
肥満・過体重は女性不妊に影響する?BMIと妊活・体外受精・体重管理
「体重が増えていると妊娠しにくい?」「BMIが高い場合は、痩せてから不妊治療を始めたほうがいい?」と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
肥満や過体重は、排卵障害や妊娠までにかかる期間、不妊治療の成績などと関連することが報告されています。
ただし、BMIが高いから妊娠できないわけではなく、「体重を落とせば必ず妊娠率が上がる」とも言えません。
妊活中の体重管理では、BMIの数字だけを見るのではなく、年齢、月経・排卵の状態、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の有無、血糖・血圧、不妊治療の予定などを含めて考えることが大切です。
- 肥満・過体重は、女性の排卵障害や妊娠しにくさと関連することがあります。
- BMIが高いからといって、妊娠できないという意味ではありません。
- 日本ではBMI25以上を「肥満」とする基準が一般的ですが、海外ではBMI25~29.9を「過体重」、30以上を「肥満」とすることがあります。
- 無排卵を伴う肥満では、生活習慣の改善や減量によって排卵が改善する場合があります。
- 一方、体外受精前に減量することで生児獲得率が必ず上がるとは、現時点では言い切れません。年齢や治療計画も含めて主治医と相談することが大切です。
肥満・過体重は女性不妊に影響する?
複数の研究では、妊娠前のBMIが高い女性では、標準的なBMIの女性と比較して妊娠までに時間がかかる傾向や、不妊との関連が報告されています。
ただし、これは「肥満であれば必ず不妊になる」という意味ではありません。肥満のある女性でも自然妊娠・不妊治療による妊娠に至る方は多くいます。
体重は妊娠しやすさに関係する要素の一つであり、年齢、卵巣予備能、排卵、卵管、子宮、精子など、さまざまな要因を合わせて考える必要があります。
BMIとは?日本と海外では「肥満」の基準が異なります
BMI(Body Mass Index)は、体重と身長から体格をみるための指標で、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算します。
日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」では、日本肥満学会の基準に基づきBMI25以上を肥満としています。
一方、WHOなど海外で広く使われる分類では、BMI25~29.9を「過体重(overweight)」、BMI30以上を「肥満(obesity)」としています。
そのため、海外の不妊研究を読む場合には、日本国内で使われる「肥満」という言葉と基準が異なる場合があることに注意が必要です。
また、BMIは簡便な指標ですが、筋肉量や体脂肪率、脂肪のつき方までは分かりません。BMIだけで一人ひとりの健康状態や妊娠の可能性を判断することはできません。
なぜ肥満が妊娠しにくさと関係するの?
排卵や月経周期に影響することがあります
肥満では、インスリン抵抗性やホルモン環境の変化などを通じて、月経周期や排卵に影響することがあります。
特に、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)があり、肥満やインスリン抵抗性を伴っている場合には、月経不順や排卵障害がみられることがあります。
このような無排卵・排卵障害を伴うケースでは、食事や運動など生活習慣を見直し、必要に応じて適切な体重管理を行うことで、排卵が改善する場合があります。
卵巣刺激への反応との関連
体外受精などで使用する排卵誘発剤・卵巣刺激についても、BMIが高い女性では薬剤への反応が異なったり、より多くの薬剤量が必要になったりする傾向が報告されています。
ただし、反応には個人差が大きく、体重だけで採卵数や卵子の状態を予測することはできません。
子宮内膜や着床との関連も研究されています
肥満と子宮内膜機能・着床環境との関連についても研究されています。
一方で、妊娠成立には胚の状態、年齢、子宮内膜、ホルモン環境など多くの要素が関係するため、「肥満によって着床しない」と単純に考えることはできません。
肥満は体外受精・顕微授精の成績にも影響する?
これまでの研究では、肥満のある女性では、標準的なBMIの女性と比較して体外受精後の生児獲得率が低い傾向が報告されています。
また、流産との関連を示す研究もあります。
ただし、これらは集団としてみた「関連」であり、BMIだけで一人ひとりの治療結果が決まるわけではありません。
年齢、AMH、採卵数、胚の状態、不妊原因などによって治療成績は大きく変わります。
「痩せてから不妊治療を始めるべき」とは限りません
ここは、妊活中の方に特に知っておいていただきたいポイントです。
無排卵を伴う肥満では、体重管理や生活習慣の改善によって排卵や自然妊娠につながる可能性があります。
一方、体外受精を予定している肥満・過体重の女性を対象とした研究では、治療前に減量しても、生児獲得率が明確に高くなるとは確認されていません。
「痩せるまで治療を始めてはいけない」と一律に考える必要はありません。
特に不妊治療では年齢も重要な要素です。減量のために治療開始を長期間延期することがよいとは限らないため、年齢、BMI、排卵状態、持病、不妊原因などを踏まえて主治医と相談しましょう。
また、採卵時の麻酔などの安全性から、医療機関ごとに治療可能なBMIの基準を設けている場合があります。通院先に基準がある場合は、その方針も確認してください。
妊娠前から体重を整えることには別の意味もあります
妊活中の体重管理を考える理由は、不妊治療の成績だけではありません。
日本産科婦人科学会のガイドラインでは、妊娠前に肥満がある女性では、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開、巨大児などのリスクが高くなることが示されています。
そのため、将来の妊娠・出産を見据えて、無理のない範囲で食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えておくことには意味があります。
妊活中の体重管理で意識したいこと
極端な食事制限をしない
妊活中は、「とにかく体重を減らそう」と食事量を大幅に減らすことはおすすめできません。
エネルギーやたんぱく質、鉄、葉酸、ビタミンDなどが不足すると、妊娠前の身体づくりという点では逆効果になる可能性があります。
体重だけでなく、主食・主菜・副菜を組み合わせながら、必要な栄養を不足させないことが大切です。
まずは、甘い飲み物や菓子類、夜遅い食事、食べ過ぎにつながりやすい習慣などを見直すところから始めると続けやすいでしょう。
無理なく続けられる運動を取り入れる
運動習慣が少ない場合は、ウォーキングなどの中等度の運動を無理のない範囲から始めてみましょう。
妊活中の運動は、「短期間で体重を落とすこと」だけが目的ではありません。筋肉量や代謝を保ち、睡眠や気分転換などを含めて健康状態を整えることも大切です。
ただし、採卵周期や採卵後など卵巣が腫れている時期には運動を控える必要がある場合があります。不妊治療中は主治医からの指示を優先してください。
体重以外の健康状態も確認する
BMIが高めの場合は、血圧、血糖値、脂質なども妊娠前に確認しておくと安心です。
特にPCOS、糖尿病、高血圧、甲状腺疾患などがある場合は、妊娠前から医療機関で状態を確認しながら妊活を進めましょう。
こんな場合は婦人科・不妊治療クリニックへ相談を
- 月経周期が大きく乱れている
- 数か月間、月経が来ていない
- PCOSを指摘されている
- 体重増加とともに月経周期が変化した
- 糖尿病、高血圧などの持病がある
- 不妊治療を始める前に減量すべきか迷っている
- 通院しているクリニックからBMIについて説明を受けた
妊活では、体重だけに意識を向けすぎないことも大切です。自己判断で厳しいダイエットを始めたり、不妊治療を延期したりせず、必要に応じて主治医や管理栄養士などへ相談しましょう。
妊活中に「もっと痩せないといけないのでは」と体重の数字ばかりが気になってしまう方もいらっしゃいます。
体重は妊活に関係する要素の一つですが、それだけで妊娠の可能性が決まるものではありません。特に不妊治療中は、年齢や治療スケジュールとのバランスも大切です。
無理な減量を目指すのではなく、食事・運動・睡眠・疲労・ストレスなど、今できるところから身体の状態を整えていきましょう。治療開始や減量について迷う場合は、まず主治医に相談してください。
Q. BMI25以上だと妊娠できないのでしょうか?
A. いいえ。BMIが高いことは不妊と関連しますが、BMI25以上でも妊娠・出産される方は多くいます。BMIだけで妊娠の可能性を判断することはできません。
Q. 体外受精の前に必ず痩せたほうがよいですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。治療前の減量が生児獲得率を明確に改善するとは言い切れず、年齢や排卵状態、持病、治療予定を踏まえて判断する必要があります。主治医と相談しましょう。
Q. PCOSで体重が多い場合、減量すると排卵しやすくなりますか?
A. 肥満と無排卵を伴うPCOSでは、生活習慣の改善や適切な体重管理によって排卵が改善する場合があります。ただし個人差があるため、婦人科で状態を確認しながら進めることが大切です。
Q. 妊活中はどのくらいのペースで減量すればよいですか?
A. 適切な減量目標は現在のBMI、年齢、持病、不妊治療の予定などによって異なります。急激な減量や極端な食事制限は避け、必要に応じて医師や管理栄養士へ相談してください。
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📚参考文献
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肥満と排卵、自然妊娠、ART、妊娠転帰、減量介入などについてまとめたASRMの委員会見解です。 -
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日本における妊娠前BMIの考え方や、肥満と妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病などとの関連が解説されています。 -
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妊娠前BMIと妊娠までの期間、不妊との関連を検討した系統的レビュー・メタ解析です。 -
[4] Jeong HG, Cho S, Ryu KJ, et al. Effect of weight loss before in vitro fertilization in women with obesity or overweight and infertility: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports. 2024.
肥満・過体重女性のIVF前の減量介入について検討し、生児獲得率の明確な改善は確認されなかったと報告しています。 -
[5] Legro RS, et al. Effects of preconception lifestyle intervention in infertile women with obesity: The FIT-PLESE randomized controlled trial. PLoS Medicine. 2022.
肥満のある不妊女性への妊娠前の生活習慣介入と減量が健康な生児獲得に与える影響を検討したランダム化比較試験です。
この記事の監修者


院長:宇都宮 泰子
(うつのみや やすこ)
FEMICA認定妊活指導士/鍼灸学修士/MBA(経営管理修士)
はり師・きゅう師(国家資格)
- 日本フェムライフ統合ケア協会 代表理事
- 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー
- 日本生殖医学会会員
不妊・不育症を専門とし、東洋医学と生殖医療の両面から体質改善をサポート。大学院研究員としての研究活動も行いながら、臨床現場で妊活支援に従事している。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、診断・治療を目的とするものではありません。治療方針は必ず主治医の指示に従ってください。
体重のことを一人で抱え込まず、妊活中の身体づくりを整えたい方へ
妊活中は「もっと痩せなければ」と体重の数字が気になりやすいものですが、妊娠の可能性は体重だけで決まるものではありません。極端な食事制限をしたり、自己判断で不妊治療を延期したりせず、現在の治療状況に合わせて身体を整えていくことが大切です。
大阪市都島区にある宇都宮鍼灸良導絡院では、治療状況や生活リズム、冷え・疲労・睡眠・ストレスなどを伺いながら、鍼灸を通して妊活中のコンディション調整をサポートしています。
鍼灸によって減量や妊娠を保証するものではありませんが、病院での治療と並行しながら身体を整えていきたい方や、ご自身に合った妊活中の過ごし方について相談したい方もお気軽にご相談ください🍀







