に不安にならず、年齢や治療経過、採卵結果なども含めて考えていきましょう。