
2025年05月の投稿記事
排卵後の受精可能時間と妊娠率の関係
卵子が受精可能になるまで
妊活を始めると、「排卵後、卵子はすぐに受精できるのか?」や「受精に最適なタイミングはいつか?」といった疑問を持ったことありませんか。このブログでは、卵子の成熟過程、排卵後の受精可能時間、精子との出会いのタイミングについて、科学的な視点から詳しく解説します。
卵子の成熟と排卵の関係
卵子(卵母細胞)は、排卵前に第一減数分裂を完了し、第二減数分裂の中期(MII期)で停止した状態で排卵されます。この状態の卵子は、受精の準備が整っているとされています。
排卵後、卵子は卵管の膨大部に取り込まれ、精子との受精が可能な状態になります。この過程は、卵子の成熟と排卵が密接に連携していることを示しています。
排卵後の卵子の受精可能時間
排卵後、卵子は約12〜24時間の間、受精可能な状態を保ちます。この時間内に精子と出会わなければ、卵子は老化し、受精能力を失います。
一方、精子は女性の生殖器内で最大5日間生存することが可能です。そのため、排卵前に性行為を行うことで、精子が卵子を待ち受けることができ、受精の可能性が高まります。
受精のプロセスとタイミング
排卵後、卵子は卵管の膨大部に取り込まれ、精子との受精が可能な状態になります。精子は膣から子宮頸管、子宮を通り、卵管へと進みます。この移動は非常に迅速で、最短で15分以内に卵管に到達することが報告されています。
精子が卵子と出会い、受精が成立するためには、精子が「受精能(キャパシタンス)」と呼ばれる生理的変化を経る必要があります。このプロセスは、精子が卵子の外層を通過し、受精を可能にするための準備段階であり、平均で約4時間の時間が必要とされています。
まとめ
- 卵子の受精可能時間:排卵後約12〜24時間
- 精子の寿命:女性の体内で最大5日間
- 受精能の獲得:精子が受精能を獲得するまでに平均約4時間
- 性行為のタイミング:排卵前に性行為を行うことで、精子が卵子を待ち受けることができ、受精の可能性が高まる
妊活において、これらの知識を持つことで、より効果的なタイミングでの性行為やリラックスした過ごし方が可能となります。不安や疑問がある場合は、専門の医療機関に相談することをおすすめします。
参考文献
- Iwamoto, T. et al. (2006). “In vitro fertilizing lifespan of oocytes in mice.” Journal of Assisted Reproduction and Genetics, 23(5), 183–187.
- Verywell Family. “What Is Ovulation?”
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妊娠しやすい人・しにくい人の特徴とは?
妊娠しやすい人・しにくい人の特徴とは?海外研究から読み解く妊活のヒント
妊娠のしやすさには、年齢や生活習慣、ストレスなど、さまざまな要因が影響します。近年の海外研究では、これらの要因と妊娠率との関連性が明らかになってきています。本記事では、科学的根拠に基づいて、妊娠しやすい人としにくい人の特徴を解説します。
妊娠しやすい人の特徴(傾向)
1. 若年(特に20代後半まで)
女性の卵子の質と数は年齢とともに減少します。研究によれば、卵巣予備能の指標である抗ミュラー管ホルモン(AMH)は24.5歳でピークを迎え、その後減少していきます。
2. 規則的な排卵と月経周期
安定した月経周期は、排卵の予測がしやすく、妊娠の可能性を高めます。逆に、不規則な周期や無排卵は、妊娠の障害となる可能性があります。
3. 健康的な生活習慣
適切な体重、バランスの取れた食事、定期的な運動は、ホルモンバランスを整え、妊娠しやすい体づくりに寄与します。特に、地中海式ダイエットは精子の質を改善する効果があると報告されています。
4. パートナーの精子の質が良好
男性の精子の質も妊娠に大きく影響します。健康的な生活習慣や適度な運動は、精子の濃度や運動率を向上させることが示されています。
5. 病気や既往歴がない
子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、性感染症などのリスクがない
妊娠しにくい人の特徴(傾向)
1. 高年齢(特に35歳以降)
35歳を過ぎると、卵子の質と数が急激に低下し、妊娠率が減少します。45歳で妊娠を試みた場合、50〜80%の確率で出産に至らないと報告されています。
2. 月経周期の不安定
無排卵やホルモンバランスの乱れは、妊娠の障害となります。特に、肥満や過度な痩せはホルモンバランスを崩し、排卵障害を引き起こす可能性があります。
3. パートナーの精液異常
男性の肥満や不健康な生活習慣は、精子の質を低下させ、妊娠の可能性を減少させます。特に、肥満は精子のDNA損傷を増加させることが示されています。
4. 高ストレス状態
慢性的なストレスは、女性の排卵や着床を妨げ、男性の精子の質を低下させる可能性があります。研究では、ストレスが妊娠率を低下させることが示されています。
5. 基礎疾患や婦人科疾患がある
子宮筋腫、子宮内膜症、甲状腺疾患、高プロラクチン血症など
6. BMIが高すぎる/低すぎる
肥満や痩せすぎもホルモンバランスを崩す原因になります。
7. その他の心理・環境的な影響
焦りや思い詰め:過度なプレッシャーはホルモンバランスを乱し、妊娠を妨げる可能性があります。
パートナーとのタイミングの不一致:排卵日周辺での性交渉がないと、妊娠のチャンスを逃すことになります。
まとめ
妊娠のしやすさには、年齢、生活習慣、ストレス管理など、さまざまな要因が関与しています。これらの要因を理解し、適切な対策を講じることで、妊娠の可能性を高めることができます。妊活を始める際は、自身の体と向き合い、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
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35歳 原因不明の不妊 体外受精3回陰性の方が人工授精でスピード妊娠
大阪市中央区からお越しのMさん(35歳)が妊娠されました。
患者情報
- 来院の動機:不妊症
- 鍼灸の経験:なし
- 体調:ストレスを感じている
- 体質:冷え性、ストレス過多、発汗が多い
- 睡眠:平均7時間(就寝1時~8時起床)、夢をよく見る
- 生理:不調(生理周期24~35で不規則)、生理痛・PMSはなし、経血の状態は暗赤色とレバー状(不妊治療を始めてからレバー状の経血は減少、生理周期が長くなった。)
- 食生活:1日3食、外食が多い、食の趣向は塩味や甘味、刺激物などを好む。飲み物は水。飲酒と喫煙はなし。
- 運動:ウォーキング1時間~1時間半(週2回)
- 入浴:全身浴
- 現在服用している薬・サプリメント:温経湯、亜鉛、ビタミンD、ラクトフェリン
- ご主人は37歳。飲酒は週5日(ビール2杯やハイボール2杯)、喫煙なし。
- ご自身で行っているセルフ妊活は、自宅で腹巻、レッグウォーマーを着用。冷たいものを飲まない。根菜を中心に食べる。
当院にお越しになるまでの経緯
Mさんは、妊娠を望まれてから1年が経過していました。この間に婦人科クリニックおよび不妊治療専門クリニックでタイミング療法~人工授精~体外受精・移植を受けてこられました。(保険適用)当院にお越しになった時は、3回目の移植が陰性となり、クリニックの不妊治療を一旦休憩中とのことでした。クリニックの検査結果は特に原因が見つからない、原因不明の不妊でした。
そのような中、「これからの人工授精と採卵・移植に向けて何かできることはないか」と思い、2024年9月宇都宮鍼灸良導絡院にお越しになりました。
鍼灸でこれからの人工授精と採卵・移植に向けて
2024年9月 人工授精周期(体外受精からステップダウン、保険適用)
不妊鍼灸の治療方針は、人工授精に合わせて卵巣の血流を促進し、質の良い卵子が育つよう施術を行いました。また、初診の問診時にて、冷え性やストレス過多・発汗が多いなど自律神経に関係した症状を訴えておられたので、その症状に応じた施術も併せて行いました。
当院は、子宮や卵巣の生殖機能の向上を目的とするだけでなく、体に現れるさまざまな不定愁訴(体の不調)にも丁寧に対応しています。心と体が健康な状態は、妊娠しやすいシステムがはたらきやすくなります。しかし、実際には、妊活中の方の多くが仕事と妊活の両立に大変な思いをされ、心と身体の不調を抱えていることがあります。これは、妊娠しやすいシステムがうまくはたらいていない状態ということが考えられます。そのため、首肩こり、頭痛、腰痛、便秘、冷え性など体の不調にも積極的にアプローチし、妊娠しやすいシステムがはたらきやすくなるように毎回の施術を行っています。
鍼灸を始めてから、2回目の施術の時は「体の調子がいい」とのご感想をいただきました。引き続き卵巣の血流促進を中心に、その日の体調を丁寧に伺いながら、不調に応じた施術を行いました。その後も週に1回のペースで通院していただき、鍼灸開始から7回目の時、なんと妊娠していることが分かりました。妊娠5週5日で着床の確認も出来ました。体外受精からステップダウンの人工授精での妊娠、そして予想以上の早い結果にご本人も驚いておられました。
その後は、マタニティ鍼灸に治療を切り替え、妊娠維持のための施術や、つわりなどの妊娠中の症状に対応しました。無事に胎嚢・心拍の確認もでき、クリニックを卒業されたのち、週に1回の出産に向けた鍼灸を受けられ、安定期を経て妊娠26週 2025年3月に当院での鍼灸も卒業されました。1年間、不妊治療専門クリニックの治療を続けられ、なかなか結果が出ない時に、鍼灸で体調や自律神経を整えたこと、リラックスできたことが今回の妊娠につながったのかもしれません。
Mさん、この度は本当におめでとうございます。無事出産されることを願っております。また何かございましたらいつでもサポートさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
Mさん妊娠お喜びの声
▢ お悩みの症状またはご来院当初の目的をお聞かせください
不妊
▢ 鍼灸以外で妊娠(陽性反応)された方法に〇をつけてください
人工授精
▢ ご自身で「これは良かった!」「自分に合っていた!」と思われた妊活があればお教えください
温活・ウォーキング・半身浴・サプリメント・筋トレ
▢ 鍼灸施術を受けていただいた感想をお聞かせください
こちらに通う前にタイミング5回、人工授精2回、体外受精3回をして、結果が出なかったのですが、通い出してすぐに行った人工授精で授かることが出来て、すぐに結果が出たことにとても驚きました。不妊治療で通っていた病院では、質問したことは教えてれますが、先生と話す時間が短いことで、質問しそびれたり、ただ不安に思っていること、食事などこれで合っているのかな?と思うことなどは聞きづらかったりしました。ですが、こちらでは約1時間の施術の中で専門的な知識を持たれている先生と会話ができるので、不安な点を解決することができました。
▢ 同じように悩まれている方へアドバイスに自身でやって良かったこと、若しくは続けることが出来たセルフ妊活など)やメッセージがあればお願いいたします。
約半年前から特に温活に力を入れていました。体が温まる入浴剤を使う、生姜など根菜をとる、夏でもレッグウォーマーで足を冷やさないようにする、スクワットをして筋肉をつけるなど。こちらに通ってから効果が感じられるまでは数ヶ月かかると思っていたのですが、1ヶ月ほどで効果を感じられたのは、独自で温活もしていたからなのかな?と思いました。不妊治療をしていて不安な気持ちになることも多いと思いますがパートナーや家族や友人を頼って心のケもしてください!皆様の今までの努力が報われますよう、願ってます。
※【免責事項】すべての方にあてはまるものではありません。効果の実感には個人差があります。
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性格と妊娠率の関係とは?不妊傾向と気質の考察
妊娠しにくさと性格の関係性:不妊症女性に見られる7つの性格特性
不妊症は、身体的な要因だけでなく、心理的な側面も大きく影響します。特に、個人の性格特性が不妊治療への反応やストレスの感じ方に関与していることが、いくつかの研究で示唆されています。ここでは、不妊症女性に見られる7つの性格特性について紹介します。
①完璧主義傾向
すべてを自分でコントロールしたい、失敗を許せないといった完璧主義の傾向がある人は、治療結果が思うようにいかないと自己否定につながることがあります。このような性格特性は、治療過程でのストレスを増大させる要因となり得ます。
②強い責任感
「妊娠できないのは自分のせい」と自責的になりやすい人は、周囲に迷惑をかけまいと感情を抑え込む傾向があります。このような強い責任感は、自己評価の低下やストレスの蓄積につながる可能性があります。
③自己評価が低い
「女性(男性)としての価値がない」と感じてしまうなど、自己評価が低い人は、不妊症によってさらに自己価値を疑うことがあります。これは、抑うつ傾向や不安感の増加と関連しています。
④強い不安傾向
治療や結果に対して常に不安を抱えている人は、些細な体調変化にも過敏になることがあります。このような不安傾向は、治療過程でのストレスを増大させる要因となります。
⑤抑うつ傾向
希望を持ちにくく、先行きが悲観的になりやすい人は、孤独感や無力感に陥ることが多いです。不妊症に関連する抑うつ傾向は、治療の継続や日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
⑥柔軟性の低さ
「妊娠すること」だけに意識が集中し、他の価値観を受け入れにくい人は、ライフプランの変更が苦手です。このような柔軟性の低さは、治療の中断や結果に対する適応力の低下と関連しています。
⑦外的評価志向
周囲の目や評価を気にする人は、「親に孫を見せたい」「友人の出産がつらい」といった対人ストレスが大きいです。このような外的評価志向は、自己評価の低下やストレスの増加につながる可能性があります。
研究事例:性格特性と不妊治療の成功率
2023年に発表されたSzaboらの研究では、ハンガリーの不妊治療クリニックに通う578人の女性を対象に、感情気質(affective temperaments)と治療成功率との関連性を調査しました。その結果、循環気質(cyclothymic)、抑うつ気質(depressive)、不安気質(anxious)のスコアが高い女性は、体外受精(IVF)による臨床的妊娠の成功率が有意に低下することが明らかになりました。
具体的な結果
- 循環気質スコアが4を超える場合:妊娠成功率が49%低下(OR = 0.51)
- 抑うつ気質スコアが9を超える場合:妊娠成功率が41%低下(OR = 0.59)
- 不安気質スコアが9を超える場合:妊娠成功率が55%低下(OR = 0.45)
一方で、易怒気質(irritable)や高揚気質(hyperthymic)は、治療結果に有意な影響を与えないことが示されました。この研究は、感情気質が不妊治療の成功に影響を及ぼす可能性を示唆しており、個々の性格特性に基づいた治療アプローチの重要性を強調しています。
参考文献
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高度生殖医療と鍼灸の併用で妊娠力を最大化!
- 「不妊治療で病院に通っていますが、鍼灸と併用しても大丈夫ですか?」
- 「以前通っていた鍼灸院で『不妊専門クリニックに通う必要はない』と言われました。でも、私は現在クリニックに通っています。それでも鍼灸を受けても問題ないですか?」
このようなご相談を受けることが多いため、今回は当院の見解をブログでご紹介いたします。
鍼灸とクリニックの併用は可能?
結論から申し上げますと、不妊専門クリニックとの併用はむしろ効果的です。
鍼灸治療(東洋医学)には妊娠しやすい体づくりに役立つ力がありますが、すべての症状に対して万能ではありません。同様に、西洋医学でも改善が難しい症状が、東洋医学では改善されるケースもあります。
「原因不明の不妊」に鍼灸が効果を発揮することも
たとえば、「原因不明の不妊(機能性不妊)」と診断された方に多いのが、卵子の質の低下や血流不全、自律神経の乱れです。こういったケースでは、身体の根本的なバランスを整える鍼灸が大きなサポートになります。
妊娠の“その先”までサポートできるのが東洋医学
不妊クリニックのゴールは、「妊娠=胎嚢確認・心拍確認」です。一方で東洋医学の視点では、「出産まで」「産後の回復」までを視野に入れてサポートしていきます。実際、妊娠された方の2割以上が不育症の可能性を抱え、妊娠を継続できずに悩まれるケースも少なくありません。
当院では、妊娠の維持・安定から出産後のケアまでを一貫して対応しています。出産後の体調ケアが不十分だと、将来的な続発性不妊に繋がることもあるため、産後ケアも非常に重要です。
40代の方には特に併用がおすすめ
妊娠における「時間」はとても貴重です。特に40代の方は、鍼灸だけに頼るのではなく、高度生殖医療(ART)と鍼灸の併用による相乗効果を活かすことが、妊娠への近道となります。
当院の不妊鍼灸の特徴
月経周期・治療サイクルに合わせた施術
採卵前、胚移植の前後、不育症の方など、一人ひとりの状況に合わせた施術。クリニックのスケジュールも考慮し、最適なタイミングで治療を行います
身体の不調も同時にケア
冷え・肩こり・胃腸の不調などがあると自律神経が乱れ、妊娠力が下がることがあります。鍼灸で全身の調子を整え、結果として「生殖機能」が正常に働きやすくなります
内膜の薄さ・卵子の質へのアプローチ
電気を流す特殊な鍼灸で、卵子の質や子宮内膜の厚みをサポートします。
自律神経測定によるオーダーメイド施術
測定器で自律神経の状態をチェックし、月経周期・体調・クリニックの治療に合わせた内容で施術します。
最後に
妊娠や出産でお悩みの方、不妊治療と併用して鍼灸を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。「妊娠しやすい身体づくり」を一緒に進めていきましょう。
※すべての方に効果を保証するものではありません。個人差があることをご了承ください。
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胚移植後の過ごし方【着床するために注意すべきこと】
胚移植後の生活どう過ごす?気をつけることは?
胚移植後、どのように過ごせばよいか、何に気をつければいいか――妊活をされている方から、よくいただくご質問の一つです。
SNSでは「こうしたら着床しました」「こう過ごしたら妊娠できました」といった体験談が多く投稿されています。それを読んで、「同じようにすればうまくいくかも」と希望を持たれる方も少なくありません。一方で、クリニックによっては「安静に」と指導するところもあれば、「普段通りの生活で大丈夫」と言うところもあります。
では、実際にはどう過ごすのが良いのでしょうか?
「普通の生活」って何?
「普段通りの生活でいい」と言われたとしても、その「普通」がわからないという方も多いと思います。ここでいう「普通の生活」とは、
- 今までしていなかった新しいことを始めない
- 自分にとって無理のない、日常的な生活リズムを保つ
という意味です。例えば、急にハードな運動を始めたり、サプリメントや特別な食事を取り入れたりすることは、“いつも通り”ではありません。「着床のために何かをしなきゃ」と焦る気持ちは当然ですが、かえってそれがストレスになることもあります。
着床には “ストレスをかけない生活” が大切
移植後はどうしても神経が敏感になり、不安になりがちです。
- お腹がチクチクする…
- 少し出血があるけど、着床出血かな?
- 下腹部が冷えている気がする
こうした変化に気づくたびに、ネットで検索してしまう…というのは、よくあることです。ただ、その“不安”こそが、身体にはストレスとなって影響を与えます。
ストレスが身体に与える影響
ストレスがかかると、自律神経のうち「交感神経」が優位になります。それにより筋肉が硬くなり、血流が悪くなります。血流が悪くなると、以下のような影響があります。
- 子宮や卵巣に酸素・栄養が届きにくくなる
- ホルモン分泌が乱れる
- 着床しづらくなる可能性がある
- 精神面でも不安が増しやすくなる
胎児への栄養や酸素供給にも影響が出るとされており、ストレス管理は移植後だけでなく、妊娠継続にも重要な要素です。
当院の鍼灸施術について
当院では、移植後の鍼灸施術において
- 着床しやすい環境をつくる
- ストレス軽減
- 骨盤内の血流改善
この2つに特に重点を置いています。
施術を受けた方からは「安心できた」「リラックスできた」という声を多くいただきます。不安な気持ちを抱えながら待つ“判定日までの時間”を、できるだけ穏やかに過ごしていただくためのサポートをしています。
まとめ
胚移植後は、何か特別なことを始めるよりも、「今の自分の心と体をととのえる」ことが大切です。「何もしていないと不安になる」という方は、ぜひ鍼灸でリラックスしてみてください。私たちは、皆さまの妊娠という目標に向けて、心と身体のバランスを整えるお手伝いをしています。
鍼灸によるストレス軽減と妊娠率の向上
研究では、鍼灸がストレス軽減に有効であるとする報告が多数あります。
参考論文①
ARTの成績とストレスの関連性については、負の相関がみられるという報告が多く、ストレスの強さやストレスに対する脆弱性は IVF−ET後の妊娠の不成立と関連すると報告されている。鍼灸はストレスホルモンの1つである結成のコルチゾールとプロラクチンの分泌を調整し、体外受精、胚移植の結果を改善し妊娠率を増加することを示している。
引用:田口玲奈 女性心身医学 JJpSocPsychesomObstetGynecol VoL20, No.3, pp.302−307,(平成2年3月)
参考論文②
鍼灸治療は、体外受精を行う女性にとって、生殖予後を改善するものとして利用されており、不安を軽減する可能性を示唆する研究結果もあります。本研究の目的は、体外受精サイクルを受ける女性のQOLと不安に対する鍼灸の効果を偽鍼灸と比較して検討することであった。(略)鍼灸は胚移植時の不安を軽減する可能性がある。
引用:Acta Obstet Gynecol Scand 2019 Apr;98(4):460-469. doi: 10.1111/aogs.13528. Epub 2019 Jan 20.
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月経血のニオイと腟内フローラの関係とは?
月経血は無臭?ニオイの正体とは
生理中、ふと気になる「月経血のニオイ」。実は月経血そのものは、血液と破壊された子宮内膜・分泌液などが混ざった体液で、出た直後は無臭に近いとされています。ところが、空気に触れて酸化が進むと、金属臭や鉄臭、独特なニオイが生じやすくなります。
ニオイが強くなる原因
次のようなことが、ニオイの原因になる場合があります。
- ナプキンを長時間交換していない
- デリケートゾーンの蒸れや不衛生
- 食事や体調による体臭の変化
- 膣内フローラ(膣内の菌バランス)の乱れ
この「膣内フローラ」は子宮内細菌叢(しきゅうないさいきんそう)とも関係があり、最近では、このバランスが妊娠・着床にも大きく関わることが明らかになっています。
子宮内細菌叢の乱れは、着床率に影響する
膣内や子宮内には、善玉菌(ラクトバチルス属)を中心とした常在菌が存在します。これらがバランスよく保たれていると、病原菌の侵入を防ぎ、妊娠環境を整えることができます。
逆に、細菌叢が乱れて悪玉菌が増えると、子宮内膜炎や着床障害、不妊の原因にもなります。実際に、子宮内細菌叢検査(EMMAやALICEなど)で乱れが発見され、治療後に妊娠に至った例も増えています。
こんなニオイの時は受診を
- 強い腐敗臭
- 魚が腐ったようなニオイ(アミン臭)
- おりものに色や量の異常
- かゆみや痛みを伴う
これらの症状があるときは、感染症や膣内炎症の可能性もあるため、早めの婦人科受診をおすすめします。
東洋医学の視点
東洋医学では、体のニオイや経血の質にも意味があります。特に「瘀血(おけつ)=血の滞り」があると、経血が黒っぽく、臭いが強くなることも。また、体内に「湿熱(しつねつ)」がたまると、生臭さや粘りが強くなることもあります。
鍼灸では、血流や内臓バランスを整えながら、自然な自浄作用を引き出すケアが可能です。
まとめ
「月経血のニオイが気になる」――それは、体からのサインかもしれません。特に、妊娠を希望されている方にとっては、膣内環境や子宮内細菌叢のチェックもとても重要です。
「ちょっと違うな」と感じたときには、受診や検査、そして体質ケアの第一歩を考えてみてください。
参考文献
- Moreno I, et al. “Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure.” American Journal of Obstetrics and Gynecology, 2016.
- Mändar R, et al. “Vaginal microflora and the pH-dependent microbial balance.” Microbial Ecology in Health and Disease, 2015.
- Sobel JD. “Vaginitis in the Post-Antibiotic Era.” Clinical Infectious Diseases, 1999.
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月経血の成分とは?意外な中身も紹介
月経血の正体とは?
「月経=血が出ること」そう思われがちですが、実は月経血の約40%が血液成分で、その他は子宮内膜の破壊組織、子宮内液、膣分泌液、酵素、常在菌などが含まれています。
月経血に含まれる主な成分
- 血液(約40%)
- 子宮内膜の破壊組織(剥がれ落ちた組織片)
- 膣分泌液や子宮内液
- 酵素(血液の凝固を防ぐための成分)
- ごく微量の常在細菌(感染性はない)
これらが混じり合ったものが、月経血です。
血のかたまりは異常?
生理中に見られる血のかたまりを「異常では?」と不安になる方も多いですが、月経の初期に出る少量のかたまりは正常範囲内です。ただし、血のかたまりが頻繁に出る・サイズが大きい・経血の色が黒っぽい・強い生理痛があるといった場合は、東洋医学の視点で言うところの「瘀血(おけつ)」の可能性があると考えられます。
東洋医学で見る“瘀血(おけつ)”とは?
「瘀血(おけつ)」とは、血液の流れが滞って、古い血が体内にとどまっている状態を指します。生理中に血のかたまりや黒ずんだ経血、強い生理痛がある場合、東洋医学では瘀血があると判断し、身体の巡りを改善するアプローチがとられます。
瘀血のサイン(東洋医学的所見)
- 血のかたまりが多い
- 経血が黒っぽい
- 生理痛が強い・刺すような痛み
- 生理の開始・終了が不安定
- 舌に暗紫色の斑点(瘀点)がある
瘀血があるとどうなる?
瘀血があると、以下のような女性特有の不調が起こりやすくなるとされています。
- 不妊症
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 月経困難症
- 頭痛や肩こり、肌荒れ
瘀血は単に「月経の問題」ではなく、全身の巡りや代謝にも影響を与える要因となります。
鍼灸で瘀血を整える
瘀血に対しては、東洋医学では「活血化瘀(かっけつけお)」というアプローチを行います。特に鍼灸治療では、血流を促進し、子宮・卵巣周辺の血の滞りを改善することで、月経トラブルや妊娠力の向上を目指します。
まとめ
月経は「ただの生理現象」ではなく、身体からのメッセージです。月経血の状態から、今の身体のバランスや滞りを読み取ることができ、妊活中の方や不妊に悩む方にとって、大切な“気づきのきっかけ”になります。
毎月の月経を見直し、違和感や気になる症状があれば、東洋医学的な視点で整えてみるのもおすすめです。
参考文献
- Menstrual Fluid Factors Mediate Endometrial Repair
- Physiology, Menstrual Cycle – StatPearls – NCBI Bookshelf
- The composition of menstrual fluid, its applications, and recent advances to understand the endometrial environment: a narrative review
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三陰交は妊娠初期に危険?東洋医学の見解と不育症治療の関係
古典的な禁忌説
三陰交は、古典医学において妊娠初期の使用を避けるべきとされているツボです。三陰交は脾経、肝経、腎経という3つの経絡が交わる場所で、これらの経絡が子宮や骨盤内の気血の流れを促すため、妊娠初期に使用すると子宮収縮を引き起こす可能性があると考えられていました。このため、妊娠初期には三陰交の使用を慎重に考えるべきだという見解が古典的な医学書に記されています。
また、三陰交と合谷の組み合わせは古典において堕胎のツボとしても知られており、三陰交への強い刺激と合谷への弱い刺激を組み合わせることで、子宮収縮を促す作用があるとされています。このため、この組み合わせは施術において注意が必要です。
現代鍼灸の反対の見解
一方、近年の鍼灸実践や研究では、適切な手法と刺激の強さを選べば、妊娠初期に三陰交を使用しても問題ないとする見解も出てきています。特に、妊娠中のむくみ、消化不良、精神的な不安といった不調に対して、慎重な施術を行うことで症状の改善が期待できるとされています。この見解では、刺激の強さを適度に調整することで安全に使用できると考えられています。
また、現代の研究では、ツボ刺激の効果は個々の体質や健康状態によって異なるため、必ずしも一律に禁忌とすべきではないという意見もあります。妊娠中期以降に三陰交を使用することで、出産をスムーズにする効果が期待できるとの報告もあり、妊娠の時期や体調に応じた適切な使用が推奨されています。
三陰交の不育症治療と逆子治療における使用
現代の臨床実践では、三陰交は不育症(流産を繰り返す症状)の治療にもよく使用されるツボです。不育症の治療では、子宮や全身の血流を改善し、妊娠を安定させるために三陰交が活用されています。三陰交は脾、肝、腎の経絡を整えることで、血行を促進し、胎児の成長や妊娠の安定を支えるとされています。
特に、脾や腎の機能低下が原因で不育症が発生する場合において、三陰交は非常に効果的な治療ポイントです。不育症の患者に対して、三陰交を適切に施術することで、子宮内の血流を改善し、胎児の成長や妊娠の安定をサポートする効果が期待されています。
さらに、三陰交は逆子(骨盤位)の治療にも役立つことがあり、逆子の矯正を目的として使用されることもあります。三陰交を刺激することで、子宮内の血流を改善し、胎児の位置を正すサポートを行うことができます。
まとめ
三陰交は、古典的な観点では妊娠初期の使用に注意が必要とされ、特に合谷との組み合わせが堕胎のリスクを高めるとされています。しかし、現代の鍼灸では、刺激の強さや方法を調整することで妊娠中の不調を和らげるツボとしても利用されています。不育症や逆子の治療においても、三陰交は重要な役割を果たし、適切な施術を行うことで妊娠の安定や胎児の位置改善に効果が期待されています。最終的には、患者の体調や状況に応じた専門的な判断が重要であり、慎重な施術が求められます。
出典
- 『黄帝内経』
- 『難経』